腧穴学 (ゆけつがく)
 


-大学中医学教本-
 穴学

翻訳 今村隆神鍼
主編  楊甲三 /副主編 曹一鳴 
発行所 (株)たにぐち書店(℡03-3980-5536 Fax03-3590-3630)
定価 3000円A5判 414頁(ISBN4-925181-32-7 C3247)
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 推薦文
※大学中医学院教本シリーズ第3弾!
 明治鍼灸と北京中医の後輩である今村隆氏が訳した本です。

穴学の翻訳者・今村隆氏のプロフィール
 神戸在住。1984年、甲南大学法学部卒業。1988年、明治東洋医学院針灸科卒業。文部省より中国国費留学生として北京中医薬大学に3年間在籍(鍼灸学、中医内科を専攻)、元北京中医薬大学非常勤教員。現在、華佗堂鍼灸院院長、中国医学塾「華佗塾」開塾。
 
 大学中医学院教材(中医薬大学統一教材、五版教材)について
  この五版教材は中医学習者、中医薬関係者にとって必要不可欠な教材である。なぜなら本書は中国大陸の中医薬大学、および中医学院の教育の場(本科)で普遍的に長期に渡って用いられており、日中両国の中医、中医鍼灸の学術交流にとっても、共通の土俵で話をするために、その日本語版は中医関係者、中国留学予定者、および鍼灸学習者が待望する書でもあった。 この五版教材『中医基礎理論』『経絡学』『兪穴学』はビデオ中医通信教育会「華佗塾」のテキストでもある。 華佗塾テキストとしては、上海科技出版社の試用教材である『中医基礎理論』『経絡学』『兪穴学』『刺法灸法学』『鍼灸治療学』『中医診断学』『各家鍼灸学説』『鍼灸医籍選』『鍼灸医経選』を予定しているが本書はそのうちの3冊を翻訳、校正、出版したもののうちの一冊である。『中医基礎理論』と『経絡学』は淺野周が担当し、『兪穴学』は今村神鍼(しんぜん)が担当して翻訳した。幸いにも国内外の関係者(中国では北京中医薬大学の楊甲三教授、張吉教授、上海中医薬大学の李鼎教授、天津中医学院の曹一鳴教授、日本では緑書房の山田真智子女史)の御支持と御協力を賜り、谷口書店の谷口直良社長のご厚意で出版することができた。関係者各位には、御協力に対して最大の感謝の意と敬意を表したい。
 これら五版教材の出版によって、21世紀の日本の鍼灸界と漢方界に「日中共通の教材」という新しい芽が着実に根付いて育ち、互いの学術交流が盛んになる事を待望するものである。         

                          2002年9月 吉日
                          華佗塾代表  今村神鍼(しんぜん)
                                    
