回答者:淺 野 周
 質問はこちらまで
(鍼灸Q&Aへの質問は、上のボタンでお寄せ下さい)。質問の全部を挙げろという意見があったのですが、うちは限定しています。


××先生の鍼灸センターのホームページを見てみましたが、料金が高いのと、質問コーナーは「病院で見てもらいなさい」のような回答が多くて、私のような状態は適応外なのか、という印象をうけました。××先生はどんな治療を得意とされているのか知りたかったのですが(それぞれ得意分野があるとのことですので)…。
1日でも早く、仕事ができる体になりたいと思っていますので、先生のおっしゃるように、できれば今週末あたりにでも、百合丘の内弟子さんのところにいこうと思っています。
今まで受けた鍼灸とどう違うのか、興味津々です。
 2009年7月22日
××先生は、かなり高齢で、文化畑出身者です。
現在の中国鍼灸は、現代医学の影響を大きく受けており、哲学理論から離れつつありますので、もう中国鍼灸の翻訳は辞められたようです。
××先生は辨証治療を得意とされていると思います。
なにぶん現在から40年前の文革時代の中国で勉強された方なので、喩えて言えば四柱推命的な鍼灸をされると思います。
今まで受けた鍼灸と、現代鍼灸がどう違うのか、比較してみないと正確に言えません。

ただ言えることは、これまでの鍼灸は治療効果を確かめる方法がありませんでした。それは自然に治ることもあり、自然に治ったのか、鍼灸で治ったのか判定できなかったからです。
治療効果が判らないのだから、痛くない鍼灸を目指すしかありません。ですから以前の鍼灸は、できるだけ痛みを避け、気持ちのいい鍼を目指していました。
現在は一人一人の患者ではなく、できるだけ大勢の患者に鍼灸して、統計して比較する方法が取られていますので、痛くない鍼より治癒率優先の鍼灸治療へと変化しています。
中国鍼灸といっても、ひとつにくくれるわけではないのですね。
患者はそういう情報を得る術を知らないので、自分にあった治療ができる鍼灸師さんにあたるか、運にかかっているように思います。
浅野先生のように、ホームページを開いて、プロにしかわからないことを教えて下さるのは、とても助かります。2009年7月23日

1つには、医療関係には広告制限があり、広告できることが決められています。
例えば「医学博士」とか標示してはダメです。

これは非常に困った法律だと思います。先ず第一に、その治療所の料金が判らないので、幾ら治療費を吹っかけられるか判らないということです。
例えばホームページに「6000円」と明記されていても、「あんたの場合は12000円!」と、急に値段を吹っかけられたりするからです。
「ここは中国なの?」と思います。

もっとも、このホームページは、もともと素人向けではなく、鍼灸学校の学生用でしたが……
料金と、どうした理論に基づいて治療しているかぐらいは、広告事項としてあるべきだと思いますがね。
たぶん郵政の西川社長が、何億も掛けて建てた建物を1万円で売却し、それを6000万円で売却したようなものでしょう。
普通の会社なら、株主が背任横領で社長の首が飛ぶでしょうけど、株主が国しかいない民間会社では、社長が会社にどれだけ損害を与えようが勝手みたいな……
いろいろ法律と常識はズレてますから……

鍼灸で精神的なものも治療はできますか?
例えば自律神経のバランスを崩し不定愁訴やパニックのような症状に悩まされているとかです。
肩凝りや身体の緊張がとれることでの解決であって気持ちや心の問題は無理なのでしょうか?
 2008年11月7日
精神病の治療、例えばヒステリーとか鬱病、統合失調症などの鍼灸は、中国で盛んにおこなわれています。
自律神経失調症やパニック障害は、けっこう成績がいいです。
例えば頭に鍼すれば、脳内にエンドルフィンが出たり、活性化されて鬱が治療できたりするのですが、
気持ちや心の問題は、あなたが抱えている問題であり、鍼をしても頭や身体が変わるだけで、現実の問題は解決できません。ただストレスに強くなれるので、問題が気にならなくなるかも知れません。
私の聞きたかった事はパニックなどを起こしまい、それがどうも予期不安をよび、その不安などにはどういった経過で治っていくのかなと思いました。首や肩の慢性凝りや頭までぼーっとしてしまうのです。こう言う症状も身体がしっかりする事でとれていくものでしょうか?
 頭の鍼は、脳に反応して脳の血流が良くなります。だから脳卒中などに効果があります。
 ただ、頭に鍼しても、そうした効果は1日も経つと消えてしまうので、もとの木阿弥になってしまい、何度も鍼治療を繰り返すことになると思います。
 ところで昔から精神疾患の治療には督脈を使います。それが脳に通じていると思われているからです。
 またアメリカに行動主義というのがあり、それから交流分析などへと発展していますが、それが鍼灸理論と非常に近い考え方をしています。

 例えば、中医では、精神病を「痰があり、それが目や耳に行くため、目や耳を覆ってしまい、外部からの情報が歪められて心が正しい反応が取れず、異常な精神状態になってしまう。だから痰を取り除くのが肝心だ」と考えられています。そこで豁痰の方針を立てますが、鍼灸では豊隆のほか、なぜか督脈を使います。

 そして行動主義ですが、「人は外部に対して反応する」という発想で、悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しい。楽しいから笑うのではなく、笑うから楽しい。
 このような逆転の発想です。森田療法は行動療法だといいますが、交流分析も同じですね。

 なぜか外部からの反応という意味で、中医とアメリカの考え方は似通っています。
 そしてパニックを起こす人とか、鬱っぽい人は、ほとんどの人が身体にも不調を抱えています。
 例えば病院へ行ってみましょう。陽気な人って、まず居ませんね。みんな暗い顔をしています。みんな死にたいと言っています。
 鍼灸院へ来る患者さんも、同じように身体の痛みを抱えてきます。例えば、朝起きると頭痛がしているとか、腰が痛いとか、背中が痛いとか。
 痛くないまでも、頚が凝っているとか、背中が引きつっているとか。
 こういう状態の身体で、毎日毎日痛みを感じながら、楽しくいられるでしょうか?
 ある五十肩の人は、肩が痛くてしかたがない。だけど悪い方の肩は、上に挙がらないので吊革が持てない。しかたなく良い方の腕で吊革を持ち、悪い方の腕でカバンを持つ。通勤電車が揺れ、人に推されて振動するたびに、カバンを持つ腕に激痛が走ります。こんな状態で、陽気にいられますか?

 だいたい鍼は、一回治療すれば痛みが半分になります。速効性があるのです。普通は十回も治療すると、大概の痛みは消えてしまいます。
 そうすると人の表情も変わってくるのです。また考え方も変わってきます。
 例えば、あるお婆さん。坐骨神経痛で毎日痛む。
 「別に痛くても構いません。私も姑が寝たきりになって、毎日面倒を見てきたのだから、こんどは私が嫁に面倒を見させる番だ」
 「そんな考え方はいけません。嫁があんたの面倒を見れば、働き手が二人失われます。両方とも元気で、死ぬまで働かなければなりません」
 こうした考え方は、最初は拒否されたけど、痛みが無くなって行くにつれて、本人もやる気が出て、イチゴの収穫とかを始めるようになりました。働くのが楽しいらしいです。

 こうした事例を数多く見て、例えば某佐川君などは、パニック障害でしたが、背中と首の凝りを消すことによってパニック障害が治り、時間がかかりましたが現在では京急に就職しています。
 両親も喜んで、母親の方は肩凝りで、父親の方は五十肩で来てくれています。

 だから現在では「身体の不調があるから、人は鬱っぽくなってゆくんじゃないかな?」という風に思ってきました。
 それに身体が快調だと、多少の嫌なことがあっても、忘れてしまって考えないようですよ。

 だから私のポリシーとしては、身体が好調だと、だいたい鬱とか不定愁訴は起こらないので、みんなが現在よりは幸せになれると思っています。
 たぶん人間は、身体が好調で、みんなに認められれば、幸せだと思います。
いろんな考え方を教えて下さってありがとうございます。 森田療法は聞いた事がありますが あるがままと言っても苦しい我慢は人間しんどいですね。 毎日の生活で出来る範囲はしていつも楽しい事を 考えながら生きています。でも勝手に起こる不安な気持は どうしてかはわかりません。脳がどうかしちゃったかなとか 考えてしまいます。 五十肩で痛くてもいつかは治るのではないかと自分で 体操やもんだりお灸をしながら生活してます。 お灸も身体にとっていいものでしょうか? パニック症は首や肩の凝りがひどいようですね。実際自分も たまにひどい凝りがきます。頭も重くしびれるようです。 それを精神的なものや心のどうのこうのと言うとややこしく なるのでしょうね。 鍼灸には流派がたくさんありますがどんなものでも効果が あると思われますか? 私が前に受けた北辰会(その先生は引越しされ)なども 鍼はすごく少なく痛いです。 徹底的に身体を調べて せいぜい2-3本。たまに1本? 素人ではこの先生はとてもいいというのが、どこを見れば いいのかわからないんです。 身体が治っていくという事でしょうか?何度くらいすればわかるものですか? 質問ばかりですみません。
五十肩は、ふつう3回から6回で完治します。灸は七十以上の高齢では効果があるようですね。
首や肩の凝りは3回ぐらいで消えますね。
ようするに「仏の顔も三度まで」、「3度目の正直」というように、三回やって効果がなければ、それは苦手なんでしょうね。
流派により、得意な分野や苦手な分野があると思います。
例えば私の流派では、痛みや麻痺に強いので、腰痛や五十肩、頭痛や脳卒中には強いのですが、眩暈や耳鳴りでは十回以上もかかってしまいます。
現在は、どの流派が何の治療に対して得意なのか検証する必要性があります。
しかし、鍼灸は整形より勝っているようですが、どの流派が何に対して強いのか、まだ検証されていない状況です。
近いうちに整形と鍼灸の比較試験がされるようです。 


77歳になる父(和歌山県の南部・新宮市在住)の膝痛について質問させてください。

(07年7月)
左足のひざの痛みで病院を受診、MRIでも異常がなく原因は不明。
その時はブロック注射が効いて、日常生活に支障をきたすことはなくなった。

(08年4月末頃から)
右足のひざ裏が刺すように痛く、力が入らない。ブロック注射でも改善せず。
時々、痛み止めの座薬を使っている。歩行に困難をきたすようになり、寝室を二階から一階に移した。
近所で鍼治療を一度受けたが、一旦痛みが改善したものの、時間がたつと元に戻り、「合わない」と思ったようで、以降、鍼治療は受けていない、とのこと。
少しコレステロール値が高く、胆石の薬も服用中。

(背景)
長年(30年以上)、顔面・背中等に湿疹(1つ数センチ程度。赤く盛り上がり表皮が乾いて剥がれる。痒みが強い模様)が出ていて、痒みが強い時はステロイド軟膏を使用(痒みはおさまるが治るわけではない)。大きな病院で検査を受けたことがあるが、「膠原病」とのことで対策不明のまま。皮膚科の受診は続けているが、湿疹の根治は諦めている模様。
また、不眠症があり、睡眠薬も同じくらいの期間常用。

(質問)
・今回も病院でひざ痛の原因が判明しなかった場合、鍼治療で症状が改善する可能性は、ありますでしょうか?
・新宮市近傍の鍼灸院で、おすすめいただけるところは、ありませんでしょうか。
・そのほか、ひざ痛対策のために助言いただけることは、ありますでしょうか。

 近く、またMRI検査を予定しているそうなのですが、今回も原因不明なのではないかと心配しています。

 本来なら浅野先生、ないしお弟子の先生の所で受診してみるのが一番だと思うのですが、遠方(大阪から電車で4時間。どこに行くにも遠いのです)のことで、なかなか思うに任せません。私は兵庫県在住で、帰省もたまにしかできず、何かできることはないか、と考えあぐねてご相談する次第です。
 先生のホームページに掲載の「家庭でできる膝痛治療」も、ひとまず父に勧めてみるつもりです。     
05/25/2008
MRIでも異常がないとのことなので、軟骨や靱帯には異常がなさそうですね。
ここで判断するためには、大きな情報が2つほど不足しています。
一つは、ブロック注射が効いていたとき、どこにブロック注射をしたのか?
これは病変部位を特定するため、ある程度手がかりになります。
二つめは近所で鍼治療を受けたとき、どのような鍼治療であったのか?
①これは、まず、何処の部分に鍼をしたのか?
②何㎝ぐらいの鍼を使って、何㎝ぐらい入れたのか?
③どれぐらいの太さの鍼だったのか?
④何分ぐらい鍼を刺しっぱなしにしておいて抜いたのか?
以上の2点がなければ、データ不足で、的確な判断が出来ないと思います。

①鍼は、MRIなどで原因の確定された膝痛は治りません。それは軟骨や靱帯が損傷して
いるからです。鍼では筋肉による膝痛しか治せません。
②新宮市自体が判りません。ただし和歌山県ならば、知りあいの鍼灸師がおり、そこで
「このような治療をしてくれ」と言えば、治療してくれるかも知れません。

私の考えでは、「右膝の裏が刺すように痛む」ということなので、膝窩筋か足底筋が凝
り固まっているのではないかと思います。
実は膝痛の7割ぐらいが、膝裏の両筋が凝り固まっているために痛んでいます。
その治療は、3番二寸の細い鍼を膝窩に9本ぐらいまとめて刺し、フクラハギぐらいに
は8~10番で2.5~3寸の太くて長い鍼を反対側に突き抜ける感じで入れます。そのま
ま40分ほど放置してから鍼を抜けば治ると思います。
それで治らねば、腰やお尻が悪くないのか探らねばならないでしょうね。
とりあえず膝の裏とフクラハギを本人が痛がるぐらいに揉んで、揉んでも痛がらなくな
ったら歩かせ、それで痛みが消えていたら膝の裏からフクラハギが原因ですね。


不足情報の件、父に訊いてみました。あまり詳しいことが判らず、申し訳ありません。
●ブロック注射の位置
 効果のあった昨年、効果の出ない今回の両方とも、脊髄の腰あたりだった、とのことです。昨年は一回目の注射で痛みが退いた(念のため二回目も注射)が、今回は三回注射して効果がなく、来週、四回目の注射を受ける予定とのこと。

●近所で受けた鍼治療の内容
 ①場所:左右両方の腰からひざ裏、足首にかけて多数
 ②鍼の長さ、深さ:数センチくらい
 ③鍼の太さ:髪の毛のように細い
 ④鍼を刺しておいた時間:刺してはすぐ抜き、の繰り返し

 父の住む和歌山県新宮市は、紀伊半島の南端やや東で、ちょうど和歌山県と三重県の境になります。和歌山県北部よりは三重県南部のほうが近いです。

(質問)
・ご存知の和歌山の先生は、なに市、または、なに郡にお住まいか、判りますでしょうか?
・三重県では、ご存知の鍼の先生はおられますでしょうか?   05/25/2008
和歌山市のようです。
●近所で受けた鍼治療の内容
 ①場所:左右両方の腰からひざ裏、足首にかけて多数
 ②鍼の長さ、深さ:数センチくらい
 ③鍼の太さ:髪の毛のように細い
 ④鍼を刺しておいた時間:刺してはすぐ抜き、の繰り返し
やはり、最初の三問までは、ちょっとハッキリしませんね。
まず、その鍼灸院は、膝痛をかなり治した人があるでしょうか?
だいたい膝痛を完治させる鍼灸院は少ないので、狭い現地では、かなり「膝痛治療の鍼」として有名になっているはずです。
ただ④を見ると、あまり膝痛を治せないかなぁと思います。
鍼をして効果を挙げるには、刺鍼したときに膝痛が再現され、抜き終わった後でも結構筋肉痛にならねばなりません。
もしかすると抜鍼した直後も、まったく変化がなかったのではないでしょうか?

痛みに強い鍼、内科の得意な治療院など、さまざまな鍼灸院があります。
例えば、私の所は痛みや麻痺が多いので、膝痛や坐骨神経痛、五十肩、腰痛などがほとんどなので、そうした治療経験は多いのですが、婦人科疾患はほとんど当たったことがありません。
ということは、幾ら私が有名でも、婦人科小児科疾患は治せないと言うことです。それ専門の鍼灸院へ行くべきですね。

一般に膝痛は、三回も治療したら効果が現れます。もし3度目の正直で効果が現れなければ、そこは膝痛の苦手な鍼灸院と思います。
ただMRIで異常所見がないので、鍼で治ると思います。
神戸なら弟子の治療院があるのですが……。

 引き続き返信をいただき、誠にありがとうございました。
 和歌山市は遠いので、いっそ神戸のお弟子さんで受診を勧めてみようと思います。もし父が乗り気になったらですが、その際にはこれまでの先生とのやりとりを持参してもよろしいでしょうか?
 新宮市でかかった鍼灸院は、流行ってはいるが、特に何の疾患が得意という評判はなかったようです。
 今日、父が痛む右足のMRI検査を受けてきたのですが、やはり異常は見つからず、来週、腰のMRI検査を受けることになりました。どうも西洋医学方面では、迷宮入りの可能性が濃厚になってきたように思われます……。
 
神戸へ行かれるのなら、やり取りを参考にしたほうが良いでしょう。
 恐らくフクラハギの筋肉が引きつっているために発生した膝痛と思われます。

 ところで流行っている治療所が、必ずしも治癒する治療所とは限らないのです。むしろ逆の場合が多いでしょう。
 それは治癒させてしまうと、患者さんは来なくなるからです。しかし全く効果がなければ、患者さんが来ない。
 そこで兼ね合いが重要になってきます。
 つまり上手な治療院は、鍼すると三日か一週間は痛みが消える。しかし三日か一週間すると、また元に戻る。そこで、もう一度治療に来る。
 このように麻薬患者が如く、付かず離れずの治療をする鍼灸院が上手な先生です。
 治してしまっては患者が来なくなりますから、治った患者さんが病人を紹介してはくれますが、治癒させた患者さんが紹介してくれるかどうか、まったくの患者さんの天気次第ということになります。それでは非常に経営が不安定です。
 同じ患者さんが治らずに定期的に来られれば、鍼灸院は毎日をフルで患者さんを詰めることが出来、経営が安定します。

 「そんなことができるのか?」と思われるでしょうが、長いこと営業を続けていると、患者さんとも気心が知れてきて、別に治らなくとも定期的に来る人が増えます。
 私の所も例外ではない。
 そうしたことは中国の授業では教えても貰えないので、私は弟子入りしようとしていた神戸の先生に、ちょこっとだけそうしたことを教わりました。少し反発を感じましたが。

 流行る鍼灸院は、宣伝が上手だったり、話がうまかったり、マッサージが上手だったりします。

そこが治す治療院か、あるいは治さない治療院かを簡単に見分けるポンイトですが、一つにはそこへ行ったとき、何カ月も同じ患者が通ってきていれば、治しませんねぇ。
あと、他の患者さんが治っているかどうか、他の人とも話をしてみることですねぇ。
自分が3回ほど治療を受けてみて、最初に来た状態と変化がなければ、治しませんねぇ。
あと、遠方の患者さんが多くて、近所の患者さんは少ない治療院。(あっ、うちだ!)
遠方の患者さんが多いということは、宣伝が上手いということです。近所の患者さんが少ないのは、近所では治らないことが有名なので、近所の患者さんが少ないのです。

なにゆえに治りもしない鍼灸院へ行くかですが、
長いこと来ていて、先生と話が合うから、行くことが習慣になっている患者さんも結構あります。例えば、私のマイミクのSさんなど、翻訳者という共通点があるので、鍼しながら喋りに来ます。つまり異業界人と喋るのが目的なのです。
料金を高くしている鍼灸院は、有名人が通う鍼灸院へ自分も通っているというステータスシンボルで行く人もいます。
いつかは治ると信じて来る患者さんもいます。本当は治るまでの期限が必要ですが、無期限で何時の日か完治すると思ってきている。何の根拠もないのに。
いままで以上に悪くならないために鍼灸院へ来ている。でも実際は徐々に悪くなっているが、「鍼をしているから、この程度の進行で済んでいるんだ」と、前向きに考える人。
クロレラや、一時流行った月見草オイルみたいなもので、体験談を見ただけで鍼灸に来る人。体験談など、嘘に決まってます。本当に効果があれば、臨床試験してデータを出し、厚生労働省から××の薬として、日本薬局方に載るでしょう。アロエですら薬として載ってんだから。これは某有名鍼灸院に通っていた患者さんから聞きました。「自分の書いたことが体験談として載ってるっ!」って。その人は大阪出身で、私と同じ頃に北京へ留学していたそうです。

まま、というわけで、鍼灸院のホームページ、あるいは出版した本など、まったく信用できません。(私を含めて)
早い話が細木和子のようなもので、オサルが細木和子に「モンキッキに改名しろ」と言われて、全く売れなくなったり、Xグンが細木和子に「丁半コロコロに改名せよ」と言われ、改名した途端に消えたようなもの。
昔の中国の伝説。
ある村に医者が行き、村人の脈をとると、誰も彼も死脈が現れている。これはヤバイと感じた医者は、その夜のうちに村を逃げ出した。すると、その夜に山賊が来て、村は皆殺しにあったという。
沖縄にも似たような話しがあり、こっちは津波だった。(中国語で読みましたので日本名はちょっと)
つまり細木和子は、神戸の人を鑑定したとき、「誰も彼も死ぬ運命はおかしい。これは何かが起こって死者が多数出るのではないか?」と、当然思ったはずです。しかし「天変地異が起きるから、みんな神戸から逃げろ」と言わなかった。
私ならキチガイ扱いされても騒いだはず。
これは細木和子が非常に冷たい人間か、実は未来のことが予測できないかのどちらかだ。
江原啓之。彼は死者の霊が見えている。「お父さんが来てます!」
どうして一般人を呼び出すんだ。ホーキング博士でも呼びだしたほうが、遥かに人のためになる。新しい宇宙解を、何故に江原啓之は提供しない。側索硬化で死んだホーキング博士は、新たな江原啓之という通訳を迎え、目をパチパチしなくとも自由に自分の考えを話せるではないか。何故に江原啓之は、発明を間近にして死んだ科学者の霊魂を呼ばない? しょうもない一般人の霊ばかり呼び出しよって!
あんたがいれば詩織容疑者など、友人が苦労することなく判ったはずだ!

