鍼灸資生経巻三 2 2001年7月9日更新
鍼灸資生経巻三5
消渇(消腎、消中)
商丘,主煩、主渇(千)。意舎,主消渇、身熱、面目黄(明同)。承漿(明下云、飲水不休)、意舎、関衝、然谷,主消渇、嗜飲。隠白,主飲渇。労宮,主、苦渇、食不下。曲池,主寒熱渇。行間、太衝,主乾、善渇(並千)。意舎(見腹脹)、中膂兪,治、腎虚消渇、汗不出(明作,汗出)。腰脊、不得俛仰、腹脹脇痛(銅)。兌端,治小便黄、舌乾、消渇。然谷,治舌縦、煩満、消渇。水溝,治消渇、飲水無度(明同)。陽綱,療消渇(明下見,腸鳴)。
商丘は、落ち着かず、喉の渇くものを主治する(千金)。意舎は、消渇で身体が熱く、顔や目が黄色なものを主治する(『明堂』も同じ)。承漿(『明堂下巻』は、絶えず水を飲むという)、意舎、関衝、然谷は、消渇で、よく水を飲むものを主治する。隠白は、渇いて飲むものを主治する。労宮は、喉が渇いてどうしようもなく、食が降りないものを主治する。曲池は、寒熱により渇くものを主治する。行間、太衝は、喉がイガイガし、よく渇くものを主治する(『千金』と一緒)。意舎(腹脹を参照)、中膂内兪は、腎虚による消渇、汗が出ない(明堂では「汗出」としている)、腰背が前後に曲げられない、腹の膨満感があって脇が痛いものを治す(銅人)。兌端は小便が黄色、舌が乾く、消渇を治す。然谷は、舌が緩む、煩満、消渇を治す。水溝は、消渇で際限なく水を飲むものを治す(『明堂』も同じ)。陽綱は消渇を治療する(『明堂下巻』の腸鳴を参照)。
古方,載渇病、有三。曰消渇、曰消中、曰消腎。消腎、最忌,房事。李祠部,必云、腎虚、則消渇。消中、亦当忌也。張仲景云、宜服八味丸。或服之、不効者、不去附子也。有同舎、患此。人教、服去附子,加五味子,八味丸、即効。有同官、患此。予教、服千金枸杞湯、効。坡文載、眉山張、医治,楊穎臣、渇病(見坡)。麝香、当門子、酒漬、作十丸。取枳枸(俗謂距子、亦曰癩漢指頭)、作湯飲之、愈。張云、消渇、消中、皆脾衰、而腎敗。土,不能勝水、腎液,不上泝、乃成此疾。今診楊、脾極巨、脈熱,而腎衰。当由果実過度、虚熱在脾、故飲食,兼人而多飲水、水多,故溺多、非消渇也。麝香,能敗酒、瓜果,近輒不植、屋外,有枳枸木、屋中,醸酒不熟。故以二物、去酒果毒。其論渇,有理、故載于此。
古方には、渇きの病は3つあると記載されている。それが消渇、消中、消腎である。消腎にはセックスがもっともタブー。李祠部は、腎虚の消渇では言うまでもないが、消中にもタブーという。張仲景は八味地黄丸がよいと言う。飲んでも効果がなければ、附子を取り去る。家族が、この病気となった。人が、附子を取り去って五味子を加えた八味地黄丸を飲めと教え、すぐに効いた。同僚が、この病気になった。私が『千金』の枸杞湯を教えて飲ませると効いた。『坡文』に、眉山の張が、楊穎臣の「渇きの病」を治療した話が載っている(坡を参照)。麝香と当門子を酒に漬け、十丸を作った。そして枳枸(俗に鶏距子とか癩漢指頭と呼ばれる)で湯を作って飲ませると治った。張は、消渇にせよ、消中にせよ、いずれも脾が衰えて腎が敗れたものである。土が水に勝てないため、腎の液が上がらず、この病気になる。いま楊を診断すると、脾が極めて困で、脈は熱、腎が衰えている。果実を食べ過ぎたことで、脾に虚熱が溜り、飲食すると沢山の水を飲み、水が多く入るから、オシッコも多くなる。これは消渇ではない。麝香は酒を無害にする。瓜や果物は、近くに植えず、屋外には枳枸の木を植え、屋内では醸造酒を遠ざける。この二物で酒と果実の毒を除くという。その渇きの論は、道理が通っているので、ここに載せた。
凡消渇、経百日以上、不得灸刺。灸刺,則於瘡上、漏膿水,不歇、遂致,癰疽羸痩、而死。亦忌有所誤傷。初得患者、可如方刺灸。若灸諸陰,而不愈、宜灸諸陽(詳見、千金有,数十穴)。
消渇で、百日以上たったものは、灸や刺鍼ができない。灸や刺鍼すれば、その痕から膿水が漏れ続け、ついにはデキモノとなって痩せて死ぬ。これも誤って傷付けることである。初期の患者にだけ鍼灸ができる。もし陰経に施灸して治らねば、陽経に施灸するとよい(詳しくは『千金方』を参照する。治療穴が数十穴の記載がある)。
