2005年1月19日更新
【註】× は虫に食われて欠損している部分
2003年7月出版の北京大学出版社『経絡科学』9頁に「1993年春、四川省綿陽市永興鎮の双包山で発掘した2号前漢木椁大墓(No.YSM2)から黒漆を塗り重ねた小型木質人形が出土した。その上には赤漆で縦のラインが示されていた。その木人形は、高さ28.1pあり、全身を19本の線が上下に描かれている。まず中央は背中に一本、そして両側に9本のラインが左右対称に入っていた。穴位や循行方向、文字の記載はない。考証によると紀元前179〜141年のものと考証された」とある。それによると初期の経脈は、督脈が一本、そして経絡が現在のように上下6本ではなく、9本あったと判る。9は老陽の数字だから納得できる。あるいは秦国が6の数字に合わせたのかも知れない。秦国は六を基準としたから(秦国ものがたりを読んでね)。
帛書は、白絹に書かれていたから帛書と呼んだが、のちに『脈書』であると判明した。経脈の全文と訳文を掲載する。
陰陽十一脈灸経
[原文]
鉅陽。潼外踝婁中、出中、上穿、出中、夾脊、出於項、×頭角、下顔、夾、目内廉。是動則病。潼、頭痛、××××脊痛、要以折、脾不可以運、膕如結、如裂。此爲踝蹶。是鉅陽主治。其所産病。頭痛、耳聾、項痛、耳彊、瘧、北痛、要痛、尻痛、、痛、痛、足小指痺。爲十二病。
[語句]
鉅:巨。:脈。潼:踵の字でカカト。婁:窶と同じで凹み。中:膝窩の委中。委中は別名を血という。:臀部。 :髀厭のことで大腿骨頭、環跳。顔:額。:の字で鼻根。:繋の略字。つながる。要:腰。 以:似。のようだ。脾:髀。大腿。膕:膝窩。:フクラハギ。潼:腫れ。蹶:厥。:痔。:と同じで膝窩。
[訳文]
太陽脈。カカトの外踝の陥中に起こり、膝窩に出、上がって臀部を穿ち、環跳に出て、背骨を挟んで上行し、うなじに出、頭角に上がり、額に下がり、鼻根を挟み、目の内眦につながる。これが動じて起こる病は、腫れ、頭痛、××××、背痛、腰が折れるように痛い、大腿が動かない、膝窩のしこり、フクラハギの裂けるような痛みである。これは踝厥である。これは足の太陽脈が主治する。それによって起こる病は、頭痛、耳聾、後頚部痛、耳のしこり、瘧、背痛、腰痛、尻痛、痔、膝窩痛、フクラハギの痛み、足の小指のしびれ。この十二病である。
[原文]
少陽。於外踝之前廉、上出魚股之外、出×上、出目前。是動則病。心與脇痛、不可以反稷、甚則無膏、足外反。此爲陽蹶。是少陽主治。其所産病。×××、頭頸痛、脇痛、瘧、汗出、節盡痛、脾外廉痛、×痛、魚股痛、膝外廉痛、振寒、足中指踝。爲十二病。
[語句]
魚股:大腿四頭筋。 反稷:反側。よじる。 脾:髀。大腿。
[訳文]
少陽脈。外踝の前側につながり、大腿四頭筋の外側に上がって脇に出て上がり、目の前に出る。これが動じて起こる病は、心痛と脇痛、身体がひねれない、顔にツヤがない、足の外反。これは陽厥である。少陽脈が主治する。それによって起こる病は、×××、頭頚痛、脇痛、瘧、汗が出る、関節痛、大腿外側の痛み、×痛、大腿四頭筋痛、膝外側痛、悪寒がして震える、足の中指の痺れ。この十二病である。
[原文]
陽明。於骭骨外廉。循骭而上、穿、出魚股××××、穿乳、穿頬、出目外廉、環顔×。是動則病。洒洒病寒、喜龍、婁吹、顔黒、病、病至則惡人與火、聞木音則然驚、心腸、欲獨閉戸而處。病甚則欲登高而歌、棄衣而走。此爲骭蹶。是陽明主治。其所産病。顔痛、鼻、領頸痛、乳痛、心與痛、腹外、陽痛、膝跳、付××。爲十病。
[語句]
骭骨:脛骨。:膝蓋骨。 洒洒:水を浴びる。 龍:襲の略字で伸びをする。婁:數の略字で数。 惡:嫌う。:タと同じでビクビクする。:窓。 腸:タ。鼻:鼻。鼻詰まり。領:頷。下顎。:脇。 跳:の字で脛。付:。陽:腸。