 ああっ、つい鍼灸と同じ次元の人達まで、批判してしまった。
 まあ、こういうことです。

現在45歳の男性ですが、20年ほど前、バイクで自動車との衝突事故を起こし、その後、偏頭痛や首痛、肩こりなどの症状に悩まされていました。
最近になって右目がほとんど見えなくなり、光と輪郭がなんとか見える程度まで悪くなっています。
医師には、視神経が原因で治療法は何もない、と言われたそうです。
まったく見えなくなってしまう前に、鍼灸や他の東洋医学で何とかできないものでしょうか?    
05/23/2008
一般的に視神経萎縮は、眼窩内刺鍼します。
それによる網膜部の血行を改善し、視力改善を図ります。
ただ視神経萎縮の原因にもよるので、どうして視神経萎縮が起きたかの原因を探ることが必要です。

本人に確認しましたところ、医師には20年前の事故が原因だと言われたそうです。
しかし、他にもスキーで木に激突して頬骨が砕けたり、とにかく怪我が多く、目や頭をぶつけるようなことが何度かあったと思いますので、それが関係しているのでしょうか。
こちらは関西ですのでそちらまで通えないのは残念ですが、近くの鍼灸院に本人を説得してなんとか通わせたいと思います。
どうもあまり治療する気がないようなので大変ですが。   
05/26/2008

初めまして。                    
2007年4月2日
 1ヶ月程前から耳なりで悩んでおり、色々検索している時に先生のサイトを見つけてお便りした次第です。
 先程述べたように耳なりで悩んでいます。初めは低音だったのが徐々に高音になりました。大きさは強弱様々で両耳です。肩こり、首の痛みもあります。眉間や耳周り、こめかみが重くしめつけ感を感じています。最近では手指のしびれもあります。
 耳鼻科で見てもらったのですが難聴ではありませんでした。X線も異常ありませんでした。色々調べているうちに顎関節症が関係あるかもと思いました(以前から左顎の音がしていたので)このような症状を鍼で治すことは可能でしょうか?
 私は福岡市在住なのですがこういった経験をしている知り合いもなく、どこでどういった治療をすれば良いのか分からず途方に暮れております。アドバイスを頂けたら幸いです。
よろしくお願い致します。

 耳鳴りは、かなり治すことができます。耳鳴りの起きた原因は、肩凝りと思われます。そうしたことが原因で、耳鳴りが始まる人は結構多いのです。「眉間や耳周り、こめかみが重くしめつけ感を感じています。最近では手指のしびれもあります」という文を見ても、頚の上部、頭との境目が悪くなってるようですね。手指の痺れは、頚の下部です。
 そうした症状は、頚筋の筋肉が硬直したときに多く見られる症状で、たぶん治ると思います。
 ところで私は福岡市に詳しくはないので、関西方面のことは二天堂鍼灸に質問してください。北京堂のリンクから入れます。そこなら関西方面とか福岡で、それを治せる治療院を紹介してくれると思います。私も治せると思いますが、遠いですからお勧めしません。
 でも、耳鳴りは3回ぐらいの治療を覚悟しなければなりません。難聴よりは治りやすいですが。
 

 私は今年に入り、鍼灸院へ行きました。3回通いましたが3回とも治療中、その後3日間は痛みが続きました。4日目には少し治まり5日目に消えます。プロダンサーしていますので疲労を取る目的です。この痛みは、先生の方へは伝えていましたが、黙り込んで返答はありませんでした。4回目行った時、踵へ鍼をし、その後激痛。次の日から歩くのもままならないほどで、今は知り合いの接骨院へ通っています。激痛から今で1ヶ月で、普通に歩けるまでなりましたが痛みは残り、ダンサーとしては復帰出来ておらず、落ちた物を拾うこともできません。この旨を先生へ言ったら謝ったものの「次の日に来たら治せた。鍼がいやならカイロ的なやり方ですぐ治せたのに。接骨院の治療はゆっくりだから時間がかかってる」と言われ、私は納得いきませんでした。お聞きしたいのは、全く痛みがなかった足首、踵へ(先生の判断で)鍼を打ち、歩けないほど痛みが生じる事はあるか?と言うことと本当に次の日に治す方法があるのか?と言うことです。
 こういう質問もたまに受けるのですが、どのような治療をしたのか? どんな鍼を使ったのか? そういうことが一切触れられてないので、正直言うと答えに詰まります。
 鍼と言っても、さまざまな治療法があるので、一概には言えません。
 重症ならば3回ぐらいは、鍼したあと3日ぐらい重みが残ることはあります。
 一般的に言えば、足首には刺鍼することはありますが、踵というとカカトのど真ん中ですよね。一般的に足の裏、手のひらへ刺鍼することは、まずありません。
 バネ指などでは手のひらに刺鍼することはありますが。
 足の裏へ刺す場合は、横から入れます。でないと足底へ刺鍼すれば、ひどい痛みがあります。
 というわけで私は足底へ刺鍼することは、まずないので、ちょっと経験がありません。中国で昔、足の反射区のような方法で、足の裏へ刺鍼する方法もあったのですが、現在では使われてないと思います。高麗手指鍼とか、手のひらへ刺鍼する方法はあるのですが。
 頚の痛みなどでは、1回目の治療で筋肉が緩みきっておらず痛みが出ていれば、翌日に刺鍼して緩めると痛みが消えます。
 この可能性として、足の裏へ刺鍼してグルグル激しく回し、内出血させたのではないかと思いますが、ただ足底はタダでさえ痛いので、そんなところへ刺鍼してグルグル回せば痛く耐えられないはずですから、ちょっとあり得ないと思います。
 次に考えられるのが、太い鍼を足底へ刺して内出血させたケースです。足底は皮が厚く、太い鍼を使って血管を破ったかも知れません。そうすると内出血を起こして、血腫に神経が圧迫されるので歩くたびに痛むでしょう。もし仮に足底動脈を破ったのであれば、痛みがしばらく続きます。ただ一般に動脈を破った場合、3日ぐらい痛く、3週間で内出血した茶色は消えますので、1ヵ月も痛みが続くことは考えられません。
 以上の話で、一般的に頚や腰で翌日に痛みがある場合、その痛む場所に再度刺鍼すれば痛みが消えますが、足底の場合は経験がないので判りません。
 あと、もう一つ考えられるのは、踵骨に骨棘ができていて、それが痛みを出していた場合です。それならば鍼では簡単に痛みが消えません。
 というわけで、なにぶん本人ではないので情報不足。
 後の祭りですが、痛みが出たときすぐに、その鍼灸院へ苦情の電話すれば良かったと思います。そうすれば「すぐに来てください」とか言うはずです。
 実は私も、目の一部が暗くて見えない患者さんがあり、頚の後ろへ刺鍼したのですが、翌日の朝8時に「朝起きてみたら急に片目が見えなくなっていた」と、苦情の電話を受けたことがあります。
 その電話を受けて、「もしかしたら目の外側にあった血栓が中心へ移動したのかも知れない」と思い、「それでは、すぐに来てください」と言いました。
 その人は朝九時に来て、1回の刺鍼により目が見えるようになりました。
 ただ、これは私が治療者だったので「目のツボを打つと目の血流が良くなり、もしかして縁に詰まっていた血栓が中央へ移動したんじゃないか」という勘が働いたためで、人がやっていた治療ならば判らなかったでしょう。
 だから翌日に治す方法があったかどうかは兎も角、すぐに反動が起きたときに電話すべきでした。
 質問に対する回答は、以上の3ケースです。
 
 
はじめまして 横浜市港北区在住です
 昨年12月25日脳出血を発症し右半身に麻痺が残っています。歩行もできますし右手の握力も25kgまで回復していますが、右顔面のつっぱった感じと右手の痺れが抜けません。10回ほど鍼治療はしましたが、改善せず、とりあえずやめています。毎日筋力トレーニングし、降圧薬、鬱の薬(視床痛用)は服用しています。右手は痺れだけで痛みはありません。中枢性の痺れについては治療の可能性があるでしょうか 
 Sat 11/04/2006 06:57:50 JST

 俗にいう視床痛については、鍼でほとんど消えます。しかし10番ぐらいの太い鍼を置鍼せねばなりません。
 一般に脳卒中の体鍼では、芒鍼とか蟒鍼とかの鍼を麻痺した手足に透刺する治療がされますが、芒鍼というのは長さが四寸以上の鍼ですので日本の鍼ならば3.5寸、蟒鍼も四寸以上の鍼ですが、蟒鍼が芒鍼より太いです。違いは蟒鍼が直径1㎜ぐらいの太さ、芒鍼は直径が十番ぐらいの太さの鍼です。それを置鍼したりします。
 つまり脳卒中の視床痛と呼ばれる痛みに対しては3寸の十番ぐらいでないと効果が無く、普通の寸六の三番とか寸三の三番の鍼では、あまり効果がありません。脳卒中では筋拘縮が激しいので、普通の鍼では痛みが取れないのです。
 もし3寸の十番を目一杯入れて痛みが取れなければ、脳卒中で痛みの取れない最初のケースだと思います。
 ただ知覚の麻痺については結構難しいので、効果が少ないかも知れません。痛みには効果があるのですが。
 脳卒中の鍼治療で、まず一番消えやすいのは出血した血腫、その次が痛み、その次が運動麻痺で、私の経験では知覚の麻痺が一番治りにくかったです。
 
このメールは返信しても「迷惑メール」と見なされるのか、すぐに返ってくるため、ここに掲載しました。

Thu 10/26/2006 23:36:48
 はじめまして。群馬に住む男性です。
 10年位前から高音の軽い耳鳴りが始まりました。
パチンコが原因か、6年で4人家族が亡くなったのが原因か、仕事のストレスが原因か分かりませんが、5年くらい前から高音の耳鳴りが強くなって20~30dbの軽い難聴になりました。
 今年2月に低音の耳鳴りも始まったので難聴の検査をしたら40~60dbまで落ちていました。
 4月に地元の鍼灸院へ15回ほど行き、耳の周りにとても痛い鍼を打ってから、難聴や耳鳴りは改善せずに、音が割れて聞こえるようになりました。
 5月からは東京の突発性難聴の鍼灸院に20回ほど行きましたが変わりません。
 このたびこちらのホームページを拝見して治る可能性があるのかと嬉しくなりました。可能性はあるのでしょうか。

 耳鳴りや難聴の場合、その障害部分は内耳であり、鍼は内耳まで届きません。そこで耳周囲へ鍼をして内耳の血流を改善し、回復を期待するような治療です。一般的には肩凝りの治療を併用し、頚の筋肉を緩めることで、心臓から頭へゆく血管を圧迫しないようにします。
 難聴の治療を始めるならば、2月に耳鳴りが始まったなら、2月のうちに治療すべきでしたね。
 難聴などの人は、耳の周りに鍼をすると一般的に痛いです。
 最初に15回、突発性難聴の鍼灸院に20回行き、変化がなかったということですが、うちは3回で改善しなければ一般に何回治療しても快復の見込みナシと判断します。まあ多くて六回治療します。ちょっと15回とか20回も変化がないのに同じ治療を続けませんね。
 でも難聴に対する治療法は、どこも同じではないかと思います。群馬なら伊勢崎市に大成堂がありますので、そこが北京堂と同じような方法で難聴の治療をするはずです。
 群馬ならば、そちらに通われたほうがよいのではないかと思います。
 耳鳴りは小さな物は10年くらい前からあります。難聴も軽い物は5年くらい前からです。
ですから5年位前から3ヶ月おき位に病院には行ってます。
 今年の2月くらいから以前からあった高音の耳鳴りに加えて低音の耳鳴りがしたので鍼灸治療を考えました。
 やはり治療は無理なのでしょうか。最悪現状維持出来ればとも思ってます。
 地元の鍼灸院ではとても痛かったですが、今の鍼灸院は痛くありません。
 ですから地元の鍼灸院はとても深く(1.5cm位)鍼を打ったので、後遺症で響く(割れる)感じが始まったのかと思ってましたが、鍼灸治療ではそんなことは無いのでしょうか。
 ちなみにその地元の鍼灸院に北京堂さんのホームページを教わりました。

 耳鳴りは治りやすいので、無理とは言えません。耳の後ろへ1.5㎝入れたぐらいでは、後遺症で響く感じは起きません。あそこは一般に3㎝ぐらい入れないと効果がありません。ですから音が割れる感じがするようになったのは、効果がなかったので割れる感じがするようになったと思います。
 うちでは一般に2寸の鍼を入れて行きます。ですから耳に4㎝ぐらい刺入します。
 音が割れるようになったというのは、うちでは鍼をして割れるような感じが起きる人はおらず、耳鳴りが悪化して音が割れるとか声が割れるように響く人が多いです。鍼すると割れるような感じが治まります。具体的な治療の写真は、二天堂の治療法の紹介を参照してください。それに近い治療をします。
 私見では、1.5㎝ほど耳に入れたのでは、奥のほうに届いておらず、耳の血流が改善されないので耳鳴りが進行したと思われます。それに刺鍼によって音が割れる後遺症が残ったとしても、鍼の後遺症は脳や延髄を損傷しない限り、一週間もすれば影響は消えてしまいます。だから鍼の効果は三日しかもたないとか、一週間しかもたないと言われるのです。今の話では、その後遺症が続いているとおっしゃいますので、鍼の影響ではなく、鍼で症状が止められないために進行したから音が割れるようになったのです。
 一般に耳鳴りや難聴、眩暈の治療では、耳の奥にズシーンと響くような感じがなければ効果がないと言われています。
 耳鳴りは、一般の神経でいえば痛みのようなものです。神経の刺激は同じなのですが、脳では、視覚分野では光刺激と捉え、聴覚分野では音声刺激と捉え、身体では触覚や痛みとして捉えるのです。ですから耳鳴りがするというのは、耳の神経が死んでいる状態ではなく、耳の神経が何かの原因で興奮し、何もない状態なのに興奮刺激が伝わっているということなのです。つまり坐骨神経痛のようなものです。普通なら痛みを感じないのに、神経が興奮してパルスを出しやすくなっているから痛みとなるのです。
 私が「いろいろな鍼灸院で、それだけ長期の治療を受けておられるから、鍼で治すのは難しいのではないか」と言った理由を説明します。
 例えばヘルニアならば、坐骨神経をヘルニアが圧迫するため、普通なら痛みとして感じられない刺激が倍増され、痛み刺激に変わります。もし神経が死んでしまえば、圧迫されても痛みを感じません。
 耳の神経も、脳へ行く途中で、例えば骨に圧迫されたり、血管に圧迫されたりすると、いくら鍼で耳の血流を改善したとしても、耳の神経が骨や血管で圧迫されているのを消すことはできません。仮に耳の神経に隣接する動脈に動脈瘤となり、それが神経を圧迫しているのだとしたら、動脈瘤を退かさないと痛みは消えません。これは三叉神経痛や顔面痙攣でも同じ事です。それに鍼をして血流を改善したからといって、神経を圧迫している動脈瘤が消えるわけではないのです。
 ですから、それだけ鍼治療(35回)を受けても耳鳴りが消えないのですから、聴覚神経を何かが圧迫しているのじゃないかと疑ってかかる必要があります。そして圧迫している物がなかったら、鍼の治療法が悪くて治らなかったのではないかという可能性があります。
 うちでは3回も治療して変化がなければ、そうした可能性を疑って、ちょっと耳から脳までの間で、動脈瘤やイボがあって、それが耳の神経を圧迫しているのではないかと考え、断層写真を撮ることを勧めたでしょう。
 治らないのに延々と治療を引っ張るというのも経営には良策かも知れませんが、それが本人のためになるのでしょうか?
 私が思うのに、十年前から少しずつ耳鳴りがあり、五年前から難聴も始まったということなので、症状が悪化しています。もし動脈瘤や脳内のイボが圧迫していたとしたら、それらが大きくなるにしたがって症状も悪化して行きます。だから鍼で治らないから別の鍼灸院へ移るのではなく、病院を変えてみて精密検査されたほうがよいと思います。なかには骨が増殖して神経を圧迫し、耳鳴りが起きてたという患者さんもあります。だから耳の神経が何かによって圧迫されている可能性を排除してから、鍼灸院を変えられるなり、なんなりされたほうがよいと思います。

はじめまして。
 今、鍼灸院さんに通いたく、探しております。このような症状に対応して頂けるか教えて下さい。8月初旬より、身体のあちらこちらが痛くなる症状に悩まされています。足から始まり、腕、肩、頭までほぼ全身の痛みでした。その後、リウマチ・膠原病の検査や首のMRIの検査をしましたが異常はありませんでした。現在病院では「頸肩腕症候群」と言われています。全身にも広がるそうです。実際、7月に婦人科系の腹腔鏡手術後に背中の鈍痛があったり、その前にも肩甲骨が痛くなったり、マッサージも週1で通っていたりしてました(肩こりの為)。最近では、痛くない日もあり、症状も落ち着いてはいるのですが、両腕・両足の痛みはなかなか抜けません。特に外出すると、我慢できない程ではありませんが痛みます。場所が「ここ」と示せず、移動性です。今は、薬と低周波レーザーで治療していますが、鍼も効くと主治医から言われてるので、ご回答の方、宜しくお願い致します。2006年10月17日
 たぶん頚や背中が強ばっているためだと思います。そうした患者さんを何人か治療したことがあります。だいたい3~4回で完治します。
 仰るような症状は、普通は頚椎の脊柱管狭窄症で起きるのですが、狭窄症ならば手術もせずに症状が落ち着くなどということはあり得ないし、MRI検査で判るはずですので、背中や頚が強ばっているだけだと思います。
 鍼は確かに効果がありますが、病院でも専門科があるように、鍼も痛みに強い人、婦人科に強い人、皮膚科に強い人、精神科に強い人があり、例えば痛みに強いところへ行けば三回ぐらいで治るでしょうが、婦人科に強い鍼灸院へ行っても20回通ったが治らないということになります。
 現在の法律では、自分が何科が得意なのか、鍼灸院では表示できないことになっておりますので、周りの評判を聞いてみるしかありません。
 例えば、そこへ行ったら不妊症が治るから良いと評判の鍼灸院で、その痛みを治療して貰っても、たぶんラチがあきません。
 まあ、この疾患は「鍼も効く」というより、「鍼なら三回ぐらいで完治する」と言ったほうが適切ですね。

 
昨年「皮膚に湿疹」ができ、内科医院・皮膚科で診断の結果、「湿疹」との事でした。 今年は「夫」にも、「湿疹」ができたため、皮膚科で診断の結果、「ダニ」との事でした。
薬剤・退治の方法をHPで検索した結果、先生の「家庭でできるダニ退治」を拝見し、退治を始めました。おかげ様で今は(10月6日)ダニにかまれる事なく、退治を継続しております。
布団乾燥機・除湿機を購入しました。
 今年の奮闘の結果は、来年の5月から7月頃にかけて判明します。そのころまた結果をご報告します。ご指南ありがとうございました。

たぶん南京虫ですね。
 畳を上げて、床に新聞紙を敷き、その上にダニアースの粉末をふって畳を戻し、畳の表面にはダニブロッカーを吹き付けます。ダニブロッカーは、付け替えようがあります。
 そして布団のシーツを剥ぎ、布団の表と裏にダニブロッカーを吹き付けます。
 次に洋服ダンスから服を取り出し、洋服ダンスの中、タンスの引き出しの中、押入、座布団、ゴザなどにも吹きつけ、ついでに仕舞ってある下着や洋服にも吹き付けたほうがいいです。
 南京虫は一度咬まれると三週間ぐらい痒いですから、それからあと咬まれなくなります。 全ての作業は、湿らせたマスクをかけてやったほうがいいです。
 それから最初にあなたが咬まれたのなら、あなたが友達の家から持ち込んだものかも知れません。その友達の所も処置したほうがいいかも。


 
初めてメールします。学生時代は周りでは、経絡治療やら、六部定位やら、Oリングやら、果ては呪術めいたまやかし療法っぽいもので溢れかえっておりまして、当時は鍼灸治療に対してかなり胡散臭く感じており、また実技の時間にいい加減な鍼をされて抜けなくなったりで、鍼灸の学生でありながら、すっかり鍼治療に対して興味を失っておりました。 そして、かなり遅ればせながらやっと真剣に鍼療法を勉強する気になりました。ここにきて偶然にも浅野先生のホームページに出会えて、鍼療法に対する長年の不信感を払拭できたことは、私にとってすごくラッキーです。ただ、今まであまり鍼に触れていなかった私にわからないんですが、鍼療法においては刺激ドーゼはどのようにしてコントロールするのでしょうか? 学生時代の実技の先生は鍼の太さと得気の強さが大事だとおっしゃってましたが、その当時はあまり理解しませんでした。いわゆる「あんま的」な徒手療法で、筋肉の硬結を解消させるには、痛気持ちいいぐらいの刺激量(これもやはり患者さんによってかなり幅がありますが)が、その人にとっての最適な力加減ということになってますが、鍼療法ではいかがなものでしょうか? また、「あんま的」な徒手療法では、熟練者は指先から伝わる筋肉の感触で最適な刺激量がわかるのですが、鍼の場合は熟練すれば鍼先から伝わる感じでわかるのでしょうか? 私の場合、「鍼の響きがきたらゆってね~」で確認しぃしぃ打ってます。すごく初歩的な質問で恥ずかしいのです。
それとお願いがあるのですが、実はこれまた偶然にも、私が住んでるところが二天堂さんから近くですが、ぜひとも施術を見学させていただきたいのです。浅野先生から紹介状をいただけないものでしょうか? あと腰部脊柱管狭窄症の母親の腰痛治療のため3寸5番の鍼を譲ってください。宜しくお願いいたします。
 追伸 おととい本屋さんに行ったら浅野先生の訳本『刺鍼事故』があったので購入いたしました。楽しく読ませていただきます。あと、訂正部分ですが、最後の156ページ6行目、壊死→環死。とあるのは下から6行目のところですよね。

