鍼灸甲乙経8
 面、凡三十九穴・第十


  懸顱、在曲周顳中。足少陽脈気所発。刺入三分、留七呼、灸三壮(気府注云、在曲周上顳中)。
 頷厭、在曲周顳上廉。手少陽、足陽明之会。刺入七分、留七呼、灸三壮(気府注云、在曲周顳之上。刺深、令人耳無聞)。
 懸釐、在曲周顳下廉。手足少陽、陽明之会。刺入三分、留三呼、灸三壮(気府注云、在曲周顳之上、之下)。
 陽白、在眉上一寸。直瞳子。足少陽、陽維之会。刺入三分、灸三壮(気府注云、足陽明、陰維二脈之会。今詳陽明之経、不到於此。又陰維不与陽明会。疑素問注、非是)。
 攅竹、一名員柱、一名始光、一名夜光、又名明光。在眉頭陥者中。足太陽脈気所発。刺入三分、留六呼、灸三壮。
 絲竹空、一名目。在眉後陥者中、足少陽脈気所発。刺入三分、留三呼、不宜灸、灸之不幸、令人目小及盲(気府論注云、手少陽。又云、留六呼)。
 睛明、一名泪孔。在目内眦外。手足太陽、足陽明之会。刺入六分、留六呼、灸三壮(気府論注云、手足太陽、足陽明、陰陽五脈之会)。
 瞳子、在目外去眦五分。手太陽、手足少陽之会。刺入三分、灸三壮。
 承泣、一名穴、一名面。在目下七分、直目瞳子。陽、任脈、足陽明之会。刺入三分、不可灸。
 四白、在目下一寸。向骨(即顴骨)顴空。足陽明脈気所発。刺入三分、灸七壮(気府論注云、刺入四分、不可灸)。

 懸顱は、額角から耳にかけてカーブして下がる髪際で、こめかみの頭維と曲鬢の中間を取る。足少陽経。0.3寸刺入して七呼吸留める。灸は三壮。
 頷厭は、額角から耳にかけてカーブして下がる髪際で、こめかみの上縁。手少陽と足陽明の交会穴。0.7寸刺入して七呼吸留める。灸は三壮。
 懸釐は、額角から耳にかけてカーブして下がる髪際で、こめかみの下縁。手足の少陽と手足の陽明との交会穴。0.3寸刺入して三呼吸留める。灸は三壮。
 陽白は眉の上一寸で、瞳孔の直上。足少陽と陽維の交会穴。0.3寸刺入し、灸は三壮。
 攅竹は、員柱とも始光とも呼ばれ、また夜光や明光の別名もある。眉頭の凹みである。足太陽経。0.3寸刺入して六呼吸留める。灸は三壮。
 絲竹空は目とも呼ぶ。眉尻の凹みで足少陽経。0.3寸刺入し、三呼吸留める。灸は悪い。施灸すれば不幸なことに目が小さくなり、見えなくなったりする。
 睛明は、泪孔とも呼ぶ。目頭の外側。手足の太陽と足陽明の交会穴。0.6寸刺入して六呼吸留める。灸は三壮。
 瞳子は、目の外側で、目尻から0.5寸。 手太陽と手足の少陽との交会穴。0.3寸刺入し、灸は三壮。
 承泣は、穴とも面とも呼ばれる。目の下0.7寸。瞳孔の直下。陽脈と任脈、足陽明の交会穴。0.3寸刺入する。施灸してはいけない。
 四白は、瞳孔の下一寸。頬骨が凹むところ。足陽明経。0.3寸刺入し、灸は七壮。

  、一名兌骨。在面骨下廉陥者中。手少陽、太陽之会。刺入三分。
 素、一名面王。在鼻柱上端。督脈気所発。刺入三分、禁灸。
 迎香、一名衝陽、在禾上、鼻孔傍。手足陽明之会。刺入三分。
 巨、在侠鼻孔傍八分、直瞳子。脈、足陽明之会。刺入三分。
 禾、在直鼻孔下、侠〈谿〉水溝傍五分。手陽明脈気所発。刺入三分。
 水溝、在鼻柱下人中。督脈、手足陽明之会。直唇取之。刺入三分、留七呼、灸三壮。
 兌端〈骨〉、在唇上端。手陽明脈気所発。刺入三分、留六呼、灸三壮。
 齦交、在唇内歯上齦縫中。刺入三分、灸三壮(気府論注云、任督脈二経之会)。
 地倉、一名会維。侠口傍四分。如近下是。脈、手足陽明之会。刺入三分。
 承漿、一名天池。在頤前、[下]唇之下。足陽明、任脈之会。開口取之。刺入三分、留六呼、灸三壮(気穴論注云、作五呼)。
 頬車、在耳下曲頬端陥者中。開口有孔。足陽明脈気所発。刺入三分、灸三壮。
 大迎、一名髓孔。在曲頷前一寸三分骨陥者中。動脈。足陽明脈気所発。刺入三分、留七呼、灸三壮。

 顴は兌骨とも呼ぶ。顔面部で頬骨の下縁陥中。手少陽と手太陽の交会穴。0.3寸刺入する。
 素は面王とも呼ぶ。鼻柱の上端。督脈。0.3寸刺入する。禁灸穴。
 迎香は衝陽とも呼ぶ。禾の上で、鼻孔の傍ら。手足の陽明の交会穴。0.3寸刺入する。
 巨は、鼻孔を挟んで傍ら0.8寸。瞳孔の直下。脈と足陽明の交会穴。0.3寸刺入する。
 禾は、鼻孔の直下で、水溝を挟んで傍ら0.5寸。手陽明経。0.3寸刺入する。
 水溝は、鼻柱下の人中溝。督脈と手足の陽明との交会穴。口唇を真っ直にして取穴する。0.3寸刺入して、七呼吸留める。灸は三壮。
 兌端は、上唇の上端。手陽明経。0.3寸刺入して六呼吸留める。灸は三壮。
 齦交は、上唇内側と上歯槽の間。上唇小帯を取穴する。0.3寸刺入する。灸なら三壮。(気府論の注は、任脈と督脈の交会穴という)。
 地倉は会維とも呼ぶ。口を挟んで傍ら0.4寸。微小な動脈が、指に感じられるところ。脈と手足の陽明の交会穴。0.3寸刺入する。
 承漿は天池とも呼ぶ。オトガイの前で、下唇の下。足陽明と任脈の交会穴。口を開いて取穴する。0.3寸刺入して六呼吸留める。灸は三壮。
 頬車は、耳下で、下顎角の端にある陥中。口を開くと凹む。足陽明経。0.3寸刺入する。灸は灸三壮。
 大迎は髓孔とも呼ぶ。下顎角の前1.3寸にある下顎骨の凹み。動脈拍動部。足陽明経。0.3寸刺入して七呼吸留める。灸は三壮。



