全訳鍼法灸法学
教科書シリーズ:全訳中医基礎理論、全訳経絡学、腧穴学、全訳鍼灸治療学、全訳鍼法灸法学、全訳鍼灸医籍選。
教科書シリーズ『鍼灸各家学説』は、『中国鍼灸各家学説』となって東洋学術出版社から出版されています。これで中国の共通鍼灸教科書は、『全訳鍼灸医籍選』を除いて、すべて日本語で読めるようになりました。
-大学中医学教本- 全訳 鍼法灸法学 翻訳 淺野周
主編 奚永江 副主編 司塗徒鈴 編委 馬瑞林/ 李学武/ 楊兆民
発行所 (株)たにぐち書店(℡03-3980-5536 Fax03-3590-3630)
定価 3000円A5判 278頁(ISBN4-86129-011-2)
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推薦文
※日本で始めての教科書鍼灸治療学!腧穴学の今村氏が「我々の習った教科書をすべて翻訳しよう」と計画し、たにぐち書店社長の協力を得て、出版されました。だが計画した本人は一冊翻訳しただけです。しかし、彼の意志は残り二人(谷口社長と浅野周)に受け継がれ(本人は生きてる)、ほとんどを出版にこぎつけました。これで残るは一冊。ほとんどフェチの世界。
今回の鍼法灸法学は、中国の鍼灸大学(中医薬大学)で教科書とされているものを翻訳したもので、五版教材と呼ばれているものです。他の教科書の前書きには、『刺法灸法学』と書かれているのが、本書です(どうして名前が違うのか、中国はいい加減だ)。鍼灸教科書シリーズの一貫として翻訳しました。鍼灸専用の本なので、中薬系に進まれた方が目にすることはありません。また英語圏からの留学生が多い、留学生用の教科書を使って勉強された方も目にすることはありません。中国への留学生は、漢字に慣れていない生活環境なので、どうしても識字に問題があります。中国の学生さえ、ときたま読めないことのある本科生の教科書が使えるはずもないので、内容や漢字を大きく減らした教科書を留学生教科書として使っています。ですから留学しても外人クラスで学ばれた方は、この教科書を目にすることはありません。本科で中国人学生に混じって勉強する人には、よき参考書となるでしょう。
●本書の特徴
1985年に作られた教科書ですから、それまでの毫鍼オンリーの手技が記載された本と大きく違っています。前半は、これまでの『内経』や『難経』、『金鍼賦』、『鍼灸大成』に記載された毫鍼操作法。後半は、耳鍼、頭鍼、腕踝鍼、穴位埋線、電気鍼、火鍼、三稜鍼、梅花鍼、皮内鍼、円皮鍼、レーザー鍼などの内容が続きます。確かに、90年代になって登場した小鍼刀、平頭火鍼、浮鍼、眼鍼、冷光、新九鍼、磁石梅花鍼などは記載されていませんが、以前に私が翻訳した中西合作鍼治療の『難病の鍼灸治療』や『急病の鍼灸治療』、そして今度出版される『165病最新鍼灸治療』などには、かなり参考になると思います。現代の中国鍼灸は、毫鍼ばかりに頼っているのではないことが判ります。
●このシリーズを刊行したことの意義
いやあビックリしました。中国の教科書など1985年に刊行されましたから、我々が翻訳する前に、とっくに誰かが翻訳しているもんだと思っていました。
東洋学術から教科書を抜粋してまとめた本があるから、今さら教科書を全訳しても意味がないという元留学生の意見もありましたが、やはり内容100%を翻訳した本には、抜粋した本で省かれていることも記載されており、違うのではないかと思います。『全訳中医基礎理論』、『全訳経絡学』、『腧穴学』、『全訳鍼灸治療学』、『全訳鍼灸治療学』が完成しました。これに東洋学術の『中国鍼灸各家学説』(今村の翻訳が遅いから先に出版されてしまった。あんなに出したがっていたのに)が加わって、ついに6冊の教科書が完成しました。これで私が約束している鍼灸教科書は『全訳鍼灸医籍選』のみとなりました。