 『刺鍼事故』ご購入、有り難うございました。やはり他人の失敗を読むのは楽しいですね。「他人の不幸は、蜜の味」と言いますからねぇ。ご指摘の通り、下から6行目です。
 このメールは、一部文字化けしていて読めない部分がありました。87年卒業というと、私と同じです。そして当時、行岡は、やはり授業が悪いというウワサでした。当時は、関西は良導絡ばかり、明治は解剖の鍼ばかり、行岡は何もないと言われていました。そしてトリガーとか六部定位、Oリングなどで溢れかえっていたことは、私の学校でも同じです。操体法とか、イオンポンピングなどというのもありました。痛みのメカニズムとして、ゲートコントロール説というのも流行ってましたね。それが、実用的にどう使えるのだというと、何もありませんでしたが。
 私も学生時代は、あまりにも怪しげな治療法が多いので、正直いって、当時は嫌気がさしていました。そして唯一なるほどなぁと思ったのが、木下晴都の『鍼灸学原論』でした。実際、神経根傍刺は、坐骨神経痛患者に、よく効きましたから。それが中国へ行ったのは、神経根傍刺のような刺鍼法を、木下晴都より中国のほうが早く開発していたからです。
 88年当時は、中国は辨証法治療一色だったので、日本のように様々な治療法があるよりも、真実は一つと思ったから辨証法の中国へ勉強しに行ったのです。そこで『小針刀』理論に触れて、今のように辨証法を捨ててしまったのですけれど。
 私は子供のころから按摩をさせられていたので、同級生に較べて手がかなり敏感でした。ですが敏感な手の持ち主だけツボの在処が判り、治療が出来る。そんな特殊な人間しかできないような治療法ではダメだと思い、小鍼刀の理論などを取り入れて、出来るだけ誰にでも理解でき、手の感覚がなくても治療できるようにしました。つまり、素人でも解剖さえ判れば、治療できるような方法を目指しました。ですから刺激ドーゼなどはありません。多くの場合、刺激しないのです。だから刺激しすぎて、かえって痛みが増したなどということはありません。ただ鍼の太さはありますが、筋肉が堅すぎて鍼が入らなかったり、鍼が曲がると肺に刺さる危険性があるときに、太い鍼を使うだけです。正直いうと、熟練が要らない鍼治療なのです。
 というのは脈診何十年などのように、何十年も勉強しないと習得できないなんて、教育システムに欠陥があるのではないかと思うからです。
 鍼が筋肉に刺さると、血流が増えて緩むということは、中国で証明されています。何故緩むかまでは解明されていませんが。
 そこで小針刀理論と、木下理論を組み合わせて、神経が圧迫されたり牽引されるために痛みが発生するという理論に従って、深部の神経が圧迫される部分の筋肉を緩めたり、癒着を剥がしたりするのです。
 北京堂では、主に筋肉を緩める治療をするので、手技はしません。だから置鍼時間が長くても、筋肉が緩んでしまったら、それ以上の作用はしないのです。これが許容量のある薬物と違うところです。
 筋肉が鍼を刺すと快復することは、『鍼灸学原論』でも、ネズミの筋肉を使って木下晴都が実験していたと思いますから、別に中国の専売特許ではないと思います。
 私は、鍼が昔は血を出す鍼石だったのが、深く刺すようになって鉄に変わったところから、電気の伝導率と関係があるのではないかと思っています。鍼は箴と書かれていたことからも判るとおり、竹製の鍼があったはずで、そっちの作り方が簡単だったはずです。それが何故、竹鍼や石鍼が廃れて、金属の鍼が使われるようになったか、たぶん電気を通しにくいからだと思います。試しに金メッキした鍼を使うと、効果が悪いのです。銀は効果がよいようです。そうした状況証拠から考えて、ステンレスの鍼は、鉄の鍼より効果が劣ると思います。昔の錆びる中国鍼は、現在の錆びない中国鍼より、効果が良かったように思います。それに鍼は、尖端が当たると筋肉が緩むのですが、鍼が筋肉を貫いてしまうと効果が悪く、当然にして当たらないと効果がありません。なぜか尖端が筋肉へ少し入っているぐらいが効きます。だから筋膜に金属が入ることが、筋膜を変化させ、筋肉内部と筋肉外部のイオンチャンネルが開いてイオンが交換され(例えば溜まっているカルシウムイオンが排出されるとか)、それが一定量になったら筋肉が弛緩するのではないかと思います。そのイオンチャンネルを開くためには、電気の良導体である金属でなければならず、そのために石や竹の鍼は使われなくなったのではないかと思います。
 それから得気というのも、何でも良いというものではないと思います。患者さんにあった得気というか。例えば筋肉性の坐骨神経痛ならば、夜中や明け方にフクラハギが痛くなりますが、大腰筋へ刺鍼すると、その夜中や明け方の痛みが再現されます。その再現が重要で、いくら得気があっても、坐骨神経痛の痛みと関係のない場所にあれば、それは治療には役立たないわけですから。だから刺鍼したときに、痛む場合と同じような痛みが再現されることが重要なわけで、それ以外の得気はあってもしょうがないことになります。違う得気、例えば坐骨神経痛なのに、大腰筋へ刺鍼したら鼠径部に得気があったなどでは、得気があっても坐骨神経痛は改善しないわけです。鍼をしている側は、手応えはありますが、その得気がフクラハギに出ているのか、それとも鼠径部に現れているのかは患者さんに聞かないと判らないわけで、だいたいに経験で最大公約数的なところは想像できますが、やはり「どうですかぁ~? フクラハギが重怠くなってきませんか?」などと質問しています。二十年近く鍼をしていますが、それは現在でも一緒ですね。中にはトンデモナイ場所に得気が発生する場合もあって、「やっぱり経絡というのは、あるんだなぁ」としか考えられないケースもあります。その場合は、説明できないので、正直いって困りますが。 こうしたことは表現が違えども、『霊枢・官鍼』などに書かれています。
 最後に、どうして鍼が抜けなくなったかですが、鍼の技法に「焼山火」とか「透天涼」などの手法があります。血管を拡張させたり収縮させ、血流量を調整することにより局部の温度を上げたり下げたりする技法ですが、それは神経を刺激することと密接な関係があります。つまり血管が収縮すれば血流が減って温度が下がり、血管が拡張すれば血流が増えて温度が上昇するのですが、それに必要とされる得気が、筋肉が痙攣したり弛緩するときの感覚と同じなのです。つまり手技をして、神経を刺激することで、運動神経へ常に短いパルス刺激を起こさせ、筋肉が収縮し続けたから血管が圧迫されて血流が減り、温度が下がった。筋肉が収縮したので、鍼が抜けなくなった。ところが置鍼していれば筋肉が弛緩することは、爪床微小循環などの改善でも確認されています。
 うちは弟子に治療を教える代わり、自分も人に教えなければならないという義務を課してますから、研修生が来ていない日なら、いつでも見学させてくれると思います。なにせ中国ではマンツーマンで教えるのに、日本で1対20や40で教えていれば、いつまでたっても中国に追いつけませんから。それと弟子になった人は、私の都合のために三寸五番を年間1000本ずつ買う義務があります。私から鍼を買うと送料がかかりますから、二天堂で100本ぐらいなら買わせて貰った方がいいでしょう。
 腰部脊柱管狭窄症が治るとは思いませんが、大腰筋と足後面の血管近くへ置鍼すれば、足の血流が良くなって症状は改善します。でも時間がかかります。すぐに良くなるのですが、元に戻るのも早く、全体として薄紙を剥ぐように良くなるそうです(患者さん談)。
 二天堂は、心配であれば、私からメールしておきます。

膝痛の鍼治療を拝読させて頂きました。
Q1:膝の内側が痛む場合ですが、薄筋や縫工筋が脛骨を内側に引っ張るために関節内側に圧力がかかるのは分かります。ですが内転筋群は大腿骨に付着しているので、関節に圧力をかけることは無いと思うのですが、(骨盤、股関節なら分かります)原因の筋肉として書かれております。どうしてでしょうか?

 困った質問ですね。説明しにくいですね。勘と申しましょうか。
 北京堂方式の鍼治療とトリガーポイントの違いは、トリガーポンイトは筋肉を対象として考え、筋肉に対して治療するという考え方、つまり圧痛点とか反応点治療なのですが、北京堂方式では、そのような発想をしないのです。その典型的な例が、坐骨神経痛に対する大腰筋刺鍼です。坐骨神経は、臀部を圧迫すると圧痛や放散痛が走りますが、腰を押したからといって、坐骨神経に沿った痛みが発生する訳ではないのです。刺鍼したときのみ、しかもかなり深く刺鍼したときのみ放散痛が走ります。なぜ違うのかというと、トリガーはマッサージを主とした治療であり、北京堂方式は刺鍼のみの治療だから圧痛点や反応点を治療ポンイトにしないからでしょう。だからマッサージならばトリガーのほうが良く、刺鍼ならば北京堂方式のほうが優れているでしょう。
 膝の内側が痛む場合に、骨盤が問題があるのではないかというのが理解できるのであれば、話が早いです。
 北京堂方式では、坐骨神経痛を例に取ると、大腰筋だけが原因とは考えていないのです。それが主な原因だと考えていることは確かですが、それが指まで行く場合に、大腰筋を通った後、梨状筋を通り、ヒラメ筋を通って足指に達すると考えているので、その途中経路ならば大腰筋に限らず、坐骨神経を締め付ける筋肉があれば、それによって痛みが増すと考えています。だから坐骨神経痛の治療では、大腰筋の一本ではなく、梨状筋が硬ければ刺鍼することもあり、たいがいはヒラメ筋にも刺鍼します。
 神経、特に筋肉を動かすような太い神経は、皮下を通っているわけではなく、関節部分を除けば、たいがい骨の近辺を通っています。それは、ちょっとした傷で、手足が動かなくなるようなことがないようにとの配慮からであると思います。だから骨まで達するような傷を負わなければ、たいがいは筋肉は動いてくれます。
 そこで膝の内側が痛むのは、半腱様筋や半膜様筋が主で、それに薄筋や縫工筋も絡んでいるとは思いますが、それらは表面の筋肉です。そうした表面の筋肉を動かしているのは、大腿骨近辺を通っている深部の神経であり、そうした深部の神経が圧迫されると、神経が興奮しやすくなって、常に細かいパルスを出し、そのために脛骨内側に附着している筋肉が縮みっぱなしとなって、その附着部が痛む。だから圧痛部分に附着している筋肉を緩めるだけでなく、そうした筋肉を支配している神経が通っている部分の筋肉の緊張も緩めなければならない。これが北京堂の玉突き衝突理論、いいかえれば「風が吹けば桶屋が儲かる」理論なのです。このように北京堂理論は、その筋肉を支配している神経とか、知覚を支配している神経とかを重視していますので、筋肉のトリガーと較べて支持者が少ないのです。そのかわり、その部分に何%で圧痛が出るとかではなくて、なぜ何%の圧痛が出るのか説明できる利点もあります。
 ちょっと判りにくかったので、かいつまんで話しますと、大腿骨に附着している内転筋群は、関節に附着する筋肉を収縮させる神経、関節内側に分布する神経などを圧迫するため、その神経の圧力を除くために、神経幹の通るであろう大腿骨付近の筋肉も緩めなければならないということです。
 まま、ちょっと難しいので、理解しにくかったかも知れませんが、現代の中国鍼理論である小針刀では、こうした考えをします。ですから「北京堂は、現代中国鍼理論なので、ワケの分からぬ中国理論を振りかざしてくるわ」と、思って貰えば結構です。まま、鍼治療というのは、理屈ではなく治癒率ですから、沼袋の北京堂へでも見学に来てください。

現在飛蚊症と耳鳴りに悩んでいます。
・飛蚊症 半年前に発症。今までに漢方薬・整体を試したが効果なし。眼科での検査では異常なし。
・耳鳴り 外傷により耳鳴りが常に鳴っている。耳鼻科の検査では異常なし。
・その他の症状 顎がたまにカクカク音がなる・肩こり・眼精疲労・生理痛・低血圧
・外傷の耳鳴りでも治療できますか? ・飛蚊症は鍼の治療対象になりませんか? ・顔や首に鍼を刺した後、跡が残りませんか?

 まず顔や首に鍼を刺した後、跡が残るかという質問ですが、顔では滅多に跡が残りませんが、首は細い血管が多いので、内出血することが多いのです。この内出血は、しばらくキスマークのようになりますが、3日ぐらいで平らになり、2週間ぐらいで消えます。
 ビタミン剤は治療する薬でなく、栄養の不足した人に効果があるので、きちんと食事をしている人なら食事のなかでビタミンをとっており、効果はありません。
 飛蚊症は、漢方薬と整体で治療できることは知りませんが、角膜に問題がなければ疲れからじゃないかということで首へ鍼をしたのではないかと思います。網膜にも剥離とかの異常はないのですから、やはり一般的な眼疾患の治療をすることになります。
 首で疲労が取れているのですから、あとはコメカミや眼窩などへ鍼を入れて行きます。特に眼窩は効果があるので、眼窩内刺鍼と呼ばれています。ただ鍼灸師が恐がってやりたがらないので、やる人は少ないです。
 飛蚊症の治療は以上です。普通は一回ごとに症状が改善され、六回ぐらいで治ります。

 耳鳴りについては、外傷性の耳鳴りは治療したことがありませんが、いけると思います。耳をぶつけて耳の神経が興奮したのでしょう。だから大きな音を聞いて耳鳴りになったのと同じだと思います。耳に少量の麻酔薬を入れて、耳の神経を鎮める方法もあります。たしか北京堂ホームページの本紹介で記載していたと思います。
 鍼では耳鳴りならば、3回治療して効果がなければ、それ以上治療しても変わらないと思います。二寸鍼で、相当奥まで刺さないと効果がありません。うちの神戸弟子などは、耳鳴り治療を昔見ていたのですが、1.6寸の鍼と思いこんでいたので効果がありませんでした。二寸を奥まで入れなければ効果がありません。
 それと顎が鳴るのは顎関節症だと思います。これは鍼の適応症なので、ほとんど治ると思いますが、十人に一人ぐらい非常に頑固な人がありまして、十回ぐらいかかることもあります。でも、たまに鳴るぐらいだったら3回もやれば治るでしょう。
 肩凝りは、一般的に首で治療します。だから首へ刺鍼して治らないのは不思議です。頚椎ヘルニアがあったり、骨増殖があるのかも知れません。調べた方がいいでしょう。
 生理痛は、鍼では一時的に痛みを止めることは出来ます。しかし次にまた来ます。子宮内膜症の場合が多いので、妊娠すれば治ります。私の知り合いの中国人も、以前は酷い生理痛でしたが、妊娠した途端に治りました。
 低血圧は自律神経が悪いのかも知れません。背中の両側へ刺針すれば、3回ぐらいで治ると思います。
 ただ患者さんは鍼治療を3回以上受けますと、「こりゃ、鍼ではダメだな。他の治療を捜してみよう」と考え、別の治療を受けます。そして、その別の治療で治っても、鍼灸院には「あの病気は、御陰様で治りました」と報告します。それを鍼灸院の治療者は、自分の鍼で治ったと思いこんでしまうのです。
 ぎゃくバージョンで、ある北京堂の患者さんは、網膜の浮腫で見えにくくなり、眼科に通っていました。なかなか効果がないので、北京堂で治療を受けました。それで視力が回復し、治ってしまったのです。そして眼窩で定期検診に行ったとき、医者に「あれっ、治っている。あの薬が効くとは、珍しいですねぇ」と言われ、腹が立ったそうです。その人は「あんたの薬で治ったんじゃないわい。鍼で治ったんだ。効かないと思っていたら、最初からそんな薬出すな」と思ったそうですが、やはり口では「御陰様で」と言ったそうです。
 この場合、当然にして眼科医は、自分の薬で治ったんだと思うでしょう。知っているのは患者ばかり。
 だから同じ症状で治った患者さんを紹介して貰い、電話をかけて本当に治ったかどうか、それとも別の治療で治ったのか尋ねてみるといいでしょう。
 うちでも顔面のチックで、最初はある程度鍼治療の効果があったものの、結局完治しなくて手術すべきだという結論になった女性があります。


 寝違いなどでは、痛む側の首を縮めるような姿勢をとりません。しかし北京堂理論では、痛む側の筋肉は縮むと痛みが緩むので、縮めるような姿勢をとるとあります。確かに腓腹筋痙攣などでは傷害された筋肉を縮めるように足を曲げますが、寝違いには当てはまらないのではないでしょうか?
 確かに北京堂では、筋肉痙攣による痛みでは縮める姿勢をとると書いてあります。それは神経を挟んでいる筋肉が痙攣して縮もうとしているため、縮んだ姿勢をとると楽だから腓腹筋痙攣では膝を曲げて腓腹筋を縮めるような姿勢になり、大腰筋痙攣では腰を曲げて大腰筋を縮ませるような姿勢をとるといってます。
 寝違いの場合は、膝が痛くて正座できないケースと同じ治療をします。
 膝が痛くて正座できない場合、最初は北京堂理論により、大腿四頭筋が収縮しているため、膝を曲げると大腿四頭筋が無理に伸ばされるために正座できないと思いました。そこで大腿四頭筋を弛める鍼をしましたが、それで膝の痛みは良くなるものの、正座できるようになる人もあれば、やはり正座できない人もありました。そこで大腿四頭筋が伸ばされるだけでなく、他の原因で正座できないのではないかと考えました。そこで中国の鍼灸文献を読むと、膝の痛みには膝眼とか鶴頂とか陽陵泉、髖骨などへも刺鍼しますが、陰陵泉から陽陵泉への透刺、それと陰谷から陽陵泉への透刺などもあることを発見したのです。その意味を考えてみますと、膝窩筋や足底筋、ヒラメ筋に刺鍼しているのではないかと思われます。そこで膝窩や頸骨内側から、それらの筋肉群へ刺鍼したところ、それまで正座できなかった人の多くが改善され、90度ぐらいまでしか膝を曲げられなかった人が、3~6回ぐらいの治療で10分ぐらいは正座できるようになったのです。
 もちろん正座できない人の中には、膝関節の半月板軟骨が損傷して正座できない人もありますので、全員が正座できるようになるとは限りませんが、それでも90%ぐらいの人は、10回以内で曲がりが90度から75度になり、45度、30度と一回ごとに深く曲げられるようになって、6回も治療する頃にはモモとフクラハギを密着させられるようになります。
 その理由を考えてみますと、これは膝窩筋や足底筋、ヒラメ筋が固くなり、神経を圧迫しているのですが、そこへ正座しようとするとモモからの圧迫が加わるため、より神経が圧迫されるので、痛くて正座できないというものです。実際に、そう考えて筋肉群を弛めると、結構正座できるようになっちゃうんですねこれが。
 だから収縮して痛みが出ている筋肉は、伸ばされるときに痛みを出すことは当然ですが、手で圧迫しても神経への圧力が増すために痛みが出るのです。だから伸ばしても痛いし、押しても痛い。 
 で、寝違いの時を考えてみましょう。寝違いの場合は、患部を縮めることもせず、伸ばすような姿勢もとらず、まっすぐ自然な姿勢をとっていることが多いのです。だからギックリ腰なら前傾姿勢、腓腹筋痙攣なら膝を曲げた姿勢をしていますが、寝違いの場合は特殊な姿勢をとらないので、一見すると判らないことが多いのです。ただ首を回したり傾けたりすると痛みが出ますので、首を回したり傾ける姿勢をとらず、まっすぐ前を見ています。
 そして硬くなっている筋肉を調べてみると、表面から触れる筋肉としては、胸鎖乳突筋、斜角筋、肩甲挙筋などが多いです。つまり側頚部の筋肉群が痙攣しています。では、そうした筋肉群へ刺鍼して弛めるのか?
 いえいえ、そうしたことはしません。そもそも使いすぎて筋肉が痛いのならば、腱鞘炎のように短拇指屈筋とか長拇指屈筋とか一筋だけが痙攣しているはずですが、寝違いの場合は一筋だけでなく、さっき挙げた三筋、いや頚の後に着いている筋肉まで痛むことがあり、一筋だけが痙攣しているようなケースはないのです。
 複数の筋肉が障害されているということは、その筋肉だけの問題とは考えにくいのです。 例えば腱鞘炎では、一筋だけの筋肉が痙攣して痛みを出していることが多いので、その筋肉だけへ刺鍼して弛めてやれば解決します。ところが肩周りの筋肉が相当数痙攣していれば、それは肩周りの一筋一筋が痙攣していると考える人は少なく、まだ一筋一筋へ刺鍼して弛めたところで、一日もすれば元の木阿弥に戻ってしまいます。だから複数の筋肉が障害されていれば、もっと大元、たとえば頚などの神経の出口か、あるいは肩甲下筋のような複数の神経が通っている場所に問題が起きているのではないかと考えるのが普通です。そして、やはり神経の集中している筋肉群へ刺鍼して解決するほうが、痛みの出ている一筋一筋へ刺鍼して解決することより圧倒的に多いのです。もっとも以前に骨癌のため関節周りの骨がやられて痛みの出ている患者さんがおられましたが、そうしたケースは稀です。また頚椎ヘルニアや頸髄症など、骨による圧迫で肩に痛みが出るケースもありますが、それも神経の大元がやられていることには間違いありません。それが鍼の適応症かどうかは別として。
 腕に行く神経は、斜角筋などがある割と下の頚椎から神経が出ていますが、首周りの神経は、頚の中部から出ています。頚の上部からは頭や頚に行く神経が出ているので、頭痛などでは風池など上部の経穴を使って治療するのが一般的です。
 こう考えて行くと、寝違いの場合は、たんに胸鎖乳突筋や斜角筋だけの痙攣ではなく、そうした筋肉へ行っている神経の大元が圧迫されているため、表面にある筋肉群も痙攣して神経を挟み付け、痛みを出していると考えられます。
 ようするに神経根部分の筋肉が痙攣し、神経を圧迫しているので痛みが出ている。だから神経根を圧迫するような姿勢をとれば、神経の圧迫が増して痛みが悪化するから、痛む部分を縮める姿勢はとらない。だから自然に前を向いて、まっすぐ頭を立てた姿勢をしているが、頭を前に傾けたり、横を向いたりしない。
 それに鍼を入れてみれば判りますが、前屈みになっている患者さんの大腰筋へは、鍼を入れようとしても入らないほど硬くなっていることがママありますが、いままで硬くなっている胸鎖乳突筋や肩甲挙筋に、鍼が硬くて入らなかったことなどありません。だから寝違いでは、表面の筋肉群が、それほど硬くなっていないと言えます。
 それに寝違いで、胸鎖乳突筋、斜角筋、肩甲挙筋などへ刺鍼しても、結局は患者さんに「骨の近くに、まだ痛みが残っている」と言われてしまいます。つまり表面の筋肉は確かに緩んでいるが、深部の筋肉が痛むと感じるのです。それも寝違いは骨に附着している部分の筋肉が痛むと考えられるのです。特に頚椎の後側に、そうした感覚が残ります。
 だから北京堂方式では、寝違いの治療では、ほとんど横向きに寝て、痛む側へ刺鍼しますが、刺鍼するのは主として頚の後側と横側、そして骨の付近にある筋肉を狙います。そうして神経根近くの筋肉を弛めれば、たいがいの寝違いなら鍼を抜いた瞬間に痛みが消えています。そして「不思議だ、痛みが全くない」という驚きが返ってきます。
 北京堂方式が、寝違いの治療で神経根付近を狙うようになったのは「木下晴都の神経根傍刺をパクッたから」というのではなくて、実は「痛む方向に曲げるような動作をしたとき痛みが悪化する」ことから、実は骨付近の筋肉が痙攣しているため、そちらの方向に曲げると神経を圧迫している筋肉が挟み込まれ、より圧迫が強くなるため痛みが増すのではないかと考えたため、現在の治療方式になりました。だから寝違いの場合は、ギックリ腰の治療ではなく、正座できない場合のヒラメ筋痙攣の治療に準じて行います。
 なぜ、こんな治療を考えついたかというのは、私自身が若い頃、しょっちゅう寝違いしたり、口内炎や舌炎が出たりしていたからなのです。それで親紹介の鍼灸院へ行きましたが、痛みは行く前と全く変わらず、料金だけを×千円取られて、結局こんなことではダメだと自分で頚へ鍼をして治しました。でも若いときは知識がなく、試行錯誤をしますので、どうしても頚の後側に痛みが残ってしまいました。それも筋肉の表面ではなく、骨の表面が痛んでいるような感じなのです。それからは寝違いに対し、きっちりと骨の付近まで刺入し、効果を上げられるようになったのです。
 だから北京堂理論は「痙攣した筋肉を伸ばそうとすると痛みが出るので、それを伸ばさないような姿勢をとる」というのが一つ、そして「痙攣している筋肉は、圧迫されると痛むので、それを圧迫されない姿勢をとる」という二本立てです。
 最初の理論は大腰筋や肩甲下筋、烏口腕筋など、触りにくい筋肉を見分けるのに使い、最後の理論は腕や足、頚や肩甲骨表面の筋肉など、実際に触ってみて痛みが出るかどうかで障害されている筋肉を見分けます。
 圧迫理論は、膝関節の最後部分で、正座できない場合の治療にチョコッとだけ書かれているので、あまり目に付かなかったかも知れませんが、そういうことです。
 実際には、筋肉を縮めている場合でも、大腰筋を触れる場合は、腹側から圧迫して大腰筋に触れば痛みを感じますし、後へ腕が回らない場合も、横から烏口腕筋を圧迫してみたり、腋に手を入れて肩甲下筋を圧迫してみれば、やはり圧迫痛を感じますので、二つの考えは別々のものではなく、実際は一つなのです。