 耳前後、凡二十穴・第十一

 上関、一名客主人。在耳前上廉、起骨端。開口有孔。手少陽、足陽明之会。刺入三分、留七呼、灸三壮。刺太深、令人耳無聞(気府論注云、手足太陽、少陽、足陽明三脈之会。気穴刺注、与甲乙経同)。
 下関、在客主人下。耳前動脈下空下廉。合口有孔、張口即閉。足陽明、少陽之会。刺入三分、留七呼、灸三壮。耳中有乾抵、不可灸(抵、一作適之、不可灸。一作鍼、久留鍼)。
 耳門、在耳前起肉、当耳缺者。刺入三分、留三呼、灸三壮。
 和、在耳前兌髪下横動脈。手足少陽、手太陽之会。刺入三分、灸三壮(気府論注云、手足少陽二脈之会)。
 聴会、在耳前陥者中。張口得之。動脈応手。少陽脈気所発。刺入四分、灸三壮(繆刺注云、正当手陽明之分)。
 聴官、在耳中珠子、大〈明〉如赤小豆。手足少陽、手太陽之会。刺入三分、灸三壮(気府注云、刺入一分)。
 角孫、在耳廓中間。開口有孔。手足少陽、手陽明之会。刺入三分、灸三壮(気府論注云、在耳上廓表之間、髪際之下、手太陽、手足少陽三脈之会)。
 脈、一名資脈。在耳本後、鷄足青絡脈。刺出血、如豆汁。刺入一分、灸三壮。
 顱息、在耳後間、青絡脈。足少陽脈気所発。刺入一分。出血多則殺人。灸三壮。
 翳風、在耳後陥者中。按之引耳中。手足少陽之会。刺入四分、灸三壮。

 上関は客主人とも呼ぶ。耳の前で起きる頬骨弓の上縁端。口を開くと凹む。手少陽と足陽明の交会穴。0.3寸刺入して七呼吸留める。灸は三壮。深く刺入し過ぎれば耳が聞こえなくなる。
 下関は客主人の下。耳前にある動脈の下で、空隙となった下縁。口を閉じれば凹みがあるが、口を開くと凹みは閉じる。足陽明と足少陽の交会穴。0.3寸刺入して七呼吸留める。灸は三壮。耳の中に乾燥した耳垢があれば、施灸してはならない(抵は、適之、不可灸ともあり、また鍼、久留鍼とも書いている)。
 耳門は、耳の前で耳輪の起始部。耳輪と耳珠の間で欠ける前切痕。0.3寸刺入して三呼吸留める。灸は三壮。
 和は、耳の前で、尖ったモミアゲの下。横に動脈が走る。手足の少陽と手太陽の交会穴。0.3寸刺入する。灸は三壮(気府論の注には手足の少陽の交会穴とある)。
 聴会は、耳前の珠間切痕前の凹み。口を開くと凹む。動脈が指に触れる。足少陽経。0.4寸刺入する。灸は三壮(繆刺の注に、手陽明の分に当たるとある)。
 聴官は、赤小豆ぐらいの大きさの耳上結節にある。手足の少陽と手太陽の交会穴。0.3 寸刺入する。灸は三壮(気穴の注には0.1寸刺入するとある)。
 角孫は、耳尖中央の上にある。口を開くと凹む。手足の少陽と手陽明の交会穴。0.3寸刺入する。灸は三壮(気府論の注には耳介の上で表の間。髪際の下。手太陽と手足少陽の三脈の交会穴とある)。
 脈は資脈とも呼ぶ。耳の付根の後ろ側で、青い静脈が鷄の足のようになったところ。刺鍼して豆汁のように出血させる。0.1寸刺入し、灸は三壮。
 顱息は、耳後ろで、角孫と脈の間にある青い静脈。足少陽経。0.1寸刺入する。出血が多いと人が死ぬ。灸は三壮。
 翳風は、耳の後ろにある凹み。圧すると耳の中が引っ張られるような感じがする。手足の少陽の交会穴。0.4寸刺入する。灸は三壮。

 *和が原文では禾。聴会が原文では耳会。翳風が原文では医風。そのほかも適宜、訳が可能なように訂正している。ただ文革中の本を見ると、翳風を医風としている。


 頚、凡十七穴・第十二

 廉泉、一名本池。在頷下、結喉上、舌本下。陰維、任脈之会。刺入二分、留三呼、灸三壮(気府論注云、刺入三分)。
 人迎、一名天五会。在頚大脈動応手、侠結喉。以候五蔵気。足陽明脈気所発。禁不可灸。刺入四分、過深不幸殺人(素問、陽明類論注云。人迎在結喉旁一寸五分。動脈応手)。
 天窓、一名窓籠。在曲頬下、扶突後、動脈応手陥者中。手太陽脈気所発。刺入六分、灸三壮。
 天、在頚筋間、缺盆上。天容後、天柱前。完骨下〈後〉、髪際上。手少陽脈気所発。刺入一分、灸三壮。
 天容、在耳[下]曲頬後。手少陽脈気所発。刺入一寸、灸三壮。
 水突、一名水門。在頚大筋前、直人迎下、気舎上。足陽明脈気所発、刺入一寸、灸三壮。
 気舎、在頚直人迎下、侠天突陥者中。足陽明脈気所発。刺入三分、灸五壮。
 扶突、在人迎後一寸五分。手陽明脈気所発。刺入三分、灸三壮(鍼経云、在気舎後一寸五分)。
 天鼎、在缺盆上、直扶突。気舎後一寸五分。手陽明脈気所発。刺入四分、灸三壮(気府論注云、在気舎後半寸)。