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        華佗塾かだじゅく事務局

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目次
 第1章 兪穴学概論

 兪穴学の定義と内容
 1.1兪穴の起源とその発展 
 1.2兪穴と臓腑経路の関係
 1.3兪穴の分類
 1.3.1経穴 
 1.3.2奇穴
 1.3.3阿是穴(あぜけつ)
 1.4兪穴の命名
 1.4.1自然類
 1.4.2物象類
 1.4.3人体類
 1.5兪穴の定位方法
 1.5.1骨度法
 1.5.3手指比量法
 1.5.4簡便取穴法
 1.6特定穴
 1.6.1五兪穴
 1.6.2原穴(げんけつ)
 1.6.3絡穴(らくけつ)
 1.6.4穴(げきけつ)
 1.6.5背兪穴(はいゆけつ)
 1.6.6募穴(ぼけつ)
 1.6.7八会穴(はちえけつ)
 1.6.8八脉交会穴(はちみゃくこうえけつ)
 1.6.9下会穴(しもごうけつ)
 1.6.10交会穴(こうえけつ)
 1.7兪穴の作用
 1.7.1病症に反応し診断を助ける
 1.7.2刺激を受け入れ、疾病を予防し治療する
 1.8兪穴の主治法則
 1.8.1分経主治法則
 1.8.2分部主治法則
 第2章 兪穴学各論
 2.1 手太陰肺経、経穴
中府(ちゅうふ)、雲門(うんもん)、天府(てんぷ)、侠白(きょうはく)、尺沢(しゃくたく)、孔最(こうさい)、列缺(れっけつ)、経渠(けいきょ)、太淵(たいえん)、魚際(ぎょさい)、少商(しょうしょう)
本経小結
 2.2手陽明大腸経、経穴
商陽(しょうよう)、二間(じかん)、三間(さんかん)、合谷(ごうこく)、陽谿(ようけい)、偏歴(へんれき)、温溜(おんる)、下廉(げれん)、上廉(じょうれん)、手三里(てさんり)、曲池(きょくち)、肘(ちゅうりょう)、手五里(てごり)、臂臑(ひじゅ)、肩(けんぐう)、巨骨(ここつ)、天鼎(てんてい)、扶突(ふとつ)、禾(かりょう)、迎香(げいこう)
本経小結
 2.3足陽明胃経、経穴
承泣(しょうきゅう)、四白(しはく)、巨(こりょう)、地倉(ちそう)、大迎(だいげい)、頬車(きょうしゃ)、下関(げかん)、頭維(ずい)、人迎(じんげい)、水突(すいとつ)、気舎(きしゃ)、缺盆(けつぼん)、気戸(きこ)、庫房(こぼう)、屋翳(おくえい)、膺窓(膺窗)(ようそう)、乳中(にゅうちゅう)、乳根(にゅうこん)、不容(ふよう)、承満(しょうまん)、梁門(りょうもん)、関門(かんもん)、太乙(たいいつ)、滑肉門(かつにくもん)、天枢(てんすう)、外陵(がいりょう)、大巨(だいこ)、水道(すいどう)、帰来(きらい)、気衝(きしょう)、髀関(ひかん)、伏兎(ふくと)、陰市(いんし)、梁丘(りょうきゅう)、犢鼻(とくび)、足三里(あしさんり)、上巨虚(じょうこきょ)、条口(じょうこう)、下巨虚(げこきょ)、豊隆(ほうりゅう)、解谿(かいけい)、衝陽(しょうよう)、陥谷(かんこく)、内庭(ないてい)、厲兌(れいだ)
本経小結
2.4足太陰脾経、経穴
隠白(いんぱく)、大都(だいと)、公孫(こうそん)、商丘(しょうきゅう)、三陰交(さんいんこう)、漏谷(ろうこく)、地機(ちき)、陰陵泉(いんりょうせん)、血海(けっかい)、箕門(きもん)、衝門(しょうもん)、府舎(ふしゃ)、腹結(ふくけつ)、大横(だいおう)、腹哀(ふくあい)、食竇(しょくとく)、天谿(てんけい)、胸郷(きょうきょう)、周栄(しゅうえい)、大包(だいほう)
本経小結
2.5手少陰心経、経穴
極泉(きょくせん)、青霊(せいれい)、少海(しょうかい)、霊道(れいどう)、通里(つうり)、陰(いんげき)、神門(しんもん)、少府(しょうふ)、少衝(しょうしょう)
本経小結
2.6手太陽小腸経、経穴
少沢(しょうたく)、前谷(ぜんこく)、後谿(こうけい)、腕骨(わんこつ)、陽谷(ようこく)、養老(ようろう)、支正(しせい)、小海(しょうかい)、肩貞(けんてい)、臑兪(じゅゆ)、天宗(てんそう)、秉風(へいふう)、曲垣(きょくえん)、肩外兪(けんがいゆ)、肩中兪(けんちゅうゆ)、天窓(天窗)(てんそう)、天容(てんよう)、顴(けんりょう)、聴会(ちょうえ)
本経小結
2.7足太陽膀胱経、経穴
睛明(せいめい)、攅竹(さんちく)、眉中(びちゅう)、曲差(きょくさ)、五処(ごしょ)、承光(しょうこう)、通天(つうてん)、絡却(らっきゃく)、玉枕(ぎょくちん)、天柱(てんちゅう)、大杼(だいじょ)、風門(ふうもん)、肺兪(はいゆ)、厥陰兪(けついんゆ)、心兪(しんゆ)、督兪(とくゆ)、膈兪(かくゆ)、肝兪(かんゆ)、胆兪(たんゆ)、脾兪(ひゆ)、胃兪(いゆ)、三焦兪(さんしょうゆ)、腎兪(じんゆ)、気海兪(きかいゆ)、大腸兪(だいちょうゆ)、関元兪(かんげんゆ)、小腸兪(しょうちょうゆ)、膀胱兪(ぼうこうゆ)、中膂兪(ちゅうりょゆ)、白環兪(はくかんゆ)、上(じょうりょう)、次(じりょう)、中(ちゅうりょう)、下(げりょう)、会陽(えよう)、承扶(しょうふ)、殷門(いんもん)、浮(ふげき)、委陽(いよう)、委中(いちゅう)、附分(ふぶん)、魄戸(はくこ)、膏肓兪(こうこうゆ)、神堂(しんどう)、譩譆(いき)、膈関(かくかん)、魂門(こんもん)、陽綱(ようこう)、意舎(いしゃ)、胃倉(いそう)、肓門(こうもん)、志室(ししつ)、胞肓(ほうこう)、秩辺(ちっぺん)、合陽(ごうよう)、承筋(しょうきん)、承山(しょうざん)、飛陽(ひよう)、陽(ふよう)、崑崙(こんろん)、僕参(ぼくしん)、申脈(しんみゃく)、金門(きんもん)、京門(けいこつ)、束骨(そっこつ)、足通谷(あしつうこく)、至陰(しいん)