 
余計な事とは思いますが、鍼灸への疑問Q&Aで、「先生の主張では『脊柱起立筋が悪いから、それを伸ばすような姿勢をとる。だからギックリ腰では前屈みになる』ということです」と書いておられます。
 トリガーポイント鍼療法(医道の日本社 川喜田健司 監訳 初版第3刷)のP.82の左側に「特定の筋に異常があると、その筋を伸ばすような受動的あるいは能動的な運動をおこなうとき、痛みを増加させるが、一方、筋を短縮する方向への運動は痛みを増加させない」と書いてあります。
 上記の先生は、日本のトリガーポイント?を学ばれた先生だと思うのですが、元ネタの本とは逆に解釈しているわけですね。トリガーポイント鍼療法に誤訳があったのでしょうか? 私も気にはなっていたのですが、聞く相手もいませんでした。

 私も以前に中国の『鍼灸集錦』という本を読んだことがあるのですが、翻訳された本というのは、どうしても誤訳があります。それは訳者が意図的に誤訳することもあるし、翻訳して頭が疲れているために誤訳してしまうこともあるし、自分の考えと違うために誤訳してしまうこともあります。そのため『鍼灸集錦』を読んだときに、どうしても不明なところがあったため、原書を読んだらすぐに判ったことがあります。
 私は英語が読めませんので、そのあたりがどうなっているのか判りませんが、トリガーを原書で読まなければ判らないでしょうね。原書を読んでみると、翻訳と書いてあるのに、全く違うじゃないかと思うことがママあります。
 ちなみに北京堂が参考にしている小針刀は、筋肉の癒着が痛みを引き起こす原因としていることが多く、その途中が癒着している場合、運動制限があるので、伸ばしても癒着部分が邪魔し、短縮させても阻害するという感じです。ただ自分の経験上、筋肉が癒着しているよりは、収縮して神経を圧迫することが多く、癒着するのは第3腰椎症候群ぐらいだと思うので、伸ばすと痛むとしています。
 トリガーが日本へ入ってきたとき、それを取り入れて様々にアレンジしたのだと思います。だから実際に伸張痛なのか短縮痛なのか、患者で比較試験してみなければ本当のことは言えないと思います。
 ただ五大疾患のところで書いているように、トリガーポイントの会で勉強している方は、筋肉に痛みがあれば、その筋肉を伸ばすような姿勢をとると痛みが軽減するので、伸ばすような姿勢をとっている筋肉が悪いと解釈されているようです。ちょっと世界の傾向とは逆ですが。そのためギックリ腰の治療で、前屈みになっている患者さんは、起立筋、多裂筋、中臀筋に刺鍼するようで、北京堂のように大腰筋へ刺鍼しないです。
 だから実際に、どちらが正しいのか比較試験をしてみたいのですが、それは私がインチキをするんじゃないかという理由と、トリガーの方法は難しくて高度な技術が必要だということで、実現できませんでした。
 日本の鍼灸師は、中国のように比較試験によって証明しようとする気がないようです。 中国では、随分と前から薬物治験の手法を取り入れ、A法とB法をランダムに比較し、t検定などで効果を分析しているようですが、やはり中西合作で西洋医学の方法を取り入れようとする中国と、言葉を持って回って治療効果を説得しようとする日本の差かも知れません。
 伸張痛か短縮痛なのか、それぞれ実際に試験し、比較してみれば一目瞭然だと思いますけど。

 
78歳になる私の母は、病院で「脊柱管狭窄症」と診断され、手術をしても完治は難しく、今は血液の流れを良くする薬を飲むしかないと医師から言われました。ところが薬を飲んでいても、時々、朝起きる時、足が吊るように痛み、起きることができなくなります。このような姿を見て、私が鍼灸治療でもしたらどうかと勧め、インターネットで検索しました。すると近くに、この病名の治療をかかげる鍼灸院があったので、そこへ行くことになったのです。その鍼灸院では、初診料\2,000、診察料\6,500、ディスポ鍼1本\100と、他の鍼灸院と比べると、かなり高いと思われる値段設定で、しかも1回の治療で、初めに10本刺して、10分程間をあけてから、2回目に12本というように治療され、強制的に、一回の通院で2回分の治療を受けさせられ、1日の治療費が\15,000(2回分の料金です)もかかります。しかも毎日通院しないと治らないといわれ、会計をする時に、次の日の予約じかんを一方的に指定されます。母の場合は重症なので、治るまでに半年程かかるといわれたのですが、治療費が高すぎる事と、どうも私には、金儲け主義にしか思えません。そこで回数券がまだ残っていたのですが、通院をやめさせました。とうぜん支払の時には、回数券だけでは足りず、そのつど不足分を現金で支払っています。この回数券も、残りの枚数がわかるように、最初、受付に診察券と一緒に、持っている回数券を全部提出するように指示されました。このような治療院でしたので、結局、一週間程で通院をやめました。鍼灸治療では、このように一度の通院で、2回も続けて治療することが、本当に効果があるのでしょうか。また、「脊柱管狭窄症」に鍼灸治療は、効果があるのでしょうか。また、通常はどの程度治療すれば良いのでしょうか。
 非常に言いにくいことですが、たぶんインチキでしょう。そもそも10分ほど時間をあけたところで、それは一回分の治療にしか過ぎず、2回分の治療費を一回で取るのもおかしな話しです。値段が高いのは、患者さんが少ないか、地代が高いためで、あまり技術とは関係がありません。それにインターネットの情報は、自分で発信しているので信用がおけません。その治療所で脊柱管狭窄症が治ったという元患者を訪ねてみれば、効果があるのか、それともないのか本当のことが判ります。私の治療所にも何年か前に、「鍼で小児喘息を治す」という四国の治療所に、娘を通わせたという患者さんが来たことがあります。鍼では発作を一時的に止めるだけで、治すことは出来ないというのが中国の常識だったので、「それで治ったのですか?」と聞いたら、やはりダメだったそうです。
 もともと脊柱管というのは、背骨が繋がってストローのようになっている管のことで、その管の中に脊髄や神経が通っています。それが狭窄しているのですから、ストローの内径が狭くなって、脊髄や神経を圧迫しているため、痛みが出るのです。そうなった原因は、ヘルニアが出てストロー内に突起物が出来て圧迫したか、あるいは腰が曲がっているのに無理矢理真っ直ぐ伸ばし、腰骨が圧力に耐えきれずに太くなり(タコのようなものです)、太くなった骨がストロー内を狭くして、脊髄や神経を圧迫しているのです。
 こうしたヘルニアや骨増殖を鍼で削ることは難しく(小針刀なら可能ですが)、脊柱管狭窄症そのものをディスポ鍼で治療することは出来ません。
 一応、中国の文献では、頚椎などの骨増殖による圧迫症状が、鍼や漢方薬で改善されます。しかし実際にレントゲンなどで調べてみると、骨そのものは治癒しておらず、症状だけが改善していました。ですからディスポ鍼などで、骨が小さくなることはありません。
 私も東京に来て脊柱管狭窄症を治療したことがあります。叔父の友人で、ちょっと難しいと言っているのに関わらず、無理矢理治療させられました。一応は大腰筋へ刺鍼して、あとフクラハギへ刺鍼し、合計して40本ぐらい刺鍼しました。料金は初診なので4500円です。その一回で、夜間の足の引き吊りは消えたそうで、近くの公園まで歩けるようになったそうです。治療は、その一回きりです。
 これは脊柱管狭窄症を治したわけではなく、脊柱管から出てきた神経を圧迫している筋肉を弛めただけで、根本的な解決にはなっていませんが、それでも症状がずいぶん改善したらしいです。もともと神経の痛みというのは、圧迫の積み重ねで起きるので、途中でも圧迫が緩めば症状が一時的にでも改善します。
 それは一時的に、足の血行が良くなったため症状が改善したのですが、やはり高齢のため手術する体力がないと思われます。それで漢方薬の「丹参」を飲むと、血液循環が良くなって、足の症状が改善することを伝えました。近所の漢方薬屋さんで「複方丹参片」を買って飲んだところ、かなり症状が良くなったそうです。丹参とは、シソ科の植物です。
 この話には後日談があり、このおじいさんは「丹参は効果があるのだが、近所の漢方薬屋で買うと非常に高い(いくらか知りませんが)。だから中国へ行って買ってきてくれ」と頼まれました。中国では一般的な薬なので、一瓶が13元ぐらいだったかと思います。それを10瓶ほど買ってくると、非常に喜びましたが、私の叔父も「そんなに効果あるものなら自分も飲んでみよう」と、3瓶ほど取ったようです。これは健康人が飲んでも、全く効果がありません。ですから同じように、一度ぐらい大腰筋や梨状筋、ヒラメ筋など動脈周りの筋肉へ刺鍼し、それから丹参片を飲んだら如何でしょうか? 原因が骨やヘルニアによる狭窄ですので、病気そのものは完治しないものの、症状改善には相当に効果があるようですよ。
 去年の今頃、治療しましたが、かなり嬉しかったらしく、いまでも公園へ行って撮った写真をハガキにしてくれます。おじさんに聞いたところ、「公園に行けるのだから、かなり良くなっているのだろう」とのことでした。なんでも鍼を抜いたときに、足へ血がドクドクと流れているのを感じられたそうです。一般に、鍼は3回治療しても、ほとんど治療前と改善が感じられなければ、その鍼は諦めたほうがよいと思います。

はじめましていつもHPで勉強させていただき有難うございます。HPに3寸ステンレス針販売について連絡したいことがありメールしました。前田豊吉商店では3寸5番のディスポ鍼を販売しています。http://www.needlemaeda.com/syouhin.htm私はオートクレープを買うお金がなかったので鍼道具屋を探し回って販売しているのを発見していたのでよかったのですが、販売されていることを知らない先生がいるようなので知っていただけたらと思いました。デイスポなので鍼管は付いていて100本で約3000円です。取り扱い業者によって金額は違うと思いますが5番、10番もありますし勿論2寸5分も鍼もあります。東京都神田にある三景さんに行けば10本単位でも在庫があれば売ってもらえます。http://page.freett.com/betterhealth/
 情報を有り難うございます。それについては他の人からも連絡していただきました。うちでは大量注文しますので、ディスポではありませんが、100本2000円で入手できます。ディスポ仕様なのですが、ディスポではありません。鍼管もついています。また松葉でも、ディスポではありませんが、1002000円で2.5寸を売っています。

 うちの三寸は、現在は期限が9月末日までなので、オートクレープで消毒しなければなりません。それで11月に入ってくるまで35番の販売を中止しています。いまのところ在庫が500本ぐらいしかありませんので、人に売れるような状態ではなくなっています。もっとも11月1日には入荷予定なんですが。もう出来上がっているのですが、島根へ帰るので、配達を送らせて貰っています。
 一本の鍼が
10円ぐらいの時代に、一本30円というのは高いですね。それで、せめて20円で小分けしようと思ったのです。しかもディスポ形式だけど、ディスポでないので何度も使える。

 私は、だいたい35番を19円ぐらいで仕入れています。それを年間に10002000本使います。滅菌済みの期限は二年ぐらいです。そして弟子に年間1000本ずつ20円で引き取って貰います。現在は弟子が増えたので、弟子が年間3000本ずつ消費するはずですが、それで二年で消費できる計算になります。昔は一人しか弟子がいなかったので、販売していたのです。それとディスポの鍼というのは、私ちょっと信用してない面がありまして、品質が悪いのではないかと思っています。まあ2寸ぐらいまでならディスポで折れても取り出せますが、3寸では取り出す自信がありません。それで質がよいと思って、ディスポは使わないようにしています。ですから三寸10番とか3.5寸の6番とかは、アサヒの鍼を特注しています。こうした鍼は滅多に使わないですから高くても構いません。

 オートクレープは必要と思います。鍼の消毒だけでなく、器具の消毒にも必要です。でもオートクレープを買う金がなければ、圧力鍋を買ってきて、それに中敷きをしてヒタヒタになるまで水を入れ、ガスにかけて沸騰したら火を弱め、そのまま10分ほど煮込んでください。そうすると高圧蒸気が細菌やウイルスを加水分解し、無害なドロドロスープになります。中国では圧力鍋のことをオートクレープと呼んでいたのですよ。でも面倒くさいので、なるべく早くオートクレープを買った方がいいですよ。13万円ぐらいでありますから。圧力鍋で消毒すると、どうしても水気が残ります。

 ところで某チャンネルで、うちのホームページがメチャクチャに叩かれていました。当然にしてトリガーポイントの先生にです。

 先生の主張は「ギックリ腰は大腰筋痙攣ではなく、脊柱起立筋と腰方形筋が悪いのだ。だから脊柱起立筋と腰方形筋を狙うべきだ」とのことで、ギックリ腰には二寸の鍼で、脊柱起立筋と腰方形筋へ刺入するのがよい。だから北京堂の主張は間違っているとのことです。

 なぜ私が名指しで槍玉に挙がっているかですが、どうやら私が東洋医学の象徴にされ、しかも傷害されている筋肉の判定方法がトリガーと全く逆だからのようです。

 先生の主張では「脊柱起立筋が悪いから、それを伸ばすような姿勢をとる。だからギックリ腰では前屈みになる」ということです。

 それに対する北京堂の考えは「大腰筋が痙攣しているから、その痛みに逆らわないために大腰筋を縮めるような姿勢をとる。だからギックリ腰では前屈みになる」です。

 まぁ、お互いに主張が平行線なので、議論しても水掛け論になってしまいます。

 中国医学というのは、事実がどうなのかを重視しているので、「それでは、どちらの主張が正しいのか、実際にギックリ腰患者を使って対決しましょう」と提案しましたが、先生は理論で反論しろとのことで、実際に実験して証明するという私の提案に乗ってきませんでした。そのときは、先生がギックリ腰に「脊柱起立筋と腰方形筋」を持ち出してきたので、私も「大腰筋と中臀筋」を持ち出してきたのですが。

 まぁ実際に、第三者が用意した患者でなければ、公正な判断は出来ません。

 トリガーの主張は、本当に北京堂式と正反対なのです。まさに陰と陽、正と邪ですね。 北京堂方式のギックリ腰に対する大腰筋アプローチは、男性では345には三寸5番の直刺、女性ならば2.5寸の四番を直刺して、2には0.5寸短い鍼を直刺します。そして少し背骨から離れたところから345に三寸を45度ぐらいの角度で入れ、そのまま40分ほど放置します。トリガー式は、詳しく知らないのですが、起立筋や腰方形筋へ入れるというのならば、23番ぐらいで背骨両側の起立筋へ入れ、脇腹から腰方形筋を触知して斜めに刺入する方法と思います。

 私は、この方法でギックリ腰を20年間(学生時代を含めて)治療してきましたが、一度も問題が起きたことはありません。治らなかったことはありました。一時的に症状が悪化したことはありましたが、3日後には完治していました。

 ここで傷害された筋肉を伸ばすか、それとも縮めるかという問題が北京堂とトリガーの正反対の主張ですが、ちょうどギックリ腰というトリガーも得意とされている病気を例に挙げています。
 北京堂式では、3寸ないし2.5寸の鍼でなければ大腰筋へ届きませんので、トリガー式と北京堂式で、どちらの主張が正しいのか試してください。北京堂式はホームページで公開されていますし、トリガーは本がたくさん出ています。

 実際にギックリ腰に対し、両方の治療してみて、皆様の判定をお待ちしております。

質問:学生の者です。「圧痛点」というキーワードでインターネットから情報を得ようと調べていると、やたらと鍼のホームページにぶち当たり、もしかしたら鍼灸師である先生なら僕の疑問に答えてくれるのではないかと思い、こうしてメールをさせていただきました。質問内容は「もし腹部に異常があると仮定すると、その患部を押すと痛いとなぜ感じるか」ということです。しかもいろいろ調べていると、内臓痛と関連痛では圧迫すると痛みが軽減するが、体性痛では増強すると書いてありました。異常がある部分を押すと神経をより強く刺激するから痛みが生じるとばかり思っていた僕には、この説明文が全く納得がいきません。どちらかでもいいので、是非教えてください。宜しくお願いします。
答え:よろしくお願いされまぁ~す。最近の学生さんや患者さんは、鍼治療する私より専門知識があって、困ってしまいます。そこで、まず辞書で内臓痛を調べてみますと、「内臓臓器及び体腔膜に由来する痛み。皮膚感覚と異なり局在性が極めて悪く、ときには他の部位の皮膚・筋肉などの痛みとして感じられることがある」とあります。なんのこっちゃサッパリ判らん。これは諦めて関連痛を調べてみますと「疼痛の原因病巣から多少離れた部分に感じる疼痛。狭心症の際に肘、手首に痛みを感じ、横隔膜肋膜炎の際の鎖骨疼痛などがその例である。内臓疾患の場合に、内臓の求心神経の興奮が一定の皮膚に投射されて感じられる。内臓からの求心性神経と皮膚からの求心神経が同じ脊髄節に入り、両者に干渉が起こり、内臓からの刺激が皮膚からの刺激として大脳感覚野に伝わるためと考えられている。関連痛の投射部位は、ヘッドの皮膚節の研究によって知られている」とあって、やはり理解が難しい。それでは体性痛はと調べると「骨格筋、筋膜、皮膚、関節、靱帯、骨膜、腱、血管外膜、胸膜、腹膜などの刺激によって起こる疼痛で、痛みの局在は明瞭でかつ持続的である。インパルスはAδ、C線維から交感神経鎖を経て脊髄後根に入る。これらの線維はまた強い筋収縮、化学的刺激、発痛物質(ヒスタミン、ブラジキニン、セロトニン)にも応答して痛みを発する。心筋ではT2~T3レベルでAδ、C線維が冠状動脈の閉鎖で応答する」とあります。解読困難。
 痛みは、鍼灸のほうでは、実痛と虚痛に分け、例えば「実は詰まっているので、パンパンな状態に加えるから痛む。だから実痛は圧すると痛む。虚は空っぽなので、そこを圧して虚を満たすことにより、痛みが和らぐ」と『鍼灸大成』では、空気の入りすぎたボールと、空気の少ないボールを喩えにして解説しています。ただ『内経』の時代から、圧すると痛むものを実痛とし、圧すると心地よいものを虚痛と呼んでいましたので、昔から圧すると心地よくなる痛みがあることが知られていたということになります。その違いは、圧迫して痛むかどうかがポイントですが、その痛み方が違うことも知られていました。
 つまり実痛は激痛、虚痛は隠痛。つまり実痛は急性のネンザなどの痛みで、ズキズキと激しく痛むけれど、時間が長続きしない。虚痛は、腹が痛かったり、背中が痛かったりで、シクシクとした痛みで激しくなく、痛みが治まったり再発したりを繰り返して、何年も続く。そうした痛みの違いがあることが知られていて、痛みの性質を虚実に分けていたのです。ここで圧すると書いていますが、強く圧迫すれば誰でも痛いので、圧する強さにも程度があります。でもネンザなどでは、触れただけでも痛くて手を払いのけます。それが実痛です。虚痛であっても、強い力で圧迫すれば痛みます。だから正常人が痛みを感じない程度の力で圧して、痛むかどうかが基準になります。その意味でいけば、強く圧迫すればどんな痛みでも増強するので、強く圧迫すれば必ず痛いというのは、ある意味で真実です。また、そうした痛みの増強については、当ホームページの五大疾患にも書いていますし、あなたも納得されているようですね。だから、それについては回答しなくて良いと考えます。
 質問は「内臓痛と関連痛では圧迫すると痛みが軽減する」というのが何故か?ということですね。それに対する説明としてゲートコントロール説とかありますが、あくまでも仮説しかないと思います。ただ昔から手当というように、関連痛の現れた肩や背中などを指圧したり揉むと、痛みが和らぐことが経験的に知られていたため、按摩やマッサージ、指圧、ホットパックなどが業として成り立っていました。
 そこで私の意見です。まず、「異常がある部分を押すと神経をより強く刺激するから痛みが生じる」という貴方の見解は納得行きません。なぜかというと、確かに横紋筋ならば、神経を圧迫する力が強いので、それだけで絞扼痛が起こります。しかし内臓の筋肉である平滑筋は、収縮する力が弱いので、とても絞扼痛を起こすだけの力がなく、そこに手で圧迫を加えても、神経をより強く刺激するとは言えないと思います。例えば肝臓や腎臓などのフニャフニャした臓器が神経を締め付けても、神経にとっていかほどの痛みでしょうか? 
だから触れて痛むのは、実際は腹筋が緊張しているため、表面の横紋筋が締め付けている神経に圧力が加わるから痛みが増強すると思います。  内臓痛ですが、内臓には本来痛みを感じる機能が必要ないと思います。それは体表であれば、外界からの侵害刺激、例えば棒で殴られたり、刃物で刺されたりなど危険刺激がありますが、体表では痛みを感じることにより、人は痛みを不快に感じて、痛みから逃れようとします。つまり体表で痛みを感じるからこそ、生命の危険から逃れることが出来るのです。それに対して内臓は、例えば寄生虫の痛みにしろ、逃れようがありません。だから限局された激しい痛みを感じることが出来ず、シクシクとした隠痛になってしまうと思います。つまり内臓をナイフで刺すとき、体表に刺さっている段階で痛みを感じていれば人は避けますが、体表に刺さっても痛みを感じずに避けることがなく、内臓に刺さってしまってから避けようとすれば却って危険だということです。だから激しい内臓痛は必要ない。また同じ内臓痛でも、盲腸が化膿して破れかけていれば、圧迫すれば破れる可能性があるので痛みを感じる。しかし、その内臓が、血液循環の不足により問題が起きているのならば、圧迫したり、手を離したりする動作を繰り返すことによって、その内臓の血流を促進するから有益であり、その場合は気持ちよく感じると思います。ただ心臓や肺、脳は、胸郭に包まれていたりするため直接マッサージすることが出来ず、特に心臓や肺は自分で動いているため、そうした直接に手を当てる行為がプラスにならないので、気持ちよさを感じないと思います。だが腹部では、便秘して詰まったときに手で動かしてやれば、それでつまりが解消もするでしょう。だから自分の身体にとって有益なことをすれば、痛みが和らぐと思います。これが内臓虚痛の正体と思います。
 次に関連痛ですが、これは内臓体壁反射の一種と考えている鍼灸師が多いと思います。さっきの内臓痛と似ていますが、内臓が不調になり、内臓の血液供給量が不足して内臓痛が起きてくると、神経はすべて脊髄から出ているため、その痛みは内臓へ行く神経が出ている脊柱椎体の脊髄分節近くに入ります。すると当該分節から体壁に出ている神経が、自分の刺激として勘違いしますから、そこ神経の行っている筋肉が刺激されて筋緊張が起こります。それによって腹壁が緊張し、発病している内臓が外部からの刺激から筋肉によって守られます。それが内臓体壁反射と鍼灸師は考えています。そして『内経』では、内臓体壁反射によって体表の筋肉が緊張すると、その筋肉の血液循環が悪くなり、当該筋肉へ行っている神経が圧迫されます。すると、その体表筋肉の緊張が、脊髄分節を伝わって、やはり同じ分節にある元来の内臓に影響を与え、体表の筋肉と内臓が互いに悪循環を助長する。つまり互いにドツボにはまるということです。そこで体表の筋肉を弛めると、そこの神経の圧迫も解消され、内臓へ行く神経から痛みのパルスが消えるため、内臓の働きも良くなる。だから内臓体壁反射の悪循環の一方である体表の筋肉を解して血液循環を確保することにより、内臓にも好影響を与える。これが「外を使って内を治す」といわれる外治法なのです。つまり身体に良い影響を与えるようなことをすれば、心地よい。
 当ホームページには、筋肉が緊張し、収縮しっぱなしになることによって、その筋肉に入っている神経が締め付けられて絞扼痛を出すとともに、血管を筋肉が締め付け続けることによって血流が悪くなり、酸素不足になって不完全燃焼による物質が生まれ、それが神経を刺激して筋肉を収縮させるため痛みが強くなると書いています。そこで圧するという行為ですが、それが細胞を破壊する程度でなければ、その筋肉を圧迫します。圧迫すれば血管も圧迫され、僅かに血管ないに残った血液も押し出されます。そして手を離すと筋肉は元の締め付け圧力に戻り、血管の弾力によって少しの血液が流入します。また圧すると血管が空気ポンプのように収縮と拡張を繰り返し、徐々に新鮮な血液が入り込んできます。つまり手による圧迫は、それが長時間続けられないため必ず手を離すことになり、手で圧迫することは僅かでも血液循環を促進することになります。つまり身体にとって有益なことは心地よい刺激となり、また内臓体壁反射による悪循環を断ち切って快復に向かうことになるので痛みが軽減する。まあ鍼灸の聖書である『黄帝内経』には、およそそのように解説されています。
 『内経』では、手足や体壁を外、つまり体表です。そして内臓を内と呼んでいます。そして「腹部の臓器は足に出て、胸部の臓器は手に出る」と書かれています。つまり横隔膜が身体を分離する仕切であると考え、横隔膜から上にある臓器では手に反応が現れ、横隔膜から下にある臓器では足に反応が現れるとしています。だから横隔膜の上にある臓器を治療するときは手を取って治療し、横隔膜から下にある臓器を治療するときは足を取って治療する。それが鍼灸の原則になります。もちろん内臓体壁反射に則った背兪穴や頚夾脊なども使って治療することになります。
 現代医学から見れば、内臓体壁反射に基づいて背兪穴を取るのは理解できるが、手や足の経穴を取って内臓の治療をすることは、非常に不可解と思われるでしょう。
 それは、横隔膜から上にある臓器は、だいたい胸椎の上部から神経が出ています。鍼灸の背兪穴は、七を基準にして分かれています。つまり第一胸椎から第七胸椎までは経穴があり、第八にはないのです。それが至陽という経穴になります。つまり、そこから上が陽ですよということです。陽とは横隔膜から上の臓器を指しています。そして至陽から下、足の至陰までが陰になります。やはり陰とは、横隔膜から下の臓器を指しています。
 つまり古代の鍼灸では、横隔膜を境にして、上と下、陽と陰に分けていた。だから陽の部位にある臓器を治療するには手を使い、陰の部位にある臓器を治療するときは足を使った。その理由は、横隔膜から上にある臓器は、胸椎の上の方から神経が出ている。しかし手の神経も、胸椎の上から頚椎の下までの神経によって構成されています。だから内臓体壁反射の延長として、上部の背兪穴や頚夾脊を取るのと同じ意味で、やはり手にも刺鍼して有効と考えているのです。また横隔膜の下にある臓器は、胸椎の下から腰椎、仙椎などから出る神経にて構成されています。しかし足の神経も、腰椎から仙椎の神経で構成されています。だから足に刺鍼して有効と考えているのです。また、古代には消毒の手段が少なく、ほとんど焼却消毒のようです。ですから消毒のない世界では、背中や腰へ刺鍼することは感染の危険性があり、非常に危険なことだったと思います。また暖房設備もない、そのうえ儒教思想があるなかで医者は男性だが、患者は男性ばかりとは限らない。だから服を脱がなくて済むよう、手足を使って治療したのだと思います。
 ちょっと中医古典からの説明で、納得のゆかない部分も多々あるでしょうが、これを勝手にあなたの質問に対する答えとさせていただきます。
 