[訳文]
陽明脈。脛骨外側につながる。脛骨に循って上がり、膝蓋骨を穿ち、大腿四頭筋の前面に出て、腹部をあがり、乳を穿ち、頬を穿ち、目の外側に出、顔を環る。これが動じて起こる病は、寒けがする、腰を伸ばして、あくびをする、顔が黒い、腫れる、人と火を嫌い、物音でビクビクと驚き、怯え、独りで閉じこもる。ひどくなると高いところに登って歌い、着物を捨てて走る。これは骭厥である。これは陽明脈が主治する。それによって起こる病は、三叉神経痛、鼻詰まり、顎頚痛、乳房痛、心と脇の痛み、腹外側の腫れ、腸痛、膝、脛、足背の痛み。この十病である。
[原文]
肩。起於耳後、下肩、出臑外廉、出×××、乗手北。是動則病。痛、頷、不可以顧、肩以脱、臑以折。是肩主治。其所産病。領痛、喉痺、臂痛、肘痛。爲四病。
[語句]
:咽頭。
[訳文]
手の太陽脈。耳の後ろに起こり、肩に下がり、上腕外側に出、前腕橈側に出、手背に乗る。これが動じて起こる病は、喉の痛み、顎の腫れ、首が回らない、肩が脱けるように痛む、上腕が折れるように痛む。これは手の太陽脈が主治する。それによって起こる病は、顎痛、喉の痛み、前腕の痛み、肘の痛み。この四病である。
[原文]
耳。起於手北、出臂外、兩骨之間、上骨下廉、出肘中、入耳中。是動則病。耳聾、、。是耳主治。其所産病。目外漬痛、頬痛、耳聾。爲三病。
[語句]
:耳鳴りの音。ホンホン、ジンジン。
[訳文]
手の少陽脈。手背に起こり、前腕外側、両骨の間に出、橈骨の下側を上がり、肘中に出て、耳の中に入る。これが動じて起こる病は、耳聾ではっきり聞こえない、咽喉の腫れ。これは手の少陽脈が主治する。それによって起こる病は、目の外眦痛、頬痛、難聴。この三病である。
[原文]
齒。起於次指與大指、上出臂上廉、入肘中、乗臑、穿頬、入齒中、夾鼻。是動則病。齒痛、朏。是齒主治。其所産病。齒痛、朏、目黄、口乾、臑痛。爲五病。
[語句]
朏:の異体字で、目の下。
[訳文]
手の陽明脈。人差指と親指の間に起こり、上がって前腕橈側に出、肘の中に入り、上腕に乗り、頬を穿ち、歯の中に入り、鼻を挟む。これが動じて起こる病は、歯痛、頬の腫れ。これは手の陽明脈が主治する。それによって起こる病は、歯痛、頬の腫れ、目が黄色くなる、口が乾く、上腕の痛み。この五病である。
[原文]
大陰。是胃。彼胃、出魚股陰下廉、上廉、出内踝之上廉。是動則病。上當走心、使復張、善噫、食欲歐、得後與氣則然衰。是鉅陰主治。其所産病。××、心煩、死。心痛與復張、死。不能食、不能臥、強吹、三者同則死。唐泄、死。水與閉同則死。爲十病。
[語句]
:也。 彼:被。被る。:フクラハギ。 復張:腹脹。 然:快然。すぐに。強吹:シャックリ。 閉:閉。おしっこが出ない。
[訳文]
太陰脈。これは胃脈である。胃を被り、大腿内側の下縁、フクラハギの上側に出、内踝の上側に出る。これが動じて起こる病は、気が心窩部に突き上げる、腹脹、よくゲップする、食べると吐き気がし、排便やおならをするとよくなる。これは太陰脈が主治する。それによって起こる病は、××と心窩部の煩悶があれば死ぬ。心痛と腹脹があれば死ぬ。食べられない、横になれない、強いシャックリ、三つが同時にあれば死ぬ。下痢で死ぬ。浮腫と尿が出ない症状が同時にあれば死ぬ。この十病である。
[原文]
厥陰。於足大指毛之上、乗足上廉、去内一寸、上五寸而出大陰之後、上出魚股内廉、觸少腹、大漬旁。是動則病。丈夫山、婦人則少腹、要痛不可以、甚則乾、面疵。是厥陰主治。其所産病。熱中、降、、扁山、××有而心煩、死、勿治。有陽與之倶病、可治。
[語句]