鍼灸資生経巻三6
陰痿縮 両丸騫
陰谷,主、陰痿、小腹急,引陰内廉痛(千)。大赫、然谷,主、精溢上縮。太衝,主、両丸騫縮、腹堅、不得臥(甲云、臍環痛、陰騫両丸縮)。石門,主、小腹堅痛、下引陰中、不得小便、両丸騫。陰交、主、腹堅痛、引陰中、不得小便、両丸騫。陰縮、灸中封。大赫(見失精)、中封,主、痿厥(見疝)。曲泉,主、不尿、陰痿。気衝,治、陰痿茎痛(千同)。両丸騫、痛不可忍(銅)。五枢(見疝)、帰来,治、卵縮(見陰痛)。
陰谷は、インポテンス、下腹部のヒキツリが大腿内側に及んで痛むものを主治する(千金)。大赫、然谷は、精液が漏れて陰茎が縮むものを主治する。太衝は、睾丸が縮み上がり、腹が堅くて横になれないものを主治する(『甲乙経』は、臍周囲が痛み、陰茎が上がり睾丸が縮むと言う)。石門は、下腹部が、堅くなって痛み、それが陰部に及んで小便が出ず、睾丸が縮むものを主治する。陰交は、腹が突っ張り、堅くなって痛み、それが陰部に及んで小便が出ず、睾丸が縮むものを主治する。陰茎が縮むものには中封の灸。大赫(失精を参照)、中封は痿厥を主治する(疝を参照)。曲泉は、尿が出ず、インポテンスとなるものを主治する。気衝は、インポテンスで陰茎が痛むものを治す(『千金』も同じ)。睾丸が縮んで、痛くて耐えられない(銅人)。五枢、帰来は、睾丸が縮むものを治す(陰痛を参照)。
筋攣、陰縮入腹、相引痛。灸中封,五十壮、或不満五十壮、老少加減。又云、此二穴、喉腫、厥逆、五蔵所苦、鼓脹、並主之。
筋が痙攣し、陰茎や陰嚢が縮んで腹に入り、引きつって痛む。それには中封へ灸を五十壮、あるいは不満へ五十壮すえる。老人や年少者には加減する。またこの二穴は、喉の腫れ、厥逆、五臓による苦痛、腹部の腫れも主治する。
鍼灸資生経巻三7
陰挺出
大敦,主、陰挺出。少府,主、陰挺長(千並見疝)。上(千見絶子),治、婦人,陰挺出,不禁(銅)。陰、照海(見淋)、水泉(見月事)、曲泉(見癖、千同)、治婦人,陰挺出。陰(見淋瀝),療、陰挺出(明)。
大敦は、子宮脱を主治する。少府は、子宮が長く脱出するものを主治する(『千金』の疝を参照)。上(『千金』の絶子を参照)は、婦人の子宮が脱出してしまうものを治す(銅人)。陰脈の照海(淋を参照)、水泉(月事を参照)、曲泉(癖を参照。『千金』も同じ)は、婦人の子宮脱を治す。照海(淋瀝を参照)は子宮脱を治療する(明堂)。
鍼灸資生経巻三8
転胞
涌泉,主、胞転(千見淋)。関元,主、婦人,胞転,不得尿(見無子、又主胞閉塞。銅人云、治胞転,不得尿)。腰痛、小便不利、苦胞転、灸中極七壮(小児同)。又灸十五椎、或臍下一寸、或四寸、随年。凡飽食訖,忍小便、或走馬、或忍小便入房、或大走、皆致胞転、臍下急満不通(方見千金)。凡尿不在胞嚢中、為胞屈僻、津液不通、葱葉除尖頭、内陰茎,孔中深三寸、微用口吹、胞脹,津通,愈。
涌泉は、妊娠のため排尿困難となったものを主治する(淋を参照)。関元は、婦人が妊娠して排尿困難となったものを主治する(無子を参照。また子宮閉塞も主治する。『銅人』は、妊娠して排尿困難となったものを治すという)。腰痛、小便が出にくい、妊娠による排尿困難の苦痛には、中極へ灸七壮(小児も同じ)。また十五椎へ灸、あるいは臍下一寸、または臍下四寸へ年齢の数だけすえる。食べ終わると排尿を我慢する、あるいはすぐにトイレへ行く、排尿を我慢してセックスする、駆け足でトイレへ行くなどは、すべて妊娠による排尿困難で、臍下が脹っても出ないからである(処方は『千金』を参照)。これは尿が膀胱にあるのではなく、膀胱が折れ曲がって津液が通じないのである。ネギの葉の根元を取り去り、その葉を陰部の尿道孔へ三寸ほど差し込み、葉の端から空気を吹き込むと、膀胱が膨らんでオシッコが流れて通じて治る。
鍼灸資生経巻三9
陰茎痛