 私は鍼灸師で、××町というところで治療院を細々やっております。浅野先生の『鍼灸学釈難』と『急病の鍼灸治療』を買って読ませていただきました。2年ほど前、偶然こちらのHPにたどりつき、それ以来かくれファンとして楽しませていただいており、先生が東京にいらしてから、いつか教えを請いたいと思っていました。しかし、如何せん私は未熟者ですので、先生に質問することも、あまりに程度が低すぎるのではないかと、なかなか糞切りがつかなかったわけですが、今回そうも言っていられなくなってきました。というのも以前から悩みの種が、私の苦手疾患(ギックリ腰と坐骨神経痛など運動器系疾患)ですが、特にギックリ腰を一発で治せる先生が近所にいるということを知りました。患者さんに「先生もギックリ腰一発で治せるんですか?」と聞かれ、私は「一発はおろか、今まで何度か試みたけど、ほんとにひどいのは治せませんね。」と答えています。運動器系に弱い鍼灸師は日本にはたくさんいるでしょうが、私は是非、浅野先生の北京堂式治療を教えていただきたいと思っていますので、どうぞ宜しくお願い致します。また私自身、一昨年くらいから、左下腿外側に痛み(灼熱感)と痺れの症状があり、知り合いの先生には「すべり症だから仕方ないね」と言われています。突然このようなことばかりで恐縮ですが、どうぞ宜しくお願い致します。
 判りました。ホームページのファンであることを、どうどうと公言できない貴方様の心中、お察し申し上げます。ところでギックリ腰を一発で治せる治療師は、存在するようです。でも近所に、そのような強敵が現れたら、あなたもウカウカしてられませんね。
 実はギックリ腰は、症状がひどい人ほど一発で治るのです。腰を曲げて這うようにして来るようならば「あっ、これなら一発だな。チャンスだ」とか思います。
 私も「北京堂式」治療法を広めに来たので、喜んで教えます。ただ私の治療は時間がかかるため、一日に十人以上こなすことが出来ず、それほど儲からないと思います。それでも良ければ……。
 ただ私の治療法は、ホームページで全てを公開しており、弟子の二天堂が写真まで公開しているので、あまり見学してもメリットがありませんが、まあいいでしょう。月曜日には外弟子が来ますので、彼をモデルにして大腰筋の刺鍼方法を教えましょう。
 スベリ症も、ボコンと凹んでいるようなひどいものでない限り、ほとんど症状が出なくなります。かなり滑っているようなら手術が必要ですが……。
 私は割とタダで教えるので、他流派のように金銭を要求しないのですが(金を取ると、税務署に睨まれますから)、関東式浅鍼のなかで、関西式の響きのある深鍼を広めたいと思っているので、他の人が教わりに来たら教えてください。ただし、私は3500円の価値しかない鍼治療をしますので、価格破壊したり、高く売ることもやめてください。
 鍼には、どうしてもマンツーマンな部分があり、毎日一緒に治療を目にしたり、患者について検討してないと、師匠の技術が受け継げないと思います。月曜日に来る外弟子は大腰筋が悪いので、ちょうどよかったです。彼にも一遍ほど刺鍼してやったのですが、かなり効果があったようです。そのときは「自分の身体で試して見ろ」と、一度だけ治療したのですが、またやってもらいたいでしょう。
 うちの治療法は、ホームページでも学べるとおり、簡単です。中国式の難しいテクニックや、脈診のような微妙さ、中医学のような理論も必要有りません。ただ患者さんの動きを見て、それで悪いカ所を推測し、そこへ治療するだけの話しですから、もう歩いてベッドに乗っかりさえすれば、すぐにでも鍼が打てますよ。ほとんどの場合、日本鍼しか使いません。
 正直いうと、弟子を持つのは大変です。内弟子は、なにかと色々反論してくるし、それは医学常識に反してますとか。でも「大腰筋が坐骨神経痛やギックリ腰を起こす」などという、二十年前から北京堂が唱えている治療理論だって、現代医学からすれば「あり得ない」ことですものね。また外弟子は、関東人だからジョークが判らないし。ほんとガマンです。それでは教材を用意しておきますから、お金を用意して待っててね。と、弟子セットを買わせようとする私。

 先日は、漢日医学大詞典など多数紹介していただきありがとうございました。現在、書虫に注文しています。他に、まとめて買っておいたほうがいいものがあれば教えてください。 そのときに先生が仰ってました、漢方との違いで「鍼灸は診ず」だったでしょうか? 『素問』か『霊枢』を引用して話していただきましたが、もう一度、どこらへんの引用か教えていただけますか? あと最近、変形性股関節症に関して調べておりますが、古典の中にも出てくるものなのでしょうか? 難病の鍼灸治療は、たにぐち書店にも、緑書房にも、アマゾンにもなく、九州の福岡でやっとみつかったので購入出来そうです。
『漢日医学大詞典』は、訳語が当てにならないので、もういちど日本語にも該当単語があるかどうか、調べねばなりません。

 「鍼灸は診ず」というのは、『素問・長刺節論篇五十五』の冒頭です。『素問』は、鍼灸している人は「鍼灸の本」だと思うし、漢方薬をしている人は「『傷寒論』の原型だ」と思うでしょうね。 あれは鍼灸でも漢方でもなく、瀉血や養生など、健康全般について書かれた本なので、鍼についても語っており、漢方薬についても語っています。

 脈も診ないで治療するとは、なんとも「エエ加減」な治療かと思われるでしょうが、脈や辨証では、臓腑の虚実を判断していますよね。しかし『内経』には「邪が皮毛から入り、次に絡脈に入り、次に経脈に入り、次に腑へ入り、最後に臓へ入る。臓に邪が入った者は、半死半生である」と書かれています。四診は、望診、問診、聞診、切診のことで、望診は顔色や姿勢、動作を見たり、問診は患者の状況を聞いたり、聞診は患者の臭いをかいだり声を聞いたり、切診は身体を触ってみることです。しかし漢方薬では、望診といえば舌診のことであり、切診といえば脈診のことです。しかし鍼灸本来の望診は、舌を診ることではなくて動きや姿勢を観察することであり、切診とは脈診ではなく、切経のことで、全身の経脈を触ってみて、そこの気血が滞ってシコリになっていないかを観察することで、その切経が一番重要なことだったのです。そして経脈が塞がり、気血が滞って溜まり、そこでシコリとなっているところへ刺鍼すれば、溝を棒でつついて流すかの如く、気血が流れてシコリが消える。邪が経脈を塞いでいるから気血が流れないのであり、塞がっているシコリに鍼を刺入すれば、邪気は鍼に寄ってきて、鍼を抜いたとき鍼とともに邪気が鍼穴から出て行く。

 つまり先ず患者の姿勢や動きを観察し、どこが痛いのかを尋ね、そして痛む部分を触ってみて邪気の集まっているシコリ部分を捜して刺鍼する。そのときに治療するのは臓腑ではなく、経脈なのです。脈診は『難経』を読んでも判るとおり、邪のある経脈を判断する方法ではなく、臓腑の虚実を判断する方法なのです。辨証治療も同じです。

 鍼灸師が治療するのは、邪が臓腑に入ったものではなく、邪が経絡にある場合のみです。ですから当然にして、邪が臓腑にあるときの脈診ではなく、邪が経絡にあるときの切経が中心になります。

 そうしたシコリへ刺鍼すると、邪気が鍼に吸い寄せられて鍼体を掴むので、術者には鍼が体内から引っ張られているような感覚があります。それを得気と呼んで、古典には「魚が釣針を呑み込んだような手応え」と書かれています。後輩の今村などは、「魚が釣針を呑み込んだような手応え」を求めて、釣りなどをしています。

 こう考えて行くと、鍼の診察と漢方薬の診察では、診察方法が違うのですね。また鍼では、身体の局部が実になったり虚したりするのに対し、漢方では上半身や下半身の虚実しかなく、身体の左右による虚実とかありませんね。

 鍼は外科で、漢方薬は内科ですから、外科では治療技術が問題になり、内科では診察方法が問題になるのは当然ですね。外科は個人の力量が大きいのですが、内科では薬の力量が大きいのですから。例えば内科では、薬の量が同じならば誰が投与しても同じですが、鍼では同じ長さでも、術者により入れる深さの違いや方向、置鍼時間や操作方法の違いがあるので、人によって違います。例えば起立筋に入れるとの大腰筋へ刺入するのとでは、効果が変わってくることが感覚的に判ると思います。そうしたことも含めて記載しなければ、鍼では薬と違って再現性が得られないですよね。

 中国では、昔から使われている配穴と、新しく考えついた配穴を、グループ別に分けた患者で検証し、新薬の治験と似たような方法で統計分析しています。

 日本では、例えば北京堂方式と、経絡治療方式を比較するとか、同じような患者を使って違う治療法を使い、統計を使って比較分析するような公的機関がないばかりか、「空サンプル」を使った比較対照試験もされてないので、どのような治療法が効くのかを検証する以前に、果たして鍼は効果があるのか? という段階から始めなければなりません。

 刺絡学会とか、北辰会、経絡学会、長野式、北京堂方式などと漢方薬などを使った群に分けて、一ヶ月ほど治療して結果を出してみれば、どういった疾患には、どの方式の治療法が効くのか結果が出てきますが、公的機関がやらないため、鍼が効くのかどうかの論議にて止まってしまっています。

 そういうような比較対照試験がされ、統計学的に「鍼の効果」が証明されれば、もう少しマジナイとしての鍼ではなく、治療としての鍼が広まると思うのですが。

 ちなみに変形性股関節症は古典になく、腰腿痛になると思います。昔の病名は曖昧なので、証としてでないと捉えられないからです。例えば、変形性股関節症も坐骨神経痛も、五十肩であっても痹証に分類されるので、圧痛点治療が違うだけで、辨証治療では全く同じ治療をします。古典では奇穴を使ったりしますが、解剖的に考えてはいないようです。

 変形性股関節症は、小臀筋など大転子周りの筋肉を弛めれば改善しますが、日本の3寸鍼が必要だったりします。

 中国では、朱漢章の小針刀が筋肉から鍼治療をアプローチしており、高維濱が神経的に鍼治療をアプローチしています。彼らの方法を使えば、痛みや運動障害には朱漢章の方式で対処でき、脳出血や自律神経、内臓疾患には高維濱の方式を使って対処できます。それを総合して北京堂式治療が誕生したのですが、その治療は筋肉や神経を考えるのみで、脈診や舌診などしません。 どういった鍼治療が、どのように優れているのか、検証することが急務と思います。

先日は詳しい説明ありがとうございます。おかげで切経や問診を正しく理解できそうです。浅野先生の説明の方が、脈をとってどうこうより納得がいきます。また『難病の鍼灸治療』の訳者あとがきの中で「中西医は、筋の通った理論などありません」とありますが、なんだか意味深な発言で興味があります。なぜなら鍼灸学釈難や経絡学を読んでも、現代医学に経絡をどう照らし合わせて解釈して読んだらよいのか悩んでしまいます。そこで「中西医は、筋の通った理論などありません」がキーワードを握っているんじゃないかなと思って聞いてみました。中国鍼灸の効果を実感しながらも、上手く説明できずにいる自分にとってもモヤモヤが消えないんですよね。なにかアドバイスを受けられればうれしいです。
 経絡は、釈難の中に書かれているとおり、血管の意味だったのです。だから経脈と呼び、絡脈と呼ばれ、両方を合わせて経絡と呼んでいるのです。
 昔のことですから、詳しい血管の道筋は判りません。儒教のために解剖もあまり行われませんでした。権威主義で、昔の偉い先生が言うことを確かめて異を唱えようとか、とんでもないことでした。だから『素問』や『難経』に書かれたことに基づいて、それが正しいという前提の元に、いろいろと書かれたのです。しかし『素問』と『難経』では、一致した内容もありますが、正反対の内容もありますし、また『霊枢』も同じです。
 経絡は何かという問題についても、はっきりと判ってはいません。幽霊があるかないかというような問題ですね。だから血管が経絡であるとする人(これは古典の記載に基づいています)、リンパ管が経絡だとする人(根拠薄弱)があります。また経絡感伝現象が経絡だとする人、脳に経絡があるとする人、私のように筋肉の収縮が神経を締め付けて経絡現象を起こしていると考える人もあります。
 経絡が何かという問題が解決されれば一番良いのですが、実体がハッキリしても、それが経絡かどうかで再び紛糾するでしょう。
 もともと医学は科学ではないので、あまり厳密に追求するのは、どうかと思います。順序としては、数学>物理>化学の順に厳格となりますが、化学などは「この圧力で、この温度なら、どれが何の割合で生成する」などと、確率を使うぐらいエエ加減なものです。 だから数学などは確率100パーセントの世界で、化学などになるとエエ加減ですが、それでも温度や圧力を同じ条件にしてやれば、だれが製造しても同じ割合で化合物ができるのです。医学は、内科は同じでしょうが、外科は同じ患者で、同じ症状であっても、治療者によって手術の成功率がまるで違うじゃないですか。
 現在の中国では、経絡の実体について、さまざまな人が本を書いていますが、実際の治療に携わる者としては、ほとんど読まないのが現実ではないでしょうか?
 内科だって同じで、最初から理論で組み上げて販売される薬などないのです。以前から効果のある薬物の構造を少し変えて作ることが多いのですが、それにしたって動物実験や人体実験を繰り返し、それからでなければ販売が認められません。もし最初から判っているのなら、人体で実験などする必要がありません。なんだかよく判らない物質を人体というブラックボックスに入れてみて、効かない量から毒性が出るまでの量の間を有効量としているだけです。
 経脈の伝導が、筋肉を締め付けることによって起きた神経の感覚と非常に経路が似ていても、「それが経絡ではないか?」という仮説にしかなりません。
 「なぜ経絡が設定されたか」という問題は、当時の解剖知識や医療水準からして、身体に刺鍼することが難しかったからだと思います。まず消毒が判らないのですから、細菌に感染しても、ある程度安全な部位を使って治療するしかありません。それと病人は、暑いときか寒いときに死ぬことが多いのです。寒い季節に裸でいれば、それだけで病気が悪化しますから、暖房のない昔では、服を着たまま刺鍼する事が多く、着衣のまま刺鍼すれば肺などを貫いて危ないのですから、手足に刺鍼して治療するしかない結論になります。そこで手足という外と、体内病巣という内を繋げるために経絡を設定したと思います。
 中国人は、ちょっと子供みたいなところがありまして、日本人のように曖昧で済ますことは少ないですね。何かしら納得できる説明を考えます。魯迅の書いた『阿Q正伝』のようですね。そこで日本人のように「治ったから、なんでもいいじゃん」というワケには行きません。「なんで手足に鍼して、体幹部の症状が消えますんかいな?」となります。それを説明するために経絡が必要だったと思います。
 例えば『難経』の六部定位の脈診など、メチャクチャに観念的ですよね。それが現実かどうかより、説明して納得しやすいかどうかにかかっているような感じですね。五行説など、もろにそうですね。木と火と土と金と水などは、大概の一般民衆が目にしていますので、それに喩えれば説明しやすいですよね。そうしたように中医の世界では、譬えを使って説明することが多いのです。天地の自然界がそうだから、人間の身体もそうだとか。
 経絡なども、発掘された大昔の経穴人形には、15本の経絡が記されていたといいますが、世界が広がってくるに従って12本に減ってしまいました。中国に河川が十二あるので、経絡も十二であるべきだとか。王雪苔も同じような発想しますね。眼針療法で、彭静山が眼針の地図を出したら、王雪苔が「中医では、昔から左右対称だった。右目と左目で表すものが違うとはおかしい。もっと研究しろ」と言われ、その眼針地図を改めちゃった。 これは西洋にルネッサンスがあって、古いキリスト教的なことが事実かどうか確かめられ、事実から出発することが前提になり、それから科学文明が進んだのですが、中国にはルネッサンスがなかったことが原因と思います。しいてルネッサンスがあったと言えば、毛沢東の文化大革命でしょうか。それからは「事実に基づいてヤレ」と毛沢東が声を掛けたようですが、現実は虚偽の粉飾された報告ばかりだったので、のちになると文革時代のデータは当てにならないとされています。
 ただ、日本で経絡敏感人が発見されたことで、中国でも経絡を証明しようと、電気を使ったりして経絡敏感人を捜しました。
 どのみち「経絡は何か?」という問題は、誰も解明できません。現在の日本でも、譬え話でしか経絡や経穴を説明できません。
 結局は鍼治療などは何でもありの状況で、中西合作を使おうが、辨証法を使おうが、李世珍を使おうが、北辰会流を使おうが、『難経』の脈診を使おうが、長野式を使おうが、オギノ式を使おうが自由です。中国も同じ状況で、腕踝針もあれば、火針もあり、眼針もあり、頭針もあり、耳針信奉者もいるという状況です。みんなで治癒率を競えばよいのではないですか? 経絡を使った治療が、他より抜きんでていれば、それが正しいのです。ただ日本では、中医研究院のようなものがなく、それぞれの治療法をまとめないですね。だから文革中のように、デタラメなデータを書いても、誰も文句の付けようがないですね。
 『難病の鍼灸治療』とか『急病の鍼灸治療』を翻訳したのは、こうした本には「どれぐらいの程度の患者が、どれぐらいの程度まで快復したか」が記載されていますが、こうした本が日本でも作られればいいなと思ったからです。
 科学でない鍼灸は、社会科学のように統計を使って根拠とするしかなく、それでも再現性があるので、社会科学よりは科学に引っかかるのかなと思っています。
 なかなか昔からの経絡理論に頼っていては、整形の朱漢章の小針刀に水を開けられるので、現代医学理論を取り入れた中西合作が流行るようになったのではないでしょうか? だから中国の中医薬大学では、必ず統計学を履修しなければなりません。私はサボりましたけど。 経絡を使った治療を取り入れようが、現代の筋肉や神経を使った治療を取り入れようが、それは自由だと思います。ようは治癒率が高ければいいと思います。
 私の外弟子となった藤田くんは、天津式の辨証治療を使って治療していましたが、あまり効果がパッとせず、患者も増えなかったのです。うちに来て中西合作治療を教わってから、自分の治療に自信が持てるようになり、患者さんも芋蔓式に増えて、いまでは中西合作方式に変更して非常に良かったと言っています。患者さんは、難しい鍼灸の理論より、自分が治るか治らないかで判断します。そんなに経絡やら中医学に拘る必要はないのではないでしょうか?
 

