●美容と健康の鍼灸 

美容と健康の鍼灸
著者 張仁
翻訳 浅野周
発行所 (株)三和書籍
定価 円A5判 405頁 (ISBN978-4-86251-045-9 C3047)
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防疫と健康維持は、中医学の重要な内容の一つであり、中国では2000年以上の歴史がある。特に二十世紀の中頃から、中国では鍼灸を使った防疫治療が始まった。この30年で、鍼灸を健康維持に応用することは世界的に流行している。そうした分野における流れを紹介する。

時代とともに歩む鍼灸の健康維持と防疫

古代の状況
古代の防疫文献は『黄帝内経』である。そこには鍼灸による防疫だけでなく、良医は発病を防いだり、初期のうちに刺鍼して、病気の治療より防疫を重視し、また鍼灸には滋養強壮の作用があることを強調している。そのなかで具体的な防疫法法として、五臓の急性熱病、マラリアなどで発作の起きる前に刺鍼することを記載している。そのため『内経』は健康維持鍼灸の理論的基盤となっている。
後漢時代の張仲景も『内経』の防疫治療思想を受け継いでいる。彼は薬物治療を主にしてはいるが、鍼灸による防疫も記載している。『金匱要略』は「人が養生していれば、邪風は経絡に入れない。経絡へ入ったら、臓腑へ流れないうちに治療する。手足が重ければ、導引、吐納、鍼灸、膏摩を使って九竅を閉塞させない」と、日頃は健康に注意し、発病したら早期治療を強調している。

晋唐時代は灸が重んじられた
晋唐時代は鍼灸の防疫が大きく発展した。とりわけ灸による防疫は、後世に深く影響する。灸で各種の疾患を防疫することにポイントがあるが、その内容は次のようなものである。
1.防疫治療:現代の空気消毒により伝染病を防疫するような方法である。例えば晋代の『肘後備急方』は「患者のベッドの四隅に施灸する」ことで瘴癘の病を防疫している。また唐代の孫思{辻貌}は「呉蜀の地へ派遣される役人は、身体の2~3個所へ常に施灸し、灸瘡が乾かないようにすれば、瘴癘や温瘧の毒気が人に着かない」と記載している(『千金要方・巻二十九』)。防疫では、当時の医家は因地制宜(風土による違い)にも注意し、隋代の『諸病源候論・巻四十五』は「河洛間の土地は寒く、子供がヒキツケの病になりやすい。そこで俗に、子供が生まれて三日目に逆灸して防疫する。……江東の地は暖かく、この病気はない。しかし古方として逆鍼灸の法が伝来している。今の人は南北の違いが判らず一律に逆灸し、小児を害することが多い」と指摘している。「逆灸」や「逆鍼灸」は、防疫的な鍼灸の意味であり、やはり晋代に現れた。
2.早期治療:初期のうちに積極的に治療することも防疫の内容となる。当時の医家は日頃の防疫だけでなく、発病初期や徴候の現れる前、鍼灸で病気の勢いを断ち、初期のうちに叩いておく。例えば「癰疽の初期は小さく、人は気にも留めないが、実は大変な病気で、すぐに治療しなければ命に関わる」とある(『千金要方・巻二十三』)。早期治療は、効果がはっきりしているだけでなく、予後もよい。『千金要方・巻七』は風毒症を例にして「人を病にさせたくなければ、初期に20~30壮すえる。そうすれば治って再発しない」とある。ここでは防疫に灸を重視してはいるが、刺鍼にも触れており、鍼灸を併用したりしている。中風(脳卒中)を例にすると、『千金要方』に「風ならば耳を防げばよい。耳前の動脈と風府へ刺鍼すれば、神のような効果がある」とあり、また「さまざまな急病は、風が多い。初期には軽微で、人が気付かないうちに、すぐに続命湯を与え、穴位に施灸する」と、薬灸併用の治療が記載されている。健康維持鍼灸について、晋唐時代は養生に関する文献が多いものの、鍼灸分野の内容が少ない。『旧唐書』には、柳公度が80歳になるのに軽やかに歩いたが、彼の養生術は気海穴への温灸だったと記されている。『千金要方』は膏肓穴に不老長寿の効果があり、「この灸をすれば、人の陽気が盛んになる」としている。『外台秘要・巻三十九』は、足三里が老眼を防疫すると紹介し、「三十歳以上になり、足三里へ施灸せねば、人気が上がって眼が暗くなる」と書き、老化防疫の効果を示している。

宋代から鍼灸の健康維持は重視された
宋代からは、鍼灸による防疫や健康維持が進歩した。
1.灸が主要な健康維持法となった:灸には温陽散寒や助元固本の作用があり、モグサは安価なうえ、灸法は簡単だから自分でできるメリットがあるため、灸は民間に広まって不老長寿の手軽な方法となった。明代の李{木延}は『医学入門』で「一年の四季に、それぞれ一回施灸すれば、元気が堅固になり、万病にかからない」と「不老長寿」を語っている。鍼灸の健康維持効果を証明するため、自ら試した医家もある。宋代の王執中は『鍼灸資生経』に「私は以前に病気ばかりしており、いつも息切れを恐れていた。医者に気海の灸を教わった。呼吸がスムーズでなければ、自分で毎年1~2回施灸する」とある。また竇材は五十歳以降に「常に関元へ灸五百壮」とし、「そして老年で健康になった」と『扁鵲心書・巻上』で記載している。健康維持の灸には、普通の灸(直接灸や隔物灸)や熏灸(現代の棒灸のようなもの)など様々な灸法がある。さらに鼠糞灸もあって、『鍼灸資生経・巻三』に「言い伝えで、年齢は老人なのに顔は子供のような人がいた。毎年、臍中に鼠糞灸を1壮すえるからである」とある。健康維持灸の壮数は、当時では年齢と関係があると考えられており、「人が三十歳ならば三年に1回、臍下へ三百壮施灸する。五十歳なら二年に1回、臍下へ三百壮施灸する。六十歳なら一年に1回、臍下へ三百壮施灸する」と『扁鵲心書・巻上』に記載されている。健康維持灸では、神闕、気海、関元、足三里、膏肓などが常用されている。
2.鍼灸の防疫は、完全になる:中風防疫を例にすると、脳卒中に対する病因病機の知識が深まり、防疫法も進歩した。宋代の王執中は、絶骨や足三里などの灸を「春秋になったら常に施灸して気を漏らす。日頃から脳卒中タイプの人は、これで心配がない」と『鍼灸資生経・巻四』に書いている。元代の『衛生宝鑑』は脳卒中に対し、中臓と中腑の証候に分け、「手足の麻痺や痛みが長いこと治らなければ、それは腑に中った証候……病が左にあれば右へ施灸し、右なら左へ施灸する。心中が乱れて意識が悪く、手足が麻痺していれば臓に中った証候である。病因が風であろうが気であろうが、中風七穴(百会、大椎、風池、肩井など)に施灸する」と記載している。明代の楊継洲は『鍼灸大成・治症総要』で、灸と漢方薬の併用を主張し、「中風を発病する1カ月か3~4カ月前、しょっちゅう足脛の上が重怠くて痺れ、長い時間たたないと治らなければ、それは中風の証候である。すぐに足三里と絶骨の四個所に三壮ずつ施灸し、生ネギ、ハッカ、桃柳葉を煎じた湯で洗う」という。次に防疫灸する時期について「夏春の端境期、夏秋の端境期に施灸すると良い」、「常に両足の灸瘡があれば妙である」としている。最後に飲食や生活起居などにも注意すると、さらに防疫になるとし、そうでないと「この方法を信じずに、飲食に注意せず、色や酒に溺れると、急に脳卒中になる」と述べている。絶骨や足三里の灸による脳卒中防疫の効果は、現代の検証により証明されている。
この時代には、鍼灸による健康維持防疫の概念が、ますます医家に受け入れられている。明代の著名な鍼灸家である高武は「病気でないのに鍼灸することを逆と呼ぶ。まだ来る前に迎え撃つ準備をする」(『鍼灸聚英・巻三』)とまとめている。