本経小結
2.8足少陰腎経、経穴
湧泉(ゆうせん)、然骨(ねんこく)、太谿(たいけい)、大鐘(だいしょう)、水泉(すいせん)、照海(しょうかい)、復溜(ふくりゅう)、交信(こうしん)、築賓(ちくひん)、陰谷(いんこく)、横骨(おうこつ)、大赫(だいかく)、気穴(きけつ)、四満(しまん)、中注(ちゅうちゅう)、肓兪(こうゆ)、商曲(しょうきょく)、石関(せきかん)、陰都(いんと)、腹通穀(ふくつうこく)、幽門(ゆうもん)、歩廊(ほろう)、神封(しんぷう)、霊墟(れいきょ)、神蔵(しんぞう)、中(いくちゅう)、兪府(ゆふ)
本経小結
2.9手厥陰心包経、経穴
天池(てんち)、天泉(てんせん)、曲沢(きょくたく)、門(げきもん)、間使(かんし)、内関(ないかん)、大陵(だいりょう)、労宮(ろうきゅう)、中衝(ちゅうしょう)
本経小結
2.10手少陽三焦経、経穴
関衝(かんしょう)、液門(えきもん)、中渚(ちゅうしょ)、陽池(ようち)、外関(がいかん)、支溝(しこう)、三陽絡(さんようらく)、四(しとく)、天井(てんせい)、清冷淵(せいれいえん)、消(しょうれき)、臑会(じゅえ)、肩(けんりょう)、天(てんりょう)、天(てんゆう)、翳風(えいふう)、脈(けいみゃく)、顱息(ろそく)、角孫(かくそん)、耳門(じもん)、和(わりょう)、絲竹空(しちくくう)
本経小結 
2.11足少陽胆経、経穴
瞳子(どうしりょう)、聴会(ちょうえ)、上関(客主人)(じょうかん)、頷厭(がんえん)、懸顱(けんろ)、懸釐(けんり)、曲鬢(きょくびん)、率谷(そっこく)、天衝(てんしょう)、浮白(ふはく)、頭竅陰(とうきょういん)、完骨(かんこつ)、本神(ほんじん)、陽白(ようはく)、頭臨泣(とうりんきゅう)、目窓(目窗)(もくそう)、正営(しょうえい)、承霊(しょうれい)、脳空(のうくう)、風池(ふうち)、肩井(けんせい)、淵液(えんえき)、輒筋(ちょうきん)、日月(じつげつ)、京門(けいもん)、帯脈(たいみゃく)、五枢(ごすう)、維道(いどう)、居(きょりょう)、環跳(かんちょう)、風市(ふうし)、中(ちゅうとく)、膝陽関(しつようかん)、陽陵泉(ようりょうせん)、陽交(ようこう)、外丘(がいきゅう)、光明(こうめい)、陽輔(ようほ)、懸鐘(けんしょう)、丘墟(きゅうきょ)、足臨泣(あしりんきゅう)、地五会(じごえ)、侠谿(きゅうけい)、足竅陰(あしきょういん)
本経小結
2.12足厥陰肝経、経穴
大敦(だいとん)、行間(こうかん)、太衝(たいしょう)、中封(ちゅうふう)、蠡溝(れいこう)、中都(ちゅうと)、膝関(しつかん)、曲泉(きょくせん)、陰包(いんぽう)、足五里(あしごり)、陰廉(いんれん)、急脈(きゅうみゃく)、章門(しょうもん)、期門(きもん)
本経小結
2.13任脈、経穴
会陰(えいん)、曲骨(きょっこつ)、中極(ちゅうきょく)、関元(かんげん)、石門(せきもん)、気海(きかい)、陰交(いんこう)、神闕(しんけん)、水分(すいぶん)、下(げかん)、建里(けんり)、中(ちゅうかん)、上(じょうかん)、巨闕(こけつ)、鳩尾(きゅうび)、中庭(ちゅうてい)、中(だんちゅう)、玉堂(ぎょくどう)、紫宮(しきゅう)、華蓋(かがい)、璇璣(せんき)、天突(てんとつ)、廉泉(れんせん)、承漿(しょうしょう)
本経小結
2.14督脈、経穴
長強(ちょうきょう)、腰兪(ようゆ)、腰陽関(こしようかん)、命門(めいもん)、懸枢(けんすう)、脊中(せきちゅう)、中枢(ちゅうすう)、筋縮(きんしゅく)、至陽(しよう)、霊台(れいだい)、神道(しんどう)、身柱(しんちゅう)、陶道(とうどう)、大椎(だいつい)、門(あもん)、風府(ふうふ)、脳戸(のうこ)、強間(きょうかん)、後頂(ごちょう)、百会(ひゃくえ)、前頂(ぜんちょう)、会(しんえ)、上星(じょうせい)、神庭(しんてい)、素(そりょう)、水溝(すいこう)、兌端(だたん)、齦交(ぎんこう)
本経小結
2.15経外奇穴
頭部
神聡(しんそう):百会の四方、それぞれ一寸ずつ。
印堂(いんどう):眉間の窪み。
太陽(たいよう):目尻の後ろ一寸。
魚腰(ぎょよう):眉毛の中央。
球後(きゅうご):眼窩下縁の外から1/4と内から3/4の交点。
上迎香(かみげいこう):鼻唇溝の上端。
内迎香(うちげいこう):鼻孔内の上端。
牽正(けんせい):耳の前0.5~1寸。
夾承漿(きょうしょうしょう):承漿の両側一寸。
頬裏(きょうり):頬の裏側で、口角から1寸。
聚泉(しゅうせん):舌の中央。
金津玉液(きんしん・ぎょくえき):舌下のある両側の静脈。
耳尖(じせん):耳の尖端、耳を前に押して尖ったところ。
翳明(えいめい):
安眠(あんみん):
上廉泉(かみれんせん):
新設(しんせつ):
頚臂((けいひ):
百労(ひゃくろう):
崇骨(そうこつ):

