鍼灸資生経巻七bT
鍼灸資生経巻七25
婦人血気痛
四満、石関主子蔵有悪血、内逆、満痛。四満治,婦人血蔵積冷。陽療婦人血気。陰交治産後悪露不止、繞臍冷痛。涌泉治心痛、不嗜食、婦人無子、女子如妊娠、五指端尽痛、婦女本蔵気血癖、走刺痛。陰交治血塊、腹痛。
四満と石関は、子宮に悪血があって内逆し、膨れて痛むものを主治する。四満は婦人で子宮に血があり、冷えるものを治す。陽は婦人の血気を治療する。陰交は産後に悪露が止まらず、臍の回りが冷えて痛むものを治す。湧泉は心痛、食欲不振、婦人で子ができない、女子で妊娠したように腹が膨れたもの、指先が痛む、婦女の子宮に気血が積滞して刺痛が走るものを治す。陰交は子宮の血塊や腹痛を治す。
鍼灸資生経巻七26
血塊
石門治,婦人因産、悪露不止、遂結成塊、崩中漏下。天枢、中極治血結成塊。下極療,因産悪露不止、遂成疝、或因月事不調、血結成塊。漏谷、曲泉治血。曲骨主血。復溜主血淋。血淋、灸丹田等。三里治胸中血。九曲、中府主内有血。
石門は、婦人が出産のため悪露が止まらなくなって遂に塊となり、機能性子宮出血を治す。天枢と中極は、血が結して塊となったものを治す。下極は、出産による悪露が止まらず、遂に排尿困難となったもの、あるいは生理不順のため血が固まって塊となったものを治療する。漏谷と曲池は子宮筋腫を治す。曲骨は尿路結石を治す。復溜は排尿痛があって血の混じるものを主治する。排尿痛があって血の混じるものには石門の灸。三里は胸中の血を治す。九曲、中府は内に血があるものを主治する。(疝は疝の間違いと思う。丹田は、本来は石門だったが、関元のことも言う)
鍼灸資生経巻七27
血崩
大敦治血崩不止。合陽治崩中。気海、石門治崩中漏下。中都治崩中、因産悪露不絶。交信、陰谷、太衝、三陰交治,女漏血不止。石門治崩中漏下。血海治漏下悪血、月事不調、逆気、腹脹。血海主漏下、若血閉不通、逆気脹。陰谷主漏血、小腹脹、体寒熱、腹偏腫。太衝、然谷主経漏。陰主陰挺、下血、陰腫或癢、清汁若葵汁。白崩、灸小腹横文、当臍孔直下百壮。又内踝上三寸左右、各百壮。陰交、石門療崩中。
大敦は腟からの出血が止まらないものを治す。合陽は機能性子宮出血を治す。気海と石門は、機能性子宮出血を治す。中都は機能性子宮出血、出産後に悪露が止まらないものを治す。交信、陰谷、太衝、三陰交は、腟から少量の出血が止まらないものを治す。石門は機能性子宮出血を治す。血海は悪血が腟から出血するもの、生理不順、逆気、腹脹を治す。血海は機能性子宮出血を治すが、もし血が閉塞して不通になれば、逆気して腹が膨れる。陰谷は腟から血が漏れ、下腹が脹り、寒熱があり、腹の片側が腫れるものを主治する。太衝と然谷は経血が漏れるものを主治する。照海は子宮脱、下血、陰部が腫れたり痒かったり、腟から透明な葵の汁ようなものが流れるものを主治する。白帯は、下腹の横紋で、臍の穴の直下に灸百壮。また内踝の上三寸の左右に、百壮ずつ。陰交と石門は機能性子宮出血を治療する。(もとの文は清汁若葵汗だが、汗ではおかしいので汁とした)
