鍼灸師のための中国語講座



 主旨:鍼灸を勉強するには、まず中国語が出来なければ話になりません。
 そこで中国語の手ほどきをして、辞書の紹介、文章の読み方などを促成栽培します。
 まず買うべき辞書は、大修館書店の中日大辞典・愛知大学中日大辞典編纂処編、そして人民衛生出版社の漢日医学大詞典です。これらの辞書は当然、問題もありますが、とりあえず中国医学書を理解するためには、これを標準にすべきです。

◎   発音の四声+1
  一声、二声、三声、四声そして軽声があります。
  一声は、アーと高い声。( ̄)
  二声は、アン? と尻上がりの声。(/)
三声は、はぁー、と低い声。(_)
  四声は、あぁ、と溜息のように下がる声。(\)
  軽声は、絶対に最初には来ない付けたりの声。

  三声の説明が本と違うとの意見があるでしょうが、実際に喋るスピードでは三声が中沈みの\/と発音されることはなく、語頭に来るときは二声ぽくなる以外は、低い発音しかありません。
 日本語は、五母音と9子音を組み合わせて50音を作っていますが、そんな数では漢字の音が区別できないので、子音と母音を増やし、さらに複合母音を加え、さらに音程差を付けることによって漢字の音を増やして、音による分類漢字量を制限しているのです。
この四声の順序で辞書は並んでいます。だから同じ「a」でも一声から四声へと並んでいます。これで「a」という漢字を四つに分類できますよね。でも日本語では「あ」という漢字を四つに分類できないので、そこに含まれる漢字は膨大な量となり、発音によって漢字を推測することが難しくなります。

◎ 中国語の母音は、単母音と複合母音があり、単母音は6+1ある。
  単母音は、日本語の「あいうえお」に相当します。複合母音は、母音を組み合わせたもので、日本語で言えば「きゃ、きゅ、きょ」に相当します。まず単母音から。
 a,i,u,e,o,ü,äの7つです。
 あれ、へんだな。6つのはずなのに。a,e,i,ü,u,oではないのか?
 そうです。中国語ではäをeと書きます。ですけどeは、日本語の「エ」と発音することもあるのです。例えば、変だなと思って口を挟むときに「エイ?」と尻上がりに発音しますが、あれはäでなくてエです。äと発音すれば「アイーン」になってしまいます。 つまりeと書かれていれば、äかエの発音をします。
a,e,i,ü,u,oのうち、äとüが日本語にない発音で難しいとされています。 心配無用。üの発音は、天津姐ちゃんの小高に習った発音、天津訛で簡単にクリアーできます。
 まずa,i,u,oの発音は、ほぼ日本語と同じ。ただiは日本語より口を横に広げて「イーだ」とか「アイーン」の口になります。uは、口を丸くすぼめます。特にuの発音が悪いと、食堂で酢を取ってもらえません。
 残ったeは、「ハァ」と溜息をつくような力の無い口をして、「ハァ」の「ア」だけをやると、eの発音になります。アでもないウでもない、どっちつかずの発音です。
 まあ口で説明しても難しいので、中国人に「e」という文字を見せて、どう発音するか訪ねてみればよいでしょう。四月と十月にやるNHKラジオ講座入門編を聞くのもよろしいかと思います。ただ講師の発音は、かなり怪しいので、中国人ゲストの発音が参考になります。私は、この発音が出来なくて、「イ」の発音に近くなってしまいます。
 ü は、ウの口をして「イ」と発音すると言います。「ユ」のような音です。
 女とか緑、去や据の母音がこれです。発音記号を見ると、女はnü、緑はlüですが、去と据はquとjuになっています。nとlにはnuとluの発音もあるからウムラウトの点々が省略できないからです。
 nuとluは、ヌとルなので簡単ですが、nüとlüは難しいのです。
 これを天津お姐の小高に発音してもらうことにしましょう。
 女は? 「ニュイだ!」   じゃあ緑は? 「リュイだ!」
 なるほど。ちょっと変ですが、十分通じます。彼女は、女を「二ュイ」そして緑を「リュイ」と発音しているのです。実は、このュイという発音は中国語にありません。一般に「ui」と書かれている発音は、実際にはハイウェイの「ウェイ」と発音されており、現実の発音は「uei(wei)」なので、「ュイ」の発音ではないのです。「ュイ」の発音はないからüだなと判断できるのです。
 「ュイ」を逆にして「iu」と発音しないように。私は、よく間違って女を「niuだ」と発音し、「牛は、どこにいる?」と、人を恐れさせたものでした。「ニュイ」です。ちなみに「iu」は「イョウ」、「iyou」とも発音されますし、「ュウ」とも発音します。
 
