完訳鍼灸大成(日本語版)
鍼灸大成上下巻
著者 楊継州
翻訳 浅野周
発行所 三和書籍
定価 四六判 各巻約700頁。上下巻セット15,002円 
三和書籍が販売してます。Yahooでも買えます。
 著者からのコメントと見本
←アマゾンは一度書いたら訂正できませんので  
推薦文
が初めて完訳した古文。本書の現代語訳は、中国にも日本にもありません。英語やフランス語でも一部が抜粋されているのみ! 世界初の現代語訳!  ちなみに『鍼灸甲乙経』や『霊枢』、『素問』、『難経』、『傷寒論』、『金匱要略』などは、中国に現代語訳があります。
 本書が鍼灸の最高峰とされる『針灸大成』です。以下は、私が『針灸大成』を翻訳するに至った経過です。
 本書は、大坂の某鍼灸学生、某中美和子さんからの願いで翻訳しました。最初はホームページのQ&Aに
「『針灸大成』の日本語訳がありますか?」という質問がありました。私は日本の書籍に詳しくないので「学校の先生に聞け」と返事しました。やはり「ないと」いうことで、「どうしても読みたいので、翻訳者なら翻訳してくれませんか?」と頼まれました。「私は、現代医学の翻訳者であり、古典の翻訳者でないから、しかるべき人物に頼んだらどうか」と回答しました。そして原文を見た人が、誰でも翻訳できるように、とりあえず原文をホームページにアップしたのです。ところが、その女子学生が、いろいろな偉い人に翻訳を頼んで回っているのに関わらず、一年以上が経過しても一向に誰も翻訳する気配がない。そこで、私が黒龍江の解説本、林庚昭の新鍼灸大成、漢語大字典、中医疾病証候辞典、簡明中医病名辞典などを参考にして、コツコツと一年間を掛けて翻訳しました。普通の現代鍼灸書籍ならば、一ヶ月から三ヶ月で翻訳できますから、この『鍼灸大成』の一年は長かったです。『鍼灸大成』は台湾でも人気があるので、台湾まで『鍼灸大成』の本を買いに行き、中国の解説本である黒龍江の解説本、林庚昭の新鍼灸大成、そして台湾の鍼灸大成講義という3冊の解説書を参照しながら、『中国医学『鍼灸大成』続集・四十一巻』を中心に翻訳してゆきました。田中さんは「出世払いで翻訳してくれ」というのですが、私の翻訳料は一ヶ月で50~70万だったので一年では600万になってしまいます。そんな金額を請求できません(これは某会社に漢方薬の某書物を依頼されたとき、実際に一ヶ月一冊ずつ、一冊50~60万で仕事をしたことがあります)。そこでニフティのアットペイにして、一般市民から広く細く長く回収しようとしたわけです。それに、これまで『傷寒論』、『金匱要略』、『素問』、『霊枢』、『難経』、『医心方』、本間祥白の『十四経発揮』ぐらいしか、中国古文の翻訳書がなかったと思います。鍼灸の専門書では、『霊枢』と『十四経発揮』ぐらいしかなかったワケですから、イキナリ『鍼灸大成』というのもスゴイですけれど。ちなみに『素問』、『難経』、『傷寒論』にも、少しながら鍼灸の内容が掲載されています。『医心方』は読んだことがないので判りません。翻訳して、インターネットを調べて知ったことですけど、『鍼灸大成』は、英語版、ドイツ語版、フランス語版が一部翻訳されているのですね。つまり世界で四番目に翻訳された本なんですね。江戸時代に岡本一抱が訳した『鍼灸大成』があるそうですけど、それも完訳ではなく抜粋訳のようです。彼は素霊の本を多く書いているので、恐らく一巻だけを訳したものではないかと思います。日本語訳が出れば、日本語から韓国語訳は簡単なので、すぐに五番目の翻訳本が出ると思います。しかし英語版、ドイツ語版、フランス語版があるとは!あちらには私のような人間が、早くに誕生しているんですね。この本は、それまでの鍼灸をまとめた本で、鍼灸の教科書とも言える本です。現代の辨証治療の書物と比較してみると、結構面白いですよ。辨証鍼灸は、『鍼灸大成』の時代に存在してなかったことが判ります。どちらかといえば『刺法灸法学』や『針灸各家学説』に近い感じです。
 『鍼灸大成』ができちゃったら、あとは『鍼灸甲乙経』ぐらいしか、名前で並ぶ書がないですよね。でも私、『鍼灸甲乙経』の影印本を持ってますから。あっ違った、墨の匂いのする影印本などなかった。木版本を持っていますから、早く訳さないと独り占めしちゃいますよ。大成と甲乙を取られちゃったら、あとは銅人とか並本しか訳せませんよ。皆さん、お早めに。ちなみに『十四経発揮』を訳した感想ですが、一ヶ月もかからなかったかな。あんな薄っぺらな本。やはり大成と並ぶ厚さなのは、甲乙ぐらいしかないですね。そのかわり九巻ぐらいから五十肩になって、エライ苦しみましたわ。ストップしとったら、十巻も早く出してくれとの催促が売場に来て、最後まで訳した代物。
 ちなみに以前はアマゾンコムにリンクしていたのですが、投稿者が本書を読まないのに投稿した節があり、ただ単に中傷するためのコメントと考えてリンクを外しました。その理由は、「誤訳が多い」と書いて評価1を付けているのに、半年過ぎましたが出版社にも私のほうにも、「この訳は、こう訳すのが正しいのではないか?」という連絡がないのです。
 これまでも『中医基礎理論』などで、「傳の文字は、傅の間違いです」などと誤訳の指摘がありました(名越礼子先生、有り難うございました。すぐに出版者に連絡し、訂正させていただきました)。ところがコメント者は、どこが間違っていると指摘するわけでもなく、また自分で正しく翻訳された『鍼灸大成』を出版する気配もない。ただ「この訳は、誤訳が多い」と公言して、自分は誤訳が正しく訳せるように見せかけている。
 実は、この人は2000年頃にあって、『中医基礎理論』を書いたとき、
「こんなThis is a penを、これはペンですと訳すような翻訳ではいけない。そもそも弁証と書いてあるが、弁も辨と辯、辧があるのだ」「いえ、ちゃんと区別してます」「いや、あんたの翻訳はねぇ、原文が透けて見えるんだよ。だいたい翻訳などして、ろくな本がない」「じゃあ先生。これが翻訳書だというのを、ひとつ翻訳して手本を見せてください」
 で、彼は同期生に助けを求めた。同期生がやってきた。
 