曲泉(見疝)、行間,主、閉、茎中痛(千)。気衝,主、陰痿、茎痛。列缺(見失精)、陰陵泉、少府,主、陰痛。帰来,主、賁豚、卵上入、引茎痛。帰来,治、小腹賁豚、卵縮、茎痛(銅)。横骨,治、陰器,縦伸痛(見淋)。水道,治、小腹満,引陰痛(見小腹満)。気衝,治、茎痛(見陰痿)。会陰,治、陰中諸病、前後相引痛、不得大小便、陰端寒、衝心。大敦,治、陰頭痛(見疝)。腎兪(見労)、志室(見陰腫)、陰谷(見溺難)、太衝(見小便不利),治、陰痛。
曲泉(疝を参照)、行間は、排尿困難で陰茎が痛むものを主治する(千金)。気衝は、インポテンスで陰茎の痛むものを主治する。列缺(失精を参照)、陰陵泉、少府は、陰部の痛みを主治する。帰来は、賁豚気で、睾丸が腹部へ入り、陰茎まで痛むものを主治する。帰来は、下腹の賁豚気で、睾丸が縮み、陰茎の痛むものを治す(銅人)。横骨は、陰器が弛緩して痛むものを治す(淋を参照)。水道は、下腹が脹り,陰部まで痛むものを治す(小腹満を参照)。気衝は、陰茎痛(陰痿を参照)を治す。会陰は、陰部の諸病、前陰部と肛門が引きつけあって痛み、大小便が出ず、亀頭が冷えて心を衝くものを治す。大敦は、亀頭の痛みを治す(疝を参照)。腎兪(労を参照)、志室(陰腫を参照)、陰谷(溺難を参照)、太衝(見小便不利を参照)は、陰部の痛みを治す。(陰端は不明だったが、頭と端は同意義なので、亀頭とした)
千金翼云、七傷為病、小便赤熱、乍数,時難、或時傷多、或如鍼刺、陰下常湿、陰痿消小、精清而少、連連独洩、陰端寒冷、茎中疼痛云云(当早服薬、著艾)、茎中痛、灸行間三十壮。
『千金翼』は「七傷の病は、小便が赤く熱く、急に回数が増え、時には出にくく、時には傷付くことが多く、針で刺すような痛みがあり、陰嚢の裏が常に湿り、陰茎は萎えて小さく、精液がうすくて少なく、絶えず漏れており、亀頭が冷めたく、陰茎中が痛む云々(すぐに薬を飲み、施灸しなければならない)」という。陰茎中の痛みには、行間へ灸を三十壮すえる。
鍼灸資生経巻三10
膀胱気
章門,療、膀胱気、癖疝気。膀胱気痛,状如雷声、積聚気(明)。岐伯、灸,膀胱気,攻衝両脇時、臍下鳴、陰卵入腹、灸臍下六寸、両旁各寸六分、三七壮。五枢,療、膀胱気,攻両脇(下)。膀胱冷、灸之,如腎虚法(千)。膀胱、三焦、津液少、大小腸寒熱(見腰痛)、或三焦寒熱、灸小腸兪,五十壮。三焦、膀胱、腎中,熱気、灸水道、随年壮。水道,治、小腹満,引陰中痛、腰背急、膀胱有寒、三焦結熱、小便不利。
章門は、膀胱気でシコリができて腹が痛む、下腹部のシコリを治療する。膀胱気の痛みは雷鳴のようで、気の積聚である(明堂)。膀胱気が両脇へ上がって攻め、臍下が鳴り、睾丸が腹に入るとき、岐伯は、臍の下六寸で、その両側一寸六分へ三×七壮施灸する。五枢は、膀胱気が両脇を攻めるものを治療する(明堂下巻)。膀胱が冷えれば、腎虚法に習って施灸する(千金)。膀胱、三焦、津液が少ない、大小腸の寒熱(腰痛を参照)、あるいは三焦の寒熱には、小腸兪へ灸を五十壮。三焦、膀胱、腎中に熱気があれば水道へ歳の数だけ施灸する。水道は、下腹が膨れ、それが陰茎まで及んで痛み、腰背が引きつって膀胱が冷え、三焦に熱がかたまって小便が出にくいものを治す。
千金云、気衝,主、。明堂云、気衝,療、疝、是疝、即疝也。必用云,治、水偏大,上下不定,疼不可忍、俗呼為膀胱気、是膀胱気、即疝也。然太倉公,診命婦云、疝気,客于膀胱、難于前後溲、而溺赤、又不可,便認,膀胱気、為疝気云。
『千金』は、気衝が鼠径ヘルニアを主治するという。『明堂』は、気衝が小腸ヘルニアを治療するという。小腸ヘルニアとは、鼠径ヘルニアのことである。『必用』は、陰嚢が非常に大きくなり、上下に移動し、痛くて我慢できないもの。を俗に膀胱気と呼ぶという。つまり膀胱気とは、鼠径ヘルニアである。だが太倉公は命婦を診察し、疝気は膀胱に宿り、大小便がし辛く、尿が赤くなる。だから膀胱気を疝気とは呼べないと言っている。
鍼灸資生経巻三11
陰汗(湿癢)