天枢療漏下赤白、及腹大堅、食不化、面色蒼蒼。若経候過多、其色黒、甚者崩下、吸吸少気、臍腹冷、極則汗出、如雨、尺脈微小、由衝任虚衰、為風冷、客乗胞中、気不能固、可灸関元百壮、宜鹿茸丸。有皮匠妻、患血崩、両月飲食不進、与鎮霊丹服、少減而未断、因得耆域、方如聖散、用椶櫚、烏梅、乾薑、各一両、並焼、存五分性、為末、毎服二銭、食前烏梅湯、調下。患甚者、不過三服。合一剤与服、而疾平。又有巡捕之。妻年五十、因傷寒而血崩、与加膠艾四物湯一服、漸愈。後因労、復大作、与鎮霊丹十五丸、而止。或無此丹、焼鹿角、存性、為末、酒調服、亦佳。以其験、故附於此。
天枢は血や膿が混じった月経、腹部のしこり、食滞、顔色が青いものを治療する。もし経血を尋ねたら多過ぎ、その色がドス黒く、ひどいものは出血量が多く、微弱な呼吸で、臍や腹が冷え、極まれば汗が雨のように出、尺脈が微小である。これは衝脈と任脈が虚衰し、それに乗じて冷風が子宮に宿り、気が固めないものである。関元に灸を百壮すえ、鹿茸丸を飲む。ある皮職人の妻が、機能性子宮出血になった。二カ月も食が進まず、鎮霊丹を飲んでみて少しはよくなったものの止まらない。歳老いているので如聖散を採用する。シュロ、梅、干しショウガ一両ずつを焼いて、五分ほど性質を残し、粉末にする。それを一回二銭ずつ飲む。食前に烏梅湯で調える。重症には、一日3回まで。これらを烏梅湯と一緒に飲むと、病気は治った。また捕まった。妻の年齢は五十を越えている。傷寒から血崩になったが、加膠艾四物湯を一服ほど飲んだら徐々に治った。のちに過労のため、また発作が起きたが、鎮霊丹を十五粒ほど飲んで止まった。この薬がなければ、鹿の角を焼き、性質を残したものを粉末にし、酒で調えて飲んでもよい。それは次々試して効果があったので、ここに付け加えた。 (客とは、主人でなく外から入ってきたものが客だから、本来はないものが居座ること)
陰交治女子月事不絶、帯下、産後悪露不止、繞臍冷痛。気海、中都治悪露不止。関元治悪露不止。中極、石門療因産、悪露不止。漏胞、下血不禁、灸関元両旁三寸、百壮。産難、月水不禁、横生、胎動、鍼三陰交。胎動、崩中、下痢、賁気上逆、鍼石門寸四分。漏胞見赤、胞門五十、又気門五十。崩中、帯下、鍼灸中極。
陰交は女子の月経が止まらないもの、帯下、産後の悪露が止まらない、臍の回りが冷えて痛むものを治す。気海と中都は悪露が止まらないものを治す。関元は悪露が止まらないものを治す。中極と石門は、出産のため悪露が止まらないものを治療する。流産の前兆である妊娠中の出血が止まらないものは、関元の両側三寸に灸を百壮。難産、経血が止まらない、胎児が横になって腕から出産する、流産の前兆である胎動不安には三陰交の鍼。胎動不安、機能性子宮出血、下痢、吐き気には、石門に鍼を一寸四分。妊娠中に腟から出血するときは、胞門に五十壮、気門に五十壮。機能性子宮出血や帯下には中極へ鍼灸する。
鍼灸資生経巻七28
産後余疾
期門治産後余疾、千云,主産余疾、食不下、賁豚上下傷、腹満。伏兎療,婦人八部諸疾。婦人、産後、渾身疼、鍼百労穴、遇痛処,即鍼、避筋骨及禁穴。明下云、産後未満百日、不宜灸。
期門は出産による余病を治す。『千金方』は、産後の余病、食事が喉を通らない、賁豚が上下して傷付ける、腹満を主治するという。伏兎は、婦人の八部門の疾患を治療する。婦人が産後に、全身が痛くなれば、百労穴へ刺鍼し、痛いところがあれば、そこへ刺鍼するが、筋骨と禁鍼穴は避ける。『明堂』は、出産して百日未満であれば、灸をするなという。