 廉泉は本池とも呼ぶ。頷の下で、喉頭結節の上方。舌骨の下にある。陰維脈と任脈の交会穴。0.2寸刺入して、三呼吸留める。灸は三壮(気府論の注は、0.3寸刺入とある)。
 人迎は、天五会とも呼ぶ。頚動脈が手に触れるところで、喉頭結節を挟む。ここで五臓の気を診る。足陽明経。灸はいけない。0.4寸刺入する。深すぎれば不幸にも人が死ぬ(素問の陽明類論の注には、人迎は喉頭結節の横1.5寸。動脈が触れるとある)。
 天窓は窓籠とも呼ぶ。下顎角の下で、扶突の後ろ。動脈が手に触れる凹み。手太陽経。0.6寸刺入し、灸は三壮。
 天は、胸鎖乳突筋の後ろで、缺盆の上。天容の後ろで、天柱の前。完骨の下で、髪際上。手少陽経。0.1寸刺入する。灸は三壮。
 天容は、耳の下で、下顎角の後ろ。手少陽経。1寸刺入し、灸は三壮。
 水突は水門とも呼ぶ。胸鎖乳突筋の前で、人迎の下。気舎の上。足陽明経。1寸刺入し、灸は三壮。
 気舎は、頚で人迎の直下で、天突を挟む凹み。足陽明経。0.3寸刺入する。灸は五壮。
 扶突は、人迎の後ろ1.5寸。手陽明経。0.3寸刺入し、灸は三壮。(『霊枢』は、気舎の後ろ1.5寸という)。
 天鼎は、缺盆の上で、扶突の直下。気舎の後ろ1.5寸。手陽明経。0.4寸刺入し、灸は三壮。



 肩、凡二十八穴・第十三

 肩井、在肩上陥者中。缺盆上、大骨前。手[足]少陽、陽維之会。刺入五分、灸五〈三〉壮(気府論注云、灸三壮)。
 肩貞、在肩曲胛下、両骨解間。肩後陥者中。手太陽脈気所発。刺入八分、灸三壮。
 巨骨、在肩端上行、両叉骨間陥者中。手陽明、脈之会。刺入一寸五分、灸五壮(気府論注云、灸三壮)。
 天、在肩缺盆中[上]、骨之間陥者中。手少陽、陽維之会。刺入八分、灸三壮。
 肩、在肩端両骨間。手陽明、脈之会。刺入六分、留六呼、灸三壮。
 肩、在肩端臑上。斜挙臂取之。刺入七分、灸三壮(気府論注云、手少陽脈気所発)。
 臑、在肩臑後、大骨下、胛上廉陥者中。手[足]太陽、陽維、脈之会。挙臂取之。刺入八分、灸三壮。
 秉風、侠天〈人〉在外。肩上小骨後。挙臂有空。手陽明太陽、手足少陽之会。挙臂取之。刺入五分、灸五壮(気府論注云、灸三壮)。
 天宗、在秉風後、大骨下陥者中。手太陽脈気所発。刺入五分、留六呼、灸三壮。
 肩外兪、在肩甲上廉、去脊三寸陥者中。刺入六分、灸三壮。
 肩中兪、在肩甲内廉、去脊二寸陥者中。刺入三分、留七呼、灸三壮。
 曲垣、在肩中央、曲甲陥者中。按之動脈応手。刺入八九分、灸十壮。
 缺盆、一名天蓋。在肩上、横骨陥者中。刺入三分、留七呼、灸三壮。刺太深、令人逆息(骨空論注云、手陽明脈気所発。気府論注云、足陽明脈気所発)。
 臑会、一名臑。在臂前廉、去肩頭三寸。手陽明之絡。刺入五分、灸五壮(気府論注云、手陽明、手少陽結脈之会)。

 肩井は、肩の上にある凹みの中。缺盆上の肩峰の前。手足の少陽と陽維脈の交会穴。0.5寸刺入し、灸は五壮。
 肩貞は、肩甲骨外縁で湾曲部の下、肩峰と上腕骨の間。肩後ろの凹み。手太陽経。0.8寸刺入し、灸は三壮。
 巨骨は、肩端の上で、二叉に分かれた骨の間陥者。手陽明と脈の交会穴。1.5寸刺入する。灸は五壮。
 天は、肩で缺盆中の上と肩甲棘の間にある凹み。手少陽と陽維脈の交会穴。0.8寸刺入し、灸は三壮。
 肩は、肩の外端で、肩峰と上腕骨の間。手陽明と脈の交会穴。0.6寸刺入して、六呼吸留める。灸は三壮。
 肩は、肩の外端で上腕骨の上。上腕を斜めに挙げて取る。0.7寸刺入し、灸は三壮(気府論の注は、手少陽経とある)。
 臑兪は、肩で上腕骨後ろにある肩甲骨の下で、肩甲骨の上縁陥中。手足の太陽と陽維、脈の交会穴。腕を挙げて取る。0.8寸刺入し、灸は三壮。
 秉風は、天を挟んだ外側。肩の上で、肩峰棘の後ろ。腕を挙げると肩甲棘が凹むところ。手の陽明と太陽、手足の少陽の交会穴。上腕を挙げて取穴する。0.5寸刺入し、灸は五壮。
 天宗は、秉風後ろの肩甲骨下の凹み。手太陽経。0.5寸刺入して六呼吸留める。灸は三壮。
 肩外兪は、肩甲骨の上縁で、棘突起から三寸の陥凹。0.6寸刺入し、灸は三壮。
 肩中兪は、肩甲骨の内縁で、棘突起から二寸の陥凹。0.3寸刺入して七呼吸留める。灸は三壮。
 曲垣は、肩中央で、肩甲骨上角の陥凹。押すと動脈が拍動する。0.8〜0.9寸刺入する。灸は十壮。
 缺盆は天蓋とも呼ぶ。肩の上で、鎖骨の陥凹。0.3寸刺入して七呼吸留める。灸は三壮。刺入が深すぎれば咳が出る(骨空論の注は、手陽明経という。気府論の注云は足陽明経という)。
 臑会は臑とも呼ぶ。上腕前縁で、肩峰先端から三寸。手陽明の絡穴。0.5寸刺入し、 灸は五壮。