会陽,治、陽気虚乏、陰汗湿(銅)。魚際(見寒熱),療、陰汗(明)。千云,主、陰湿、腹中餘疾。中極、陰、腰尻交、陰交、曲泉,主、陰癢(千)。会陰,主、陰頭寒。少府,主、陰癢(見疝)。
会陽は、陽気の虚乏により、陰部が汗で湿るものを治す(銅人)。魚際(寒熱を参照)は陰部の汗を治療する(明堂)。『千金』は、陰部が湿り、腹中に産後の余疾があるものを主治するという。中極、照海、腰尻交、陰交、曲泉は、陰部の痒みを主治する(千金)。会陰は、亀頭の冷えを主治する。少府は陰部の痒みを主治する(疝を参照)。
仲景,論七傷曰、一陰汗、二精寒、三精清、四精少、五嚢下湿癢、六小便数、七夜夢陰人。然,則陰汗、陰湿癢者、葢七傷之数也。可不,早治之乎(有人,作文字、則気湿、亦心気使然、心腎相為表裏故也)。
張仲景は、七傷について、一が陰汗、二が精寒、三が精清、四が精少、五が嚢下湿癢、六が小便数、七が夜夢陰人と述べている。ならば陰部の汗や陰部が湿って痒いなどは、七傷の類である。当然にして早く治療すべきだ(ある人は陰湿を気湿と書いた。これもまた心気によるものだが、心腎は互いに表裏であるから、そう書いている)。
千金翼叙,虚損云、疾之所起、生自五労、即生六極(詳見寒熱)、復生七傷。一陰寒、二陰痿、三裏急、四精連連不絶、五精少嚢湿、六精清、七小便数(其病、小便赤熱、或如鍼刺、陰痿、小陰下常湿、精清而少云云。論与,仲景少異、故載之於此)。
『千金翼』の叙に「虚損という病気は、五労から生まれ、それが六極となり(詳しくは寒熱を参照)、さらに七傷となる。一に陰部の冷え、二にインポテンス、三に裏急、四に精液が流れっぱなし、五に精液が少なくて陰嚢が湿る、六に精液がうすい、七に頻尿(その病気は、小便が赤くて熱かったり、鍼を刺すような痛みがあり、陰茎は縮み、いつも陰嚢の裏がジクジクし、精液がうすくて少ない」などとある。その解説は、張仲景と少し異なるので、ここに転載した)。
鍼灸資生経巻三12
陰腫(陰瘡)
曲泉(見無子)、陰(見漏下)、大敦、気衝(見疝)、主陰腫(千)。志室、胞肓、療、陰痛下腫(明)。崑崙、在外踝後、跟骨上、治、陰腫(銅)。明下云、内崑崙、在内踝後五分、筋骨間、療、小児陰腫、灸三壮。曲泉、治、陰腫、痛(見風労)。気衝、治、婦人陰腫(見月事)。又、療、陰腫(明下見疝)。膀胱兪、治、陰生瘡(見便赤)。
曲泉(無子を参照)、陰(漏下を参照)、大敦、気衝(疝を参照)は、外陰部の腫れを主治する(千金方)。志室、胞肓は、陰部が痛くて、その下が腫れるものを治療する(明堂)。崑崙は、外踝の後ろで踵骨の上にあり、外陰部の腫れを治す(銅人)。『明堂下巻』に「内崑崙は、内踝の後ろ五分で筋骨の間にあり、小児の外陰部が腫れるものを治療する。灸三壮」とある。曲泉は、外陰部の腫れ、脛の痛みを治す(風労を参照)。気衝は、婦人の外陰部の腫れを治す(月事を参照)。また外陰部の腫れも治療する(『明堂下巻』の疝を参照)。膀胱兪は、外陰部のデキモノを治す(便赤を参照)。
有人、陰腫。医以赤土、塗之。令服、八味丸、而愈。一小児、陰腫。医亦、以赤土、塗之愈(今人、用冩字、油柱木用)。若久病、而陰腫、病已不可救、宜速灸、水分穴。葢水分、能分水穀。水穀不分、故陰腫。不特,陰腫、他処亦腫也。尤宜、急服,禹余糧丸云(見既効方)。
ある人の外陰部が腫れた。医者が赤土を塗り、八味地黄丸を飲ませると治った。ある子供の性器が腫れた。これも医者が赤土を塗ると治った(現代の人は、字を書くときに使う油柱木を用いる)。もし慢性病で外陰部が腫れていれば、すでに助からない。すぐに水分穴へ施灸するとよい。水分は水と穀を分ける。水穀が分かれないので外陰部が腫れる。外陰部に限らず、ほかの部分も腫れる。それには、すぐに禹余糧丸を飲むのが最善という(『既効方』を参照)。
鍼灸資生経巻三13
小腹痛
陰、療、小腹偏痛、嘔逆、嗜臥(明)。中極、療、小腹痛、積聚,堅如石、小便不利、失精、絶子、面(下)。腎兪、復溜、中封、承筋、陰包、承山、大敦、主、小腹痛(千)。石門、商丘、主、小腹堅痛、下引陰中。石門、水分、主、小腹拘急痛。涌泉、主、風入腹中、小腹痛。臍中等、主、小腹疝気痛(見疝)。太谿、主、小腹熱、而偏痛。