現代
鍼灸の健康維持防疫は、現代で急速に発展した。20世紀の1920~30年代、日本では急を国民的な健康維持として推奨していた。1937年の元旦、日本では国民による足三里の灸運動が湧き上がり、国民の身体を丈夫にした。それを彼らは養生灸と呼び、一年の一大イベントとして行った。また「足三里に施灸しないものと旅をするな」という諺もある。中国で防疫や健康維持の鍼灸が始まったのは、20世紀の1950~60年代になってからである。最初は鍼灸による疾病防疫が主であり、しかも各種の急性伝染病防疫が中心だった。最近の30年で、健康維持に対する鍼灸は益々重視されるとともに、心臓や脳血管障害など慢性で非伝染性の疾患へと防疫へ重点が移った。また1970年代からは欧米など、西洋諸国で鍼灸が盛んになり、鍼灸の健康維持は世界的に発展している。
鍼灸で防疫できる疾患は、ますます増えた
大ざっぱな統計だが、この50年で公開された文献からすると、鍼灸で防疫できる疾患は内科、外科、婦人科、小児科、耳鼻咽喉科、眼科などの臨床各科に渡る。それにはインフルエンザ、流行性脳炎、細菌性下痢、急性灰白髄炎、マラリアなど多くの急性伝染病だけでなく、脳血管障害、冠動脈心臓疾患、ショック、破傷風などの危険な疾患の発生を防止したり軽減でき、外科の感染、輸液輸血反応、産後の出血など急性徴候に対しても防疫作用がある。近年では癌の化学療法によって発生する毒性反応にも使われる。上がり症は、最近になって応用されるようになった分野で、特に試験場での上がり症には明らかな効果がある。最近はサーズなど新型肺炎が突然発生したが、鍼灸は重要な防疫措置となる。
鍼灸の健康維持分野が常に広がっている
現代化学技術が急速に発達し、物質と精神生活水準が急激に向上するなかで、健康と長寿に対する人々の需要は益々高まっている。安価なうえ簡単で、いかなる副作用もない鍼灸療法は、きわめて関心を寄せられている。古代の健康灸を基に、現代では健康維持であれ刺灸法であれ、大きく進歩している。灸法について言えば、ある種の老人病を防疫するだけでなく、老化を遅らせるためにも使われている。近年は経穴灸療儀を健康維持穴位へ照射して、老人の免疫機能を高めている。また日本では健康維持の灸を非常に重視し、臨床面でも幾らか発展させ、17歳では風門へ施灸してインフルエンザと肺結核を防疫し、24~25歳では三陰交へ施灸して生殖系の健康と発育を促し、30~40歳では足三里へ施灸して老化と病気を防疫する。老人になると曲池へも施灸して、歯を丈夫にして目をはっきりさせ、血圧を正常に保っている。人々を健康な心身状態にし、生命の質を高めるため、鍼灸による禁煙、ダイエット、美容、疲労解消などの健康維持内容が、近年になって機運に応じて誕生した。麻薬中毒は、日毎に世界的な問題となり、鍼灸による麻薬治療は大きな関心を集めている。こうした内容は古代の文献には記載がなく、ほとんどは中国以外の国で始まったものである。20世紀の1970年代中期から体鍼、耳鍼、レーザー鍼、火鍼、穴位注射を含めた方法が生まれ、さらに多くの有効な穴位が発見された。鍼灸の健康維持範囲は、現在も拡大しつつある。

効果の再現性を重視する
現代鍼灸の防疫と健康維持において、もう一つの進歩は、治療効果を多量のサンプルを使って比較観察していることで、それによって効果が信頼性のあるものとなっている。一般に3種類の方法がある。その一つが対照群を設けて比較することである。こうした方法は20世紀の1950~60年代に始まった。当時インフルエンザを鍼灸で防疫していたが、様々な薬物を使った防疫群とも比較し、鍼灸が現代薬の防疫効果より優れていることが統計的に証明された。次に、長期に蓄積された膨大な症例が、効果が確実なものであることを証明した。鍼により炎症を防疫した症例観察は7000例以上あるが、それは防疫者の身体反応機能を改善しただけでなく、病気を防ぐ作用も発揮した。また流行性脳炎では一度に6000例以上、延べ二万人の鍼灸防疫状況を観察し、報告している。三つめに厳格な科学的デザインによって観察していることである。例えば禁煙の鍼灸では、ブラインドテストを使って治療し、鍼灸で禁煙できることを明らかにした。禁煙は心理的作用もあるが、さらに重要なことは鍼灸の調節作用が貢献することである。
防疫メカニズムを探求する努力
この分野は二つある。一つは信頼性の高い基準を設けることである。例えば脳卒中の鍼灸防疫では、様々な指標があるが、鍼灸には血液凝固を防止し、血液粘度を改善させ、ある程度人体の血管を拡張する作用を持つ。もう一つは動物実験である。どのようにして鍼灸はショックを防いでいるのか? 多量の動物実験により、刺鍼群では対照群と比較して出血後の血圧低下が小さい。また出血を止めたあとで血圧が上昇するのも早い。出血ショック動物に輸血したあとの生存率も高い。こうしたことから鍼灸には、確実にショックを防ぐ作用がある。研究を進めることによって、鍼灸でショックを防ぐ効果は、主に神経系によって発生していることが証明された。
まとめると鍼灸による防疫や健康維持は、昔から医家が努力してきたことで、それは鍼灸学の重要な構成部分になっており、現代の防疫医学の発展に影響を与えている。もちろん全体からすれば、いろいろな面で不足しているが、鍼灸の作用メカニズムは主に人体全体の機能を調整することにあるので、それが人々を脅かす難病を防疫するうえで大いに活躍する。すでに鍼灸は、ある種の癌患者の免疫機能を向上させることが明らかになっており、鍼灸でエイズを防ぐことにも関心が持たれている。また世界の老人人口が増加するに伴い、鍼灸健康維持も益々その優越性を顕にしている。最近、国外では鍼灸を使って宇宙酔いを防疫しているとの報道もある。こうした事実は、鍼灸の防疫や健康維持の発展にとって輝かしい未来を示している。