産後血暈、寒熱往来、或血搶心、悪疾也。予閲食料本草見、有用鹿角、焼為末、酒調服、日夜数服、験者。偶家有婦人、患此、令服此、神効。因教他人、婦服、皆験。但以産後、未可飲酒、以童子小便、調服爾。
出産後に目まいして寒熱往来したり、血が心窩部を衝くのは悪疾である。私が食料本草を読んでいると、鹿の角を焼いて粉にし、酒で調えて飲む。日夜に渡って数服飲むと効果があるとあった。妻の実家の婦人が、これを患い、これを飲ませると神効があった。そこで人に教えて婦人に飲ませると、みな効果があった。ただし産後で、まだ酒が飲めないものは、酒の代わりに子供の小便で調整して飲むようにする。
明下云、凡懐孕、不論月数、不宜灸。銅云、昔宋太子、善医術。出苑、治一妊婦、太子診曰女。令徐文伯診、曰一男一女。鍼之瀉三陰交、補合谷。応鍼而落果、如文伯言。故妊娠不可刺。
『明堂経下巻』は、懐妊したら何カ月であろうが、施灸はよくないという。昔、宋の国の太子が、医術がうまかった。庭に出ると妊婦がいて、太子が診察すると女の胎児だった。徐文伯に診断させると、一人は女、一人は男という。刺鍼して三陰交を瀉し、合谷を補うと、鍼に応えて流産した。それは徐文伯の言ったとおり一男一女だった。こうなるから妊婦には刺鍼してならないと『銅人経』は言う。
鍼灸資生経巻七29
難産
衝門治難産、子上衝心、不得息。張仲文,療横産、治先出手、諸符,薬不、捷灸右脚小指尖頭、三壮、如小麦、下火立産。
衝門は難産で、子懸で息ができないものを治す。張仲文は、出産時に胎児の手から出るものを治療する。護符も薬も効かなければ、すぐに右足の第5趾の尖に麦粒大で3壮すえる。火が下りたらすぐに生まれる。(子上衝心は、子懸のことで、妊娠4〜5カ月から胸がつかえ、ひどければゼイゼイ喘ぎ、イライラする。そして意識不明となったり、何かが胸にぶら下がって塞いでいるような感じがある。「胎上逼心」「子搶心」「子上逼心」「子衝母」などの別名があるので、ここではすべて子懸で統一する)
中封主小腹大、字難、乾、嗜飲、夾臍疝。上崑崙主字難、若胞衣不出、泄風、従頭至足。気衝主胞不出。気衝治,子上槍心。衝門主乳難子上衝心、陰疝。千一海,上方、治難産、及胞衣死胎不下、麻七粒、去殻、研如泥、塗足心、才下。急洗去。本事方、極験。
中封は下腹が大きい、難産、喉がイガイガし、水を飲みたがる、臍を挟んで痛むものを主治する。上崑崙は難産、胎盤が出ない、ジンマシンが頭から足に至るものを主治する。気衝は胎児が出ないものを主治する。気衝は子懸を治す。衝門は、難産、子懸、下腹部と陰部が絞られるように痛むものを主治する。千一海は、この方法で難産、および胎盤や死んだ胎児が出てこないものを治す。麻七粒の殻を剥き、泥のように細かくして足の裏に塗ると下りる。下りたら急いで足を洗う。この方法は、きわめて効果がある。
昔河陽公主、毎産累不能終。南山道士、進枳殻散、神効。枳殻麩、炒去穣四両、甘草炙三両、為細末。毎服一大銭匕。空腹、沸湯、點服。五六月後、方可服日一服。八月日三服、始産痩小、数月後平服。