陰は、下腹部片側の痛み、嘔吐、傾眠を治療する(明堂)。中極は、下腹部痛、石のように堅い腹部のシコリ、排尿し辛い、遺精、不妊症、顔が黒いものを治療する(明堂下巻)。腎兪、復溜、中封、承筋、陰包、承山、大敦は、下腹部痛を主治する(千金)。石門、商丘は、下腹部が堅くなって痛く、それが下の陰部まで及ぶものを主治する。石門、水分は下腹部が引きつって痛むものを主治する。涌泉は、風邪が腹中に入って下腹が痛むものを主治する。神闕などは、下腹部の激痛を主治する(疝を参照)。太谿は、下腹部が熱く、片側だけが痛むものを主治する。
(◇は黒干)
肝兪(是逆)、小腸兪(見便赤)、蠡溝、照海(見疝)、下廉(見洩)、丘墟(見腋腫)、中都(見腸鳴)、治、小腹痛(銅)。太衝、治、腰引,小腹痛。帯脈、治、婦人小腹堅痛、月脈不調、帯赤白、裏急、。五枢、主、小腹痛(見疝)。曲泉、主、女子,小腹腫(無子)、婦人,陰痛、引心下(小腹痛、灸膝外辺、上去一寸、宛宛中。千翼)。
肝兪(逆を参照)、小腸兪(便赤を参照)、蠡溝、照海(疝を参照)、下廉(洩を参照)、丘墟(腋腫を参照)、中都(腸鳴を参照)は下腹部痛を治す(銅人)。太衝は、腰の痛みが下腹部へ及んで痛むものを治す。帯脈は、婦人の下腹部が堅くなって痛み、生理不順で、血や粘液の混じった帯下があり、便意が切迫して下腹部が引きつるものを治す。五枢は、下腹部の痛みを主治する(疝を参照)。曲泉は、女性の下腹部の腫れ(妊娠ではない)、女性性器の痛みが心窩部に及ぶものを主治する(下腹部の仙痛には、膝外側で上一寸にある凹みへ施灸する。『千金翼方』)。
鍼灸資生経巻三14
小腹脹満
大巨、治、小腹脹満、煩渇、疝、偏枯、四支不挙(銅)。曲骨、治、小腹脹満、小便淋渋,不通、疝、小腹痛。然谷、治、小腹脹(見疝)。幽門、治、小腹脹満、嘔沫、吐涎、善唾。京門(見腸鳴)、蠡溝(見疝)、中封、治、小腹腫(見瘧)。胞肓、治、小腹堅急(見腹痛)。水道、治、小腹満,引陰中痛、腰背強急、膀胱有寒、三焦結熱、小便不利。
大巨は、下腹部の膨満、喉が渇く、脱腸、半身不随、四肢が挙がらないものを治す(銅人)。曲骨は、下腹部の膨満、小便が出にくかったり出ない、脱腸、下腹部痛を治す。然谷は下腹部の膨満を治す(疝を参照)。幽門は、下腹部の膨満、沫を吐く、涎が垂れる、よく唾が出るものを治す。京門(腸鳴を参照)、蠡溝(疝を参照)、中封は、下腹の腫れを治す(瘧を参照)。胞肓は、下腹が堅くなって引きつるものを治す(腹痛を参照)。水道は、下腹が膨満し、それが陰部まで及んで痛む、腰背がこわばる、膀胱が冷える、三焦結熱、小便が出にくいものを治す。
大敦、治、小腹痛、中熱、喜寐、小便不利。小腹脹満、虚乏、灸小腸兪、随年(千)。五蔵虚労、小腹弦急、脹熱、灸腎兪、五十壮、老小損之。若虚冷、可百壮。委中、主、小腹堅腫。銅人云、小腸兪、治、小便赤渋、淋瀝、小腹痛。千金亦云、治、小腹脹満。此、治小腹脹痛、要穴也。若灸、不効、方灸,其他穴云。
大敦は、下腹部の痛み、日射病、傾眠、排尿しにくいもの治す。下腹部が膨満し、虚乏ならば、小腸兪へ灸を歳の数だけ施灸する(千金)。五臓の虚労で、下腹が弦のように引きつり脹って熱ければ、腎兪へ灸を五十壮すえる。老人や年少者には少める。虚冷があれば百壮すえてもいい。委中は、下腹が堅く腫れるものを主治する。『銅人』に、小腸兪は、小便が赤くなってポタポタと渋り、下腹が痛むものを治すとある。さらに『千金』は、下腹部の脹満も治す。これは下腹部の脹痛を治す要穴である。もし施灸しても効果がなければ、そこで初めて他の穴位に施灸せよという。
鍼灸資生経巻三15
疝(諸疝気、胎疝、寒疝、卒疝)[一般に疝と言えば、鼠径ヘルニアですが、下腹部の仙痛を意味する場合もあります]
必用方云、治,水偏大,上下不定、疼不可忍、俗呼為,膀胱気。用過牡礪二両、炮乾姜一両、為末、塗病処、即愈。則是水、即膀胱気也。千金云、気衝、主,。明堂下経云、治、疝。則是、即疝也。恐人惑其名、而誤治之、故為之辯。