二、鍼灸の健康維持や防疫に対する作用の特徴

鍼灸による健康維持や防疫は、有効で安全な非薬物療法というばかりでなく、数千年にも及ぶ豊富な臨床経験を積んでいる。古代に使われていただけでなく、現代にも完全に当てはまる。常に発展し続ける前途有望な健康維持、防疫法であることに間違いない。
鍼灸の健康維持や防疫作用
鍼灸の健康維持や防疫の作用は、次のような面に現れている。
①鍼灸は各級の健康維持や防疫に適合する
現代の防疫医学は、一般に3級に分かれている。一級防疫は病因学防疫とも呼ばれ、発病する前に、健康の増進と特殊な防護措置によって、発病させないものである。二級防疫は発病学防疫とも呼ばれ、発病初期で直ちに診断して措置を講ずることにより、病気の進行と悪化を抑え、再発や慢性化を防ぐ。三級防疫は後遺症防疫とも呼ばれ、発病したあと健康を取り戻す措置を講じ、発病しても後遺症を残さず、障害が残らないようにする。鍼灸療法は、こうした三種の防疫に対し、優れた効果がある。本書では一級と二級の防疫について主に紹介する。また鍼灸は、急性伝染性疾患を防疫でき、また難病で重症な疾患にも応用できる。小児や老人にも適用できる。一つの方法で、これほど広く健康維持や防疫に適用できる治療法は、他の治療法にない。
②鍼灸は現代で防疫の需要に適合する
この百年間で、防疫医学は2回の革命があった。最初の革命は19世紀の後半から20世紀の前半にかけてで、急性や慢性の伝染病を主な対象としていた。20世紀の後半から2度目の革命があったが、その主な対象は脳血管障害、腫瘍、不慮の死亡などで、人類を脅かす病気と要因である。現在では、すべての疾病は全体の病であり、それは身体の内外環境刺激の下で、身体内部と環境バランスが破壊された結果だと考えられている。この点について、腫瘍や心臓脳血管疾患、免疫性疾患などは、症状がはっきりしている。そして鍼灸の根本的作用は陰陽バランスであり、全身機能を調整することにある。そのため鍼灸は、第一次革命の対象である防疫に限らず、第二次革命の対象も防疫する。同時に、現代人の生命の質を高め、不老長寿の願望も満たす。
③鍼灸の防疫は、安全、安価、簡便
20世紀の60年代初期の統計だが、アメリカの入院患者のうち1/3は「医源」か「薬源」性の疾患だった。これは現代医学と生命医学の進歩に伴う副作用であるが、現在でも増えることはあっても減ることはない。これは臨床治療だけでなく、防疫医学の直面している問題である。鍼灸という伝統的手段は、正確に操作しさえすれば、ほとんど副作用がない。器具も簡単で、価格も安く、方法も簡単なので、医師の防疫手段となるばかりでなく、一般民衆も自分で健康維持に使うことができる。それは短時間のうちに広範囲の地域で緊急に防疫でき、また十年や数十年の永きに渡って健康維持ができる。そのため他の方法に比較し、さらに現代の求めに対応している。

鍼灸の健康維持や防疫の特徴
鍼灸の身体に対する調節作用
鍼灸は身体自身の機能を調整して、健康維持や防疫の目的を達する。中国医学は、人体を一つの有機的整体とし、経絡が人体の気血運行する通路であり、それをスムーズに通れるようにすることが、人体の正常な生理活動の基本となると考えている。鍼灸は経絡を流通させ、気血を調和させ、身体の抵抗力を強くし、それによって疾病を防疫したり身体を健康に保ったりする。
①身体の免疫機能を調整する
現代医学は、発病や進行、治癒が、人体の抵抗力と関係があると考えているが、それが免疫機能である。鍼灸は、正常な人体と動物に対して免疫力を高めるが、それが様々な原因で発生した免疫機能障害患者をある程度回復させる。体液性免疫物質に対する影響を例に挙げれば、鍼灸は正常血液中に存在する、ある種の殺菌物質の殺菌能力を高め、血清のコエンザイムやリソチームの含有量を増やし、血清α、β、γグロブリン量を上昇させ、オプソニン、インターフェロンなど非特異性免疫物質を増加させることが分かっている。とりわけ鍼灸は、長期に低下した抗体を再現させて効力を高めるが、こうした現象は鍼灸による防疫、とりわけ伝染病の防疫に科学的根拠となる。近年になると免疫学の面から老化防疫の鍼灸メカニズムが研究され、鍼灸が細胞免疫と体液免疫を調節することが発見されたが、それは主に身体全体の免疫機能を高めることから起きており、それで老化によって訪れる免疫機能低下を全体的に改善する。
②心臓血管と神経系統の機能を改善する
鍼灸が心臓や脳血管の疾病を防疫するのは、鍼灸に心臓血管や神経系統の機能を調整する機能があることと関係がある。多量の研究により、鍼灸は血中脂質を低下させて血圧を調整し、血液成分と血液粘度を改善し、血管を拡張することが証明された。世界中の学者も、刺鍼は血管矯正因子の一つであり、血管の危険因子の累積による失調を矯正できるが、薬物のように一つ一つ処理するのではなく、失調している身体全体に作用する。鍼灸を一種独特な情報刺激と見なし、人体解放システム内のエネルギーと物質を変化させ、血管の危険因子を排除して、心臓や脳血管の疾病を防疫する。長年に渡るショック防止の研究でも、鍼灸は一種の非特異的な求心性刺激として、神経系統や幾つかの内分泌腺活動を調整することにより防疫効果を発生させる。
③体液物質と微量元素の含有量を調整する
この分野の研究は多くない。国外における鍼灸の禁煙では、関係穴位の刺激により人体組織自体にニコチンに似た物質が分泌されることを発見した。近年では、老人の頭髪中の血清銅含有量がはっきり中青年より高く、血清亜鉛含有量は加齢とともに低下することが発見された。そして足三里に施灸すると、老人の血清亜鉛含有量がはっきりと増え、銅含有量が著しく低下する。これは灸に微量元素を調整する作用があり、それが不老長寿をもたらしていることを示している。

鍼灸の調節作用の特徴
①人体が異なった機能状態にあれば、鍼灸が異なる影響を生み出す
鍼灸で正常人の体の疲労を消すとき、血漿グロブリンが低下して、アルブミンが上昇する。感染や伝染の脅威に晒されている健康人では、刺鍼すると末梢循環している白血球数が一時的に増加し、核が左方推移して、食作用が増加し、特異と非特異性免疫物質の濃度が増し、感染に対する抵抗力が増強する。また鍼を受ける者の精神状態、神経経の型、栄養状態、体質の強さが違えば、鍼灸の防疫効果にも影響がある。同様に血圧が過度に低下した場合、鍼灸で昇圧してショックを防止でき、また血圧が高くなり過ぎた場合も下げて高血圧を防止できる。
②異なる穴位に鍼灸すれば、作用も変わる
疾病の治療では、穴位の作用に相対的特異性があるが、健康維持防疫では、さらにハッキリしている。足三里は有名な健康維持、病気を防ぐ穴位だが、それらは長期の臨床によって選び抜かれてきたもので、その効果を他の穴位で代えることはできない。それが同じような健康維持、病気を防ぐ穴位だったとしても、その作用は異なっている。例えば抗体産生に対する影響では、動物実験によると「大椎穴」に施灸すると「百会穴」より効果がある。そのほかウサギの足三里に刺鍼すると血液中の抗体滴定量を延長できるが、それは対照群より2~4倍も増加している。だが大杼穴へ刺鍼しても抗体滴定量に影響がない。
③手法が異なれば、影響も変わる
各種の補瀉手法が生体に作用するとき、それぞれ法則性のある効果が発生するが、鍼灸の健康維持や防疫作用にも顕著な影響を及ぼす。健康人に補法すれば、大多数は脈拍伝達速度が遅くなるが、それは血管の緊張度が低下したことを示している。そして補法から瀉法へ変えると、大多数は脈拍伝達速度が速くなる。動物でもウサギの大椎穴へ刺鍼して、呼吸補瀉と軽刺激すれば、細網内皮細胞の食作用が強まり、瀉法と強刺激では食作用が抑制される。そのため選穴ばかりでなく、正確に手法を把握することも重要である。
④刺灸法の違いにより作用も異なる
刺鍼と施灸には、どちらも健康維持や防疫作用があるが、その運用面では違いがある。一般的に刺鍼は防疫に使われ、{示去}邪が重点である。また禁煙、麻薬治療、美容などにも鍼が多用される。灸は健康維持に使われることが多く、補虚が重点である。だから不老長寿や不健康の解消などに灸が常用される。耳鍼は他の刺灸法と併用されるだけでなく、単独でも使用され、禁煙やダイエットなどに特殊な効果がある。
以上をまとめると、鍼灸療法は防疫や健康維持において重要な意義がある。現代防疫医学の内容は非常に広範囲で、生理、心理、社会など多岐に及び、国外の学者は現在でも防疫医学と臨床医学、回復医学、老人医学、家庭医学、生物医学テクノロジーなど各医学関係学科との連絡を強め、健康維持や防疫の治療が一貫するように努力している。そのなかで鍼灸という古くて新しい学科が、現代防疫医学に対して、益々大きく貢献することが予見できる。