体幹部
胃上(いじょう):
臍中四辺(さいちゅうよんへん):
三角灸(さんかくきゅう):
利尿穴(りにょうけつ):
気門(きもん):
提托(ていたく):
子宮穴(しきゅうけつ):
血圧点(けつあつてん):
定喘(ていぜん):
巨闕兪(こけつゆ):
接脊(せつせき):
下極兪(かきょくゆ):
十七椎穴(じゅうななついけつ):
腰奇(ようき):
肘椎(ちゅうつい):
胃管下兪(いかんげゆ):
痞根(ひこん):
腰眼(ようがん):
夾脊(きょうせき):

四肢部
十宣(じゅっせん):
八邪(はちじゃ):
虎口(ここう):
大骨空(だいこつくう):
中魁(ちゅうかい):
小骨空(しょうこつくう):
五虎(ごこ):
拳尖(けんせん):
威霊、精霊(いれい、せいれい):
外労宮(がいろうきゅう):
中泉(ちゅうせん):
四縫穴(しほうけつ):
二白(にはく):
手逆注(てぎゃくちゅう):
肘尖(ちゅうせん):
奪命(だつめい):
肩前(けんぜん):
気喘(きぜん):
八風(はっぷう):
独陰(どくいん):
裏内庭(うらないてい):
女膝(じょしつ):
闌尾穴(らんびけつ):
胆嚢穴(たんのうけつ):
陵後(りょうご):
膝眼(しつがん):
鶴頂(かくちょう):
百虫窩(ひゃくちゅうか):
第3章 附篇
3.1常用鍼灸歌訣
3.1.1四聡穴歌(しそうけつか)
3.1.2回陽九鍼歌(かいようきゅうしんか)
3.1.3馬丹陽天星十二穴併治雑病歌(ばたんようてんせいじゅうにけつ)
3.1.4孫思先生鍼十三鬼穴歌(そんしばくせんせいはりじゅうさんきけつか)
3.1.5井榮兪原経合歌(せいえいゆげんけいごうか)
3.1.6十二経治症主客原絡
3.1.7十五絡穴歌
3.1.8八脉八穴治症歌
3.1.10十二背兪穴歌
3.1.11十二募穴歌
3.1.12八会穴歌
3.1.13下合穴歌
3.1.14十六穴歌
3.1.15骨度分寸歌
3.2古代の体表部位の名称の解説

訳者あとがき




















● 本文内容見本  
総論から抜粋
1,1兪穴の起源とその発展
  兪穴は長い時の流れの中で、人々の医療活動の中で次々に見つけだしてきたものである。遙か新石器時代、我々の祖先はすでに石(へんせき・石のやじりのようなもの)により瀉血治療を行い、膿瘍を切り裂き、或はそれを少し温め患部に当てたり、また按摩に用い、体表を叩き刺激してきた。又体表の患部を火で焼いたり、あぶったりする方法により傷の痛みを和らげたりした。長い時の流れがあり、そうする内にだんだんと人体のある特殊な部位が疾病を治療できるという作用があることがわかってきたのである。これがつまり兪穴の発見の初期の段階であるといえる。最初の頃はただ病気で痛む局所を刺灸(しきゅう・針を刺したり灸をしたりする施術)する部位であるとした。
 つまりは「以痛為兪」(痛いところをツボとする。)『霊枢・経筋』がこれである。当時は兪穴として固定した部位はなく、又穴名などは関係がなかった。その後人々の医療経験が蓄積されるにしたがって、初めてある特殊な「按之快然。」(押さえて心地よい。)又は「駆病迅捷」(病気を治すのが早い)という様な部位を石処(へんせきしょ)と呼ぶようになったのである。例えば名医扁鵲(へんじゃく・難経を著した人物)が国(かくこく)の皇太子を仮死状態から蘇生させた時に「三陽五輸」という穴位(百会もしくは三陰交)を用いたようなものである。
  馬王堆(ばおうたい)の漢墓から出土した『帛書・脉法』(はくしょ・みゃくほう)中の「陽上于環二寸而益為一久。」や『五十二病方』中の「久足中指。」(灸を足の中指にすえる。)や「久左」(灸を脛にすえる。)等は全て刺灸部位を示したものといえる。これらは早くも中国戦国時代初期(紀元前160年頃)にすでに経穴の概念が形成されていたことを物語っているといえる。又長期に渡る大量の医療活動を経て、人々の兪穴の部位とその特徴、それにその治療範囲に対する認識は更に一歩前進したといえる。ただその位置を確定するだけでなく、主治を明確にし、併せて名称を付けてから、兪穴は系統的に分類されていったのである。 
 中国の初期の著作で中国医学の教典『黄帝内経・こうていだいけい』(簡称・内経)一書は兪穴の位置に言及すると同時に名称、分経、主治等も述べ、兪穴学の形成と発展に基礎を作り上げたものといえる。
 その後『黄帝八十一難経・こうていはちじゅういち、なんぎょう』(簡称・難経)では初めて八会穴という概念が打ち出された。併せて、原穴、兪募穴、五兪穴、の全てについて明確にした。
 晋代の皇甫謐(こうほみつ)は『素問』(黄帝内経は素問と霊枢の二書から構成される。)、『針経』(霊枢のこと)『明堂孔穴鍼灸治要』を編纂し直して『鍼灸甲乙経』(簡称・甲乙)を著した。これは中国に現存する最古の鍼灸に関する専門書である。全巻十二巻、百二十八篇、その中でも七十余篇は兪穴の内容について専門的に述べた部分である。その穴位名、別名、位置、取穴方、主治、配穴、何経の脉気が発する所で、何経と交会(経絡の交差)するのか、又鍼刺の深さ、置鍼の時間、灸の壮数、禁針禁灸、および誤刺誤灸がもたらす副作用に至るまで全面的に述べられている。併せて兪穴の順序について整理を行い、頭面部、体幹部の穴位は線を引き区分けして並べて書かれており、四肢は経絡により区分されて書かれている。この様にこの書は晋代以前の鍼灸学の集大成であり、兪穴学の理論と実践の発展に大きな貢献をもたらしたものといえる。
 