昔、河陽に王女があり、いつも妊娠するのだが出産できない。南山の道士が枳殻散を飲ませると神効があった。カラタチの皮を粉にして炒ったあと、茎を取り去ったものを四両、甘草を焙ったもの三両を粉にする。毎回、大きいコインぐらいのスプーンで飲む。空腹時に沸かした湯で少しずつ飲む。5〜6カ月目になって一日1服ずつ飲める。8カ月目には一日3服ずつ飲む。初めて小さな子が生まれ、数カ月後に落ち着いた。
若横生逆生、宜服黒散。百草霜、釜下黒煤。是香白等、分研。毎服二銭、匕醋、童子小便、各一、茶脚調。更入、少沸湯、温熱服。良久、便正生。未知、再作。頃刻、活二人命。予教人服、験、故附此。
横児や逆児には、黒散を飲む。百草霜を釜の下で黒い煤とし、これを香白などを分けて粉にしたものと均一にする。これを二銭ずつ、レンゲ一杯の酢、そして男の子の小便を各一杯ずつ、茶匙で均一にする。さらに少量の沸かした湯を入れ、温めて飲む。長いこと待つと逆児が治る。そうならなければ、また作る。しばらくして二人の命が助かる。私は人に教えて飲ませ、次々と効果があったので、ここに加える。
婦人堕胎後、手足厥逆、鍼肩井、立愈。灸更勝鍼、可七壮。
婦人が流産したあと、手足が冷えれば、肩井へ刺鍼すると、たちまち癒える。灸は鍼より勝り、七壮すえる。
鍼灸資生経巻七30
月事
気衝治月水不利、身熱、腹痛、疝、陰腫、難乳、子上搶心,痛不得息。気衝腰痛、不得俛仰。会陰治,女子経不通。関元治,月脈断絶。足臨泣治,月事不利、季脇支満、乳難、心痛、周痺,痛無常処、逆気、喘不能行。中極治,婦人断緒、又因悪露不止、月事不調、血結成塊。天枢治月事不時、血結成塊、腸鳴、腹痛、不嗜食。水泉治月事不来、来即多心下悶痛、目不能遠視、陰挺出、小便淋瀝、腹痛。陰療不月水、驚、悲不楽如堕墜、汗出、面黒。病,飢不欲食、婦人淋瀝、陰挺出、四肢淫、心悶。明下云、療月水不調、嗜臥怠惰、善悲不楽、手足偏枯,不能行。
気衝は月経が出ない、身熱、腹痛、鼠径ヘルニア、陰部の腫れ、難産、胎児が心臓を衝いて痛みで息ができないものを治す。気衝は、腰痛で前後に曲げられないもの。会陰は女子の月経がないものを治す。関元は月経の脈が断絶したものを治す。足臨泣は、月経のないもの、胸脇支満、難産、心痛、全身が痛くて定まらない、逆気して喘ぎ、歩けないものを治す。中極は婦人の不妊、また悪露が止まらない、生理不順、下腹部に血が固まってシコリとなるものを治す。天枢は生理不順、下腹部に血が固まってシコリとなる、腸鳴、腹痛、食欲不振を治す。水泉は生理が来ず、来たら心窩部に不快な痛みが起きることが多かったり、目がぼんやりとして遠くが見えない、子宮脱、排尿の勢いがない、腹痛を治す。照海は月経がない、ヒキツケ、落ちぶれたように悲しくて楽しくない、汗が出る、顔が黒いを治療する。空腹でも食べたくない、婦人の生理がポタポタ続くもの、子宮脱、四肢が怠痛くて力が入らない、心悶の病。『明堂』は、生理不順、横になりたがって怠惰なもの、悲しんでばかりで楽しくないもの、手足の半身不随で歩けないものを治療するという。