 胸。自天突循任脈下行、至中庭、凡七穴・第十四

 天突、一名玉戸。在頚、結喉下二寸(気府論注云、五寸)、中央宛宛中。陰維、任脈之会。低頭取之。刺入一寸、留七呼。灸三壮(気府論注云、灸五壮)。
 、在天突下一寸、中央陥者中。任脈気所発。仰頭取之。刺入三分、灸五壮。
 華蓋、在下一寸陥者中。任脈気所発。仰頭取之。刺入三分、灸五壮。
 紫宮、在華蓋下一寸六分陥者中。任脈気所発。仰頭取之。刺入三分、灸五壮。
 玉堂、一名玉英。在紫宮下一寸六分陥者中。任脈気所発。仰頭取之。刺入三分、灸五壮。
 中、一名元兒。在玉堂下一寸六分陥者中。任脈気所発。仰而取之。刺入三分、灸五壮。
 中庭、在中下一寸六分陥者中。任脈気所発。仰而取之。刺入三分、灸五壮。

 天突は玉戸とも呼ぶ。喉頭結節の下二寸で、中央の凹み。陰維脈と任脈の交会穴。頭を後ろに倒して取穴する。一寸刺入して、七呼吸留める。灸は三壮。
 は天突の下一寸で、中央の陥中。任脈。頭を後ろに倒して取穴する。0.3寸刺入する。灸は五壮。
 華蓋は、の下一寸にある陥中。任脈。頭を後ろに倒して取穴する。0.3寸刺入する。灸は五壮。
 紫宮は、華蓋の下1.6寸にある陥中。任脈。頭を後ろに倒して取穴する。0.3寸刺入する。灸は五壮。
 玉堂は玉英とも呼ぶ。紫宮の下1.6寸にある陥中。任脈。頭を後ろに倒して取穴する。0.3寸刺入する。灸は五壮。
 中は元兒とも呼ぶ。玉堂の下1.6寸にある陥中。任脈。頭を後ろに倒して取穴する。0.3寸刺入する。灸は五壮。
 中庭は、中の下1.6寸にある陥中。任脈。頭を後ろに倒して取穴する。0.3寸刺入する。灸は五壮。



 胸、自輸府、侠任脈、両傍各二寸、下行至歩廊。凡十二穴・第十五

 輸府、巨骨下、去傍各二寸的陥者中。足少陰脈気所発。仰而取之。刺入四分、灸五壮。
 中、在輸府下一寸六分陥者中。足少陰脈気所発。仰而取之。刺入四分、灸五壮。
 神蔵、在中下一寸六分陥者中。足少陰脈気所発。仰而取之。刺入四分、灸五壮。
 霊墟、在神蔵下一寸六分陥者中。足少陰脈気所発。仰而取之。刺入四分、灸五壮。
 神封、在霊墟下一寸六分陥者中。足少陰脈気所発。仰而取之。刺入四分、灸五壮。
 歩廊、在神封下一寸六分陥者中。足少陰脈気所発。仰而取之。刺入四分、灸五壮。

 輸府は鎖骨下で、から二寸横の陥中。足少陰経。頭を後ろに倒して取穴する。0.4寸刺入する。灸は五壮。 所発。
 中は、輸府の下1.6寸にある陥中。足少陰経。頭を後ろに倒して取穴する。0.4寸刺入する。灸は五壮。
 神蔵は、中の下1.6寸にある陥中。足少陰経。頭を後ろに倒して取穴する。0.4寸刺入する。灸は五壮。
 霊墟は、神蔵の下1.6寸にある陥中。足少陰経。頭を後ろに倒して取穴する。0.4寸刺入する。灸は五壮。
 神封は、霊墟の下1.6寸にある陥中。足少陰経。頭を後ろに倒して取穴する。0.4寸刺入する。灸は五壮。
 歩廊は、神封の下1.6寸にある陥中。足少陰経。頭を後ろに倒して取穴する。0.4寸刺入する。灸は五壮。



 胸、自気戸、侠輸府両傍各二寸、下行至乳根。凡十二穴・第十六

 気戸、在巨骨下、輸府両傍各二寸陥者中。足陽明脈気所発。仰而取之。刺入四分、灸五壮(気府論注云、去膺窓上四寸八分。灸三壮)。
 庫房、在気戸下一寸六分陥者中。足陽明脈気所発。仰而取之。刺入四分、灸五壮(気府論注云、灸三壮)。
 屋翳、在庫房下一寸六分。刺入四分、灸五壮(気府論注云、在気戸下三寸二分。灸三壮)。
 膺窓、在屋翳下一寸六分。刺入四分、灸三壮(気府論注云、在胸両傍侠中行各四寸、巨骨下四寸八分陥者中。足陽明脈気所発。仰而取之)。
 乳中、禁不可刺灸。灸刺之、不幸生蝕瘡、瘡中有膿血清汁者可治、瘡中有息肉若蝕瘡者死。
 乳根、在乳下一寸六分陥者中。足陽明脈気所発。仰而取之。刺入四分、灸五壮(気府論注云、灸三壮)。