唐代の孫思(そんしばく)の著した『備急千金要方・びきゅうせんきんようほう』(簡称千金方)、及び『千金翼方・せんきんよくほう』(簡称千金翼)各三十巻は兪穴の配穴を発展させ、多くの経外奇穴を収集した。又実用的な足三里穴の予防医学的な灸治療の応用を紹介するなど、兪穴の使用範囲を予防医学の分野にまで拡大した。孫思は又、カラー刷りの『明堂三人図』を画き、十二経脉、奇経八脉等もそれぞれ画いた。しかしこれは惜しくも散失してしまっている。
 宋代の王維一(おういいつ)は天聖四年(1026年)朝廷の命を受け鍼灸兪穴の取穴方を新しく詳細に定め直し、その誤りを訂正して『銅人兪穴鍼灸図経』(簡称銅人)三巻を著した。これは詳しく穴位の名称、部位、主治、刺灸等の内容について記載があり、併せて重要な穴位の下に各自歴代の鍼灸名医の臨床カルテ、又は治験が載せられているものであった。更に彼は12枚より成る十二経穴図を画き、これは政府より発行された。またその翌年には男女の兪穴銅人模型が教材として鋳造された。これは鍼灸の学習をより便利にする為のもので、後世の鍼灸の教学体制に一つの規範を確立したものといえる。この鍼灸銅人を用いて医師をテストする方法はずっと明代にまで継承され続け、これは鍼灸の教学効果を高めた点において、大きな貢献であったといえる。又この銅人の図を石碑の上に刻み、民衆に示し、学習する者が見学できるようにした。
 元代の滑伯仁(かつはくじん)は『十四経発揮』(簡称・発揮)三巻を著した。これは任脉、督脉を十二正経と併せて、十四経と称した考え方の始まりであったといえる。また『聖済総録』(簡称・聖済)や『金蘭循経』の先例に倣い、全身の経穴を『霊枢・経脉』篇の循行の順序によって並べ「十四経穴」と称した。
 明代の楊継洲(ようけいしゅう)が著した『鍼灸大成』(簡称大成)十巻は、明代以前の鍼灸の古医籍の良いところだけを取り上げて集大成したもので、一つの総合性的鍼灸著作であるといえる。この書は兪穴の主治する各証に対して疾病別に分けて論述を加え、非常に詳しく述べ、又辨証選穴の例を列挙し、針灸の辨証論治の内容を充実させたものであった。又併せて針灸のカルテも記載し後学の者の参考としている。
 清代の鍼灸は明代ほどの隆盛さには欠けていた。清王朝の作った医学界は中薬(漢方薬)を重視し鍼灸を軽視していたからである。そんな状況の下、李学川は鍼灸と方剤の源を探り理論的に一致させた。この様に『鍼灸逢源』(簡称・逢源)六巻は著された。彼は歴代鍼灸医書の中で記載された十四経の穴位を361個掲載し、これらの穴位は現在に至るまで用いられ続けている。アヘン戦争以後は、中国の鍼灸は日に日に衰退していった。しかし中華人民共和国成立以後、中国医学(中薬、針灸、推拿、気功、養生)の発展とともに、その構成の重要要素である針灸学も重視されるようになった。針灸治療に従事する人々は兪穴の作用、及びある種の規則性を持った関連等に対し、各方面に亘って多くの臨床と実験研究を行い、初歩的な成果を得た。と同時に次々に新しい有効な兪穴が発見されて兪穴学を進歩させてきた。それ以外に穴名、ピンイン(中国語のローマ字表記法。発音を示す)、及び経穴の数、配列順序等に対し統一がなされ、その他多くの仕事がなされた。これらすべては兪穴学の発展、それらの理解の深まりと理論面での充実に対し全て重要な意義を持つものであるといえる。