◎ 複合母音
  複合母音は母音を組み合わせたものですが、あまりに数が多いので、全部は書き切れません。そこで主なものを
 ng  日本語の「ンー?」です。返事したり、同意するときに使います。鼻音です。 最も使われる複合母音の一つで、日本人に難しい発音です。
 例えば、anとangの違い。enとengの違いは簡単です。一つは「エン」で、一つは「オン」のような発音になります。だからengはongとの区別の方が難しいのです。
対してanとangは、どちらも「アン」と聞こえます。だから日本人には「香山」という発音が難しいのです。どちらもang angになって、「香香」と聞こえます。
 昔のハルピンの家庭教師は、どうしても出来なければ、anでは舌を出して口を塞げと教えてくれました。
前に友人が来たとき、日本人は「香山」が発音できないというと、嫁さんの発音を聞き、確かにと言いました。それじゃあ私が、と、この方法で発音すると、彼は目を丸くしてポカンとしていました。「どうだ。出来ているだろう?」というと、彼は「確かに出来ていることは出来ているが、中国人は、そんなアホな発音の仕方なんかしない」と言いました。 この発音を教えてくれたのは房さん。口を横に大きく広げ、「i」の口で「アン」といえば「an」、ふつうに縦に広げて「アン」といえば「ang」の発音となり、めでたく「香山」へ行けました。
engとongの違いは、engが「エン」混じりの「オン」であるのに対し、ongは完全に「オン」です。
 例えば、層はcengで「ツェン」と発音しますが、从(從)はcongで「ツォン」あるいは「ソン」のように発音します。congを「コン」と読まないように。

◎ 子音
  ここでも難しいと言われている発音について述べます。
  日本人が間違って発音するのは「si」。これを「シ」と発音してしまう。この音は、どちらかというと「ス」です。ズーズー弁の「ス」。息の抜けたような「ス」です。
  じゃあ「シ」は? というと、「xi」が第一候補、次が「shi」でしょう。まあ「xi」です。
  
では子音で最も難しいと言われている巻舌音。
  これにはzh,ch,sh,rがあって、iの音を加えてzhi,chi,shi,riと発音されます。でもeの音を加えてzhe,che,she,reの発音にした方が、他の母音と組み合わせやすいと思うのですが。これは舌を焼いたイカの様に丸めて発音します。やはり説明が難しいので、中国人に発音してもらうと良いのですが、中国人でも出来る人は少ないです。

 他の発音は、パピプペポやバビブベボと同じような発音なので、自分で考えればクリアーできます。

 鍼灸師の中国語は、きれいな発音をする必要はなく、通じればよいので、以上の原則に基づいて発音します。

◎  文法。中国語の文法は、英語より簡単。
  原則として、主語+動詞+目的語の形を取ります。
英語のI、my、meに当たるのは、我です。だから我、我、我。
  彼、彼女、物は、ta。だから自分以外は、すべて「タ」です。ただ自分以外でも、あなたは特別で、ニンベンや女ヘンに尓を付けて「ni」と言います。「ニイハオ」のニイです。

◎ 平叙文
 「私行く」という文は、「我去」。 
 「私も行く」なら、もにあたる也を加えて「我也去」。
 目的語を加えれば、「私天国へ行く」は「我去天堂」。

◎ 疑問文:疑問文の作り方は、英語のように主語や動詞をひっくり返す必要はなく、日本語と同じように疑問詞を入れれば終わり。まず上の文を疑問文にする。
 「私、天国へ行くのか?」→「我去天堂マ?」と、文末に「か」に相当するマを入れれば終わり。「行くか」なら「去マ?」 
 でもイエスやノーで答えられる質問ばかりではない。
 「私、どこ行くか?」「天国へ」という会話。
 「我去ナ里?」「天堂」。日本にある文字を使って難しく言えば
 「我去何処?」「天堂」となる。

◎ この主語+動詞+目的語を骨組みとして、セミコロンで文をつないでゆけば文になる。  ただ鍼灸師のための中国語講座は、買い物をしたり、ダベったり、小説を読むための物ではなく、医学書を読むためのものなので、辞書の引き方を述べて実践編に入る。

◎ 辞書の引き方。アルファベット、ピンイン引き。
  国語辞典のようにして引く方法。

◎ 漢和辞典式。最初に部首検索する。台湾の辞書は日本の漢和辞典と全く同じ。
 中国の辞書は部首の後に数字があり、それが前数十ページの見出し語検索に繋がっているので、それを使って検索する。
 


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