『必用方』には、鼠径ヘルニアで、上下に移動し、痛くてたまらないものを俗に膀胱気と呼ぶとある。焼いた牡蛎二両、火で乾かしたショウガ一両を粉にし、病巣に塗ると、すぐに治る。鼠径ヘルニアが、つまり膀胱気である。千金方に、気衝は鼠径ヘルニアを主治するとある。『明堂下巻』は、脱腸を治すという。鼠径ヘルニアとは脱腸のことである。名前に惑わされて誤治する恐れがあるので論じておく。
曲泉、主、疝、陰跳痛、引臍中(千)。中都、合陽、中、関元、大巨、交信、中封、太衝、地機,主、疝。中封、主、疝、、暴痛、痿厥。少府、主、陰痛。実時,挺長、寒熱、陰暴痛、遺尿。偏虚,則、暴癢、気逆、卒疝、小便不利。衝門、主、婦人陰疝。商丘、主、陰股内痛、気癰、狐疝,走上下,引小腹痛,不可俛仰。巨闕、主、狐疝。太衝、主、狐疝、欧厥。
曲泉は、鼠径ヘルニア、陰部のズキズキする痛みが臍まで及ぶものを主治する(千金方)。中都、合陽、委中。関元、大巨、交信、中封、太衝、地機は、鼠径ヘルニアを主治する。中封は、鼠径ヘルニア、排尿困難、急な痛みや四肢の軟弱無力を主治する。少府は陰部の痛みを主治する。実では陰茎が勃起したままになる、寒熱、陰部が激しく痛む、遺尿。虚に片寄れば激しい痒み、気逆、急に疝気となる、小便が出にくい。衝門は、婦人の下腹部と陰部が痛むものを主治する。商丘は、大腿内側の痛み、喉が赤く腫れる、陰嚢の脱腸が上下に出入りし、それが下腹部まで及んで身体を前後に曲げられないものを主治する。巨闕は、狐疝[陰嚢へ小腸が出入するもの]を主治する。太衝は、狐疝、嘔吐を主治する。
肩井旁、肩解与臂、相接処、主,偏。気衝、主,陰腫痛。中管、主,衝疝、冒死,不知人。交信、主,気、疝、陰急、股枢,膊,内廉痛。臍中、石門、天枢、気海、主,小腹,疝気遊行、五蔵疝,繞臍、衝胸,不得息(並千)。臍疝、繞臍痛、衝胸,不得息、灸臍中。臍疝、繞臍痛、石門主之。臍疝、繞臍痛、時止、天枢主之、又主気疝、煩嘔(千金、主、気疝、嘔)、面腫、賁豚(並甲)。
肩井の傍らで、肩と腕が繋がる処は、片側の鼠径ヘルニアを主治する。気衝は、鼠径ヘルニアで陰部が腫れて痛むものを主治する。中は、下腹部から上腹部が痛みだし、失神して意識不明になるものを主治する。交信は、前立腺炎、脱腸で陰部が引きつり、大腿内側の痛むものを主治する。神闕、石門、天枢、気海は、下腹部で痛みが動き回るもの、五臓疝で、痛みが臍の周りを動き回り、痛みが胸に衝き上げて呼吸もできないものを主治する(『千金』と同じ)。小腸が臍に出て、臍周囲が痛み、痛みが胸を衝いて呼吸ができなければ、神闕へ施灸する。小腸が臍に入って、臍の周囲が痛ければ、石門が主治する。小腸が臍に入って、臍の周囲が痛み、時々は痛みが止まれば、天枢が主治する。また鼠径ヘルニアで、吐き気がする(『千金』は鼠径ヘルニアで、吐くものを主治する)、顔面の腫れ、賁豚気も主治する(『甲乙経』と同じ)。(五臓疝は、調べてもよく判らなかったが、恐らく『難経十六難』の「五臓による臍周囲の位置」で痛むものと思われる)
気衝、主,(明下作、疝)、陰腫痛、陰痿、茎中痛、両丸騫痛,不可仰臥。五枢、主、陰疝、両丸上,入小腹痛。明下云、主、陰疝、小腹痛。陰交、石門、太衝、主、両丸騫(見陰縮)。交信(見淋)、中都(見腸鳴)、大巨、曲骨(見小腹)、治、疝(銅)。曲泉、治、丈夫疝、陰股痛、小便難、腹脇支満、閉、少気、洩利、四支不挙。実即,身熱、目眩痛、汗不出、目、膝痛、筋攣,不可屈伸。
気衝は、鼠径ヘルニア(『明堂下巻』は、鼠径部の脱腸と書いている)、陰部の腫痛、インポテンス、陰茎の痛み、睾丸が腹腔へ入り、痛くて仰向けに寝れないものを主治する。五枢は、陰嚢ヘルニア、両睾丸が上がって下腹へ入って痛むを主治する。『明堂下巻』は、陰嚢ヘルニアと下腹部痛という。陰交、石門、太衝は、両睾丸が下腹へ入るものを主治する(陰縮を参照)。交信(淋を参照)、中都(腸鳴を参照)、大巨、曲骨(小腹を参照)は、鼠径ヘルニアを治す(銅人)。曲泉は、男性の鼠径ヘルニア、大腿内側の痛み、排尿困難、腹脇のつかえ、排尿障害、微弱呼吸、下痢、四肢が挙がらないものを治す。実では、身体が熱い、目がくらんで痛い、汗が出ない、視力がぼやける、膝が痛み、筋が痙攣して屈伸できない。