 私は薬剤師です。私の薬局にいらしている患者様のことで質問いたします。
 1年前に鍼を打って以来、足の痺れ、痛みが酷いと訴える患者さんがいらっしゃいます。とある鍼灸院にて、足を組んだ状態で左臀部のほっぺに針を打たれたら、外腿から内腿、股間、性器にかけて蜂に刺されたような衝撃と痛みを感じ、「先生、痛い」と叫んで施術を中止して貰ったそうです。「そんなに痛むことはない筈なのに…」との先生の弁でしたが、その日の晩、そして次の日は、ひどい痛みで一睡も出来なかったそうです。
 それ以来、腿から爪先にかけて常に痺れ、神経的にも参っているそうです。そして市内複数の医療機関を受診したそうですか、レントゲン、MRIなど、あらゆる検査でも「異常なし」と結果が出るそうです。実際に痺れているのにもかかわらず、原因が分からないことが苦痛のようです。
 患者さんは、痺れの原因は鍼を刺した時に、鍼先が坐骨神経などに触れて神経を傷つけたのだろうと推測されています。
 ここで質問なのですが、鍼灸で神経を傷つけたために痺れや痛みが残ることはあるのでしょうか? この患者様には、どのようなアドバイスが適切でしょうか?
 簡単ではありますが患者さんのデータを付記します。(省略)

 ちょっと鍼した先生に、詳しいことを尋ねてみなければ何とも言えませんが、鍼で神経を傷つけて痛みが起きることは、あり得ないと思います。それというのも鍼では、神経や筋肉などに当てると、必ず神経線維や筋肉繊維の5~6本は切ると言われており、その損傷は3日しなければ元通りにならないと言われています。神経に当たるといっても、その瞬間に神経が興奮して、静電気のような衝撃が走るだけで、その一瞬で治まります。そもそも神経に当たったとしても、蜂に刺されたような衝撃や痛みが起きるわけでなく、触電感が走るだけなのですが、半身不随の知覚麻痺などを除き、そうした触電感を与えないようにします。もともと鍼は、爪楊枝のような形をしているので、注射針のように神経を切断することはあり得ないのです。
 しかし「足を組んだ状態で左臀部のほっぺの部分に針を打って貰ったところ、外腿から内腿、股間、性器にかけて蜂に刺されたような衝撃と痛みを感じ」とあります。
 恐らく、この患者さんは、もともと左臀部から大腿外側に痛みがあったと想像されます。一般に「足を組んだ状態で、左臀部のほっぺ部分に」刺入することはあり得ないのですが、たぶん、どこに痛みがあるか判らなくて、阻力鍼刺法を使ったのではないかと思います。「阻力鍼刺法」とは、痛みの現れる姿勢にして、最も痛む部分に刺鍼するという方法です。
おとなしく刺鍼するだけなら問題が起きなかったのでしょうが、そこで強力な電気をかけたか、かなり激しく上下や左右に動かしたかだと思います。
 そのような姿勢では、坐骨神経に到達しませんが、小臀筋の深部にある神経を強力に刺激したのではないかと思います。すると神経は刺激されて強力なパルスを出し、それが筋肉へ伝わって、筋肉が攣縮します。神経は双方向に刺激が伝わるので、坐骨神経に達するには三寸の鍼が必要なのですが、表面の神経を刺激したために、その神経に繋がる部分すべてに痛みが放散したのではないかと思います。
 強く雀啄したり捻鍼すると、神経に収縮パルスが起こり、筋肉が収縮して知覚神経を圧迫し、痛みがひどくなることは、鍼灸の世界では昔から知られていました。こうした強刺激は、中国式の鍼灸でおこなわれ、ドーゼが強すぎるなどと注意されていました。そしてドーゼの量を調節することが、薬の用量と同じように、その人の経験だと言われていました。
 私の想像ですが、足を組むという小臀筋を緊張させるような姿勢で、小臀筋に二寸の太い鍼を打ち込んで、強くつつくか回転させたため、神経が筋性防御のような筋肉収縮パルスを出し、小臀筋が収縮して知覚神経を締め付けているのだと思います。
 それが腰ではなく、小臀筋の拘縮によって起きた痛みのため、調べても原因が分からないのですね。
 もし小臀筋が原因かどうか調べたければ、横向きにして大転子の腰寄りを押さえ、もし痛がるようであれば小臀筋が原因です。
 たんに刺鍼刺激が強すぎるため筋肉が萎縮したものと考えられるので、三寸か二寸五分の鍼を小臀筋へ静かに入れ、そのまま静かに置鍼しておけば、筋肉が緩んで治まると思います。ただ患者さんが、鍼して強い手技をされたために起きた痺れ感なので、鍼して治すことに同意しないと思います。だから中臀筋のうえからマッサージなどして、間接的に時間をかけて解してゆくしかないと思います。
 それと患者さんのいう麻痺感は、我々のいう麻痺とは違うのです。痺れがあると言っても知覚麻痺のことではなく、蟻走感だったり、重怠い感覚を痺れと呼んでいたりします。だから麻痺感といっても、感覚が鈍くなったものではなく、知覚過敏を示していたりします。だから麻痺とか痺れを、文字通り受け取れませんね。
 今回の質問は、鍼タマの人達にとって、強い刺激は神経パルスを発生させ、筋肉を収縮させて症状が悪化することがある現実を知らせる意味で、非常に意義があると思いますので、質問コーナーに載せることにします。
 そうしたことを避けるため北京堂では、収縮した筋肉へ静かに刺入して長時間置鍼し、収縮のパルスを逃がして悪化させないようにしています。
 一般の中国式では、手や足へ強刺激して、響きを患部へ持って行くのですが、そうした強刺激には「強すぎれば悪化し、弱ければ患部が治らない」という欠点があります。筋肉が拘縮している局部へ刺鍼すれば、置鍼しているだけで緩むため強刺激をする必要がありません。つまり経験のないヒヨコでも、ドーゼを与えすぎて悪化させることなく、安全に治療する方法だと思います。

脳卒中の応急処置の方法は、出血系に対して血管を収縮させ、血流を抑えることで症状の進行が遅くなることは理解できましたが、血栓とか塞栓に対する作用も説明してもらえるとありがたいです。たとえば実際脳卒中の発作の患者さんを目の前にして、先生だったら症状によって応急処置の方法を変えますか?
 P・S 「難病の鍼灸治療」「急病の鍼灸治療」は緑書房のホームベージでは品切れで、再版未定になってますが、これから手に入れようとしても難しいのでしょうか?

血栓とか塞栓に対する作用機序は、中国の本に載ってませんね。たぶん中医では、クモ膜下出血が中臓腑の重症だとしたら、血栓とか塞栓は中経絡の軽症だから、あまり相手にされていないと思います。その場合、指先や人中などへ刺鍼しなくても良いかと思います。直接頭鍼して、頭の血管を広げれば、詰まった血栓が流れていくようですが、それは主に眼の中心網膜動静脈に対してやられているのですが、脳卒中でも同じと思います。
 私ならば、出血か塞栓か判らなくとも、とりあえずは救急車が来るまでのところで、指先に点刺していますね。塞栓でも、それ以上悪くならないでしょうし、昔は中風の治療ということでひっくるめていたのですから。
 「難病の鍼灸治療」「急病の鍼灸治療」は品切れになっていましたか。結構安く設定したので、発行しないかも知れませんね。それならそれで、こちらも新たに増補版でも出版しなければならないと思っています。あの本は、出始めの時は売れ行きが悪かったのですが、最近になって急に売れ始めたので、品切れになったのだと思います。

初めまして。先生の本を三冊持ってます。鍼を自分で研ごうと調べているうちに、先生のホームページにヒットしました。ウイットにとんだ文章と、納得のいく理論に、えらいオッサンやと感動を憶えながら読み進めるうち、あの偉く思っていた先生がホームページのオッサンだと分かり、えらいショックを受けました。他でもないのですが、家内がクシャミをしたとたんギックリ腰になり、腰を伸ばすことが出来なくなりました。先生の書かれている大腰筋だと思いながらも、長い鍼を持っておらず、長野式で対応したのですが、効果はイマイチで、家内の評価はガタ落ちです。お願いです私にチャンスを与えて下さい。三寸鍼200本を譲って頂きたく、お願い申し上げます。ところで北京堂では幻肢痛を、どう考えて治療しているのですか?
オッサンと思っていただき、まことに有り難うございます。髪の毛を染めた似顔絵を描いているので、ミケネコが作っているページだと勘違いしてくる人が良くあるのですよ。そんなワケないですよね。ミケネコのような犬畜生に、このような美しい文章が作れるはずありません。
 でも、私がただのオッサンだと思っているあなた、実はオッサンだと思っていたのが、セーラームーンのような女子高生だったりするかも知れません。そうすると、さらにショックも大きいことでしょうね。これは良いヒントを戴きました。これからはセーラー服を着て、女子高生として振る舞います。コスプレ鍼灸院なんちゃって。そうすればオッサンと思っていたら女子高生、これは周囲に与えるショックも大きいものがあります。
 女性では、よっぽどデブでないかぎり、直刺は2.5寸で十分に大腰筋へ到達します。斜刺は中央から10㎝ぐらいから椎体へ向けて45度ぐらいで刺入しますが、それに3寸を使います。こうして捻鍼も雀啄もせずに、静かに40分ほど置鍼するのが浅野式(三毛里予式)です。中国式のように捻転提插をしないので痛みもそれほどなく、刺さない日本式の接触鍼と違って締め付けられるような感覚があります。なによりも捻転提插をしないので、風池や内臓部分で安全です。ちなみに2.5寸なら松葉、0120-252-005へ電話して、Aタイプ2寸5分を注文します。
 長野式とか浅野式とか、色々試してみるのはいいんじゃないですか? 我々の学生時代には脈診治療しかなく、脈の左右差によって12穴から選択するという方法しかなかったのです。鍼も現在では三寸が定番でありますが、私が学生時代の20年前には、鍼は二寸までしかありませんでした。木下晴都方式を真似て、坐骨神経痛やギックリ腰を治療していた私としましては、三寸鍼を注文してから一ヶ月とか二ヶ月以上待たされるため、その間は綱渡りをするような在庫を抱えての三寸鍼治療でした。そこで三寸鍼治療をインターネットで無料公開し、「文字鏡」のように誰もが使ってくれれば、需要が増えて三寸鍼が定番になるだろうというもくろみが成功したわけです。
 結構『鍼灸大成』のCDとか、鍼の販売とかあって、現金書留では送料負担が大きいので、これから郵便為替で送って貰うことにしました。2005年7月19日頃から郵便為替で送れると思います。それならば送料が70円ぐらいですから、現金書留の500円より大分安いです。口座は00140-5-297911の予定。
 幻肢痛に対する北京堂の考えですが、神経はすべて背骨から出て、手とか足へ行っています。つまり手の痛みだとか、足からの痛みだとか考えているのは、すべて背骨の脊髄なんですね。だから手を切断したり、足を切断したところで、そこへ行く神経の根本は残っているので、その神経根を刺激されると、あるはずのない手足が痛むのです。
 昔は幻肢痛に対して、反対側の手足を治療して治していました。赤羽幸兵衛は、それを痛みのシーソー現象と呼んでいました。確かに手足の神経は、背骨の中で交叉しているから、反対側へ行く神経にも同じ分節で影響受けますよね。それを利用して、反対側の手足で同じ部分を治療していたわけです。
 北京堂では、それが幻肢痛だと考えて、なくなっている神経の根元、つまり背骨の夾脊穴を中心に治療をします。もっとも、中国の小児麻痺治療などでも、赤脚医針とか呼んで背骨を中心に治療していますし、現在の高維濱なども夾脊穴を取って通電するような治療を中心にしています。
 まあ神経根部を締め付けている筋肉に注目していることは、幻肢痛だろうが、坐骨神経痛だろうが、肋間神経痛だろうが、五十肩であろうが、頭痛であろうが同じなんですけどね。
 こうして痛みが起きている手足と同じ分節の神経根を狙う夾脊穴刺鍼、そして痛みが起きている部分の体幹部分-例えば五十肩の棘上筋や肩甲下筋、坐骨神経痛の梨状筋や小臀筋への刺鍼、最後には局部の烏口腕筋やヒラメ筋への刺鍼を併用するのが、天地人の三部配穴です。
幻肢痛に対する治療は、末端部分の地がなくなっただけで、天部の大腰筋や人部の梨状筋は生きているので、そこへ鍼灸して治療します。
 今回は、二人の質問を合わせて掲載しました。

いろいろと勉強させていただいてます。私も、流派というものは無いし、より良い方法がbetterだと思ってます。 それで、たまたまホームページを拝見し、やったこと無い方法で、効果がすばらしいかもしれないので、是非とも試してみたいと思いました。 良ければ(勿論良いと思ってますが) 状況に応じて適宜使おうと思ってます。 しかし、やはり深刺なので気がひきしまりますね。 体格にもよるのは勿論ですが、三寸を9割り方打ち込む場合など、メジャーで測ったりしてみて思ったのですが、この方法の場合でも、出来るだけ刺入の深さを少なくしたいというか、内臓を絶対に傷つけないようにしたいと思いました。こういう気持がありまして、躊躇の気持もいくらか無いではありません。このような気持を持つことが、私のようなものには必要かと思いました。 私がメールした表現が適切でなかったようです。 やっぱり批判めいた感じになってしまいましたか? 失礼しました。 m(_ _)m
 普段が1.3寸や1.6寸ばかりなので、鍼の長さなどは注文する時でもあまり考えませんでしたが、昨日、滅菌パックを物色していたら、3寸の鍼も最近は結構あるのには、中国鍼は別にしても「へえー」と思いました。  滅菌パックは私のと同じものがカラダハウスにあり、若干他より安いので、ロール仕様の物と2種類注文しました。先日5連に一鍼管付きのディスポを大量に購入したばかりですが、滅菌パックだけでは一万円を超えないと送料がタダにならないので、ついでに滅菌パックの再生した鍼を使うため、鍼一本に対して一本鍼管つきのディスポ寸三、寸六も注文しました。これで当分滅菌パックも、鍼も間に合います。
 二寸、二寸四分、六分とか三寸用の、鍼管は造ります。 (^^) 手間は少しかかりますが、これが面白いです。値は三種類の合計30本くらい造っても1000円足らずです。 8^^) 9~~) 本日、鍼が届いていました。 有難うございました。送料おくりますね。有難うございました。 同じ群馬県内には、大成堂さんというのがあるのですね。自治医大とかに行っているようなので、共同で何か出来たら何て頭をかすめました。そんなわけにもなかなか行かないでしょうね? 先生Oringをどう思われます?  また、いろいろと勉強させてください。有難うございました。

 しかたがない、送料はサービスします。
 私は「より良い方法がbetterだと思ってます」という意見を読んだとき、なるほどなぁと思いました。いままでは「より良い方法がbatterだと思ってました」。それでやはりマーガリンよりは、バターにすべきかなと。
  私の三寸鍼刺入は、学校を出たばかりの治療法を学んだことのない新米鍼灸師に教えるためのものです。すでに治せる自信のある古老鍼灸師のためのものではありません。
 治せる方法を持っている人はよいのですが、学校では治療法など教えてくれず、治療できない鍼灸師を粗製濫造されては、「鍼は効果のないもの」として世間に評価されるようになってしまいます。そこでインターネットを利用して、そうした新米鍼灸師に北京堂式五大疾患の治療法を教え、診察法と治療法、そして治療理論をセットで学んでもらい、ついでに鍼を売ったり二寸半の鍼を紹介しています。そうしてネコでもできる簡単な技術を持った鍼灸師が増えれば、鍼灸の認識も改まるのではないかと思ったのです。
 古老の鍼灸師で、別に自分の治療法を確立しており、深刺は怖いと感じておられたら、止めたらよいと思います。
 私も胃下垂の治療などしておりますが、正直いってやりたくなかった。最初は、本に書いてあるから大丈夫だろうと思ってはいたのですが、「6寸の太い鍼を胃に刺すなんて、死んだら刑務所行きだな」などと思ってやっていました。でも、どうしても何とかしてくれと頼まれ、治癒率が最も良かったので採用しました。まあ、最初にやる人は、そんなものです。
 木下晴都も、坐骨神経痛に初めて10番2.5寸の鍼を使って神経根傍刺をしたときは、やはり怖かったと思います。でも、そうした先人がいたから、私は「神経は関係ないじゃないか?だって、あとで書かれた木下晴都の最新治療学には、神経を狙わずに筋肉へ45度で刺せとある」と、三寸三番を使った大腰筋刺鍼をやったのです。
 正直に申しますと、大腰筋へ直刺するには、主に2.5寸4番を使うことが多くなりました。それは東京人の大腰筋が、島根の漁師や農民と違って薄いようだからです。そして斜刺の椎体に当てる場合だけ三寸を使っています。もちろん人によって性別によって違い、女性では浅く、男性で筋肉質な人には深く入れるので、2寸、2.5寸、3寸、3.5寸を使い分けています。といっても3.5寸は滅多に使わないのですが。
 それで三寸鍼配布のあとに、2.5寸の鍼を売っている会社を紹介しているのです。でも、三寸の鍼は、手に入れにくいし、高価だし、注文して届くまで時間がかかるので、自分で売ることにしているのです。
 とりあえず2.5寸を使った木下方式で刺し、斜刺を北京堂式三寸を使って椎体へ当て、効果が悪ければ下の三椎間を三寸に変えたらいかがでしようか?
 もっとも木下式は2.5寸の10番を使うようなので、2.5寸の4番を使う北京堂式は亜流と思いますが、4番にした理由は、万一腎臓へ刺さったとき、10番ならば横隔膜で腎臓が押し下げられたとき、強靱な10番鍼では腎臓が切れる恐れがありますが、細くて軟らかい3番なら鍼がしなって腎臓が切れないと思ったからです。しかし細くて柔らかい鍼では、硬直した大腰筋へ刺さってくれません。そこで次々に短い鍼管へ交換することにより、力を横に逃がさず、刺入の力が尖端だけに加わるようにし、細い鍼でも大腰筋へ刺入できるように鍼管を交換しながら刺入する方法を考えついたわけです。つまり大腰筋刺入より、むしろ次々と鍼管を短くすることが北京堂のオリジナルなんですね。
 鍼管を切皮以外に使おうなんて、誰も考えないでしょうね。そんなことを考えついた人も、読んだことがないし。本当に鍼管は、優れた発明品だと思います。もっとも、伸び縮みするラジオのアンテナのように、伸び縮みする鍼管があれば、鍼管を交換する必要もなく、もっと便利だと思いますけどね。
 今でこそ北京堂で三寸五番を使った大腰筋刺鍼を紹介し、三寸を売っているところも多くなったのですが、私が大腰筋刺鍼を始めた20年前は、三寸鍼は10番以外に定番がなく、注文しても1000本からで、注文してから何度も催促し、ひどいときは3ヶ月ぐらいしてやっと発送に取りかかるという状態でした。おまけに「今では三寸など、使う人がいませんよ。時代錯誤違いますか?」とまで言われたことも。
 「これではいかん。三寸の鍼が手に入らない。治療に支障をきたす。それでは需要が増えれば、普通の鍼のように注文してすぐに届くのではないか?」と浅はかにも考え、自分のやっている三寸鍼を使った治療、そして拘縮している筋肉の鑑別方法、柔らい長鍼の刺入方法をホームページ上に公開し、三寸鍼が手軽に入手できるようにしたという次第です。
 これがまた坐骨神経痛に良く効くというわけで、結構売れるんですわ。大腰筋痙攣によるギックリ腰には一発だといいます。海外からの反響も多く、ホームページの英語版を作れとの要望もありました。もっとも私には、英語版を作る能力も、またホームページ容量も残っていません。
 とりあえず3寸の三番、あるいは3寸の五番で20年ほど大腰筋刺鍼を継続し、一回も問題が起きたことがありません。男女別にしなかったにも関わらず。当然にして腸にも刺さっていたと思います。しかし問題が起きなかった。中国の本を見ますと「腸に刺しても雀啄や捻鍼をしなければ、小さな穴が開くだけなので内容物が出ず、腹膜炎にならない」と書かれています。しかし、腸へ刺して強烈な手技をし、腸に穴を開けて内容物が漏れ、腹膜炎を起こした事例も、中国の刺鍼事故の本には書かれています。また腎臓へ刺して、どんな手技をしたのか不明ですが、腎臓が切れて摘出した事故も書かれています。
 考えるに中国の鍼は、日本の十番ぐらいに相当します。ですから横に動かせば切れるし、つつけばシャワー状態になるでしょう。大きな鍼柄が付いている中国鍼ならば、どうしても捻ったり動かしたり、鍼柄を擦ったりと、操作してみたくなります。そうかと思うと『鍼灸大成』などでは、腹へ3.5寸の鍼を直刺したりしています。こうした事例を見ても、腸には刺さっても、そのままジッと動かさなければ、小さな穴が開くだけで問題が起きないと考えられます。つまり中国の書籍に書いてあることが正しいと思います。
 現に最初の10年ぐらいは、2.5寸を使わずに一律3寸で坐骨神経痛とギックリ腰を治療していましたが、なんの問題も起きなかったのです。ただただ三寸の細い鍼を患部へそっと刺入し、捻鍼も雀啄せず、できるだけ動かさないようにすれば、たとえ刺さったとしても問題は起きないようです。
 私も、自分が初めてやるのであれば恐怖も感じますが、楊継洲が「腹に三寸五分ほど入れる」と書いており、木下晴都が男女や体型と関係なく「2.5寸」の鍼を腰へ入れて問題が起きないのだから、自分が三寸鍼を腰に入れても大丈夫だと思いました。だって楊継洲が腹から3.5寸入れ、木下晴都が腰に2.5寸入れたら、合計して六寸。ほとんど身体を貫通していますよね。直接教わったわけではないですが、そうした先人が書いた物を読み、信用して試し、更に発展させることによって技術が進歩してゆくと思います。
 特に木下晴都先生の試行錯誤には、見習わねばならない部分が多いですね。まあ私がインターネットにて木下晴都坐骨神経痛治療を大腰筋刺鍼として公開し、鍼管を交換するという細い鍼を入れる技術を加味し、置鍼時間を延長する方法、また大腰筋の個人差や男女差を考慮して、できるだけ小腸や腎臓に当てない。
 ちなみに私は島根で、坐骨神経痛とギックリ腰の治療では有名だったんですよ。
 しかし、正直いうと患者さんの話しでは、以前に私と同じような治療をする鍼灸院が松江にあったそうです。大輪町にあったらしいですが、その先生が死んでしまって患者さんが困っていたらしいです。そこに私が登場して、たまたま同じような治療をするということで歓迎されたということですけど。そこは恐らく木下晴都方式をやっていたんじゃないかと思います。
 まあ「技術は進歩する」です。木下晴都の神経根傍刺も、北京堂式大腰筋刺鍼となって、鍼が細くなって長さが長くなり、よみがえったわけです。廃れてしまう技術が継続発展され、よかったではないですか。
 私は中国留学しましたが、いわゆる辨証派にはなりませんでした。中西合作に行ってしまいました。それも中国鍼灸には違いないので、まあよろしいのではないでしょうか?