「あんた、いい加減な翻訳書出してんだってなぁ」「確かに翻訳書より原本を読むほうがよいと思います。しかし某先生のにしろ、×先生にしろ、我々は翻訳書を読んで中医学を勉強してきたんです。あの先生の言うように、翻訳書がなければ、学生だった私は中国語もできないし、中医の勉強を出来るはずがありません。だから浅川先生も、当時では意味があったと思います。もし浅川先生や川合先生を始め、誰も翻訳しなかったら、今の我々はあったでしょうか? 中医学そのものが入らなかったでしょう。それに私が教科書を翻訳したとしても、まだ六版教科書もあるし、新世紀教科書もできます。それを上手な人が翻訳し、多くの本が出ればいいじゃないですか!」「よし、解った。あんたのこと応援するわ」と、おばちゃんに言われました。
 たぶん、そのときの先生が、このコメントを書いたと思います。
 「誤訳が多い」と評価されていますが、出版社には「斉刺論が変なのでは?」という質問と、「治療の場所に嘔吐、嘔吐と続くのは誤訳じゃないか?」という質問が寄せられました。斉刺論は、『素問』を見ると「こういう刺し方は、してはならない」と書いてあります。つまり、内容は最後に「これを反という」とまとめてあります。また嘔吐は、実は「嘔吐」と「嘔逆」なのですが、日本語にすれば「嘔逆」も嘔吐なので、重なったわけです。