太衝療,月水不通。陰包、交儀,療月水不調。陰主経逆、四肢淫、陰暴跳、小腹偏痛。又主女子淋、陰挺出、月水不来。行間主月事不利、見赤白,而有身反、敗陰寒。足臨泣主月水不利、見血,而有身,則敗乳腫。腰兪主月閉、溺赤、脊強互引反折、汗不出。中極主経閉不通、見無子。治女人、従小至大月、経未嘗来、服黄牡丹湯、両臍後灸、乳下一寸、黒員際、各五十壮。気穴主月水不通、奔泄、気上下引、腰脊痛。天枢主胞中痛、悪血月水,以時休止、腹脹、腸鳴、気上衝胃。
太衝は月経が通じないものを治療する。陰包と交儀は生理不順を治療する。照海は、生理が来ると口や鼻から出血するもの、四肢が怠痛くて力が入らない、急性の子宮脱、下腹部の痛みを主治する。また女子で月経が止まらないもの、子宮脱、生理が来ないものも主治する。行間は月経が来ず、血と膿が混じった帯下が出、そして身体が反り返って、陰寒に敗れたものを主治する。足臨泣は、月経が出ず、血が出、身体には乳腺炎があるものを主治する。腰兪は、無月経症で尿が赤く、背骨がこわばってそれ帰り、汗の出ないものを主治する。中極は無月経症で生理がなく、子のできないものを主治する。女を治すには、旧暦の小の月から大の月まで、月経が始まらないうちに黄牡丹湯を飲む。両臍の後ろと、乳頭の下一寸で乳暈の際に五十壮ずつすえる。気穴は月経が通じない、勢いのある下痢、気が上下で引きあって腰背通となったものを主治する。天枢は子宮痛、血の月経で時々止まる、腹脹、腸鳴、気が胃を衝き上げるものを主治する。(陰暴跳は不明だが、陰暴脱と思う。陰は陰部、暴は突然、跳は脱。)
気衝主月水不利、或暴閉塞、腹脹、満、淫 シ楽、身熱、乳難、子上搶心、若胞不出、衆気盡乱、中絞痛、不得反、息正仰臥、屈一膝伸一膝。月経不断、灸内踝下、白肉際、青脈上、随年壮。帯脈、侠谿主小腹堅痛、月水不通。水道主小腹脹満、痛引陰中、月水至,則腰背痛、胞中、子門寒、大小便不通。下膠治,女子下蒼汁不禁、中痛引小腹疼、大便不利、寒湿内傷。隠白治,月事過時不止、立愈。陰交治月事不絶。気海治月事不調、帯下、崩中、因産,悪露不止、繞臍病痛。気穴治月事不調、洩利不止、賁気上下、引腰脊痛。
気衝は月経が出ない、あるいは急に閉塞して腹脹となり、排尿できなくて腹が膨れる、怠痛くて力が入らない、身熱、難産、胎児が心臓を衝き上げる、もし胎児が出なければ、気が乱れきって、中焦が絞られるように痛んで反り返れず、仰向けになって片膝を曲げて片膝を伸ばすものを主治する。月経が止まらなければ、内踝の下で、足底の皮との境目にある静脈の上へ、歳の数だけ施灸する。帯脈と侠谿は、下腹にシコリがあって痛み、月経がないものを主治する。水道は、下腹が脹満して、それが陰部にまで及ぶ、月経が来ると腰背が痛む、子宮にシコリがある、腟が冷える、大小便が出ないものを主治する。下膠は腟からオリモノが出る、中焦の痛みが下腹まで及ぶ、大便が出ない、寒湿が体内を傷付けたものを治す。隠白は、月経が経期を過ぎても止まらないものを治す。ただちに癒える。陰交は月経が止まらないものを治す。気海は生理不順、帯下、過多月経、出産後に悪露が止まらない、臍の周りの痛みを治す。気穴は生理不順、下痢が止まらない、膈気が上下して痛みが腰背に及ぶものを治す。(「衆気盡乱、中絞痛、不得反、息正仰臥」は「衆気盡乱、中絞痛、不得反息、正仰臥」かもしれない。正直いって、ここの部分は判りませんので、どなたか教えてください。)