 気戸は、鎖骨下の輸府から横二寸の陥中。足陽明経。頭を後ろに倒して取穴する。0.4寸刺入する。灸は五壮。
 庫房は、気戸の下1.6寸にある陥中。足陽明経。頭を後ろに倒して取穴する。0.4寸刺入する。灸は五壮。
 屋翳は、庫房の下1.6寸。0.4寸刺入する。灸は五壮。
 膺窓は、屋翳の下1.6寸。0.4寸刺入する。灸は三壮。
 乳中は、刺灸してはならない。灸刺すれば不幸にもオデキとなる。オデキの中に膿血と清汁があれば治るが、オデキの中にポリープができ、それが腐食すると死ぬ。
 乳根は、乳の下1.6寸の陥中。足陽明経。頭を後ろに倒して取穴する。0.4寸刺入する。灸は五壮。


 胸。自雲門、侠気戸両傍各二寸、下行至食竇。凡十二穴・第十七

 雲門、在巨骨下、気戸両傍各二寸陥者中。動脈応手。手太陰脈気所発。挙臂取之。刺入七分、灸五壮。刺太深、令人逆息(気府論注云、在巨骨下、任脈両傍各六寸。刺熱穴論注云、手太陽脈気所発)。
 中府、肺之募也。一名膺中兪。在雲門下一寸、乳上三肋間陥者中。動脈応手。仰而取之。手[足]太陰之会。刺入三分、留五呼、灸五壮。
 周営、在中府下一寸六分陥者中。足太陰脈気所発。仰而取之。刺入四分、灸五壮。
 胸郷、在周栄下一寸六分陥者中。足太陰脈気所発。仰而取之。刺入四分、灸五壮。
 天谿、在胸郷下一寸六分陥者中。足太陰脈気所発。仰而取之。刺入四分、灸五壮。
 食竇、在天谿下一寸六分陥者中。足太陰脈気所発。仰而取之。刺入四分、灸五壮(気府論注云、手太陰脈気所発)。

 雲門は、鎖骨の下で、気戸の両側二寸の陥中。動脈拍動部。手太陰経。上腕を挙げて取穴する。0.7寸刺入して、灸は五壮。刺入が深すぎれば咳が出る。
 中府は、肺の募穴である。膺中兪とも呼ぶ。雲門の下一寸で、乳の上の第三肋間にある陥中。動脈拍動部。手足の太陰経脈の交会穴。0.3寸刺入して五呼吸留める。灸は五壮。
 周栄は、中府の下1.6寸にある陥中。足太陰脾経。上を仰いで取穴する。0.4寸刺入し、灸は五壮。
 胸郷は、周栄の下1.6寸にある陥中。足太陰脾経。上を仰いで取穴する。0.4寸刺入し、灸は五壮。
 天谿は、胸郷の下1.6寸にある陥中。足太陰脾経。上を仰いで取穴する。0.4寸刺入し、灸は五壮。
 食竇は、天谿の下1.6寸にある陥中。足太陰脾経。上を仰いで取穴する。0.4寸刺入し、灸は五壮。


 腋脇下、凡八穴・第十八

 淵腋、在腋下三寸宛宛中。挙臂取之。刺入三分、不可灸。灸之不幸、生腫蝕馬刀傷。内潰者死、寒熱生馬瘍可治(気穴論注云、足少陽脈気所発)。
 大包、在淵腋下三寸。脾之大絡、布胸脇中、出九肋間、及季脇端、別絡諸陰者。刺入三分、灸三壮。
 輒筋、在腋下三寸、復前行一寸、著脇。足少陽脈気所発。刺入六分、灸三壮。
 天池、一名天会。在乳後一寸(気府論注云、二寸)、腋下三寸。著脇、直掖肋間。手厥陰、足少陽脈之会(一作、手心[主]、足少陽脈之会)。刺入七分、灸三壮(気府論注云、刺入三分)。

 淵腋は、腋下三寸にある凹みの中。腕を挙げて取穴する。0.3寸刺入する。灸はいけない。灸をすれば不幸にも腋下にオデキができる。それが糜爛して潰れれば死ぬ。オデキで寒熱があれば治る。
 大包は、淵腋の下三寸。脾の大絡で、胸脇中に広がり、第九肋間に出て、季脇の端まで及び、あらゆる陰経と連絡する。0.3寸刺入し、灸は三壮。
 輒筋は、腋下三寸、さらに前一寸にあり、脇に付着している。足少陽胆経。0.6寸刺入し、灸は三壮。
 天池は天会とも呼ぶ。乳の後ろ一寸で、腋下三寸にある。脇に付着し、腋で前に膨らんだ肋間。手厥陰と足少陽の交会穴。0.7寸刺入し、灸は三壮。

 *馬刀傷とか馬刀瘍は、腋下にできるオデキのこと。主には腋窩リンパ節の結核を意味する。腋の下は、馬刀を吊す所だから馬刀×と呼ぶ。馬瘍は馬刀瘍の略。単に馬とだけも書く。