 私は翻訳を本業としているのではありません。鍼灸など専門書を出版しても食えません。しかし『鍼灸大成』は鍼灸師にとって必読の書物です。
 私は正直言って、この女子学生から『鍼灸大成』についてのメールが来るまで、『鍼灸大成』の日本語訳があると思っていました。だって本間祥白が『十四経発揮』を訳しているそうなので、それより重要な『内経』クラスの鍼灸書なら存在していて当然と思っていたのです。
 それを日本で最初に翻訳出版してしまいました。しかしブ厚い本なので、たぶん某先生のおっしゃる通り、多くの誤訳があると思います。マイクロソフトでも不備や間違いがあれば修正プログラムを出します。
『鍼灸大成』も百年以上は残る本と思います。そこで恥ずかしい書物を残したくないので、誤訳や不備があれば著者ないし出版社へお寄せください。ただちに訂正しますし、このホームページでも訂正を載せます。

● 本文内容見本  
 製鍼法
 『本草』に「馬にくわえさせた鉄は無毒」とある。『日華子』は「古い地金ならよく、医者の鍼になる」と言う。
 備考:『本草』の鍛えた鉄とは、錬鉄である。有毒だが、馬にくわえさせれば無毒となる。馬は午であり、火[丙午]であるが、火は金を尅すので、鉄の毒を解く。だから鍼を作れる。古くは、金鍼は貴重なものであった。また金は総称で、銅や鉄、金や銀をすべて金と呼んだ。金鍼ならば、さらに良い。
 *原文は「馬啣鉄」。啣は銜の文字で、くわえる意味。馬銜鉄というのを捜しても見あたらなかったが、この説明では馬の銜にした鉄という意味。銑鉄や鋳鉄ではないようだ。鍼の製造法は『鍼灸聚英』に詳しい。だがステンレス鍼の登場した現在となっては無意味。

 煮鍼法
 まず針金を、火の中で赤くし、次に二寸、三寸、五寸と長さにこだわらずに切る。次にガマの油を鍼に塗って、やはり火に入れて少し熱するが赤くはしない。それを取り出して前のようにガマの油を二回塗り、三回目は熱いうちに干し肉の皮と肉の間に入れ、薬を三碗の水で煎じて沸騰させ、鍼を刺したまま肉を入れたら、水がなくなるまで煮る。それを水中に入れ、冷えたら鍼を取り出す。そして鍼を黄土に百回あまり刺して磨き、白く光ればよい。これによって火毒が消える。次に銅線を巻きつけ、鍼尖を丸く磨く。鋭利に尖らせてはならない。
 麝香五分、胆礬と石斛を一銭ずつ、川山甲,当帰のヒゲ根,朱砂,没薬,鬱金,川,細辛を三銭ずつ、甘草節と沈香を五銭ずつ、磁石を一両加えることによって諸薬を鉄内に入れる。
 もう一法:烏頭と巴豆を一両ずつ、硫黄と麻黄を五銭ずつ、木鼈子と烏梅を十個ずつ。これを鍼とともに水へ入れ、磁器の罐内で一日煮て、洗って選り分ける。さらに止痛没薬,乳香,当帰,花乳石を半両ずつ、やはり前のように一日水煮して取り出し、皂角を使って水洗いし、さらに犬肉に入れて一日煮る。そして瓦屑で磨いて先端を真っ直にし、松子油を塗る。常に人気に近付けると良い。

 暖鍼
 『素問』遺篇注には「円利鍼や長鍼を刺す前に、まず口の中で鍼を温め、暖かくなってから使う」とある。また「毫鍼は、身体に密着させて鍼を暖め、暖まってから刺す」ともいう。
 備考:口や身体で鍼を暖めるのは、鍼を経絡に入れたとき、気が温められて伝導しやすくするためだ。現在は、鍼を熱湯に入れることがあるが、同じ意味である。口に含んで温めたものは、鍼尖は熱くなっていても鍼柄は冷たいので、身に着けていたものに及ばない。それなら鍼全体が熱い。

『鍼灸大成』の訂正:2007年9月現在、まだ報告されておりません。唯一「嘔吐が2回続くのはおかしいのでは?」という質問があったのですが、原文では嘔吐と嘔逆、日本語では嘔吐も嘔逆も同じなんですね。
 この日本人が世界最初に全訳した『鍼灸大成』を完全な物にするため、誤訳があればドシドシ指摘してください!
 指摘していただいた方には、著者の『鍼法灸法学』を進呈します。これは結構、実用的な本です。

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