このうち鍼灸専門は『全訳経絡学』、『腧穴学』、『全訳鍼灸治療学』、『全訳鍼灸治療学』、『中国鍼灸各家学説』、『全訳鍼灸医籍選』の6冊です。これに漢方薬共通教材である『全訳中医基礎理論』、『全訳中医診断学』が加わって8冊。そして北京中医学院だけの特殊教材である『鍼灸医経選』、『全訳腧穴参考資料上』、『腧穴参考資料下』を加えてゆきたいと思います。『鍼灸医経選』、『全訳腧穴参考資料上』、『腧穴参考資料下』は、上海科技の全国共通教科書ではないのですが、北京中医のノスタルジーとして、教科書には違いないので加えるように交渉しようと思います。
教科書シリーズ私も残り4冊、今村氏は崩れたので、代わりに田久和氏が後任になりました。
たにぐちの社長は、教科書シリーズを全巻発刊したい意向で、我々が鍼灸関係以外の教科書は翻訳しないというと(中医内科学は何なんだ?)、ひどくガックリしてました。でも餅は餅屋、漢方薬は漢方薬屋ということで、棲み分けが必要です。私も、素霊や難、甲乙や資生、聚英や大成などはともかく、鍼灸の何倍も書籍量のある漢方まで手を出すわけには参りません。中医内科学は、神戸の鍼灸師のお姐ちゃんが谷口書店へ話を持ち込み、私が「それは売れるんじゃあ、あーりませんか」と太鼓判を押した手前、そのお姐ちゃんが中医内科学の翻訳について、まったく音信不通となり(生きてるかホレ)、社長に出版ゴーをそそのかした私が責任をとることになりました。それに辨証関係の本でもあるし、鍼灸治療学の副読本として参考になるかなとも思ったからです。
しかし、このような煮え湯を飲まされたので、私は今後、教科書シリーズをやりたいという人をよほどでない限り推薦はしません。残りの中薬学、方剤学、内経講義、傷寒論講義、金匱要略講義、温病学、中医各家学説、中薬鑑定学、中薬炮製学、中薬薬剤学など、漢方薬を勉強している方が翻訳原稿を持ち込めば、たぶん90%ぐらいの確率で出版してもらえると思います。社長も煮え湯を飲まされているので、翻訳したいという話だけで原稿もなしではOKしないでしょう。
目次 第1章 鍼法灸法学概論 1.1 砭刺と鍼法の起源 1.2 九鍼の応用と発達 1.3 鍼法の発達 1.4 灸法と抜罐法の起源と進歩 第2章 毫鍼の刺鍼法 2.1 毫鍼の構造と管理 2.2 刺鍼前の準備 2.3 刺鍼方法 2.4 刺鍼の禁忌、事故の予防と処置 第3章 『内経』と『難経』の鍼法 3.1 『内経』の鍼法 3.2 『難経』の鍼法 |
第4章 『金鍼賦』と『鍼灸大成』の鍼法 4.1 『金鍼賦』の鍼法 4.2 『鍼灸大成』の鍼法 第5章 灸法 5.1 灸法の特徴と作用 5.2 灸法の分類と応用 5.3 灸治療の注意事項 第6章 三稜鍼、皮膚鍼、火鍼、挑刺、芒鍼 6.1 三稜鍼 6.2 梅花鍼(皮膚鍼) 6.3 火鍼 6.4 挑刺(挫刺) 6.5 芒鍼 |
第7章 耳鍼、頭鍼、腕踝鍼 7.1 耳鍼 7.2 頭鍼 7.3 腕踝鍼 第8章 電気鍼、水鍼(ブロック注射) 8.1 電気鍼 8.2 水鍼 第9章 穴位埋線と穴位磁気療法 9.1 穴位埋線 9.2 穴位磁気治療 第10章 レーザー鍼、鍼法灸法の研究と発展 10.1 レーザーの穴位照射 10.2 鍼法灸法の研究発達 あとがき |
● 本文内容見本 電気鍼から抜粋 ④音声電流:ラジオから出る言葉や音楽、騒音などの音声電流で人体を刺激するものである。音声電流は振幅や周波数が刻々と変化して極めてランダムなため、電流に対する身体の慣れが起こりにくい。 電気刺激の周波数を選ぶとき、神経の電気刺激に対する伝導もに考慮しなければならない。神経に対する電気刺激の伝導は、一般に2500回/秒の範囲とする。これより高い周波数のパルスを使っても、神経は一秒間に2500回までしか伝導しないので、それ以上の電気がムダになってしまう。 8・1・2 操作方法 電気鍼では、ステンレス鍼だけでなく銀鍼も使う。