健康維持と防疫の鍼灸法の特徴
健康維持と防疫の鍼灸は、鍼灸治療と方法が変わらないが、特殊な部分もある。それを簡単に紹介する。

健康維持と防疫する時期
時期を把握することは、予防効果に直接関係するので、かなり重要である。それには次の4つがある。
①日常の健康維持
健康人が日頃から鍼灸を使って防疫したり身体を丈夫にし、不老長寿になること。これについて古人は早くから知っていた。例えば宋代の医者である竇材は「無病のとき、常に関元、気海、命門、中{月完}に施灸する」と書き、それは陽を強くして腎元を助け、老衰を遅らせ、身体を強くして健康になると述べている。現代における無病時の健康維持鍼灸は、さらに深まって、一つは健康状態で体質を向上させる日本の保健灸のようなもの、また不健康な状態を保健鍼灸によって調整して正常状態にする、さらに早期から老化を防ぐことである。そこで中高年が鍼灸を使って防疫し、長寿となることを提唱している。
②病気の予防
健康人に病原菌が伝染したり、感染の危険があるとき、ただちに鍼灸で予防する。これは伝染環境に対するもので、例えばインフルエンザの流行っている地区においての予防である。もう一つは伝染源や感染源に対するもので、鍼灸で顕在化していない病気を消したり、病気を根絶することである。例えば狂犬に咬まれたら「犬の噛んだ部位に灸を三壮すえれば、狂犬病にならない」と『素問・骨空論』に書かれており、それが古人の主張する狂犬病治療であった。また、ある種の薬物、例えば抗癌剤や輸液輸血の副作用や毒性反応に対しても、事前に鍼灸で予防する。
③早期予防
病気の初期では必ず前兆が現れるので、そのとき鍼灸を使って予防する。例えば『千金翼方』は「急に腰が腫れたり、附骨腫、癰疽、節腫風、遊毒、熱腫などの疾病では、最初に違和感があるが、そのときに施灸しておけば治る」という。実際、早期治療は、こうした急性疾患だけでなく、様々な慢性疾患や難病の発生や進行を効果的に防ぐ。とりわけ最近になって登場した代謝異常に代表される各種の非伝染性疾患は、例えばダイエット、血圧降下、血中脂質降下、血糖降下、および不健康を調節するなど発病前に鍼灸で予防しておけば、心臓脳血管などの疾病による発病率と死亡率を大幅に減少できる。
④休止期の予防
多くの病気は、発作が起きたり治まったりする特徴がある。発作が治まっているときに鍼灸すれば、はっきりした予防降下がある。これは『内経』にも「瘧を治療するには、発作の始まる30分前に刺鍼して予防する」との記載がある。現在でも大きく発展し、気管支炎や喘息などに、冬病は夏で治す法を使い、大暑から十日ごとに穴位へ薬物を貼りつけて治療しているが、それには冬の発作を予防する効果がある。

操作の特徴
①触って陽性反応物を捜す
一般の疾病では症状の起きる前に、必ず陽性反応物が現れる。それは脊柱付近に現れることが多いが、頚項部や鼠径部に発生したりもする。陽性反応物とは、結節物、ヒモ状物、スポンジ状の軟性物、障害や抵抗などが含まれるが、多く見られるのは結節物である。こうした陽性反応物を按圧すると、怠い、痛い、痺れるなどの反応することが多い。触診によって病気の前兆が察知できるだけでなく、そうした陽性反応物を梅花鍼で叩刺したり鍼灸することによって病気の発生を予防できる。
②毫鍼法の特徴
鍼灸予防の対象が健康人や症状の軽い初期患者であるため刺鍼操作に対するハードルが高く、そうしなければ治療を受けてくれない。一般的に言えば、できるだけ痛みがなく、得気感も強すぎないようにする。なるべく静かな治療環境で操作し、刺鍼前に患者の恐怖心や緊張感を解し、平静でリラックスした状態にする。消毒したあと無通で切皮するため、まず穴位を爪で圧迫し、片手で鍼柄を持ち、片手で鍼尖を持って、一気に切皮し、ゆっくりと刺入して、少し提插して得気を探し、得気の感応があってから手法を使う。
基本手法は、鍼柄を人差指と中指の腹に載せ、親指の腹で鍼柄を押さえ、親指を前後に往復させて鍼を回転し、提插に捻転の効果を加える。手首で鍼を操作し、肘を静止させるよう注意する。予防の需要と患者の体質に基づいて、強弱刺激か補瀉手法を決める。強刺激は、捻転と提插の速度が120回/分で提插幅1~2mm(以下同様)、1~2分運鍼する。中刺激は運鍼速度90回/分で、1分運鍼する。軽刺激は60回/分で、30秒運鍼する。補瀉法だが平補平瀉は、得気感応区で上述した操作を同じ速度で運鍼する。補法は、数回で刺入して一回で引き上げる、つまり層に分けて刺入し、各層で上述した運鍼して一回で皮膚まで引き上げ、これを最初から繰り返す。瀉法は、一回で深部へ刺入して数回で引き上げる。つまり一回で穴区深部の感応区へ刺入し、各層で刺激しながら皮下まで引き上げる。方法は前と同じ。こうした操作は、予防に適していると筆者は考える。
③耳鍼法の特徴
耳鍼は予防、特に健康維持における応用範囲は広い。現在は毫鍼刺、刺血、穴位注射なども防疫や健康維持に使われているが、さらに耳穴圧丸法(耳圧法)の応用範囲は広く、安全で痛みもなく、費用も安くて、身体の損傷もなく、耳介が感染したりしないので、かなり受け入れられている。そのうえ予防者が自分で刺激することもでき、普通の方法より長期にわたる健康維持や防疫の効果がある。その他の方法は、一般の書籍に多く記載されているので、ここでは耳圧法を紹介する。
(1)準備:均一で黒く成熟した王不留行の種か黄荊子を選び、洗って日干ししたあと、消毒乾燥した瓶に保存する。少量を使うならば、絆創膏を7mm四方(黄荊子なら8mm四方)に切り、その中央に一粒の種を置く。大勢に使うならば、10cm×15cmの透明アクリル板に前述した大きさの枡を彫り、その中心に直径1.5mm、深さ0.5mmの穴を穿け、その穴に種を置いて、上からアクリル板と同じ大きさの絆創膏を貼り付け、鋭利な刃物で格子に沿って切り、小さくして準備する。
(2)操作:耳穴の圧痛点を探してマーキングする。75%エタノールで、穴区の油脂を拭き取って消毒し、乾燥するまで待って、左手で耳介を固定し、右手でピンセットを持って種の着いた絆創膏を穴区へ貼り付ける。そのあと数分ほど按圧し、患者に帰宅した後も自分で按圧するように命じる。防疫の必要に応じて毎日3~4回按圧し、3~4日ごとに種を貼り替える。注意すべきことは、親指と人差指で挟んで指圧することで、揉むと皮膚が破れて感染する。
④棒灸の特徴
施灸は防疫や健康維持において、非常に特殊な位置を占める。なかでも棒灸は最も常用されるが、操作も簡単なので、自分で使うのに適している。ほかにも隔物灸や直接灸があるが、特に直接灸は現在において使われることが少ない。しかし防疫や健康維持では重要である。ここで四種の灸法を簡単に紹介する。
(1)棒灸:防疫や健康維持には、温和灸が多用される。市販の棒灸を使い、一端に点火して皮膚に近づけ、徐々に離して行き、患者が暖かくて心地好いが熱くない程度に離したら固定する(一般に皮膚から2~3cm)。その位置で局部が赤くなるまで5~10分暖める。また雀啄灸でもよい。これは点火した棒灸をスズメが餌をついばむように上下させ、皮膚を発赤させる。
(2)隔物灸:常用されるのは神闕の隔塩灸である。細かな精製塩を臍に詰め、塩が弾けて火傷しないように薄いニンニク片かショウガ片(約2mmの厚さで、幾つか穴を開ける)を載せ、そこにモグサを置いて燃やす。一壮が燃え尽きたら艾{火主}を取り替えて点火する。艾{火主}の大きさや壮数は、病状や体質に基づいて決定する。
(3)直接灸:モグサをひねって円錐形にする。大きさは大豆から麦粒までとする。ニンニク汁を穴位に塗り、艾{火主}を貼り付けて燃やす。化膿灸と非化膿灸がある。
1.化膿灸:穴位に貼り付けた艾炷に線香で点火し、皮膚まで燃えた熱くなったら、穴位周囲の皮膚を手で叩いて痛みを和らげる。一壮が終わったら、消毒ガーゼに蒸留水を染み込ませて灰を拭き取り、同じ方法で施灸する。一般に3~9壮すえる。施灸が終わったら灸瘡に淡膏薬を貼る。毎日1回貼り替えて、数日すると無菌性化膿反応が起きる。もし膿が多ければ、勤めて膏薬を替えるようにする。30~40日で灸瘡がカサブタとなり、瘢痕が残る。
2.非化膿灸:方法は前と同じだが、火が皮膚に到達する前、熱く感じたらピンセットでモグサを取り去るか、押し消す。この方法で皮膚が赤くなるまで施灸する。非化膿灸の焼灼時間は短く、瘢痕が残らないので患者も受け入れやすいが、ある種の疾病に対しては、予防効果が劣る。
(4)敷貼:2つに分かれる。一つは皮膚組織に刺激性のある薬物を使い、単独あるいは他の薬物を加えて膏薬にして穴位へ貼る。刺激時間が長く、局部が充血して灸瘡のように水疱となる。あるいは短時間で取り去り、皮膚を赤くするだけでもよい。灸法に似ているので、古代では天灸と呼ばれた。『鍼灸資生経』に最初の記載がある。のちには冷灸と呼ばれ、もともとは治療に使われたが、現在では防疫や健康維持にも拡大している。防疫や健康維持には、この方法が多く使われる。また刺激性のない薬物で膏薬を作ったり、他の物(磁石)を穴位へ貼って圧迫したりするが、さらに貼り付けている時間が長く、より安全である。厳密に言えば後者は灸法ではない。
こうした方法だけでなく、防疫や健康維持には、穴位注射法、皮膚鍼法、火鍼法などもあるが、治療の章節で具体的に解説する。