 Oリングに付いての質問ですが、人が何をやろうと勝手だと思います。ただ北京堂が人まねをすると、北京堂の独自性が失われてしまうので、人まねはしません。
 ただ私の見解では、鍼の源流は九鍼であり、鍼は外治法でした。九鍼の中にはメスのような鍼もあり、排膿する鍼もありました。だから外科であり、内科ではないのです。
 経絡というのは、古代に考えられていた血管や神経で、経筋は筋肉です。そうした経絡が気血を伝えて、感覚を伝えたり、筋肉や皮膚を養っていると考えていました。そして気血が冷えや打ち身などによって滞れば、気血が通じなくなって痛む。
 もともと甬というのは、管という意味なのです。甬という管が病むから痛みであり、それが流れれば通です。つまり甬という管を通じるようにするのが鍼灸の目的です。
 中西の考え方では、そうした気血の伝達通路が経隧であり、血管や神経です。血管や神経のなかを気血が通じなくなるから痛みが発生すると古代では考えているのであり、陰経は肘窩や膝窩などの動脈拍動部、陽経は筋肉の凹みに経穴を取ることになっています。つまり陰経は血管で、陽経は神経を意味しているのです。だから経絡を圧迫している経筋へ刺鍼し、滞りを除いて気血が通じるようにすれば、痛みは消えると考えているのです。気は神経伝導、血は血液循環ですね。
 まあ、このように鍼は解剖学と非常に密接な関係があるのですが、Oリングテストは全く解剖と関係ありませんね。どちらかというと心理テストですね。そのような方法は、中西合作とは関係がありません。
 また辨証治療も漢方薬との併用を目的とするもので、中西とは一致しませんね。
 まぁ、いろいろな流派が競争し、どれが治癒率がよいのか競えばよいことで、中国鍼灸でも辨証派と中西派があり、治癒率を争っているのですから、日本ではOリングも加わって治癒率を競ったらよいではないのですか?
 意外とOリングの治癒率が一番高かったりしたりして……。そうなると北京堂方式の中西派は、股間に尻尾を巻いて、スゴスゴと引き下がるより方法がありませんね。
 でも北京堂方式は、左右脈比較のように長い経験も要らず、辨証治療のように深遠な理論をマスターすることも要らず、また焼山火や透天涼などのような練習を必要とする運鍼操作も要らないので、初心者でも簡単に治療できる入門しやすい方法だと思います。
 ただ縫針を刺すように、しずかに入れて行き、得気があったら40分ほど置鍼するだけですので、バカでもできます。なにせアホなが、微妙な脈診を学ばなくとも、また難しい中医学理論を覚えなくとも、複雑な運鍼操作をマスターしなくとも、何とか治せるように方法を考えついたものです。いわば頭の悪い人向けの診察方法、治療法というか。こういうことをいうと、弟子が「先生、そんなことをいうのは止めてくださいよ」というのですが。
 とにかく北京堂方式は、簡単でアホにも覚えられるメリットがあります。そのうえ治療マニュアルがインターネットを使ってタダで手に入る。タダより安いものはない。もっとも「何々方式を採用された方には、幾ら幾らのお支払いをいたします」という治療法が出てきたら、私も兜を脱いで白旗を揚げますがね。
 タダだから試してみる価値は、あるのではないでしょうか?
 もしかすると金を払って習った治療法のほうが効果があるかも知れませんが、タダで提供されている治療法とは、まあこの程度の効果ということで、ご勘弁を。
 安全なことは保証しますので、前屈みになるギックリ腰や坐骨神経痛に、一発試されてみては?
 中西合作でも鍼治療理論ですから、得気とは何か?どんな現象なのか?瞑眩反応とは何か?何故発生するのか?陰経とは何か?陽経とは何か?などについても、当然にして答えを持っています。ただ治療法は理屈ではなく、「如何に安全で早く完治させるか」が最重要なので、そうした治療法があれば、理屈を問わず、どんどん取り入れたいと思います。
 料理は安くておいしいもの、治療は安全で即効性のあるもの、床屋は安くて早ければ良いとか、人それぞれ考え方が違います。
 私ら中西合作派は、まず解剖を重視しますので、それなりの理想があります。北京堂ホームページは、そうした中西合作派の布教活動だと思って貰えばいいですし、中西合作治療を他の方法と比較してみて、効果がどうだったとか批判を寄せていただけるとありがたいです。なにせ私は、中国発祥の中西合作しか知らないもので、日本の優れた方法も取り入れたいと思いますから。まあでも、やりもしないで批判ばかりしては、単なる傍観者でしかないんですがね。

 
小児のマッサージについて、書籍があったら紹介してください。  たまごママネット
 
たにぐち書店から『中国小児推拿療法』という本が出ていました。一万五百円です。絵ではなく、二人の子供(男と女)がモデルになって、写真になっています。中国とありますが、もちろん日本語で書かれています。中国では見たことないので、日本で作ったものと思います。大判で、厚さ1㎝ぐらい、写真が多くて説明が少ないです。
東京に移転されたのですね。本のお知らせをいただきまして、ありがとうございました。少々高いですね。お金ができたら購入したいと思います。大変ですが、ぼちぼちやっています。東京に行く機会がありましたら、訪問させていただきます。ありがとうございました。

 
初めまして。JKという者です。ネットを検索中に北京堂HPが引っかかり、適当に摘まみ読みし、楽しく読ませて頂きましたが、気になった事がありました。細かい事かも知れませんが、「側索硬化について(私見)」のところの「二重盲検法」の記述について、概念(イメージ)が間違っている感じがしたのですが、どうでしょうか?
 私が認識している「二重盲検法」とは、(全ては述べれないですが)「患者と術者、どちらもどちらの治療法を行っているのか分からない」状態でデータを取り、判定する方法だと認識しています。「盲検法」はプラセーボ(偽薬効果)と言う、精神の働きを出来る限り除いて、判定するために用いられています。
 言葉に着目すると、患者のみ分からないのは「盲検法」で、患者と術者の両方が分からないから「二重」と言う語が付いているのだと思います。
 「二重盲検法」を用いるのは、患者だけ自分が受ける治療法が分からなくても、それを行う術者が何かしらの無意識的なサインを出してしまい、それが患者に伝わってしまっている可能性があり、治療結果に精神が介入した結果が反映される可能性があり、それを出来るだけ省く為です。
 しかし、この「二重盲検法」にも問題はあります。
 一つは、患者や術者にも治療内容が分からない様にする事が、治療法によっては難しい。
 例えば、鍼治療に於いて、「二重盲検法」を用いる場合、「鍼を使用し、体内に刺入するグループ」と「鍼を使用し、体内に刺入しないグループ」または、「鍼管だけを使用し、鍼を用いないで鍼管刺激だけを与えるグループ」などに分け、判定するわけですが、(この場合は鍼を体内に入れた場合の効果の判定)鍼治療に於いて、患者側は響きが出たら、刺入していると分かる訳ですし、術者が刺入したかどうか分からないと治療を行えない訳です。
 それに、鍼治療は、そもそも鍼管で刺激する手技があったりしますし、鍼に於いては「二重盲検法」を行うことは、難しいと思います。不可能かもしれません。
 するとすれば、ランダムに鍼が出たり、出なかったりする機械を作製して、それを使用して鍼治療を行う事になるでしょうが、そんなの恐ろしくて誰も受けたくありませんし。鍼刺入時の響きの扱いは? という問題も出てきます。
 その他にも、今の時代は「インフォームドコンセント」が必須と言われてきており、これは説明無しには達成出来ない訳であり、どちらの治療法を受けるか(受けたか)患者は聞かされないが、何をするかを説明されて知ってしまっていると、患者は受ける治療や受けた治療がどちらだったかを予想してしまい、ともすれば分かってしまい、「二重盲検法」の意味が無くなります。
 だから、「二重盲検法」を使用するとすれば、薬の効果の判定(治験)の時でしょうか。
 (メールでは私が持っている概念の一部しか伝えれませんが)この様に私は「二重盲検法」について以上の様な認識を持っています。浅野先生は「二重盲検法」について、どの様な概念で使われたのでしょうか? 宜しければ、教えて下さい。
 又、上記の私の認識は既にお持ちになられている上で、批判されているのならば、駄文をお送りし、時間を取らせてしまった事をお詫び申し上げます。
 それでは、失礼しました。
 尚、文中の術者は治療者と同等の意味で使用しております。
 蛇足ですが、私は、批判をするなら、それをある程度は知ってからするべきだと考えている人間です。

 恐らく、こうした質問をされるのは、鍼灸師さん。あるいは鍼灸学校の先生と思います。
私も鍼灸学校の学生だった頃には、先生に「鍼に於いては二重盲検法を行うことが、不可能です」と教えられました。
 国は、「鍼灸に保険を利かせたいなら、鍼灸の有効性を科学的に証明しろ」と言っています。しかし、動物実験で証明される内容は限られていますし、日本は中国と違う証明方法があるのならば、そうした方法で鍼の有効性を証明したらよろしいかと思います。
 私が、あそこに書いたのは、中国方式ですが、中国のように治験の方法を使ったら良いではないかということです。
 ご周知のように治験では、第一段階の動物実験、第二段階の少人数による治験。第三段階の大規模な治験。第四段階の市販薬となってからの治験があります。ところが鍼灸には死に到るような、あるいは一生後遺症の残るような副作用がないので、第三段階から始められると思いますし、中国も第三段階から始めています。
 中国には、鍼灸師もいますけれど、鍼灸士もいます。例えば北京中医などでは、高等学校教材を使って勉強します。つまり大学に相当するわけです。しかし、中等学校教材を使って勉強する学校もあります。それは経験がないので判りませんが、専門学校に当たるのではないかと思います。面白そうなので中等学校の教科書を、書店にて買ってみたのですが、内容は我々が学習した教科書と大差なかったです。
 中国では、中国式二重盲検を使って効果を判定しています。それは二重盲検と書いてあるので、それ以外に訳しようがありません。
 まず患者さんですが、患者さんは「インフォームドコンセント」が必須と言われてますが、正直言って中国の状況は知りません。しかし、患者さんは治療を受けに来ているワケなので、うどん粉のような全くのプラセボ穴を使うわけには参りません。
 中国では、空試験のサンプルがありません。比較としては、現在に有効だとされている薬物との比較をされていることが多いです。まあ、これは鍼灸どうしの比較ではなく、そのとき有効だとされている薬物との比較なので、二重盲検とは言えません。
 もう一つの実施されている方法は、従来有効だとされてきた鍼灸処方と、新しく開発した鍼灸処方の比較です。
 一応、患者さんは治療しにやって来るわけで、それに何もしないで結果を見るということは、あまりやりません(何もしない患者と比較したデータも中国にはありますが)。人道的にも、病気で来た患者さんに、治療しないなど、許されないでしょう。
 まず治療法を決めます。昔から有効だとされている鍼灸配穴をAにします。そして、より効果が高いのじゃないかと開発した鍼灸配穴をBとします。そして治療者を集めて、それぞれ患者が来たら、ある治療者はAの治療、別の治療者はBの治療をするように、治療者を二種類に割り付けます。Aは、昔から有効だとされてきた処方を使うので、自分の治療は正当だと考えます。そして新開発した処方で治療するBも、その病院で開発した効果的な治療だと信じて治療するわけです。ABの治療者は、接触しないように分けられます。これが治療者側の盲検です。
 次に患者さんをランダムにA群とB群に割り付けます。その病気の患者さんが来るとは限らないので、たまたま同じ病気の患者さんが来たときに、A群とB群に割り付けるのです。時期をずらして、できるだけ年齢や性別が偏らないように割り付けます。
 そしてAB治療者がいますが、ある治療者はAの治療しかしません。そしてもう一方の治療者はBの治療しかしません。患者さんも、治療者は自分に有効な治療をしてくれると思っているわけですから、これが患者側の盲検です。
 こうして治療者側、そして患者側が、それぞれ有効な治療をしていると信じて結果を出します。結果は、主にt検定が使われるようです。
 どの患者に、どの治療者が当たり、どんな治療かを知っているのは立案者、治験責任者だけですが、治験責任者は統計管理をするだけで、治療はしません。
 これが中国でやられている二重盲検の実態です。確かに、「そんな方法では薬と違って、正確とは言えない」との反論もあるでしょうが、翻訳するときは二重盲検と翻訳しています。こんな方法ですが、何もデータを出さないよりは、マシと思います。
 私は、従来の日本のように、「鍼に於いては二重盲検法を行うことが難しい」ではなくて、薬の二重盲検を模倣した中国のほうが共感できます。
 まぁ、日本は、中国式の二重盲検を使わなくても、もっと直接的な方法で生体メカニズムを明らかにし、証明する方法もあるとは思いますが。
 こうした中国式二重盲検法を使って統計を出してきた中国ですが、やはり最近では、こうした方法で得られた結果に、疑問が出されています。しかし現在のところ、それに替わる効果的な方法が見つからないようなので、中西合作鍼灸では、そうした方法を第一に採用しています。普通では、結果が出るまで二年、あるいはそれ以上かかるようです。
 こうした方法は、個人でできないので、病院でやっているようですよ。
 この文を書いた当時は、こうした方法の問題点が、まだ知られていなかったために、中国方式を真似たらどうかと思いました。いまも、有効性を証明する別の手段がなければ、中国方式を採用すべきと思います。
 以上が中国で、鍼灸の二重盲検と呼ばれている方法です。プラセボでなくて、従来の治療法との比較なので、正確ではないかも知れませんが。
 日本の厚生省が出している治験の手引き書とは、少し違いがあるかも知れませんが。一応、医学翻訳をやっていたので、それは読みました。またブリッジ試験とか。よく台湾や中国でやった治験を、翻訳してくれと頼まれましたから、少しは読みました。その程度の知識ではありますが。医学関係の本は、結構高いですね。この程度の認識です。術者と患者が知らないのだから、二重盲検でよいと思います。その訳語が当てはまらねば、中国側に言葉を換えろと文句言うしかありませんね。
 「鍼を使用し、体内に刺入するグループ」と「鍼を使用し、体内に刺入しないグループ」または、「鍼管だけを使用し、鍼を用いないで鍼管刺激だけを与えるグループ」に分けるという発想は、いままで文献で見たことがなかったので、面白い発想だなあと思いました。そうした厳密な方法が必要なのでしょうけれど、現実には行われていません。
 次から鍼灸への質問でメールください。「初めまして」では、出会い系サイトと間違えて、消してしまう恐れがありますから。
メールに返事を頂き有り難うございます。中国式の盲検でしたか、これで理解出来ました。どうも有り難う御座いました。また鍼灸について質問しました時は、宜しくご教授お願いします。それでは失礼します。

 
はじめまして。私は1月13日に顔面麻痺(ベル麻痺)になり、治療法を探しているものです。発病してすぐに入院し2週間ほど治療しましたが、未だ全く回復の予兆がみられません。時間がかかる病気だとはきいていますが、既に1ケ月近くも経過しており、調べれば調べるほど不安は増すばかりです。そんな時に先生のHPを拝見させていただき、メールしている次第です。先生の得意とする適応症に顔面麻痺は含まれておりませんが、この病気には効果が薄いということでしょうか?(『難病の鍼灸治療』にも含まれていますし、難病ということかもしれませんが)。過去、顔面麻痺の患者さんを治療されたことがあれば、その症例や経過はいかがでしたでしょうか?個人差はあるとは思いますが、もし効果があるようでしたら、お伺いしたく考えております。また使用する鍼についてですが、患者さんが来院されなくなって、どれくらいの期間保管しておくのでしょうか?又は治療が終了したら処分されるのでしょうか?
 北京堂では顔面神経麻痺の症例が少なく、2例だけです。一人は6回ぐらいで治癒しました。女性です。もう一人は男性で、耳のヘルペスから顔面神経麻痺になった症例です。こちらは神経が損傷されていますので、あまり効果がありませんでした。島根では、顔面麻痺で北京堂へ来る患者さんは、少なかったですね。
 臨床例が少ないので、得意な疾患に含まれていません。それに顔面麻痺には、星状神経節へのブロック注射が島根医科大学でなされ、それが一発で治るという非常に好成績を収めているため、時間がかかる鍼治療など、しいて必要ないと思います。
 それに私見では、一口に顔面麻痺といっても、いろいろな種類があって、鍼で効果があるとばかりも言えません。まず顔面神経は運動神経なので、異常が起きても痛みを感じないのです。一般には、坐骨神経のように痛みと運動の機能を持った神経が多いのですが、顔では三叉神経が痛み、顔面神経は運動だけなので、
 たとえば顔面神経の麻痺でも、顔面神経が頭蓋骨から出ている穴が小さくなり、顔面神経が圧迫されて信号が達しなくなった場合は、鍼をしても効果がありません。骨の穴を広げるしか方法がないですね。また腫瘍によって圧迫されている場合も同じです。それにヘルペスなどで神経が破壊されてしまった場合、やはり鍼治療しても効果がなかったです。
 こう考えてゆくと、顔面神経が頭蓋骨から出た部分に、浮腫があって神経が圧迫され、信号が筋肉へ達しなくなっている場合か、筋肉が硬直して神経が圧迫され、信号が筋肉へ達しなくなっている場合しか、即効性のある鍼治療効果は望めないと思います。しかし運動神経を遮断するほどの強力な圧迫は、首周りの細い筋肉に、そんな力があるのだろうか?という疑問もあります。一応は、そこに対して牽正というツボがあるのですが。
 星状神経節へのブロック注射は、我々が北京中医で習った『兪穴参考資料』の本にも記載されています。もっとも人迎ブロックという名前で書かれていますが。
 顔面麻痺は、頭蓋骨から顔面神経が出るところで圧迫されて起きる末梢性のものと、脳卒中などによる中枢性の麻痺があります。中枢性ならば頭鍼が中心になり、末梢性ならば牽正などの刺鍼が中心になります。
 ところが星状神経節ブロックは、脳の血流も改善するので、中枢性も末梢性の顔面麻痺にも効果があります。おそらく刺鍼治療をしても、同程度の効果しか得られないでしょう。というわけで顔面麻痺といっても、原因が様々であり、一口に鍼で治るとは言い切れません。
 鍼を使ったパルス通電により、動かない筋肉を運動させ、神経が快復したときに筋肉が萎縮していないように防ぐという考え方もあるでしょうが、顔の筋肉など薄いので、鍼でなくとも電極を使えば十分と思います。ちなみに中国では鍼灸師が神経ブロックをやりますが、日本では麻酔科の医師がやることになっています。
 というわけで、まず顔面神経が、どこで圧迫されているか、何によって圧迫されているかが重要で、圧迫しているものが見つからなかったら星状神経節ブロックのほうが効果的と思います。日本でできないことを得意疾患に入れるのもおかしな話しなので、得意疾患に入れてません。でも、顔面麻痺の種類によっては効果があると思いますよ。
 私の方法は、『難病の鍼灸治療』を踏襲するだけですから、特に人より優れた治療効果があるとも思えません。ですから顔面麻痺によっては治るということ、また人迎ブロックという優れた方法があるのだから、それをやってみたら如何ですか?と勧めています。
 鍼は、本人が亡くなられたことが判った時点で処分します。

 
頚の脊柱管狭窄症で、手術をしなければ治らないと言われました。手術が嫌なので、整体やマッサージなど、いろいろな治療を受けましたが、治りませんでした。これが鍼で治るでしょうか?
 この患者さんは、乾癬により脊柱管狭窄が起こったということです。
 一般に中国では、脊柱管狭窄は鍼で治らないとされています。そういうと患者さんが、「そんなネガティブなこと言わないでください。私はポジィティブに生きてる人間ですから」という。しかし脊柱管狭窄は、骨が脊髄や神経を圧迫して起きている症状ですから、骨には鍼が刺さらないし、骨に対する治療メカニズムもハッキリしていません。つまり骨の病気は、鍼では治らないということです。しかし現実には、この患者さんは2回目の治療で長年の症状が軽減し、「これなら鍼で治るのではないか」という希望を抱かれました。 一応、私の好きな朱漢章の『小針刀』には、脊柱管狭窄症が、このように説明されています。
 ①骨は、あまりに耐えられない力が加われば、そこの骨が壊死する。②骨に耐えられる力が加わり続ければ、そこの骨が大きくなって支えようとする。③骨に負担がかからなければ、骨は支える必要がないので細くなる。

 脊柱管狭窄症は、この②に相当します。首の骨を上から見ると、ドーナッツのように穴が開いていて、その穴部分には、頚椎なら脊髄、腰椎下部なら神経が通っています。ところが加重だが耐えられる程度の負荷がかかると、それを支えようとしてドーナッツが支え面積を増やすのです。上から押さえても崩れないドーナッツにするには、ドーナッツの幅を広くして太いリングにしなければなりません。そうしないと負担に耐えきれず、骨が死んでしまいます。つまり正常な頚椎がマジックインクで描いた輪なら、負担に耐える頚椎は太マジックで描いた輪になるわけです。二つの輪を比べてみると、太マジックで描いた輪の内円は、普通のマジックで描いた輪の内円より小さいのです。つまり円の大きさは同じでも、線が太ければ内円が小さくなる。この線が骨と思ってください。こうして頚椎は骨の幅を厚くし、加重を支えようとしますが、それは内径が狭まることになるため、それまで脊髄が通っていた穴幅を維持できず、周りから骨が圧迫するわけです。
 つまり脊髄にしてみれば、ドラマであるように閉じこめられている部屋の壁が、だんだんと迫ってきて、なかにいる主人公がペチャンコにされるような光景です。脊柱管狭窄症は、ペチャンコにはならなかったけれど、壁と壁に挟まれて身動きがとれない、こうした状態です。
 実際にドーナッツの穴である脊柱管が小さくなると、脊柱管には脳脊髄液といって透明な液体が循環して栄養していますが、脊柱管に脊髄がパンパンに貼り付いているため、液が通れる隙間がなくなります。こうして脊髄が圧迫されるわけです。
 解決させる手軽な方法は、手術してドーナッツの穴を大きくしてしまえばよいのです。穴が大きくなれば、脊髄が圧迫されないので、症状が消えます。しかし腰下部の狭窄症なら神経が通っているだけなので問題ありませんが、頚は脊髄が通っているため、脊髄を傷つけたら危険です。それに頚は神経や血管、筋肉なども多くて複雑です。よほどの技術を持った外科医、例えばブラックジャックのような人が執刀するならともかく、「私はブラックジャックの弟子で、ブラジャーホックと呼びます」といった人では、「ちょっと手術は遠慮しておきますわ」となります。
 そこで手術以外の方法はないか?ということになります。中国の書籍には、イオン導入法というのがあり、食酢を陽極で引っ張って、皮膚内へ浸透させて溶かそうという考え方が記載されています。しかし皮膚内に浸透したとしても、食酢が溶かすのは外側からでしょうし、問題なのは骨の内側なのです。外から酢に浸しても、内側の骨は溶けないと思います。
 では、やはり頚から下が動かなくなる覚悟で、ブラジャーホックさんの脊髄を切られる可能性100パーセントの手術を受けなければならないか?
 中国の鍼灸書籍に、「骨増殖による頚椎症に対し、鍼治療や漢方薬投与をおこなうと、症状が改善した。しかし検査した結果、骨増殖は改善されてはいなかった」と記載されています。つまり骨が脊髄を圧迫している状況は変わらないのに、症状が消えたということです。不思議なことです。原因が解決されていないのに、状況は好転した。