一般に26~28号の太い毫鍼を使う。また通電を鍼尖に集中させるため鍼体にエナメルを塗り、鍼尖だけを露出した絶縁鍼も使われる。 電気鍼器を使う前に、電流のツマミを0にする。そして電気鍼器に二つのクリップの付いたコードを繋ぎ、それぞれのクリップで別々の毫鍼を挟む。一般に一対の電極を身体の同側に繋ぐ。特に胸や背部に電気鍼を使うときは、身体をコードが跨がらないようにして、回路が心臓を流れないよう注意する。スイッチを入れるときと切るときは、電流を徐々に大きくしたり小さくし、不意に患者に大きな電流を流すことのないようにする。治療では15分ぐらい通電し、低い周波数から高めてゆき、患者に怠い、腫れぼったい、熱いなどの感覚や、局部の筋肉にリズミカルな収縮が起きるようにする。長く通電していると、患者の身体が徐々に慣れて刺激が弱くなる。そうなったら刺激を強くするか、間欠通電する。つまり数分間通電したあと通電を数分間止め、再び通電する方法である。 1穴だけに通電するときは、主要な神経幹が通っている穴位(下肢なら環跳穴など)に刺鍼し、もう一方の電極は水で湿らせたガーゼに繋いで不関電極(不用電極,無刺激電極)とし、同側経絡の皮膚に固定する。隣り合った穴位に電気鍼するときは、毫鍼どうしの間を乾いた綿花で隔てるなどしてショートさせないようにし、治療効果に影響を与えたり機械が壊れないよう防止する。 8・1・3 電気鍼の選穴 電気鍼での選穴は、経絡に基づいた取穴と、神経分布に基づいて神経幹の通っている穴位や筋肉運動点などを取穴する二つの選穴方法がある。 顔面:顔面神経には聴会と翳風を取る。三叉神経には下関、四白、陽白、夾承漿を取る。 上肢:腕神経叢には第6~第7頚椎の夾脊穴、天鼎を取る。尺骨神経には青霊と小海を取る。橈骨神経には手五里、曲池を取る。正中神経には曲沢と郄門を取る。 下肢部:坐骨神経には環跳と殷門を取る。脛骨神経には委中を取る。総腓骨神経には陽陵泉を取る。大腿神経には衝門を取る。 腰仙部:腰神経には気海兪を取る。仙骨神経には八髎を取る。 穴位の配穴:一般に損傷部位を支配する神経を取る。例えば(1)顔面神経麻痺には聴会か翳風を主とし、額なら陽白、頬は顴髎、口角は地倉、眼瞼は瞳子髎を配穴する。(2)上肢の麻痺には天鼎か缺盆を主とし、三角筋には肩髎か臑上、上腕三頭筋は臑会、上腕二頭筋は天府を配穴する。手根屈筋と総指伸筋は曲池を主とし、手五里か四瀆を配穴する。(3)下肢の麻痺で、大腿前面は衝門か外陰廉を主とし、髀関か箕門を配穴する。臀部や大腿後面は環跳か秩辺を主とし、下腿の後面では委中、下腿外側では陽陵泉を配穴する。主穴と配穴に刺鍼するときは、鍼感が病巣に達してからパルス器に繋ぐとよい。 8・1・4 電気鍼に影響する要因 電気鍼の効果には明らかに個体差がある。効果に影響を及ぼす要素は複雑だが、ほぼ2つにまとめられる。それは身体の機能状態と与えられる刺激である。身体の機能状態とは、例えば患者の心理状態、情緒、自律神経の機能が安定しているかどうか、さらに病気の性質などが電気鍼の効果に影響を与えるが、こうした影響は刺鍼に対する影響と似たような作用なので、ここでは改めて説明しない。そこで刺激の条件と電気刺激効果に対する影響を述べてみたい。 刺激部位:電気鍼では循経取穴を主とするが、神経分節や経験取穴によっても取穴する。一般の鍼治療と同じく、選穴が合理的であれば治療効果がよく、そうでないと効果が劣る。一般の穴位では神経幹に刺鍼するときよりも刺激量を大きくしなければならない。電気鍼に対する反応の大きさは鍼感の強弱と密接な関係があって、神経に近いほど鍼感は強くなる。しかし刺激の強さにも程度があって、20mA以上では神経を損傷する恐れがある。例えば神経幹を電気鍼で直接刺激すれば、筋肉が激しく収縮するので患者は耐えられない。