三、健康維持や防疫に常用される穴位

穴位の選択は、健康維持や防疫のポイントの一つである。古今の医者は、長期に及ぶ探索、何度にも及ぶ選抜、膨大な検証によって、はっきりした特異性のある穴位を選び出したが、そうした穴位は確かに健康維持や防疫の作用がある。体穴もあれば耳穴もある。それだけでなく頭鍼穴区、皮膚鍼穴区などもあり、応用時で具体的に解説する。本章で主に紹介するのは、健康維持や防疫に常用される体穴と耳穴である。

常用体穴
1百会
取穴:頭部で、前髪際正中の直上五寸。または両耳尖を繋ぐ中点(1図)。簡単で正確な取穴方法は、前後正中線繋ぐ線と両耳尖を繋ぐ線の交点。
効能:はっきりした双方向調節作用があり、高血圧を予防し、また過度な血圧低下によるショックを防ぎ、上がり症の予防にも使われる。
鍼:30号1寸の毫鍼を皮膚と15度角で、後ろへ向けて0.50~0.8寸平刺する。また右から左へも刺入して十字刺法にしてもよい。30分(高血圧)から数時間(上がり症)の留鍼する。
灸:棒灸で温和灸か雀啄灸する。毎回5~10分、あるいは状況によって決める。

2印堂
取穴:額で、両眉頭の中間(2図)。
効能:本穴は百会と併用して、高血圧、不眠、鬱病などを予防する。
鍼:1寸の毫鍼を上から下へ0.5寸平刺する。

3素髎
取穴:顔面で、鼻尖中央(2図)。
効能:本穴はショック防止の要穴で、人中(水溝)と併用する。実験では、本穴は血圧下降にとどまらず、血圧の上昇も促し、呼吸を刺激し、身体が失血したときの耐性と代償作用を高める。
鍼:鍼尖を鼻尖から斜め上に向けて0.5~1寸刺入すると、怠い痺れ感が発生し、鼻根や鼻腔へ拡散する。症状が改善するまで留鍼し、留鍼中は間欠的に運鍼する。

4風池
取穴:後頚部で、後頭骨の下両側、僧帽筋外縁と胸鎖乳突筋後縁の間陥中(1図)。
効能:インフルエンザ、流感、高血圧を予防する。緑内障、白内障、近視などの予防にも一定の効果がある。
鍼:本穴は危険な穴位なので、予防に使うときは安全に注意する。解剖学の研究と、臨床治療によれば、鍼尖を鼻尖方向へ1~1.5寸刺入すれば安全である。鍼感が眼の奥や額、頭部に放散すればよい。20~30分留鍼する。
灸:棒灸で10~15分回旋灸する。

5太陽
取穴:コメカミで、眉梢(眉尻)と目外眥(目尻)の間から、約一横指にある凹み(2図)。
効能:インフルエンザ、急性結膜炎、片頭痛発作の予防。
鍼:①直刺は、30号1寸鍼を0.5~0.8寸刺入し、局部に怠くて腫れぼったい感じがあれば、インフルエンザが予防できる。②平刺は、30号1.5寸の毫鍼を皮膚と15度角で耳尖へ 向けて1~1.2寸刺入し、片頭痛を予防する。③点刺は、消毒した細い三稜鍼で点刺出血する。インフルエンザや急性結膜炎を予防する。

6中脘
取穴:腹の正中線上で、臍の上4寸(3図)。患者を仰臥位にし、胸骨剣状突起から臍までを繋ぐ線の中点。
効能:脾胃の機能を調整し、食欲を増強する。伝統的な防疫健康の穴位である。
鍼:毫鍼を1.5~2寸に直刺し、上腹部に腫れぼったい重さがあるが、腫れぼったい痛みが放散するか、胃の収縮感がある。28~30号の毫鍼がよく、深刺しすぎないこと。深刺すると腹膜を破る。15~20分留鍼する。
灸:直接灸は大豆ぐらいのモグサで3~7壮、無瘢痕灸がよい。棒灸は15~20分温和灸する。

7神闕(臍中)
取穴:臍の凹みの中央(3図)。
効能:本穴は、古代の重要な健康維持穴の一つである。宋代の『扁鵲心書』には「この灸は百病を除き、延年益寿」とあり、明代の『鍼灸集成』にも「百歳を過ぎても、非常に健康」とあり、その理由は「季節の変わり目に、臍中へ施灸するから」とある。現代では臍中を胃腸機能の調節、免疫力の向上、老化防止、脳卒中予防に使われる。
灸:隔塩灸する。大豆か棗の種ぐらいのモグサで5~30壮施灸する。壮数について『類経図翼』は「もし300~500壮すえれば、病気が治るだけでなく、寿命も延びる」と書いている。棒灸なら皮膚が赤くなるまで15~20分温和灸する。

8気海
取穴:腹部の正中線上で、臍の下1.5寸(3図)。
効能:培補元気、固益腎精。防疫健康の穴位。この穴を古人は「元気の海」とし、また「男子は気が生まれる海」と『銅人{月兪}穴鍼灸図経』に書かれている。現代では本穴を身体の免疫を高め、延年益寿し、不健康状態を改善し、ショックを防いで、男性性機能を増強することに使われる。
灸:直接灸を5~10壮、大豆ぐらいのモグサで、無瘢痕灸。棒灸は15~20分の温和灸。
鍼:1~1.5寸直刺し、わずかに鍼尖を下へ向けて、少し提插して鍼感を探す。鍼感が線状に放散して会陰に達したら15~20分留鍼する。