1・6・6募穴

 臓腑の経気が集まる胸腹部の兪穴を称して募穴(ぼけつ)という。六臓六腑は合計十二の募穴を備えている。(表1ー10)募穴の分布は本経上にあるもの、他経上にあるもの、左右の双穴のもの、正中の単穴のみのもの等色々である。肺経上に分布する本臓の募穴中府。胆経上に分布する本臓の募穴日月、腎臓の募穴京門もこの胆経上に位置する。肝経上に分布する本臓の募穴期門。それに脾臓の募章門。胃経上に分布する大腸の募穴天枢。以上の募穴は全て左右双穴である。その他は全て任脉上に分布する。心包の募穴。心の募穴巨闕。胃の募穴、三焦の募穴石門、小腸の募穴関元。膀胱の募穴中極である。これ等は全て単穴である。
 募穴はまず『素問・奇病論』に見られる。「胆虚気上溢口為之苦、治之以胆之募兪。」
 訳(故に胆の虚で気が上り、口に溢れたものは苦い味がする。これには胆の募穴と胆兪を用いる)とある。 『難経・六七難』では「五臓募在陰、而兪在陽。」(五臓の募は身体の陰の部分にあり、兪穴は身体の陽の部分にある。)との記載があるが具体的な穴位の名称は見られない。『脉経』の時代になってからこれに初めて期門、日月、巨厥、関元、章門、太倉(中)、中府、天枢、京門、中極等十個の募穴の名称と位置が明確に示されたのである。
『甲乙』では三焦の募穴石門を補充した。又後の各医家により心包の募穴、を補充し完全なものとした。

1・6・8八脉交会穴(八総穴)
 奇経八脉と十二正経の気が相通じる八つの兪穴を八脉交会穴と呼ぶ。これ等は全て肘膝関節以下に分布する。八脉交会穴は金元時代の竇漢卿(とうかんきょう・元朝の高官)が山人の宋子華とうい人物の所蔵の鍼灸書から得たものである。「少室之隠者」の作とされる。竇氏はよくこの方法を用い名声を得たので「竇氏八法」(とうしはっぽう)とも呼ばれている。
 奇経八脉と正経十二経が相互に交会する関係とは次のものである。
公孫から足の太陰脾経を通り腹腔に入り関元と交わる。それと衝脉は脉気を相通じる。
内関
は手の厥陰心包経を通じ胸中に起こり陰維脉と通じる。
外関は手少陽三焦経を通じ肩に上り、天をめぐる。それと陽維脉とは相通じている。
臨丘
は足少陽胆経を通じ悸肋を通り帯脉と相通じる。
申脉は足の太陽膀胱経を通じそれとは相通じる。
後溪
は手太陽小腸経を通じ肩で大椎と交わりそれと督脉は相通じる。
照海
は足少陰腎経を通じ股関節の内側を循り腹に入り胸に達する。それとは相通じる。
列缺
は手太陰肺経を通じて、喉をめぐり任脉と相通じる。
 奇経と正経の経気はお互いにこの八穴によって通じ合っているのでこの八穴は奇経の病を治療できるだけでなく又正経の病をも治療できる。例えば公孫は衝脉に通じている。よって公孫は足太陰脾経の病を治療できるだけでなく、衝脉の病も治療できる。また内関は陰維脉に通じている。よって内関は手厥陰心包経の病を治療できるだけでなく陰維脉の病をも治療できる。その他の八脉交会穴もこれ等と同じ効能を備えている。
 八脉交会穴の八穴は臨床上の応用においては常に上下に相対的な配穴方を採用している。例えば
①内関に公孫を配し胃、心、胸部の病症を治療する。
②後溪に申脉を配し内眼角、耳、項、肩甲部の病を治療し併せて「発熱悪寒等の表証を治療する。」
③外関に足臨丘を配し外眼角、耳、頬、頸、肩部の病及び「寒熱往来の証を治療する。」
④列缺に照海を配し咽喉、胸廓、肺病と「陰虚内熱等を治療する。」


各論から抜粋
2・13・3   中極 Zhong/1,ji/2。募穴。
【別名】気原、玉泉
(『甲乙』)
【位置】在臍下四寸。(『甲乙』)
【取法】臍下四寸、腹部正中線上仰臥位で取る。(図2-86)
【局所解剖】白線上、深部はS状結腸。浅腹壁動静脈分枝、下腹壁動静脈分枝。腸骨下腹神経の前皮枝。
【主治】排尿困難、遺尿、インポテンス、早漏、遺精、淋症。睾丸の炎症、陰嚢ヘルニア等による下垂痛。積聚(腹部の癥瘕)の痛み、月経不順、陰部痛、陰部掻痒感、帯下、月経痛、不正出血、子宮脱、産後の子宮からの出血が二三週間止まらないもの、胎盤が子宮から排出されないもの、水腫。
【配伍】『資生』中極、蠡溝、漏谷、承扶、至陰、主小便不利、失精。
『大成』月水断絶、中極、腎兪、合谷、三陰交。 (月経が停止する)
     血崩漏下、中極、子宮。     (不正出血で突然大量に出血する。長期に出血する。)
     小便滑数、中極腎兪、陰陵泉。(頻尿)
     経事不調、中極、腎兪、気海、三陰交。(月経不順)
『集成』悪露不止、中極、陰交、石門。(産後二三週間たっても、子宮からの血性滲出液が止まらないもの。)
『玉龍経』尸厥、中極、関元。(意識を消失した状態)
【刺灸法】直刺0.5~1寸。可灸。      
【文献】『甲乙』足三陰、任脉之会。