千金曰、有四種。腸、卵脹、難灸。気、水、鍼灸易治、卵偏大、上入腹、灸三陰交、随年。卵偏大、病、灸関元百壮、或大敦随年壮、或横骨辺、二七壮、夾茎是(詳見千金)。築賓、治、小児胎疝(明下同)、痛不得乳。小児胎疝、卵偏重、灸嚢後、縫十字文、当上三壮、春較夏灸、秋較冬灸。太衝、主、女子疝、及小腹腫、溏泄、、遺尿、陰痛、面黒、目眥痛、漏血(千)。
『千金方』は、鼠径ヘルニアには四種類あるという。腸は、陰嚢が腫れるもので、灸治は難しい。気と水は、鍼灸で治り易い。片側の睾丸が大きくなり、腹へ入ったものは、三陰交へ歳の数だけ施灸する。睾丸が大きくなる病は、関元へ灸を百壮、または大敦へ歳の数だけ施灸、あるいは横骨あたりに二×七壮、陰茎を挟んだところが、その穴である(詳しくは千金方を参照)。築賓は、新生児の睾丸腫大(『明堂下巻』と同じ)で、痛くて乳が飲めないものを治す。新生児の睾丸腫大で、睾丸が重ければ、陰嚢後ろで、十文字の縫目の紋へ三壮ほど施灸する。春より夏に灸、秋より冬に灸をする。太衝は、子宮脱で下腹が腫れ、下痢、排尿障害、遺尿、陰部の痛み、顔が黒い、目尻の痛み、不正出血を主治する(千金方)。
蠡溝、主、女子疝、赤白淫下、時多時少、暴腹痛。陰交、石門、主、疝(見無子)。小児気、灸足厥陰,大敦、左灸右、右灸左、各一壮。太倉公、診司空、命婦曰、疝気、客于膀胱、難于前後、溲而溺赤、灸其足蹶陰脈、左右各一所、即不遺溺、而溲清(更為、火斉湯、飲之、而疝気散)。
蠡溝は、子宮脱で、血や膿が混じった帯下があり、多かったり少なかったりし、激しい腹痛があるものを主治する。陰交、石門は、鼠径ヘルニア(無子を参照)。小児の睾丸が腫れれば、足厥陰の大敦に、左睾丸なら右、右睾丸なら左へ一壮ずつ施灸する。太倉公は、司空である命の婦人を診て「疝気が膀胱に宿っているため、大小便が出なくて尿が赤い。足厥陰脈の左右一ケ所へ施灸すれば、尿が残ることなく、きれいになる」と言った(さらに火斉湯を飲めば疝気が散る)。
陰市、肝兪、療、寒疝、下至腰脚、如冷水。水傷諸疝、按之、在膝上伏兎、下寒痛、腹脹満、厥、少気。明下云、卒疝、小腹痛、力痿、気少、伏兎中寒、腰如冷水。銅云、寒疝、小腹脹、腰以下、伏兎上寒,如冷水。合陽、治、寒疝、陰偏痛(銅)。然谷、治、寒疝、小腹脹、上搶胸脇。
陰市、肝兪は、腹内の寒邪で、足腰が冷水のようなものを治療する。水邪が傷つけたことによる各種疝気は、触ると膝上の伏兎の下が冷えて痛く、腹が脹満で冷たく、気虚である。『明堂下巻』は、急に疝気となって下腹部が痛み、力が脱けて呼吸が弱くなり、伏兎が冷たく、腰が冷水のようになるという。『銅人』は、寒疝は、下腹が脹れ、腰から下で、伏兎の上が冷水のように冷たいという。合陽は、寒疝で、陰部が痛むものを治す(銅人)。然谷は、寒疝で下腹が脹り、胸脇にまで上がるものを治す。
次、治、疝気下墜、腰脊痛,不得転揺、急引陰器痛,不可忍、腰下至、足不仁、背寒、小便赤淋、心下堅脹。太谿、行間(見白濁)、肓兪(見腹脹)、肝兪、治、寒疝(見、 明同)。陰交、治、寒疝,引小腹痛、腰膝拘攣。五枢、治、男子寒疝,卵上,入小腹痛。中封、治、寒疝,引腰中痛、或身微熱。大敦、主、寒疝、陰挺出(見下)。
次は、疝気で腹が渋り、腰背が痛くて動かせず、生殖器が引きつって激しく痛み、腰から足まで痺れ、背中の皮膚が冷え、尿が赤っぽくなって出にくく、心窩部が堅くなって脹れるものを治す。太谿、行間(白濁を参照)、肓兪(腹脹を参照)、肝兪は、腹部の寒邪で痛むものを治す(を参照。『明堂』も同じ)。陰交は、腹部の寒邪で下腹部まで痛み、腰や膝が痙攣するものを治す。五枢は、男性の陰嚢が硬くなり、睾丸が上がって下腹へ入って痛むものを治す。中封は、腹部の寒邪で、腰の中まで痛んだり、微熱があるものを治す。大敦は、腹部の寒邪で、子宮が脱出したものを主治する(下を参照)。