また交感神経と内臓痛は密接な関係にあり、陰極で背兪穴を刺激すれば交感神経に作用し、内臓痛が明らかに抑制される。また運動点や疼痛点、交感神経節を刺激する方法もある。 刺激のパラメーター:波形、振幅、パルス幅、周波数、リズムや刺激時間などが刺激量となる。電気鍼の刺激量は、刺鍼手法や薬物量と同じく、重要な意義がある。 波形:電気鍼に常用される刺激波形には、正弦波、棘波、矩形波がある。各波形には単方向と双方向の波形があり、正方向は矩形波(方形波)で負方向が棘波の波形もある。臨床治療の必要性によって、パルスどうしが異なる方式で組み合わされ、連続波、疎密波、断続波、ゆらぎ波、ノコギリ波などになる。 棘波:容易に皮膚を通過して組織器官中に拡散し、運動神経や筋肉に興奮作用を起こして筋肉の血液循環と組織栄養を改善し、新陳代謝を向上させて神経の再生を促す。臨床では、末梢神経性の顔面神経麻痺、末梢神経の損傷、小児麻痺の後遺症、筋肉の萎縮、尿貯溜、尿失禁、胃下垂、腹の膨隆、声帯麻痺、眼瞼下垂などに用いられる。痙性麻痺や急性の炎症、出血性の疾患には使わない。 矩形波:消炎鎮痛、鎮静催眠、鎮痙、肢体の機能回復、組織の吸収促進、止痒、降圧などの作用がある。臨床ではギックリ腰、慢性腰痛、片麻痺、神経性頭痛、不眠、末梢神経炎、皮神経炎、腸の癒着、腸の膨満、胃腸痙攣、ガングリオン、変形性関節炎、ジンマシン、神経性皮膚炎、高血圧などで用いられる。 正弦波:神経筋肉の張力を調節する。密波は身体の反応を抑制し、疎波は興奮させ、疎密波は鎮痛、血液循環の促進、滲出物の吸収を促すなどの作用がある。神経痛、神経炎、筋炎、捻挫、初期の閉塞性動脈炎、片頭痛、筋肉萎縮、全麻痺などに用いられる。 これらの波形に共通する特徴は、単調さと周期性があるため、身体が慣れてしまうことである。そこで現在では騒音や音声電流に近い波形が登場した。その特徴は複合波で、波長や振幅、周波数、リズムなどのパラメーターが刻々と変化することにあり、鍼麻酔や臨床治療で優れた効果がある。痛覚域値を上げるのにもっとも優れているのは混成波で、それには音楽電流と棘波の混成波などがある。 刺激の強さ:主に振幅の高さによって決まる。ピーク値の電圧によって表示されているが、通常は20V(0.2~60V)以内である。しかし身体の変動要因は多いため電流値の表示もあればよい。一般に電流は2mA以内で、1mA以下がよく使われる。電圧と電流を掛けた積が表示された機器もある。電気に対する感受性は固体差があるので、刺激する強さは人によって異なるが、一般に中程度で、患者が耐えられるぐらいがよく、強すぎたり弱すぎれば治療効果に影響する。単調なパルス刺激では身体が適応するので、単調なパルスを使うときは、感じが弱くなったら刺激量を、そのつど強くする。 周波数:周波数と治療効果に対する見解は現在でも一致していない。30~10000Hzの間では痛覚域値の向上と周波数が正比例し、組織に対する損傷も鍼体の電解も少ないので周波数が高い方がよいと考える人もある。しかし刺激する周波数が高くなると鎮痛効果はかえって減少し、周波数が高すぎると筋肉が跳動したり緊張したり痙攣して、痛みや筋肉疲労を起こすので30Hz以下の低い周波数がよいと考える人もある。動物実験によると周波数が低ければもがき、周波数を高めるとイライラするので、40~160Hzがよいと考える人もある。また周波数、振幅、波長、刺激時間などが影響を及ぼし合うとする人もある。例えば低い振幅のパルスで穴位を刺激するときは、1000Hzの周波数が鎮痛効果に優れ、振幅が高ければ1Hzが最もよい。またパルス幅が0.1msで0.3mAの電流に固定されていれば、60Hzの周波数で最も域値が高くなり、パルス幅が0.6msでは周波数が30Hz以上だと効果が悪い。刺激時間が同じであれば、周波数が高いとパルス振幅を小さくしなければならず、パルス振幅が同じであれば、周波数を高くすると同じ効果を得られるまでの時間が少なくてよい。