2・13・4   関元 Guan/1,yuan/2。募穴。
【別名】下紀、(『素問・気穴論』)三結交(『霊枢・寒熱病』)次門(『甲乙』)大中極、丹田(『資生』)
【位置】在臍下三寸。(『霊枢・寒熱病』)
【取法】臍下三寸、腹部正中線上、仰臥して取る。(図2-86)
【局所解剖】白線上、深部は小腸。浅腹壁動静脈分枝、下腹壁動静脈分枝。第十二肋間神経前皮枝の内側の枝。
【主治】中風の脱証、慢性疾患による疲れと冷え、体力の衰えと痩せ無力感、少腹部の疼痛、ジフテリアなどの熱性病の嘔吐下痢、赤白痢、脱肛、少腹部から性器にかけての痛み、血便、血尿、排尿困難、頻尿、尿閉、インポテンス、遺精、淋症。早漏、月経不順、閉経、月経痛、赤白帯下、子宮脱、大量の不正出血、陰部掻痒感、子宮からの出血が二三週間止まらないもの、胎盤が子宮から排出されないもの、消渇、眩暈。
【配伍例】『甲乙』気溺黄、関元及陰陵泉主之。
『千金方』関元、湧泉、主胞転気淋。又主小便数。関元、太谿、主泄痢不止。
『資生』関元、秩辺、気海、陽綱、治小便赤渋。
『大成』腎脹偏墜、関元灸三壮、大敦二壮。
【刺灸法】直刺0.5~1寸。可灸。      
【文献】『甲乙』足三陰、任脉之会。
『聖恵』引岐伯云、但是積冷虚乏病、皆宜灸之。   
『扁鵲心書』併治脳疽発背、諸般疔瘡悪毒、灸関元三百壮、以保腎気。亦治瘰癧、破傷風。又曰、毎夏秋之交、即灼関元千壮、久久不畏寒暑。人至三十、可三年一灸臍下三百壮。五十、可二年一灸臍下三百壮。六十、可一年一灸臍下三百壮、令人長生不老。
 訳(脳疽、背部の瘡、癰や各種悪毒による疔瘡には関元に300壮して腎気を補す。またここは瘰癧(頸部リンパ結核)や破傷風を治療する。又曰く毎年夏と秋の境に関元穴に1000壮お灸を据えると長期間にわたって寒さ、暑さに強くなる。人が30歳に至ると3年に一回お灸をへその下に300壮すえるとよい。50歳になると二年に一回へその下に300壮すえるとよい。60歳になると一年に一回へその下に300壮すえるとよい。そうすれば人を長生不老にする。)訳 神鍼
『聖恵』若懐胎、必不鍼。若鍼而落胎、胎多不出、而鍼外崑崙立出。灸又良、然不及鍼。
 訳(もし患者が妊娠していたら絶対にここに針治療してはならない。もし針をして流産させたなら、多くの場合は胎児は子宮から排出されない。しかし針を崑崙にするとすぐに排出される。ここはお灸でも良いが鍼の作用には及ばない。)訳 神鍼

 2・13・5   石門 Shi/2,men/3。募穴。
【別名】利機、精露、丹田、命門(『甲乙』)
【位置】在臍下二寸。(『甲乙』)
【取法】臍下二寸、腹部正中線上、仰臥して取る。(図2-86)
【局所解剖】白線上、深部は小腸。浅腹壁動静脈分枝、下腹壁動静脈分枝。第十一肋間神経前皮枝の内側の枝。
【主治】腹脹、下痢、臍の周囲の絞るような痛み、下腹部から上に気が突き上げるもの、水腫、排尿困難、頻尿、遺精、インポテンス、閉経、赤白帯下、大量の不正出血、子宮からの出血が二三週間止まらないもの。
【配伍例】『千金方』石門、商丘、主少腹堅痛、下引陰中。
『聖済』血淋、灸丹田随年壮、又灸復溜五十壮、一云随年壮。
『扁鵲心書』消渇、関元、気海三百壮。
『大成』大便不禁丹田大腸兪。
【刺灸法】直刺0.5~1寸。可灸。妊婦は慎重に用いる。      
【文献】『扁鵲心書』一人患喉痺、六脉細、余為灸関元二百壮、六脉漸生。又一婦人病虚労、真気将脱、・・・・・余用大艾火灸関元、彼難忍痛、乃令腹睡聖散三銭、復灸至一百五十壮而醒、又服又灸三百壮、・・・・・労病亦
 訳(一人の患者が喉痺を患った。六脉が皆細い、私は関元穴に灸を200壮行った。すると六脉がやがて甦った。またある婦人が虚労を患い真気がまさに脱しようとしていた。・・・・・・ここで私は比較的大きな灸を関元に行った。しかし熱さに耐えきれないため、睡聖散三銭を服用させ更に150壮灸をすると目覚めたので又同方剤を服用させ、さらに灸を300壮した。・・・・・・・すると労病は癒えていた。)訳 神鍼
『丹渓心法』大病虚脱、本是陰虚、用艾灸丹田者、所以補陽、陽生則陰長故也。按、丹田即石門、或指関元、均有補陽作用。
 訳(大病して虚脱になったものは元々陰が虚しているものだ。これに丹田に灸をする。なぜなら補陽するというのは陽が生ずれば陰が生長するからである。丹田とはつまり石門である。或は関元を指す。これらは全て補陽作用がある。) 訳 神鍼
『甲乙』女子禁不可刺灸中央、不幸使人絶子。(女性にはここに針や灸を行ってはならない。間違って不妊症になることがあるからだ。)