9関元
取穴:腹部の正中線上で、臍の下3寸(3図)。
効能:昔から重要な健康維持と長寿の穴。『医経精義』に「元陰と元陽の交叉するところ」とある。『扁鵲心書』は本穴を推奨して「一年の辛さが三百壮、関元の灸は功が多い。身体が丈夫で身が軽く、病気もない。彭祖の寿命は、どうだろう」との詩があり、中高年が健康、男性性機能を保つ要穴としている。
灸:直接灸で5~9壮、大豆ぐらいのモグサで、無瘢痕灸。棒灸は20~30分の温和灸。
鍼:気海と同じ。

10中極
取穴:腹部の正中線上で、臍の下4寸(3図)。
効能:婦人科や産婦人科疾患の予防、男性性機能の維持治療。
鍼:1~2寸直刺し、局部に怠くて腫れぼったいがあり、それが下腹部に広がって線状に外生殖器へ放散したら15~20分留鍼する。
灸:棒灸で10~15分温和灸する。

11天枢
取穴:腹部で、臍の横2寸(3図)。
効能:胃腸疾患の予防、および手術後の腹部膨満。
鍼:1.5~2寸直刺し、局部に怠くて腫れぼったい感じがあり、それが同側腹部へ拡散する。深く刺入しすぎないようにして、腹膜を傷付けない。
灸:棒灸で10~20分雀啄灸する。

12大椎
取穴:後正中線上で、第七頚椎棘突起の下(1図)。頭を下げると、後頚部で最も隆起する骨の下縁陥凹。
効能:各種の急性伝染病を予防し、慢性気管支炎や喘息発作、薬物の副作用などに対して顕著な効果がある。研究によれば、大椎へ電気鍼や施灸すれば、抗体の産生が増加し、細網内皮系のマクロファージの働きが増強し、身体の抵抗力の向上することが証明された。
鍼:わずかに上を向けて1~1.5寸直刺し、局部に怠い腫れぼったさがあり、鍼感が下および両肩に向けて拡散する。刺入が深すぎれば、クモ膜下出血したり、脊髄損傷する。
灸:棒灸で15~30分温和灸する。
抜罐:閃火法かポンプ式で10~15分抜罐する。

13身柱
取穴:背部で、第2胸椎棘突起の下(1図)。
効能:本穴は、日本で養生灸の常用穴の一つである。特に小児の健康に用いられ、『日常灸法』に「風習として、チリケ(身柱)の灸がある。小児は必ず施灸する」と、子供が生まれて百日すれば、ここに施灸してインフルエンザや百日咳、吐乳、消化不良などを予防できる。成人では疲労や薬物の副作用を予防する。
灸:麦粒大の艾{火主}で、成人なら3~7壮の直接灸。小児では鉛筆の芯か、それ以上に細い艾{火主}で3壮、霊台穴へも施灸すると、さらに効果がある。棒灸なら温和灸で、成人は15~20分、小児は3~10分。

14命門
取穴:腰部で後正中線上、第2腰椎棘突起の下(1図)。患者は、腰を伸ばして座るか、腹臥位になり、まず第12肋骨尖端に触れ、それを脊柱中点に水平移動し、その棘突起間が命門穴である。
効能:重要な健康維持と防疫の穴。体質を強くし、精神を調整して、日常の健康維持や防疫に使われ、不健康状態を改善し、男性の性機能障害を防ぐ。
灸:直接灸で3~5壮、大豆大の艾{火主}で、無瘢痕灸とする。棒灸なら15~20分ほど温和灸する。
鍼:1~1.5寸直刺し、局部に怠い腫れぼったさがあれば15分置鍼する。

15風門
取穴:背部で、第2胸椎棘突起下から横に1.5寸(1図)。
効能:インフルエンザ、肺結核、癰疽(オデキ)など。『類経図翼・巻七』は「常に施灸すれば、久しいこと癰疽や瘡疥などの病気がない」という。また日本では風門を「肩叩き」と呼び、民間の習慣では20歳になると「肩叩きの灸」をして病気を防ぎ、健康になる。
灸:直接灸(非化膿灸)は麦粒大の艾炷で3~5壮。棒灸なら15~20分ほど雀啄灸。
鍼:直刺で0.5~0.8寸。気胸を避けるため、穴位の外側1cmから45度角で、脊柱に向けて1~1.5寸斜刺してもよい。局部に怠くて腫れぼったい感じがある。一般に留鍼しない。

16肺兪
取穴:背部で、第3胸椎棘突起下から横に1.5寸(1図)。
効能:肺気を調理(調える)し、扶正{ネ去}邪(免疫を高める)する。インフルエンザや気管支炎、喘息発作などに常用する。
灸:直接灸は麦粒大の艾{火主}で3~5壮の化膿灸。薬物を貼ってもよい。
鍼:直刺で0.5~0.8寸。気胸を避けるため、穴位の外側1cmから45度角で、脊柱に向けて1~1.5寸斜刺してもよい。局部に怠くて腫れぼったい感じがある。一般に留鍼しない。

17心兪
取穴:背部で、第5胸椎棘突起下から横に1.5寸(1図)。
効能:冠動脈の狭心症などを予防する。
鍼:直刺で0.5~0.8寸。肺兪と同じ刺法。

18膈兪
取穴:背部で、第7胸椎棘突起下から横に1.5寸(1図)。
効能:シャックリの予防。胆兪と併せて四花穴として禁煙に使う。
鍼:直刺で0.5~0.8寸。肺兪と同じ刺法。

19胰兪(膵兪)
取穴:背部で、第8胸椎棘突起下から横に1.5寸(1図)。
効能:糖尿病などの予防。
灸:棒灸による温和灸か隔物灸。またミカンの皮を敷いた灸頭鍼でもよい。方法は、毫鍼を刺入して、皮膚に生のミカン皮穴を敷き、鍼柄にモグサを挿して下から点火する。

20肝兪
取穴:背部で、第9胸椎棘突起下から横に1.5寸(1図)。
効能:肝炎や胆石、白内障などの予防。
鍼:直刺で0.5~1寸。また穴位の外側1cmから45度角で、脊柱に向けて1.5寸斜刺してもよい。局部に怠くて腫れぼったい感じがあり、肋間へ放散することもある。

21胆兪
取穴:背部で、第10胸椎棘突起下から横に1.5寸(1図)。
効能:胆石の急性仙痛を予防し、膈兪と併用して禁煙に使う。
鍼:直刺で0.5~1寸。刺鍼法は肺兪と同じ。

22脾兪
取穴:第11第12胸椎棘突起間から横に1.5寸(1図)。
効能:脾気を調理し、水穀を運化し、営を和ませ統血する。脾胃疾患を予防し、虚弱体
質では強壮穴として使える。
鍼:直刺で0.5~1寸。刺鍼法は肺兪と同じ。

23腎兪
取穴:第2第3腰椎棘突起間から横に1.5寸。つまり命門穴の横1.5寸(1図)。
効能:腎気を調え、腰脊を強くし、耳目をはっきりし、健康維持と老化予防の作用がある。
鍼:少し脊柱に向けて1.5~2寸直刺し、腰部が怠くて腫れぼったければ良い。
灸:棒灸で15~20分ほど温和灸。

24膏肓
取穴:第4胸椎棘突起下から横に3寸(1図)。
効能:脾胃を健やかにし、腎元を培う、防疫と不老の常用穴の一つである。『千金要方』には「膏肓は何でも治す」とある。
灸:直接灸は大豆大の艾炷で3~7壮の無瘢痕灸。棒灸は15~20分の温和灸。