実験によればパルス幅1msで電流の強さが最も理想的となり、パルス幅が狭すぎたり広すぎると、ピーク電圧(波高電圧)が高くなり過ぎたり電流が強くなり過ぎるため、身体に損傷性の刺激となる可能性が高い。そうすると普遍的な刺激パラメーターを捜し出すのは困難なことになる。だからケースバイケースで刺激量を変化させるしかない。 補瀉:電気鍼でも補瀉を言う人がある。波形が広くて電圧が低く、周波数が高ければ補であり、波形が狭くて電圧が高く、周波数が低ければ瀉である。また波形の起こり始める角度が小さければ補で、大きければ瀉とする人もある。これについては、さらなる研究が待たれる。 8・1・5 注意事項 ①治療する前に、電気鍼器の出力コードが切れていないか調べる。治療が終わったら全ての出力ツマミを0に戻し、スイッチを切ってコードを外す。 ②電気鍼は感応が強く、通電すると筋肉が収縮するので、それを事前に患者に知らせておく。電気鍼の刺激は弱から徐々に強くする。急激に変化させると、失神したり弯鍼、切鍼などが起きる。 ③重症の心臓病患者では、電流回路が心臓を流れないように特に注意する。延髄や脊髄の付近に電気鍼するときは、電流を少し弱くしなければならない。強く電気刺激すると事故を起こす。 ④左右両側で対称な穴位に電気鍼するとき、一側の感覚が強過ぎれば左右の出力コードを入れ替える。入れ替えて強い感じが弱まり、弱い感じが強くなれば、電気鍼器の出力電流に極性がある。入れ替えても感覚の変化がなければ、左右で異なる解剖部位に刺鍼しているために感じ方が違うのである。 ⑤灸頭鍼に使った毫鍼は、鍼柄が酸化して伝導不良になっている。鍼柄にアルミを巻いた毫鍼もあり、アルマイト処理で黄色くなっているが、それも電気を通さない。こうした毫鍼は使わないほうがよいが、それしかなければ鍼体部分をクリップで挟む。 ⑥電気鍼をするとき、出力電流が通じたり切れたりする場合、出力コードが切れたりコードの接合部が接触不良になっていることが多い。修理してから使う。 ⑦何回も電気鍼した毫鍼は、鍼体が電蝕していることが多いので、消毒する前に検査して切鍼が起きないようにする。 【付記】電気鍼器の種類と仕様 電気鍼器は種類が多い。出力電圧をコントロールでき、必要な電流が得られる機械ならば、どれでも電気鍼器になる。しかし最大出力電圧と電流量の関係に注意しなければならない。例えば最大出力40V以上なら、最大出力電流は1mA以内にしなければ感電の恐れがある。ここで常用される電気鍼の構造と性能をいくつか説明する。 ①G6805型電鍼治療儀 (1) 基本性能:本機の性能は安定しており、交流でも直流でも使え、連続波、疎密波、断続波が使える。連続波の周波数は160~5000回/分、疎密波と断続波は14~26回/分である。正パルスの振幅(ピーク値)は50V、負パルスの振幅(ピーク値)は35Vで、正パルスのパルス幅は500μs、負パルスは250μsである(以上は1kΩの負荷での数字)。 機械の出っ張りには五つの出力ソケットが付いており、その下の平面板には五つの出力調整ツマミがあって、そのツマミで出力を調節できるようになっている。そのソケットには通電コードや湿式電極板を挿し込めるようになっている。平面板には中央にツマミがあって連続波、疎密波、断続波などの出力波形が選べる。右側のツマミは連続波にしたときのパルス間隔を調節するツマミである。左側は疎密波や断続波にしたときの周波数調節のツマミである。スライドスイッチは交流電源か乾電池電源かを選択する。パイロットランプは連続波、疎密波、断続波のパルス間隔を表示する。 |
なお、この引用は、出版社の許可を受けていません。勝手に引用しています。でも訳した本人だから、いいんよう……な~んちゃって。
北京堂鍼灸ホーム