舎弟、少戯,挙重、得偏墜之疾。有客人、為当,関元,両旁,相去各三寸、青脈上、灸七壮、即愈。王彦賓、患小腸気、亦如此灸、之愈(余見膀胱)。金門(見尸厥)、丘墟(見腋腫)、治、暴疝痛。大敦、治、卒疝、小便数、遺溺、陰頭中痛、心痛、汗出、陰上入腹、陰偏大、腹臍中痛、悒悒不楽、病左取右、病右取左。
私の弟は、小さい頃に戯れで重い物を持ち上げ、鼠径ヘルニアになってしまった。ある客人が、関元の両側三寸にある静脈上へ灸を七壮すえると治った。王彦賓は、鼠径ヘルニアとなり、やはりここへ施灸して治った(ほかは膀胱を参照)。金門(尸厥を参照)、丘墟(腋腫を参照)は、激しい仙痛を治す。大敦は、急に疝気となり、排尿回数が増え、遺尿、陰茎痛、心痛して汗が出、陰嚢が上がって腹へ入る、陰嚢腫大、腹の臍周囲痛、鬱々として楽しくないものを治す。左半身が病めば右を取り、右半身が病めば左を取る。
蠡溝、治、卒疝、小腹腫、時小腹暴痛、小便不利,如閉、数噫、恐悸、少気不足、腹痛、悒悒不楽、咽中悶,如有息肉、脊拘急,不可俛仰。太衝、治、小児卒疝、嘔逆、発寒、咽乾、腫、内踝前痛、淫、、腋下腫。明下云、療、卒疝、小腹痛、小便不利,如淋。照海、治、卒疝、小腹痛、嘔吐、嗜臥。陰、療、卒疝、小腹痛(上同)、左取右、右取左、立已(明)。
蠡溝は、急に仙痛となり、下腹が腫れ、時おり下腹が激しく痛み、排尿障害のように小便が出にくくなり、何度もゲップし、心臓がドキドキして息が切れ、腹痛があって、鬱々として楽しくない、喉にポリープがあるような不快感、背中がこわばって前後に曲げられないものを治す。太衝は、小児が急に仙痛となり、嘔吐して寒がり、咽がガサガサする、足背の腫れ、内踝前の痛み、怠くて力がなくなる、脛の怠さ、腋窩の腫れを治す。『明堂下巻』は、急に仙痛となり、下腹が痛み、小便がポタポタとでにくいものを治療するという。照海は、急に仙痛となり、下腹が痛み、嘔吐し、傾眠するものを治す。照海は、急に仙痛となり、下腹が痛むものを治療する(上と同じ)。左半身が病めば右を取り、右半身が病めば左を取ると、すぐに治る(明堂)。
蠡溝、療、卒疝、小股腫、小便不利(交儀同)、臍下積気,如卵石、足寒、脛酸、屈伸難(下)。石門、療、卒疝、繞臍痛。関元、療、卒(銅作暴、千同)疝、小腹痛、転胞,不得小便。陥谷、療、卒疝、小腹痛。交信(見淋)、療、卒疝。華池、療、卒陰卵偏大。取足大指,去甲五分,内側白肉際,灸三壮、如半棗核、左取右、右取左。照海、主、四支淫、身悶、陰暴起疝(千)。
蠡溝は、急に仙痛が起き、脛が腫れ、排尿しにくく(交儀と同じ)、臍下に気が積もって睾丸が石のように硬くなり、足が冷えて脛が怠く、屈伸しにくいものを治療する(明堂下巻)。石門は、急に仙痛が起きて、臍の周囲が痛むものを治療する。関元は、急に仙痛が起き(銅人は激しい仙痛としている。『千金方』も同じ)、下腹が痛く、妊娠により排尿しにくいものを治療する。陥谷は、急に仙痛が起きて下腹部が痛むものを治療する。交信(淋を参照)は、急な仙痛を治療する。華池は、急に陰嚢が腫大するものを治療する。足の第1趾で、爪を去ること0.5寸、 内側の白肉へナツメの種の半分ぐらいのモグサで、灸を三壮すえる。左が病めば右、右が病めば左を取る。照海は、四肢が怠くて力が入らず、身体が不快で、下腹部に激しい痛みが起こるものを主治する(千金方)。
大敦、主、卒疝、暴痛、陰跳上入腹、寒疝、陰挺出、偏大腫、臍腹中悒悒不楽、小便難而痛、灸刺立已、左取右、右取左(甲云、照海主之)。
大敦は、急に仙痛で激しく痛み、陰嚢が跳ねて腹へ入り、寒邪が腹内にあって引きつり、子宮脱、片側の睾丸が腫れる、臍腹中が鬱々として楽しくない、小便が出にくくて痛むものを主治する。刺灸すれば、すぐに治る。左が病めば右、右が病めば左を取る。(『甲乙経』では、照海が主治するという)。