毛:親指の付けねの叢毛。 :踝の異体字。 觸:触れる。 大漬旁:大眦は内眦。丈夫:紳士。山:疝。陰嚢に腸が入って痛むもの。:仰ぐ。反る。熱中:恐らく掌熱中。手のひらが熱っぽい。 降:。おしっこが出にくい。 :脱腸。扁山:偏疝。片方の鼠径ヘルニア。
[訳文]
厥陰脈。足親指の叢毛上につながり、足背の内側に乗り、内踝から一寸の所を行き、踝の上方五寸のところで太陰の後ろに出、大腿内側を上がり、下腹部に触れ、内眦に行く。これが動じて起こる病は、男は鼠径ヘルニア、女は下腹部の腫れ、腰痛で反れないもの、ひどければ喉が乾燥し、顔の皮膚病となる。これは厥陰脈が主治する。それによって起こる病は、手のひらが熱い、尿が出にくい、鼠径ヘルニア、××して心窩部が煩悶すれば死ぬ。治療法がない。陽脈と共に病んでいるものは治療できる。
[原文]
少陰。於内外廉、穿、出中央、上穿脊之×廉、於腎、夾舌。是動則病。如喘、坐而起則目 如毋見、心如縣、病饑、氣不足、善怒、心腸、恐人將捕之、不欲食、面若色、則有血。此爲骨蹶。是少陰主治。其所産病。××××××、舌柝、乾、上氣、饐、中痛、、耆臥、、音、爲十病。少陰之、久則強食産肉。緩帯皮髪、大丈、重履而歩。久幾息則病已矣。
[語句]
:喝喝。ゼイゼイいう。:。よく見えない。 縣:懸の略字。 饑:飢。:黯。黒いこと。:炭。 舌柝:舌が裂ける。 饐:喉がつかえる。:黄疸。 音:の略字。嗄声。 皮:被の略字。被う。丈:杖の略字。
[訳文]
少陰脈。内踝外側につながり、フクラハギを穿ち、膝窩の中央に出、上がって背骨の内側を穿ち、腎につながり、舌を挟む。これが動じて起こる病は、ゼイゼイ喘ぐ、坐って立ち上がると目がくらんで見えなくなる、心窩部がぶら下がっているような感じ、腹が減る感じ、気の不足、怒りっぽい、ビクビクする、人が捕まえにくるんじゃないかと恐れる、食欲がない、顔が炭のように黒い、咳をすると血が混じる。これは骨厥である。少陰脈が主治する。それによって起こる病は、口が熱い、舌がヒビ割れる、喉のイガイガ、上気、喉がつかえる、喉の痛み、黄疸、横になりたがる、咳、嗄声。この十病である。少陰脈に、灸をすえて、食べて栄養をつけて肉をつけ、帯を緩めて髪を被い、杖をついてゆっくりと歩く。灸を重ねると病はすぐに治まる。
[原文]
臂鉅陰。在於手掌中、出内陰兩骨之間、上骨下廉、筋之上、出臂内陰、入心中。是動則病。心滂滂如痛、缺盆痛、甚則交兩手而戰、此爲臂蹶。是臂鉅陰主治。其所産病。痛、痛、心痛、四末痛、、爲五病。
[語句]
上骨:橈骨。 滂滂:ドクドクする感じ。 戰:戦慄。震える。 :胸の略字。:。心窩部。胃のこと。 四末:四肢。 :の略字で腹の塊り。
[訳文]
手の太陰脈。手掌中にあり、内陰で両骨の間、橈骨内縁に出、筋肉の上を行き、前腕の内陰に出、心中に入る。これが動じて起こる病は、心がドクドク痛む、缺盆痛、ひどければ両手を交叉させて震える。これが臂厥である。これは手の太陰脈が主治する。それによって起こる病は、胸痛、胃痛、心痛、四肢の痛み、腹のしこり。この五病である。
[原文]
臂少陰。起於臂兩骨之間之間之、下骨上廉、筋之下、出臑内陰。是動則病。心痛、益渇欲飲。此爲臂蹶。是臂少陰主治。其所産病。脇痛。爲一病。
[語句]
之間之間之:之間。その間。之間之が余分。 下骨:尺骨。 益:の略字。
[訳文]
手の少陰脈。前腕で両骨の間、尺骨の内縁に起こり、筋肉の下を行き、上腕の内陰に出る。これが動じて起こる病は、心痛、喉が渇いて飲みたがる。これは臂厥である。これは手の少陰脈が主治する。それによって起こる病は、脇痛。この一病である。
北京堂鍼灸ホーム / 古典の部屋トップ / 絡穴経別など / 足臂十一脈灸経