 腹、自鳩尾、循任脈、下行至会陰。凡十五穴・第十九

 鳩尾、一名尾翳、一名骭。在臆前蔽骨下五分。任脈之別。不可灸刺(鳩尾蓋心上、人無[心]蔽骨者、当従上岐骨度下行一寸半。気府論注云、一寸為鳩尾処。若不為鳩尾処、則鍼巨闕者中心。人有鳩尾短者、少饒令強一寸)。
 巨闕、心募也。在鳩尾下一寸。任脈気所発。刺入六分、留七呼、灸五壮(気府論注云、刺入一寸六分)。
 上、在巨闕下一寸五分。去蔽骨三寸。任脈、足陽明、手太陽之会。刺入八分、灸五壮。
 中、一名太倉。胃募也。在上下一寸、居心蔽骨与臍之中。手太陽少陽、足陽明所生、任脈之会。刺入[一寸]二分、灸七壮(九巻云、骭至臍八寸。太倉居其中、為臍上四寸。呂広撰、募経云、太倉在臍上三寸、非也)。
 建里、在中下一寸。刺入五分、留十呼、灸五壮(気府論注云、刺入六分、留七呼)。
 下、在建里下一寸。足太陰、任脈之会。刺入一寸、灸五壮。
 臍中[神闕穴也。一名気舎。灸三壮]。禁不可刺。刺之、令人悪瘍。潰矢出者、死不治。
 水分、在下下一寸、臍上一寸。任脈気所発。刺入一寸、灸五壮。
 陰交、一名少関、一名横戸。在臍下一寸。任脈気衝之会。刺入八分、灸五壮。
 気海、一名、一名下肓〈盲〉。在臍下一寸五分。任脈気所発。刺入一寸三分、灸五壮。
 石門、三焦募也。一名利機、一名精露、一名丹田、一名命門。在臍下二寸。任脈気所発。刺入五分、留十呼、灸三壮。女子禁不可刺灸中央。不幸、使人絶子(気府論注云、刺入六分、留七呼。灸五壮)。
 関元、小腸募也。一名次門。在臍下三寸。足三陰、任脈之会。刺入二寸、留七呼、灸七壮(気府論注云、刺入一寸二分)。
 中極、膀胱募也。一名気原、一名玉泉。在臍下四寸。足三陰、任脈之会。刺入二寸。留七呼、灸三壮(気府論注云、刺入一寸二分)。
 曲骨、在横骨上、中極下一寸。毛際陥者中。動脈応手。任脈、足厥陰之会。刺入一寸五分、留七呼、灸三壮(気府論注云、自鳩尾至曲骨十四穴。並任脈気所発)。
 会陰、一名屏翳。在大便前、小便後、両陰之間。任脈別絡。侠督脈、衝脈之会。刺入二寸、留三呼、灸三壮(気府論注云、留七呼)。

 鳩尾は、尾翳とも骭とも呼ぶ。胸部で、剣状突起の下0.5寸。任脈の絡穴。刺灸してはならない(鳩尾は心上の蓋である。心窩部を遮蔽する骨がない人は、胸骨柄下端の肋骨分岐部から下に1.5寸。気府論の注は、一寸は鳩尾の場所で、巨闕に刺鍼すると心臓に当る。鳩尾が短ければ、さらに1寸多目に取る)。
 巨闕は、心の募穴である。鳩尾の下一寸にある。任脈。0.6寸刺入して七呼吸留める。灸は五壮。
 上は、巨闕の下1.5寸。剣状突起から3寸。任脈、足陽明、手太陽の交会穴。0.8寸刺入は、灸は五壮。
 中は、太倉とも呼ぶ。胃の募穴。上の下1寸で、剣状突起と臍の中点にある。手の太陽と少陽、足陽明、そして任脈の交会穴。1.2寸刺入し、灸は七壮(『霊枢』は、胸骨柄から臍までが八寸。胃は、その中点にあって臍の上4寸という。呂広が編簒した募輸経には、胃は臍の上3寸だから違うという)。
 建里は、中の下1寸。0.5寸刺入して十呼吸留める。灸は五壮。
 下は、建里の下1寸。足太陰と任脈の交会穴。1寸刺入し、灸は五壮。
 臍中は神闕穴である。気舎とも呼ぶ。灸は三壮。刺鍼してはならない。刺鍼して悪性の腫瘍ができ、それが潰れてオナラが出るものは死ぬ。治らない。
 水分は、下の下1寸で臍の上1寸。任脈。1寸刺入し、灸は五壮。
 陰交は少関とも横戸とも呼ぶ。臍の下1寸で、任脈と衝脈の交会穴。0.8寸刺入し、灸は五壮。
 気海は、とか下肓とか呼ぶ。臍の下1.5寸で、任脈。1.3寸刺入し、灸は五壮。
 石門は三焦の募穴である。利機とか精露、丹田、命門などの別名がある。臍の下2寸で、任脈。0.5寸刺入して十呼吸留める。灸は三壮。女性は中央に刺灸してはならない。不幸にも不妊症にする。
 関元は小腸の募穴である。次門とも呼ぶ。臍の下3寸で、足三陰と任脈の交会穴。2寸刺入して七呼吸留める。灸は七壮。
 中極は膀胱の募穴である。気原とか玉泉の別名がある。臍の下4寸で、足三陰と任脈の交会穴。2寸刺入して七呼吸留める。灸は三壮。
 曲骨は、恥骨結合の上で、中極の下1寸。陰毛際で、骨上の凹み。動脈が触れる。任脈と足厥陰の交会穴。1.5寸刺入して七呼吸留める。灸は三壮。
 会陰は、屏翳とも呼ぶ。肛門の前で尿道の後ろ。両陰の間にある。任脈の絡脈で、督脈を挟み、衝脈との交会穴。2寸刺入して三呼吸留める。灸は三壮。

 *衝脈は『霊枢』に「足少陰と行く」とあり、『難経』では「足陽明と行く」とある。


 腹、自幽門、侠巨闕両傍各半寸、循衝脈下行至横骨、凡二十二穴・第二十
 幽門、一名上門。在巨闕両傍各五分陥者中。衝脈、足少陰之会。刺入五分、灸五壮(気府論注云、刺入一寸)。
 通穀〈谷〉、在幽門下一寸陥者中。衝脈、足少陰之会。刺入五分、灸五壮(気府論注云、刺入一寸)。
 陰都、一名食宮。在通穀〈谷〉下一寸。衝脈、足少陰之会。刺入一寸、灸五壮。
 石関、在陰都下一寸。衝脈、足少陰之会。刺入一寸、灸五壮。
 商曲、在石関下一寸。衝脈、足少陰之会。刺入一寸、灸五壮。
 肓〈盲〉兪、在商曲下一寸。直臍傍五分。衝脈、足少陰之会、刺入一寸、灸五壮。
 中注、在肓〈盲〉兪下五分。衝脈、足少陰之会。刺入一寸、灸五壮(素問水穴論注云、在臍下五分、両旁相去任脈各五分)。
 四満、一名髓府。在中注下一寸。衝脈、足少陰之会。刺入一寸、灸五壮。
 気穴、一名胞門、一名子戸。在四満下一寸。衝脈、足少陰之会。刺入一寸、灸五壮。
 大赫、一名陰維、一名陰関。在気穴下一寸。衝脈、足少陰之会。刺入一寸、灸五壮。
 横骨、一名下極。在大赫下一寸。衝脈、足少陰之会。刺入一寸、灸五壮。