25次髎
取穴:仙骨部で、上後腸骨棘の内下方、第2後仙骨孔の中に取る(1図)。ほぼ第2仙骨稜下縁の横0.8寸。
効能:活血止血、気を理して痛みを防ぐ。生理痛や産後の出血の予防に多用する。
鍼:1~1.5寸直刺し、後仙骨孔に入れる。局部に怠い腫れぼったさがあり、下腹部や会陰部へ放散する。15~20分留鍼する。
灸:直接灸は大豆大の艾炷で3~7壮の無瘢痕灸。棒灸は15~20分の雀啄灸。

26章門
取穴:側腹部で、第11浮遊肋骨尖端の下方(4図)。簡単な取穴法は、肘を曲げて脇を締めたとき、肘尖の当たる部位。
効能:積滞を除いて、運化を助ける。胆石などを予防する。
鍼:0.8~1寸直刺する。すばやく切皮し、ゆっくりと肋骨尖端に入れ、怠い腫れぼったさがあれば、2分ほど運鍼して抜鍼する。刺鍼前に肝臓や胆嚢、脾臓などが肥大していないか確かめ、それらを貫かないようにする。

27期門
取穴:胸部で、乳頭の直下、第6肋間(4図。乳頭は第4肋間にある)。
効能:肝を緩めて脾を健やかにし、活血化瘀する。胆石を予防し、血清脂質を下げ、冠動脈性心疾患を予防する。健康人は期門へ施灸すると、リンパ球が明らかに増えるが、これは抵抗力の増強を示す。
鍼:鍼尖を肋骨縁へ向けて0.5~1寸斜刺し、局部に怠い腫れぼったさがあれば良い。
灸:棒灸で10~15分ほど温和灸。

28曲池
取穴:肘窩横紋の橈側端で、上腕骨外側上顆の中点。肘を曲げて取る(5図)。
効能:{ネ去}風解表、調和営血、強壮明目。古代では本穴を「目灸」穴と呼び、高齢による視力減退を予防し、歯を丈夫にし、血圧を調整し、インフルエンザなどの伝染病を予防する。
鍼:直刺か、鍼尖を少し末梢へ向けて1.5~2寸刺入し、鍼感が発生したら1~2分で抜鍼する。
灸:直接灸は麦粒大の艾炷で3~5壮。棒灸は5~15分の雀啄灸。
棒灸で10~15分ほど温和灸。

29孔最
取穴:前腕橈側で、腕関節横紋の上7寸(6図)。
効能:営衛を調和させ、肺気を粛降させる。肺結核の喀血や扁桃炎を予防する。
鍼:毫鍼で0.8~1寸直刺し、局部に怠く腫れぼったい鍼感があり、それが前腕に向けて放散したりする。留鍼しないか、15~20分留鍼する。

30内関
取穴:腕を伸ばして手掌を上に向け、腕関節横紋正中の直上2寸、両筋の間に取る(6図)。
効能:心を鎮めて絡を通し、血を調えて営を和ませる。冠動脈の循環をはっきりと改善し、心機能を調整し、血清脂質の代謝を調節して、狭心症を予防する要穴である。足三里と併用すれば、中絶反応(中絶刺激で頻脈や血圧低下するもの)を防止できる。
鍼:切皮したあと、鍼尖を少し上(肩関節)へ向けて得気させ、提插で反応を探し、鍼感を肩や腋下、あるいは前胸部へ伝達させる。そのあと1~2分運鍼し、15~20分留鍼する。
灸:棒灸で15~20分温和灸する。

31合谷
取穴:手背で、親指と人差指の間、第2中手骨の中点で、少し人差指側(7図)。
効能:衛陽を励起させ、肌表を保護する。様々な急性伝染病の予防に効果がある。
鍼:0.8~1寸直刺し、局部に強烈な怠い腫れぼったさを発生させる。一般に留鍼しない。
灸:棒灸で10~15分雀啄灸する。

32魚際
取穴:手の本節(第1中手指節関節)後ろの陥凹。第1中手骨中点の橈側で、赤白の肉際(表裏の境目)(6図)。
効能:咳喘を防いで、咽喉に利かせ、喘息や慢性気管支炎の急性発作を予防する。
鍼:掌心に向けて0.3~1寸斜刺し、提插捻転で強烈な得気があれば抜鍼する。

33少商
取穴:親指末端の橈側で、爪の角から0.1寸(6図)。
効能:意識を醒し、熱を下げる。ショックや失神、扁桃炎の予防に使う。
鍼:点刺出血。

34血海
取穴:膝を曲げ、大腿内側で、膝蓋骨上縁内側端の上2寸。大腿四頭筋内側頭の隆起した部分(8図)。簡易取穴は、対側の手で膝蓋骨を掴み、親指を広げる。親指を大腿内側に沿わせて立て、親指尖端の当たるところが本穴である。
効能:血を清めて血熱を下げ、子宮出血とジンマシンを予防する。
鍼:0.5~1寸直刺。

35足三里
取穴:外膝眼の下3寸で、脛骨外側一横指(9図)。
効能:脾胃を健運させ、中焦を補って気に益し、体質を強め、延年益寿する。本穴は昔から予防や健康維持の要穴で、『医説・巻二』は「安らかでいたければ、足三里を乾かすことなかれ」という。これは直接灸による化膿である。現代の臨床観察では、脳卒中や狭心症、流感などを予防する。研究により、循環、消化、神経、血液および内分泌、呼吸器などに調節作用があり、全身の免疫機能を高める。
灸:直接灸は麦粒か大豆大の艾{火主}で3~9壮。棒灸は15~20分。
鍼:1.5~2寸に直刺して、鍼感を周囲へ拡散させる。伝染病の予防では、鍼感を膝か踝へ放散させる。軽く速い手法で、運鍼したあと抜鍼する。

36陽陵泉
取穴:下腿外側で、腓骨頭の前下方にある凹み(10図)。患者を椅子に腰掛けさせ、腓骨頭と脛骨粗面を辺とし、逆正三角形の頂点が穴位である。
効能:肝を疎泄させて胆熱を清め、筋を緩めて絡を活かす。疲労を除き、胆石を予防する。
鍼:1~1.5寸直刺し、局部に怠くて腫れぼったい感覚があれば運鍼し、鍼感が踝へ放
散するか、膝や大腿に伝導する。留鍼しない。
灸:棒灸は10~20分温和灸する。

37委中
取穴:膝窩横紋の中点。動脈を避けて取穴する(11図)。
効能:血毒を解き、腰膝を強くし、肌表を固める。小児の急性灰白髄炎予防の常用穴で、インフルエンザ、熱中症、脳卒中なども予防する。
鍼:1~1.5寸直刺し、局部に怠くて腫れぼったい、あるいは痺れる電気のような感覚が足に放散する。留鍼しない。三稜鍼では点刺して数滴ほど出血させる。

38行間
取穴:足の背側で、第1趾と第2趾の間(9図)。
効能:疎肝明目。本穴には優れた降圧作用があり、血圧を下げるだけでなく眼圧も下げ
るので、高血圧や緑内障に著効がある。古人は消渇病を予防するとも考えていた。
鍼:鍼尖を少し上へ向けて0.5~1寸斜刺し、局部の怠い腫れぼったさが足背へ向けて放散する。20~30分留鍼する。

39至陰
取穴:足第5趾の外側で、爪の角から0.1寸離れる(10図)。
効能:逆児を矯正し、難産を治す特効穴である。古籍にも記載され、明代の『類経頭翼』には「横逆難産、すぐに妊婦の右足小指先に、小麦大の艾{火主}で灸三壮。火が下りると生まれる。神の如し。これは至陰穴である」とある。現代の臨床と実験研究により、その作用は実証されている。
灸:直接灸は麦粒大の艾{火主}で3~5壮。棒灸は20~30分の温和灸。