2・3・36 足三里 Zu/2,san/1,li/3。胃経下合穴   
【別名】下陵(『霊枢・本輸』)。鬼邪(『千金方』)
【位置】在膝下三寸、外廉。(『甲乙』)
【取穴法】犢鼻穴の下三寸、脛骨の外縁より一横指、前脛骨筋上、仰向けか膝を立てて取る。(図2-22)
【局所解剖】前脛骨筋、外側は足の長指伸筋、前脛骨動静脈、外側腓腹皮神経、及び伏在神経膝蓋下枝、深層は深腓骨神経。
【主治】胃痛、嘔吐、腹脹、腸鳴、消化不良、下痢、便秘、痢疾、小児消化不良、喘咳痰の多いもの、乳房の瘍、頭のふらつき、耳鳴り、心悸、呼吸が苦しい、うつ病で精神錯乱を起こすもの、妄想して笑う、中風、脚気、水腫、膝や脛部のだるい痛み、鼻の疾患、産後の貧血による目眩。
【配伍例】『甲乙』熱病先頭重額痛、煩悶、熱争則腰痛不可俛仰、腹脹食不化、飢不欲食、先取三里、後取太白、章門主之。(腰痛で仰向いたりうつ伏せたりできない。)
『資生』三里、衝陽、僕参、飛揚、復溜、完骨、主足痿失履不収。三里、条口、承山、承筋、主足下熱、不能久立。(足が痩せて力無く背屈できない。)
『大成』  不省人事。三里、大敦。
        腹堅大。三里、陰陵、丘嘘、解谿、衝陽、期門、水分、神闕、膀胱兪。
        胸満血膨有積塊、霍乱腸鳴善噫。三里、期門。
未中風時、一両月前或三四ヶ月前、不時足脛上発酸重麻、良久方解、此将中風之候也、便宜急灸三里、絶骨四処各三壮。(未だ半身不随になっていないもので、一、二ヶ月前或は三、四ヶ月前に理由もなく脛の上がだるくて重たく感覚が薄れたりするものは、長い経験から言って中風・脳血管障害の前兆であるので足三里、絶骨に急いで直接灸を三壮すぐにやれ。)
      中風。三里、陽谿、合谷、中諸、陽輔、崑崙、行間、・・・・、不効・・・、復刺後穴、先針無病手足、後針有病手足、風市、丘嘘、陽陵泉。
『集成』催孕。下三里、至陰、合谷、三陰交、曲骨、七壮至七七壮、即有子。(妊娠を誘発する。)(有子・妊娠する。)
『天星秘訣』若是胃中停宿食、後尋三里起。
『玉龍歌』寒湿脚気不可熬、先針三里灸陰交。
『雑病穴方歌』泄瀉肚腹諸般疾、三里内庭効無比、三里至陰催孕任。
『席弘賦』   手足上下針三里、食癖気塊凭此取、
          耳内蝉鳴腰欲折、膝下明存三里穴、
          若能補瀉五会間、且莫向人容易説、
          脚痛膝腫針三里、懸鐘二陵三陰交
          更向太衝須引気、指頭麻木自軽飄。
『天元太乙歌』腰腹脹満治何難、三里臑腸針承山。
【刺灸法】直刺0.5~1.5寸。可灸。
【文献】
『霊枢・五邪』邪在脾胃、則病筋肉痛、陽気有余、陰気不足、則熱中善飢、陽気不足、陰気有余、則寒中腸鳴腹痛、陰陽倶有余、若倶不足、則有寒有熱、皆調干三里。
『霊枢・邪気臓腑病形』胃病者、腹脹、胃当心而痛、上支両脇、膈咽不通、食欲不下、取之三里也。
『霊枢・四時気』著痺不去、久寒不已、卒取其三里、骨為干、腸中不便、取三里、盛瀉之、虚補之。善嘔、嘔有苦、長太息、心中憺憺、恐人将補之、邪在胆、逆在胃、胆液泄則口苦、胃気逆嘔苦、故曰嘔胆、取三里以下胃気逆。


2・3・37 上巨虚 Shan/4,ju/4,xu/1。大腸下合穴   
【別名】巨虚上廉(『甲乙』)
【位置】在三里下三寸。(『甲乙』)
【取穴法】臥位、或は椅子に座り、犢鼻の下六寸で、足三里と下巨虚の連線の中点に取る。(図2-22)
【局所解剖】前脛骨筋、前脛骨動静脈、外側腓腹皮神経、及び伏在神経の皮枝、深層は深腓骨神経。
【主治】下腹部の激痛、痢疾、腸鳴、腹脹、便秘、下痢、腸瘍、中風後遺症、脚気。
【刺灸法】直刺0.5~1.2寸。可灸。
【文献】
『霊枢・邪気臓腑病形』大腸病者、腸中切痛而鳴濯濯。冬日重感于寒即泄、当臍而痛、不能久立、与胃同候、取巨虚上廉。
『甲乙』膝腫、巨虚上廉主之/悪聞人声与木音、巨虚上廉主之。(人の声と木を叩いて出る音を嫌う)
『千金方』骨髄冷疼痛、灸上廉七十壮。

 ※本文は出版社の了承を得て転載しています。

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