血海、帯脈治月水不調。陰交治月事不絶。月水不利、灸四満、並見無子。月水不調、血結成塊、鍼間使。産後月水不禁、横生、胎動、皆鍼三陰交。月水不利、賁血上下、無子、四満三十壮。
血海と帯脈は生理不順を治す。陰交は月経が止まらないものを治す。生理不順に四満へ灸、不妊症にもよし。生理不順で、血が固まって血塊となれば、間使へ刺鍼する。産後に月経が止まらなかったり、胎児の位置異常や胎動不安には、みな三陰交の鍼。生理がなかったり、血が上下から噴き出したり、不妊には四満へ三十壮。
鍼灸資生経巻七31
赤白帯
関元治帯下、聚、因産,悪露不止、月脈断絶、下経冷。気海、小腸兪治帯。中膠治帯下、月事不調。帯脈治帯下赤白。明下又云、脇下気轉、連背痛不可忍。陰交療帯下。曲骨療帯下赤白、悪合陰陽。小便閉塞不通、但是虚乏冷、皆宜灸。上主白瀝。次主赤白瀝、心積脹、腰痛。
関元は帯下、子宮筋腫、出産で悪露が止まらない、月経が途絶える、月経が冷えるものを治す。気海と小腸兪は帯下を治す。中膠は帯下、生理不順を治す。帯脈は血や膿が混じった帯下を治す。『明堂』は、脇下の気転で背中まで痛くなり、耐え難いものという。陰交は帯下を治療する。曲骨は血や膿が混じった帯下、性交を嫌うものを治療する。小便が出ないが、虚して疲れ、冷えるものには灸がよい。上膠は白帯を主治する。次膠は血や膿が混じった帯下、心窩部にシコリがあって脹るもの、腰痛を主治する。(白瀝は判らないが、テーマが帯下なので白淫のことだろう。は膠の意味)
中主赤,時白、気、月事少。腰尻交主下蒼汁不禁、赤瀝、陰癢、痛引小腹控 不可俯仰。曲骨主赤白沃、陰中乾痛、悪合陰陽、小腹堅、小便閉。大赫主赤沃。
中膠は血の混じった帯下だが、時には白帯になる。排尿痛、稀発月経を主治する。腰と尻が交わるところは、蒼汁のような帯下が流れ出るもの、赤帯、陰部が痒い、下腹の痛みが脇腹まで及んで前後に身体を曲げられないものを主治する。曲骨は血や膿のオリモノ、陰部が乾いて痛む、性交を嫌う、下腹が膨れて堅く、小便が出ないものを主治する。大赫は血の混じったオリモノを主治する。(は淫の意味なので、赤い帯下と思う。)
有来覓、赤白帯、薬者、予並以鎮霊丹与之。鎮霊丹能,活血温中、故也。以其神効、故書於此、但有孕不可服。爾若灸帯脈穴、尤奇、於此丹也。有婦人、患赤白帯。林親、得予鍼灸経、初為灸気海、穴未効。次日、為灸帯脈穴、有鬼附患身云、昨日灸亦好、止灸、我未着、今灸着我、我今去矣。可為酒食祭、我其家如其言祭之、其病如失、此実事也。予初怪其事、因思晋景公、膏肓之病、蓋有二鬼焉。以其虚労甚矣、鬼得乗虚、而居之。今此婦人之疾、亦有鬼者、豈其用心、而虚損、故有此疾。鬼亦乗虚居之。灸既着穴、其鬼不得不去。雖不祭之、可也。自此有来、覓灸者、必為之。按之穴、莫不応手、疼。予知是正穴也。令帰灸之、無有不愈。具穴在両脇、季肋下一寸八分。有此疾者、速宜灸之。婦人患之疾、而喪生者甚多。切不可勿。若更灸百会、尤佳。此疾多。因用心使、然故也。