40三陰交
取穴:内踝尖の直上3寸。脛骨後縁に当たる(8図)。
効能:健脾、益腎、疎肝、経血を調える、生殖を主どる。本穴は腹腔臓器の機能を増進させるが、特に生殖系の健康に重要な作用がある。男性の性機能障害や女性の生理や帯下の疾患を予防や治療する。
鍼:毫鍼を1~1.5寸直刺し、局部が怠くて腫れぼったんなれば15~20分留鍼する。
灸:直接灸は大豆大の艾{火主}で3~7壮。棒灸は10~20分の温和灸。

41湧泉
取穴:足底中線の前から1/3。足趾を底屈させるとツチフマズに現れる凹み(12図)。
効能:補腎壮陽、体質を強くし、延年益寿の作用がある。
灸:本穴は刺鍼すると激痛があるので、灸を主とする。棒灸で10~20分の温和灸。

42正光
取穴:眼窩上縁の下方に位置し、二点ある。正光1の穴位は、眼窩上縁の外3/4と1/4の交点、正光2の穴位は、眼窩上縁の外1/4と3/4の交点(2図)。
効能:青少年の近視、老眼の予防。
鍼:一般に梅花鍼で50~100回叩刺するか、各穴に2~3分指圧する。

43四縫
取穴:手掌で、第2~5指の近位指節間関節中央、一側四穴(13図)。
効能:小児の食欲不振予防や、脾胃機能の促進。
鍼:太い鍼か三稜鍼で点刺し、黄白色の粘液か血液を絞り出す。

44命関
取穴:脇下の凹み。坐位で、最初に中{月完}を取り、中{月完}と乳中を一辺として外側に正三角形を作り、その三角形で脇下の頂点が命関穴である。
効能:脾陽を補い、脾気に益する。本穴は『扁鵲心書』に初めて記載され、後天を培う重要穴位である。
灸:直接灸は大豆大の艾{火主}で5~9壮の無瘢痕灸。棒灸は15~20分の雀啄灸。

常用耳穴
1口
取穴:耳甲介腔で、外耳孔後壁の隣(14図。以下同じ)。
効能:禁煙、ダイエットなど。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

2心
取穴:耳甲介腔の正中陥凹。
効能:冠動脈狭心症や不整脈の予防、ダイエット、あがり症の予防。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
埋鍼:円皮鍼を入れる。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

3肺
取穴:耳甲介腔で、心穴の上下と後方で⊃型の部分。
効能:喘息やインフルエンザの予防、禁煙など。
鍼:肺区は範囲が広いので、反応点を探したあと、耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

4内分泌(現在名は屏間)
取穴:耳甲介腔の下部で、珠間切痕の内側。
効能:胆石症の予防、ダイエット、性機能障害の治療。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
埋鍼:円皮鍼を入れる。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

5胃
取穴:耳輪脚が消えるところ。
効能:ダイエット、禁酒。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
埋鍼:円皮鍼を入れる。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

6十二指腸
取穴:耳輪脚の上方で、外から1/3。
効能:胆石症の予防。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

7肝
取穴:胃と十二指腸穴の後方。
効能:胆石症、白内障、肝炎、近視などの予防。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
埋鍼:円皮鍼を入れる。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

8脾
取穴:肝穴の下方で、耳甲介腔の上方。
効能:ダイエット、禁酒、消化不良の予防。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
埋鍼:円皮鍼を入れる。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

9皮質下
取穴:耳珠の内側面。
効能:ダイエット、禁煙、禁酒、疲労回復。輸血輸駅反応、あがり症、薬物毒性反応の予防。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
埋鍼:円皮鍼を入れる。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

10腎
取穴:下対輪脚の下縁、小腸穴(耳輪脚上方の中1/3)の直上。
効能:身体を強くして老化を防ぐ、疲労症の予防、性機能低下。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
埋鍼:円皮鍼を入れる。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

11大腸
取穴:耳輪脚の上方1/3で、耳甲介舟に位置する。
効能:ダイエット、消化管疾患の予防。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
埋鍼:円皮鍼を入れる。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

12平喘(現在名は対屏尖)
取穴:対珠の尖端。
効能:喘息や気管支炎、耳下腺炎などの予防。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
埋鍼:円皮鍼を入れる。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

13外鼻(飢点とも呼ぶ)
取穴:耳珠前面中点の下方。
効能:ダイエット、アレルギー性鼻炎の予防。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
埋鍼:円皮鍼を入れる。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

14腎上腺(現在名は下屏尖)
取穴:耳珠下部で隆起する尖端。
効能:喘息やインフルエンザ、マラリア、輸血輸液反応などの予防。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
埋鍼:円皮鍼を入れる。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

15神門
取穴:対輪脚が上下に分かれる部分。三角窩の外1/3。
効能:禁煙、禁酒、ダイエット、輸血輸液反応やショックなどの予防。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
埋鍼:円皮鍼を入れる。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

16交感
取穴:下対輪脚と耳輪内側の交点。
効能:禁煙、ダイエット、輸血輸液反応やショックなどの予防。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
埋鍼:円皮鍼を入れる。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

17子宮(現在名は角窩)
取穴:三角窩の内側で、耳輪に近い中点の凹み。
効能:産後の出血や生理痛の予防。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
埋鍼:円皮鍼を入れる。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

18風渓(旧名は過敏点)
取穴:舟状窩を5等分し、第1分(指)と第2分(腕)の間
効能:ジンマシン、アレルギー性皮膚炎、喘息発作の予防。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
埋鍼:円皮鍼を入れる。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

19昇圧点(現在名は切迹下)
取穴:珠間切痕の下方。
効能:ショックの予防。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
埋鍼:円皮鍼を入れる。

20目1
取穴:珠間切痕の外で前下方。
効能:近視や白内障の予防。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

21目2
取穴:珠間切痕の外で後下方。
効能:近視や白内障の予防。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

22縁中(旧名は脳点)
取穴:対珠尖端と珠間切痕の間。
効能:ダイエット、抗疲労、老化防止など。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

23眼
取穴:耳垂5区で、耳垂の中心。
効能:急性結膜炎、近視や白内障の予防。
刺血:太い毫鍼か、細い三稜鍼で点刺し、数滴ほど出血させる。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

24扁桃体
取穴:耳垂8区の正中で、眼穴の下方。
効能:扁桃炎の予防。
鍼:耳軟骨まで刺入し、20~30分留鍼する。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。

25耳尖
取穴:耳輪を耳珠へ向けて折り、耳輪上辺の尖端。
効能:耳下腺炎、結膜炎などの予防。
刺血:太い毫鍼か、細い三稜鍼で点刺し、数滴ほど出血させる。

26降圧溝
取穴:上対輪脚と下対輪脚の裏側で、耳介背面のY字形に凹んだ溝。耳背面。
効能:高血圧や脳卒中の予防。
圧丸:王不留行の種か磁石粒を貼る。
埋鍼:円皮鍼を入れる。

★ 張仁の書籍について  
 病気別に分類してあり、一つの病気に複数の治療法が記載され、従来の経穴記載のみだけでなく、刺入深度、刺入方向、置鍼時間、用いる操作方法までもが記載されているのが特徴です。さらに治療効果について治癒、著効、有効、無効のそれぞれの評価基準を設け、50例なり100例の患者を治療した場合、治癒、著効、有効、無効の各パーセンテージを示して治療法を採用する目安にしています。
 この刺入深度、刺入方向、置鍼時間、用いる操作方法が記載されていることが今までになく革新的で、さらに評価基準を明確にしているのが長所です。これまでの書物でも、治癒、著効、有効、無効のパーセンテージを示したものはありましたが、どういう基準で、それを分けたかについては記載されていませんでした。私が推薦する「学生のための治療書」です。

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