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新華社通信発―─国際医師鍼治療学会(International Coucil of Medical Acupuncture and Related Techniques:ICMART)は、同会の2001年シンポジウムを6月14〜17日にかけてベルリンで開催し、高まりつつある中国伝統医学に対する世界的関心をテーマに討論をおこなった。

40カ国以上の国々から、1,000名を超える鍼灸学の専門家がシンポジウムに参加し、鍼灸治療や研究に関する最新の知見を交換しあった。「今や鍼灸は、我々の医学の一部として不動の位置を占めている」とICMARTのWalburg Maric会長は言う。

鍼灸および伝統中国医学(TCM)の国際機構連合体であるICMARTは1983年に設立され、欧州諸国の大部分の国や米国、カナダの機関をはじめとして、世界中に53の加盟機関を持つ。ICMARTによれば、ヨーロッパ圏外の国々が数年のうちにさらに加盟することになるという。

「20年前、鍼灸は米国でほとんど知られていなかったうえ、従来の西洋医学は鍼灸を風変わりなタイプの民間医療と見なしていた」と米国ユタ大学のRichard Chapman教授は話す。しかし現在、米国では自然療法に人気があり、政府も資金援助を行っている。合衆国政府は、鍼灸学研究のため2001年に1億ドルの支出を予定している。

ドイツには、およそ50万人の鍼灸医師がいる。毎年約150万人の患者が、疼痛、喘息、アレルギー、薬物嗜癖、ならびに他の多くの急性疾患や慢性疾患の治療のために、鍼灸医のクリニックを訪れている。ドイツ国内には、約1,000箇所の中医学クリニックが点在している。

「多くの医師と患者が鍼灸を用いて成功を収めており、鍼灸を適用して著効を示した事例が多数記録されている」とドイツ連邦保健省大臣Ulla Schmidtは言う。ドイツ保健省はドイツ国内における鍼灸学研究と治療のために支援を続けるつもりだ、と彼女は語った。

現在、5つの大規模な鍼灸研究施設が、ドイツ連邦政府から資金援助を受けている。ドイツの保険会社は、鍼灸治療に年間約6億マルク(2億6千万ドル)を支払っている。

中国と同様に、医科大学のカリキュラムに鍼灸を組み入れる国は多くなってきている。

鍼灸が急速に発展するなかで、多くの国が品質標準を定め始めた。オーストラリアでは、海外教育と訓練のために大学組織が設立され、現に活動中である。現時点で、欧州諸国は鍼灸の教育、診療および研究における「欧州標準」の策定に取り組んでいる。


国立薬物乱用研究所(NIDA)ニュースリリース
 2000年8月13日発表

鍼灸はコカイン中毒治療に有望、と試験で判明

コカイン中毒に有効な治療法が今まで探され続けていたが、中国伝統治療の鍼灸を現代西洋医学の治療法と併用することで希望が見えてきた。

Archives of Internal Medicine誌8月14/28日号において、耳鍼コース(外耳の4つの特定の穴位に鍼灸鍼を刺入)を受けたコカイン依存症患者は、鍼灸治療を受けなかった患者に比べて治療期間中にコカインが検出されない傾向が大きかった、と研究者は報告している。

「鍼灸と他の治療法の併用はコカイン中毒治療として有用である可能性が、今回の試験で明らかになった」と国立薬物乱用研究所(NIDA)長官のAlan I. Leshner博士は語る。

エール大学医学部のArther Margolin博士が率いる研究チームは、二種類の薬物に中毒した患者82名を対象に臨床試験を実施した。これらの患者はメタドンでヘロイン中毒を治療されていたが、コカイン使用が止められないため今回の試験に送致された。参加者は無作為に3群:耳鍼治療群、または「対照」鍼灸治療群(治療効果がないと思われる4つの耳の穴位に鍼を刺入)、休養群(患者は自然風景などのリラックスできる映像の市販ビデオテープを鑑賞)のうちの1群に割り付けられた。治療は1週間に5回おこない、8週間継続した。コカイン使用を評価するため、尿サンプルを1週間に3回採取した。

耳鍼治療を受けた患者は、他の二つの対照群に比べて、試験期間全体にわたり尿検査結果がコカイン陰性となる傾向が大きいことが、所見から明らかになった。 試験を完了した参加者のうち、対照鍼灸治療群の23.5%、休養群の9.1%に対して、鍼灸治療患者の半分以上(53.8%)で治療最終週にコカインが検出されなかった。また、鍼灸治療を受けた試験完了者は、二つの対照群の参加者に比べてドラッグの中断期間が長く持続した。

試験の参加者82名のうち63%が8週間の試験を完了した。28名中13名(46%)が耳鍼治療を完了し、27名中17名(63%)が鍼を刺入する対照治療を完了し、27名中22名(81%)が休養の対照治療を完了した。耳鍼治療を受けた患者が治療を継続した期間5.2週は、対照鍼灸治療群の6.7週、休養治療対照群の7週と比べると著しく短かった。

Margolin博士は「コカイン中毒治療に対する鍼灸の使用が、今回の試験で裏づけられた。これらの所見を再現し、鍼灸と他の治療法の最も効果的な組み合わせを決定するには、さらに研究が必要だ」と語った。

論文の全文“A Randomized Controlled Trial of Auricular Acupuncture for Cocaine Dependence,(Arch Intern Med. 2000; 160:2305-2312)”は、http://www.jama.com/で入手できます。





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