 幽門は上門とも呼ぶ。巨闕の両側0.5寸の陥中で、衝脈と足少陰の交会穴。0.5寸刺入し、灸は五壮。
 通穀は幽門の下1寸の陥中で、衝脈と足少陰の交会穴。0.5寸刺入し、灸は五壮。
 陰都は食宮とも呼ぶ。通穀の下1寸で、衝脈と足少陰の交会穴。1寸刺入し、灸は五壮。
 石関は陰都の下1寸で、衝脈と足少陰の交会穴。1寸刺入し、灸は五壮。
 商曲は石関の下1寸で、衝脈と足少陰の交会穴。1寸刺入し、灸は五壮。
 肓兪は商曲の下1寸で、臍の水平傍ら0.5寸。衝脈と足少陰の交会穴。1寸刺入し、灸は五壮。
 中注は肓兪の下0.5寸で、衝脈と足少陰の交会穴。1寸刺入し、灸は五壮。
 四満は髓府とも呼ぶ。中注の下1寸で、衝脈と足少陰の交会穴。1寸刺入し、灸は五壮。
 気穴は胞門とか子戸とも呼ぶ。四満の下1寸で、衝脈と足少陰の交会穴。1寸刺入し、
灸は五壮。
 大赫は陰維とか陰関とも呼ぶ。気穴の下1寸で、衝脈と足少陰の交会穴。1寸刺入し、灸は五壮。
 横骨は下極とも呼ぶ。大赫の下1寸で、衝脈と足少陰の交会穴。1寸刺入し、灸は五壮。



 腹、自不容、侠幽門両傍各一寸五分、至気衝。凡二十四穴・第二十一

 不容、在幽門傍各一寸五分。去任脈二寸、直四肋端、相去四寸。足陽明脈気所発。刺入五分、灸五壮(気府論注云、刺入八分。又云、下至太乙、各上下相去一寸)。
 承満、在不容下一寸。足陽明脈気所発。刺入八分。灸五壮。
 梁門、在承満下一寸。足陽明脈気所発。刺入八分、灸五壮。
 関門、在梁門下、太乙上。足陽明脈中間穴。足陽明脈気所発。刺入八分、灸五壮。
 太乙、在関門下一寸、足陽明脈気所発。刺入八分、灸五壮。
 滑肉門、在太乙下一寸、足陽明脈気所発。刺入八分、灸五壮。
 天枢、大腸募也。一名長谿、一名穀〈谷〉門。去肓〈盲〉兪一寸五分、侠臍両傍各二寸陥者中。足陽明脈気所発。刺入五分、留七呼、灸五壮(気府論注云、在滑肉門下一寸。正当臍)。
 外陵、在天枢下、大巨上。足陽明脈気所発。刺入八分、灸五壮(気府論注云、在天枢下一寸。水穴論注云、在臍下一寸、両傍去衝脈各一寸五分)。
 大巨、一名腋門。在長谿下二寸。足陽明脈気所発。刺入八分、灸五壮(気府論注云、在外陵下一寸)。
 水道、在大巨下一寸。足陽明脈気所発。刺入一寸五分。灸五壮。
 帰来、一名谿穴。在水道下一寸。刺入八分、灸五壮(水穴論注云、足陽明脈気所発)。
 気衝、在帰来下、鼠上一寸。動脈応手。足陽明脈気所発。刺入三分、留七呼、灸三壮。灸之不幸、使人不得息(気府論注云、在腹臍下、横骨両端、鼠上一寸。刺禁論注云、在腹下、侠臍両傍、相去四寸、鼠上一寸。動脈応手。骨空注云、在毛際両傍、鼠上一寸)。

 不容は幽門の傍ら1.5寸。任脈から2寸で、第4肋骨の胸骨付着部直下。左右が四寸離れている。足陽明経。0.5寸刺入し、灸は五壮。
 承満は不容の下1寸。足陽明経。0.8寸刺入し、灸は五壮。
 梁門は承満の下1寸。足陽明経。0.8寸刺入し、灸は五壮。
 関門は梁門の下で、太乙の上。足陽明経で、不容と天枢の中間。足陽明経。0.8寸刺入し、灸は五壮。
 太乙は関門の下1寸。足陽明経。0.8寸刺入し、灸は五壮。
 滑肉門は太乙の下1寸。足陽明経。0.8寸刺入し、灸は五壮。
 天枢は大腸の募穴である。長谿とか穀門の別名がある。肓兪から1.5寸。臍の両側2寸の陥中。足陽明経。0.5寸刺入して七呼吸留める。灸は五壮。
 外陵は天枢の下で、大巨の上。足陽明経。0.8寸刺入し、灸は五壮。
 大巨は腋門とも呼ぶ。天枢の下2寸で、足陽明経。0.8寸刺入し、灸は五壮。
 水道は大巨の下1寸。足陽明経。1.5寸刺入して七呼吸留める。灸は五壮。
 帰来は谿穴とも呼ぶ。水道の下1寸。0.8寸刺入し、灸は五壮。
 気衝は帰来の下で、鼠径部の上一寸。動脈拍動部。足陽明経。0.3寸刺入して七呼吸留める。灸は三壮。灸をすると不幸にも息ができなくなる。