赤白帯で薬をもとめて来た。私は鎮霊丹を与えた。鎮霊丹は、血を活発に循環させ、中焦を温めるからである。それには神効があるので、ここに記すが、妊婦は飲んではならない。もし帯脈穴に施灸すれば最も効果があり、この丹のようなものである。ある婦人が赤白帯を患っている。林親が私の鍼灸経を使い、最初は気海へ施灸したが効果なし。翌日は帯脈穴に施灸した。すると患者の身体に着いていた鬼が、昨日の灸も良かった。灸を止めたので、自分は未だに着いている。いま自分に灸されたら、ただちに去らねばならないと言った。そこで酒食祭をし、その家に、その言葉を祭るようにすると、その病はなくなったかのようだった。これは事実である。そのことを私は初めは疑ったが、晋景公が膏肓の病になったとき、やはり二つの鬼がいた。虚労がひどいとき、鬼は虚に乗じて居つく。この婦人の疾患も、やはり心を使って虚損したため、この病気になった。鬼も虚に乗じて居すわった。穴に施灸したので、鬼も出て行かざるをえない。祭りをしなくとも同じである。それ以来、灸するものは、必ずそれをおこなうようになった。その穴を按じて、手に応えて怠痛い。それで正しい穴と判る。帰って灸をさせると、治らぬものはない。その穴は両脇で、季脇の下一寸八分にある。この疾患があれば、すぐに灸をする。婦人がこの病気になり、死んでしまうものが非常に多い。絶対に軽視してはならない。さらに百会にも施灸すれば、もっともよい。この疾患は多い。それは心を使うから起きたものである。
帯下、灸間使三十壮。絶嗣不生、漏下赤白、泉門十壮。下血、洩痢赤白、漏血、足太陰五十壮、在内踝上三寸。腹中五寒、百壮。漏下赤白、月水不利、灸交儀。下血、漏赤白、営池四穴二十壮、在内踝前後両辺、池上脈、一名陰陽。漏下赤白、四支削、漏陰三十壮、在内踝下五分、微動脈上。赤白漏、洩注、灸陰陽穴、随年壮、三報。之在足拇指、下屈裏、表頭白肉際、崩中、帯下、因産悪露不止、婦人断緒、最要穴、鍼中極四度、即有功。若未有、更鍼入八分、留十呼、得気、即瀉。灸亦佳、不及鍼。日灸三十至三百止。帯下小腸兪五十。
帯下には間使へ灸三十壮。不妊、血や膿の混じった帯下には泉門へ十壮。下血、血や膿の混じった帯下、血が漏れるものには、足太陰に五十壮。内踝の上三寸にある。腹中に五寒があれば、百壮すえる。血や膿の混じった帯下、月経が来ないものには交儀へ灸する。下血、血や膿の混じった帯下には、営池四穴に二十壮すえる。それは内踝の前後両辺にあって池上脈といい、一名を陰陽とも呼ぶ。血や膿の混じった帯下があり、四肢が怠くて細ければ、漏陰に三十壮すえる。それは内踝の下五分、小さな動脈の上にある。血や膿の混じった帯下、下痢には陰陽穴へ歳の数だけすえる。3回すえれば報われる。これは足の第1趾を下に屈し、表の指先で足底の皮との境目にある。過多月経、帯下、出産後の悪露が止まらない、婦人の不妊症には最も重要な穴である中極に、鍼を四回すれば効果がある。もし効果がなければ、さらに鍼を八分入れ、十呼吸留めて、気が得られたら瀉す。灸もよいが鍼には及ばない。一日に灸を三十壮から三百壮すえる。帯下には小腸兪に五十壮。( いままでの使用辞書は、大修舘書店の中日大辞典。人民衛生出版社の漢日医学大詞典。人民衛生出版社の簡明中医病名辞典でした)