 *不容の原文は「去任脈三寸、至両肋端」。関門の原文は「足陽明脈中間穴外延」だが意味が通じないため外延を削除。外延ではなく、そのライン上にある。水道の原文は「在大巨下三寸」。刺入も「二寸五分」だが、深すぎるので正統本の「一寸五分、留七呼」を採用した。他が八分なのに、二寸五分では兼合いが……。帰来も原文は「水道下二寸」。これでは大巨から水道が三寸、その下二寸が帰来だから大巨より五寸で、腹部ではなくなる。気衝の文章もおかしい。「灸は三壮」と言っておきながら「灸をすると不幸にも息ができなくなる」と忠告している。どっちが本当?一般に動脈拍動部には直接灸をしない。


 腹、自期門、上直両乳、侠不容両傍各一寸五分、下行至衝門。凡十四穴・第二十二

 期門、肝募也。在第二肋端、不容傍各一寸五分。上直両乳。足太陰厥陰、陰維之会。挙臂取之。刺入四分、灸五壮。
 日月、胆募也。在期門下一寸五分。足太陰、少陽之会。刺入七分、灸五壮(気府論注云、在第三肋端、横直心蔽骨傍各二寸五分、上直両乳)。
 腹哀、在日月下一寸五分。足太陰、陰維之会。刺入七分、灸五壮。
 大横、在腹哀下三寸、直臍傍。足太陰、陰維之会。刺入七分、灸五壮。
 腹屈、一名腹結。在大〈太〉横下一寸三分。刺入七分、灸五壮。
 府舎、在腹結下三寸。足太陰、陰維、厥陰之会。此脈上下入腹、絡胸、結心肺、従脇上至肩。此太陰、三陰陽明支別。刺入七分、灸五壮。
 衝門、一名慈宮。上去大横五寸。在府舎下、横骨両端、約文中動脈。 足太陰、厥陰之会。刺入七分、灸五壮。

 期門は肝の募穴である。乳下第二肋間の端で、不容の傍ら1.5寸。直上には両乳頭がある。足の太陰と厥陰、陰維脈の交会穴。腕を挙げて取穴する。0.4寸 刺入し、灸は五壮。
 日月は胆の募穴である。期門の下1.5寸。足の太陰と少陽の交会穴。0.7寸刺入し、灸は五壮。
 腹哀は、日月の下1.5寸。足太陰と陰維の交会穴。0.7寸刺入し、灸は五壮。
 大横は腹哀の下3寸。臍と水平な傍ら。足太陰と陰維脈の交会穴。0.7寸刺入し、灸は五壮。
 腹屈は腹結とも呼ぶ。大横の下1.3寸。0.7寸刺入し、灸は五壮。
 府舎は腹結の下3寸。足太陰と陰維脈、足厥陰の交会穴。この3脈は上や下から腹へ入り、脾や肝と連絡して胸へ行き、心肺と連絡したあと、脇から肩へ上がっている。これは太陰の穴であり、足三陰と陽明の絡脈でもある。0.7寸刺入し、灸は五壮。
 衝門は慈宮とも呼ぶ。上部にある大横から下に五寸。府舎の下で、恥骨の両端。鼠径溝中の動脈。足の太陰と厥陰の交会穴。0.7寸刺入し、灸は五壮。

 *胆の募穴を日月というのは、昔は右から左へ書いたので、胆の文字を分解すれば旦と月になるから。旦は横一の地面から日が昇り始める様子を表している。府舎の原文は「比太陰」だが意味が通じないので「此太陰」とした。しかし他の文とのバランスから「此脈……支別」は、注釈が紛れ込んだもので、本文ではないと考えられている。


 腹、自章門下行至居、凡十二穴・第二十三

 章門、脾募也。一名長平、一名脇。在大横外、直臍、季脇端。足厥陰、少陽之会。側臥、屈上足、伸下足、挙臂取之。刺入八分、留六呼、灸三壮。
 帯脈、在季脇下一寸八分。刺入六分、灸五壮(気府論注云、足少陽、帯脈二経之会)。
 五枢、在帯脈下三寸。一曰、在水道傍一寸五分。刺入一寸、灸五壮(気府論注云、足少陽、帯脈二経之会)。
 京門、腎募也。一名気府、一名気兪。在監骨下、腰中、挟脊、季脇下一寸八分。刺入三分、留七呼、灸三壮。
 維道、一名外枢。在章門下五寸三分。足少陽、帯脈之会。刺入八分、灸三壮。
 居、在章門下八寸三分、監骨上陥者中。陽、足少陽之会。刺入八分、灸三壮(気府論注云、監骨作骼骨)。

 章門は脾の募穴である。長平や脇とも呼ぶ。大横の外側で、臍に水平な季脇の端。足の厥陰と少陽の交会穴。側臥位で上の足を曲げ、下の足を伸ばし、腕を挙げて取穴する。0.8寸刺入して六呼吸留める。灸は三壮。
 帯脈は、季脇の下で、第11肋骨先端の下1.8寸にある。0.6寸刺入し、灸は五壮。
 五枢は、帯脈の下3寸。また水道の傍ら1.5寸とも言う。1寸刺入し、灸は五壮。
 京門は腎の募穴である。気府とか気兪とも呼ばれる。第12肋骨先端の下で、腰中で背骨を挟む。第12肋骨先端の下1.8寸にある。0.3寸刺入して七呼吸留める。灸は三壮。
 維道は外枢とも呼ぶ。章門の下5.3寸で、足少陽と帯脈の交会穴。0.8寸刺入し、灸は三壮。
 居は章門の下8.3寸。上前腸骨棘の上にある凹み。陽脈と足少陽の交会穴。0.8寸刺入し、灸は三壮。

 *監骨は一般に腸骨稜と考えられているが、京門が腸骨の下にあるわけがない。調べてみると腸骨も監骨だが、第12肋骨も監骨だったのだ。判りにく。このために資生経を現代語訳するとき狂った。監は檻とか監督の意味があるから、囲んだ骨あるいは基準とする骨の意味だろう。だいたい上下で同名の部分があり、例えば鎖骨と恥骨を横骨と呼び、母指球と大腿直筋を魚と呼ぶ。違う部分を同じ名前で呼んで混乱しないのだろうか?

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