 それは、こういうことです。痛みはデジタルで累積されます。つまり脊柱管の骨が脊髄を圧迫します。するとそこから出ている神経は痛みを感じて信号を出します。信号は筋肉へも伝わり、筋肉が収縮します。すると脊柱管内径の骨で圧迫された痛みだけでなく、さらに筋肉に圧迫された痛みまで加わります。こうしたダブルの痛みが加わって、痛みは倍増します。これが痛みの所得倍増計画です。
 鍼は筋肉を弛めることにより、純粋な脊柱管狭窄症だけの痛みにします。それほど狭窄症がひどいものでなければ、それによって痛み全体としては、ずいぶん楽になるはずです。だから骨増殖が変わらなくても、症状が消えたのではないかと思います。実際に鍼で、症状が消える患者さんはあります。しかし厚くなった骨が薄くなるわけではないので、やはり治癒するわけではありません。
 「手術しなければ、治らないと言われた」という話しですが、この厚くなった骨は、いわばペンダコやパチンコダコのようなものです。そこへ常に刺激が加わっているため、防衛反応で皮膚や骨が厚くなったものです。常に加重がかかるので太くなったものならば、裏を返すと「③骨に負担がかからなければ、骨は支える必要がないので細くなる」という結論になります。つまり頚周りの筋肉を弛め、ポリネックなどで頭を支えれば、頚椎に加重がかからなくなり、骨は自然に細くなるでしょう。たぶん頚にリングをはめている頚長族などは、頚椎が細くて、頚椎間が寛いと思います。そうした人達には、頚椎の脊柱管狭窄症など起きないと思います。
 ペンダコやパチンコダコは、使わなければ自然に消えて行きます。だから増殖した頚椎も、負担がかからなければ自然に消えるはずです。
 ムチウチ症で頚に填めるポリネックは、重たい頭を支えてくれるのはいいのですが、硬いので頚が自由に動かせません。だから外してしまう人が多いのです。これを肩側のリングと、頚側のリングを作り、二つのリング間をバネで支えるようにすれば、頚が動かせるだけでなく頭も支えられるので、こうした自由に動かせる頚支えが作られればいいなと思っています。あるいは天井からバネで頭を吊るとか。
 負担がかからなければ、自然に首の骨も細くなると思います。だって骨は、日々作られているんですから。ですから鍼で、症状はある程度軽減すると思いますが、狭窄症があるのでは、鍼で完治することが難しいと思います。ただ筋肉が痛みに荷担している割合があるので、鍼治療による痛みの軽減が3割になるか5割になるか、それとも8割消えるのか、キレイに消えてしまうのか、ハッキリしたことは言えません。しかし完全に痛みが消える人が、実際にあります。だから頚の筋肉が硬くなったら鍼をし、負担がかからないようにすれば治ると思います。
 
 
 昨年の十月頃より不幸が続き、ストレスや疲労からと思われる頭痛、肩こり、腰痛、胃痛が始まりました。
 もともと肩こりや頭痛、腰痛は持っておりましたが、2週間前から頭痛が続き、薬を飲んでは胃痛が起きるという悪循環を繰り返してたので、マッサージに行ったところ、背中がカチカチで、胃や肝臓のツボが腫れているとのこと。自覚症状もありましたので、早速インターネットで検索し予約、昨日、某鍼灸院へ行ってきました。行って、お話しもそこそこに診療台の上で治療が始まったのですが、鍼を刺しながら「何回通院できるか?何曜日来れるか?」と聞かれたので、週一が限度ですと返答しました。私の背中はストレスと疲労で相当硬くなり、胃や腸、他の内臓もかなり弱っているとのこと。私も「やっぱりなあ~」と納得し、週2回は来れるだろうと伝えました。そこまでは良かったのです。
 ホームページには初診料¥1,000 大人¥7,000と金額が明記されていましたので、「1回7,000円ですよね?」とお尋ねしたら、「15,000円!」との返事。
 診察台の上で鍼を刺されながら、呼吸が止まりそうでした。
 「先生、家計もあるので¥15,000で週2回は無理です。それでひと月通うんですよね。」と申しました。とたん、先生の鍼を刺す手が止まりました。「あんた、冷やかし?帰ってもらうよ!紹介者も無しに来て、金が払えないだって……」
 それ以降は、なぜ自分の治療は高いのか、いかに名医か……ほとんどの言葉は悲しくて覚えていません。治療に入る前にきちんと金額と通院回数を話して下されば納得できたと思いますが、鍼を刺しながら金額の事を言われた上、「冷やかし」なんて言われて泣きました。  治療はして頂き、金の棒で擦られた痕がヒリヒリ痛くて、背中はうっ血しています。明日も予約予定ですが、いくら名医としても、ちょっと心に引っかかるものがあります。いろいろ考慮して、明日の予約は行かない事にしました。治したいのはやまやまですが、金額も到底出せる金額ではありません。保険診療以外の自由診療というのも承知の上で行きました。私の場合は症状がひどく、他の先生はサジを投げるので¥15,000となるそうです。先生、私の経験はいかがなものでしょうか?もう少し背中のヒリヒリが治まったら、良く調べて、また鍼治療を受けたいと思います。その為にもこの体験が、鍼灸院では普通の事か否かお聞きしたくてメールしました。お忙しいところ宜しくお願いします。

 そうですね。それはひどいですね。名医なら医者でしょうね。ふつうの頭痛や肩こり、胃痛ならば3回ぐらいの鍼治療で治ってしまい、重症なら4~5回かかるでしょう。北京堂系列なら5回の回数券15,000円と、最初の鍼代1,000円、計16,000円で治っちゃうところですね。 
 最初の治療が、初診料込みで30,000円とかする鍼灸院は、結構あるようです。でもホームページに7,000円と書いてあれば、その値段だと思いますよ。
 近所の食堂でも看板に値段が書いてあり、実際に食べたら高かったので、もう一度外の看板を見直すと、高い値段が一番下に目立たず貼ってあったことかあります。見やすく書いてあるのは旧料金でした。これは経営の問題でしょう。でも、それは貼ってあったから、まだいいです。
 私の考えでは、それは詐欺みたいですね。確かに鍼灸院は、値段を表示してはいけないと法律に定められていますので、ホームページでしか示せません。ホームページはクライアントがアクセスせねばならないため、宣伝ではないと見なされているから表示できるのです。しかし、その価格がデタラメならば、鍼灸院が出しているホームページの信頼性に関わってくるので、誰もホームページを信用する人がなくなり、宣伝媒体として機能しなくなります。それは、ゆゆしき問題です。
 治療に入る前に、金額と通院回数を話すというのは当然のことと思いますが、なかには難しい症状で、はっきりと回数を言えなかったり、脊柱管狭窄症のように鍼の不適応症でも、手術が怖いために鍼へ来られる人もあります。うちでは治療回数の目安を挙げていますが。
 はっきりいうと、治療費が高いことと技術とは、あまり関係ないと思います。島根県でも治療費3万円のところもありますが、患者さんのウワサによると、あまり治らないそうですよ。私が患者さんに聞いたなかでは、島根では米子の日野川先にある整体院が効果あるそうですし、現在は広島へ移った松鶴堂の治癒率がいいそうです。それは島根県東部の話しですけど。
 まず、あなたが不快な思いをした治療所の名前を挙げるべきですね。そうしないと、本当にそんな治療院があるなんて信じられませんから。だって7,000円と表示されてるのに、倍以上取られたなんて、とうてい信じられないでしょう。その鍼灸院のホームページが検索できれば、そんなこともあるかなとは思いますが……。そんな話し、聞いたことありません。
 ¥7,000は、東京ではよくある治療所の値段で、患者さんも、そうした鍼灸院のチラシを持ってきて見せてくれます。しかし例えば赤坂や六本木、銀座など、家賃の高い地域で開業し、しかも自宅でなかったら、どうしてもそれなりの料金を貰わねば成り立ちません。ただ中野に住む従姉でも、「一回7,000円では、そうそう通えないでしょう」と言います。そうすると鍼灸が、金持ちだけの治療法になってしまい、一般庶民が恩恵を受けられなくなるから、それなりの値段で、それなりの治療を受けられるところも必要になります。
 まあ一流レストランで食べるか、ガストでもよいかという話しになります。
 価格の問題ですが、北京堂では20回以上来て、症状が消えなかった人は、まずいません。一番長い人で13回、腰が曲がって坐骨神経痛があり、働けなくなったのを真っ直ぐにしました。その人は、現在は職場復帰しているそうです。
 だから回数券が15000円ですから、45000円はかかっているわけです。それが一回15000円でも、3回で治れば、治療にとられる時間、交通などを除いても、その治療院は安いことになるわけです。
 それと名医だからといって鍼灸が上手なわけではありません。松江の市民病院の鍼で治らない患者も、北京堂では結構治癒しましたよ。

 鍼の上手い人は、ホームページなどでは判らないですよ。私も松鶴堂が治すなんて知りませんでした。患者さんから聞いたのです。あそこで顔面麻痺とか、いろいろな病気の人が治ったと聞きました。つまり良い鍼灸院は、そこで治癒した患者さんに聞くことが一番です。これが一番の原則。そうして自分で評判を尋ねる努力をしないと、治せる治療院には当たらないのです。何事も努力が必要ですね。
 知り合いがいなければ、治療所へ直接電話を掛けてみることです。昼間の混雑している時間ならば、なかなか対応してくれないかも知れませんから、夜8時以降に電話を掛けてみるのです。といわれても10時とかでは迷惑ですが。そこで病状を話したときに、何が原因で症状が現れており、どういう治療法が考えられるか、詳しく説明してくれる鍼灸院に行くべきです。これが次善の策です。
 その次の方法として著書を見ることです。例えば鍼灸学校の学生とか、知り合いの鍼灸師がいれば、いろいろと専門の本を読んでいるはずですから、そうした方々に尋ねます。そして著書を買って読み、納得できれば治療を受けてみる。しかし、これで探せる鍼灸師は限られてしまいますし、著書を出している治療所が、かならずしも良くないことは多いようです。なぜなら本を書くには、すごく時間をとられるからです。つまり勉強する閑がない。
 あと肩書きですが、やはり役員とかは、その仕事に時間をとられるので、勉強できません。
 以上がマトモな鍼灸院の選び方ですが、実際に意味があるのは、治った人の評判、そして電話をしたときの対応だけが基準になりますね。
 次は北京堂の宣伝ですが、「私の場合は症状がひどく、他の先生はサジを投げるので15,000円となるそうです」とありますね。医者がサジを投げても、鍼灸院では治ったりしますよ。現に島根では、某病院の外科先生が治しに来ていましたし、手術スタッフがギックリ腰になって手術に支障が出るからと、外科医を回してきたこともありました。だから医者がサジ投げても、鍼灸師が治すことはあるのです。板橋なら近いので、北京堂へ来てみたらいかがですか?  私も、その名医だけが治せて、他の人がサジを投げるという症状に興味があります。話の内容と同じく、半信半疑ですから。
 北京堂はホームページに書いてある料金ですし、それに診るだけならば料金を戴きませんから。文面だけの症状ですと、ただ頚と背中が凝っているだけで、3~4回で簡単に治りそうなんだけどな。他の人がサジを投げるほどの症状って、見てみたいですよ。
 でも鍼灸師は、鍼の不適応症であっても、これは治療できませんとは、ふつう言わないものなのだけどな。サジを投げるほどの鍼灸院なら、それが不適応症であることを見破っているワケですから、どういう治療があるか教えてくれます。いい鍼灸院ですよ。治りもしないのに、だらだらと料金だけ取られなくて済みますから。
 ひどいのは、通えば治ると言われて通い続け、多額の金を取られた挙げ句、死んじゃったりするケース。側索硬化の患者さんで、こうした詐欺まがいのケースを相談されることが多いです。
 あなたも治療を受ける前に、料金と鍼の消毒方法、手の消毒方法、何回の治療で治るかなど、重要なことは質問すべきでしたね。

名前を挙げたほうが良いという先生のご意見、思い切ってはっきりと紹介いたします。そんな治療院は本当にあります。新宿南口××鍼灸治療センターです。○○先生です。先生のご友人、お知り合いでしたら本当にすみません。その時にはとても心苦しいですが、本当の体験です。ホームページはhttp://www.××。お値段など、ご確認下さいませ。痛いので少々あせってはいましたが、治療の流れなど数回読んでの電話予約でした。……この点でも大変不信感を持ちました。背中に針を刺されたまま、「冷やかし?」の非難の声を浴び、まな板の上の鯉状態で、帰ることも反論も出来ず涙していました。今思い出しても本当に悔しい思いです。その後も、「¥5,000位で診ている、そこいらの未熟な鍼灸師のところへ行って貰って構わないんだよ…」とか、「先生、治して下さい、とお金を何十万と持って、自分を頼りに来る人が何人いることか…」とか「一日に数回来る人も居る」「自分が何年も、新宿という等地で鍼灸院を続けていられるのは、自分の確かな腕の証拠みたいなもの」……出るわ出るわ、背中につばが何度も掛かりましたが、密室に二人きりなので、これ以上怒らせては危ないと思い、「ハイハイ」と聞いてどうにか抜け出してまいりました。治療は正味20分くらいだったでしょうか? 一番長い治療は、カネの棒で背中を擦る治療でした。おかげで皮膚の弱い私は背中が痛くて参りました。着替えて出て、時計を見たら6時40分くらいでした。せっかく声を掛けて頂いたので、あり難く北京堂さんへ予約させて頂きたくお願いしす。あれ以来ショックで、胃は益々重苦しくなりました。他の先生では治せない、最悪の体をお見せ致します。一両日にお電話で予約をさせて頂きます。

ホームページのアドレスに行ってみました。確かに、おっしゃる通りの値段ですね。
大先生は、「5000円ぐらいで診ている、そこいらの未熟な鍼灸師のところへ行って貰って構わないんだよ」と言われましたか。まあ北京堂は3500円ですからねぇ。未熟な鍼灸師と思われても、しかたないでしょうねぇ。「先生、治して下さいと、お金を何十万と持って、自分を頼りに来る人が、何人いることか……」ですか。島根でも、隠岐の島の黒×という患者さんがいましたが、自分の坐骨神経痛治療に百万円以上使ったけど治らなかったと言ってましたよ。それが2万円ほどで完治させて貰えるとは思わなかったと喜んでました。でも東京へ移転したんで、不安だと怒られましたよ。何十万円分も治療しなければ治せないなんて、腕が悪いのかも? 「一日に数回来る人も居る」は、まれに北京堂でもありますが、うちは2回ですね。ぎっくり腰を治してくれと言われ、治療したあと「まだ痛みが残っている」と電話されて、じゃあもう一度来てくださいと返事して、来て貰ったことが十五年間で何回かありました。もちろん二度目の治療費はタダですよ。患者さんの希望通り治ってなかったんですから。失敗ですよ。やりそこなえば、やり直しを命じられますから。一人の患者さんに一日数回も来られたら、何度もタダ働きしなければならないので、儲けになりません。だいたい他の患者さんが診れなくなります。一日に三度も来られた日には「病院でCTしてください」と泣き言いうでしょうね。「新宿という等地で、何年も鍼灸院を続けていられるのは、腕が確かな証拠」は、鍼灸院が一度軌道に乗り、特に自分の持ち家なら、そうそう閉鎖することもないと思うけど。腕が確かだったかどうかは、世間が評価するもので、自分が評価するものではないと思うけど。そんな田舎っぽい思考法は、古くさいのでしょうね。腕の良い大先生のお言葉、心に滲み入ります。
 未熟な鍼灸師-北京堂は、もうちょっと東京でやって行きます。でも「東京へ行くなら愛知にも来てくれ」とメールを貰ったので、東京を閉めたら島根に帰らず、愛知に行くかも知れません。回答は、お金を何十万と貢いでくれる患者のいない、3500円の未熟な鍼灸師でした。今回の質問は多少割愛させていただきました。こんな鍼灸院って本当に、あるのかなぁと信じがたい話しが入っています。これがデタラメだった場合、ホームページという媒体上、この鍼灸院に非常な迷惑を掛けてしまいます。私が確認したわけでないので、治療院の名前を出すことは敢えてやめます。
 お話が事実なら、こうした鍼灸院は、鍼灸に対する信用を失わせ、鍼灸で治る人であっても治療を受ける気を無くし、結果として人々の健康に不利益をもたらします。これは鍼灸界にとっても、大変なマイナスです。
 この話が事実かどうか、あとはこれを読んだあなたが新宿南口へ行き、ご自身の身体で判断してください。そのアドレスや鍼灸院の名前は、質問のボタンを押し、「主婦の体験鍼灸院名を教えて」と質問メールをいただければ、無料で投稿のあった鍼灸院名を教えます。

 新潟県で鍼灸をやっています。数日前に偶然こちらのサイトを見つけました。それ以来、ちょくちょく、おじゃまして拝見致しております。nifty@payで、『十四経発揮』全巻の現代語訳、『鍼灸聚英』全巻の現代語訳も購入させて頂きました。日々の施術で迷ったり、悩んだりするばかりの万年鍼灸初心者です。何かヒントは無いかと書籍(生理・解剖書、教科書、参考書等)を開いたりします。Web サイトを検索しても、なかなか『これは』というサイトを発見できずにおりましたが、あなたのサイトは参考になることが多く、量も多いので簡単に読み切れないでおります。はなはだ超~初心者的質問をさせて下さい。灸の壮数について、例えば、鍼灸資生経巻三No1で小品云、四支、但去風邪、不宜多灸、七壮至七七壮止。あるいは日灸七壮,或艾甚小、可至二七壮などと、壮数の記載がありますが、ここで「七七壮」が77壮ではなく、7×7=49壮。「二七壮」が27壮ではなく、2×7=14壮であるらしいのですが、読み方の基本として、どの様に考えたら良いのでしょうか?古典が編纂された(執筆された)当時の表記として、七七と来れば、九九(算数のくく)で49とする考え方なのでしょうか?それとも、(「49壮」ともなれば、いわゆる多壮灸になりますが、)ここでは○○壮と『具体的な壮数』を言っているのではなく、『症状により、必要があれば(←何をもって必要があると捉えるのかが問題ですが、)施灸の熱痛が通るまで、たとえ多数になっても、すえなさいョ。』(あるいは最初から異常に熱ければ熱痛を感じなくなるまで、熱痛が、通れば「気が至った」と言うか、「適量に達した」として施灸を終えなさい。)みたいな、事を言っているのでしょうか?お忙しいでしょうが、もしお時間がとれましたらお答えがいただけますと、嬉しいなと思います。Web サイト楽しみに致しておりますので、いろいろアップして下さいませ。
 大成と聚英をお買いあげいただき、まことにありがとうございました。
 ところであなたの質問は、超~初心者的質問ではなく、大変難しい問題で、現在の中国でも議論の多い問題であります。
 まず七七が49なのか77なのかという問題ですが、私は最初七十七だと考えていました。
 ところが、これは七壮ずつを七日すえることだと書いてある古典がありました。また『素問』の上古天真論を見ましても、女子七歳とあり、次には二七歳、さらに三七歳と記載があります。それは七歳、二十七歳、三十七歳…七十七歳の意味ではなく、七の倍数とされています。また百壮や千壮すえると書かれた本もあり、それはすえ始めてから合計して百壮、あるいは千壮に達したとき効果が現れる意味で、一度に百や千すえることではないと解釈されています。
 七壮至七七壮止。あるいは日灸七壮,或艾甚小、可至二七壮の文ですが、七壮なのに77までというのは不自然です。数が違いすぎます。また十の文字を入れている文もあります。だから七壮を七日間すえると解釈すれば49壮になります。後の文でも七壮なのに、小さければ27壮では多すぎると思います。また一般的には奇数の倍数を使うので、77では倍数にならず、無理かなと思います。だから小さければ七の二倍が適当かなと思います。「小品云、四支、但去風邪、不宜多灸、七壮至七七壮止」という文章は「手足では、ただ風邪が去ればよく、多い灸はいけない」と述べているので、七十七壮とは考えられません。それでは多くなるからです。それで少なく解釈しました。二七壮も同じ理由からです。
 間を×ととるか十ととるかは、個人の考え、著者の別ページにおける記載などで変わるため、一概には言えないという漠然とした結論になります。なぜ十にしなかったか、なぜ×にしたかは、かなり以前のことだったので忘れてしまいましたが、十より×のほうが正しいだろうと思ったからでしょう。ですから別の本では十にしていたりするはずです。文章を読んで、シックリくるかこないかという問題です。
 臨床的に言えば、あなたのおっしゃるとおり身体の反応を基準にすべきと思いますが。
 灸は火で陽に属し、陽の数は奇数なので、二とあれば三の間違いか、倍数と考えられます。実際には七壮でも八壮でも構わないと思いますが、喘息の施灸などは、冬なら九日ごと、夏なら十日ごとにすえます。
 私見では、脳卒中に臍へ五百壮などすえるのは、また別の灸作用と思われますが、直接灸の作用は、蛋白質を変性させて異種蛋白とし、身体の攻撃力を呼び覚まそうとするものと考えます。ですから良質モグサではダメで、昔風の悪いモグサ、そして内経がいうように三分底面の大モグサが効果的でしょう。
 甲乙経などには灸三壮との記載が多いので、七十七壮などという分解できない数字より、七そうずつ七日すえるというほうが、甲乙経の壮数と合致していると思います。
 こうした問題については、私には難しいので(私は現代鍼灸書の翻訳者なもので)、もうちょっと有名な先生に「これは七十七壮なのか、それとも四十九壮なのか」と質問されたほうが適切かも知れません。だから私は、×と十の二つがあるとしか答えられません。
 私も、それほど古典を持っているわけでもなく、あとは『鍼灸逢源』か『鍼灸集成』かなと思っています。弟子に『鍼灸節要』を打ち込ませようと思っていますが。
 これも、みんなが、こうした試みをしてくれればいいかなと思って始めたことで、正直言って原文の打ち込みは、もううんざりという感じです。でも初心者なら勉強になるので、自分で打ち込んだらいいと思いますよ。
 早速のご返答ありがとうございます。
 その後Web サイトを探索しましたところ、九九の歴史は、私の想像を超えて古く、殷の時代には、それらしきものがあったようです。引用
「中国の唐の時代の元和五年(810)の八月十五夜に詩人白居易の読んだ詩に『三五夜新月色』という句があり,殷の時代の甲骨文の詩の中にも『明月三五』と刻まれたものが出土しています。「三五夜」は「十五夜」のことですから『万葉集』の「三五月」という表現の仕方は中国から伝わってきたものと思われます。
以上、http://www9.ocn.ne.jp/~wasan/keifu.html より」
ですので、七七と書いて49と読むことは可能であり、もしかすれば、『粋』(いき)な表現でもあったのかもしれません。なにせ、日本にあっては、ひねもす*のほほん組の人々が、この表記を和歌に織り込んで、楽しんでいた時代もあったのですから。  
 お話を戻しまして、「七七が49なのか77なのかという問題ですが、私は最初七十七だと考えていました。ところが、これは七壮ずつを七日すえることだと書いてある古典がありました」と、ご回答にあります。これは、私は思いもよらないポイントでした。確かに、日に(一度の施術で)七壮、七日間すえて、都合49壮。考え方として、それもあるかな、とも思いました。施灸での私の体験では、多壮灸で奏効している例が確かにあるので、三壮あるいは七壮で止めるのか、熱痛が通るまで多壮すえるのかの鑑別はどこで付けるのかを、知りたく思っているからです。
 痔(便秘後の無理な排出による裂肛・出血)では孔最一穴の多壮灸、下痢(細菌性か、神経性かは不明)に裏内庭一穴の多壮灸などはとても良く効きます。化膿性疾患(おでき様のもの)に、出来るかな~出来ちゃうかな~のタイミングでカウンターパンチ的に曲池に施灸すると出来ずに済むなど。(灸の大きさは、米粒大~半米粒大です、小さくすえるは面倒ですので米粒大の方が多かったかな。モグサは高級品。)自身の体験でも、すえ続けていると、まさに施灸中に下腹部に温かみがさし、肛門部にぬくもりと氷解感(冷たくて強い痛みが緩み、解けてゆく感じ)が有りました。再現性も有ります。この時、『あぁ、これが気が至るって事なのか。』と思い、それで治療をやめて実に素早く治癒してします。費用もモグサ、数グラム分で済みます。ドクターに診せて投薬を受けるより、遙かに早く治癒し、とても予後が良いのです。ですから七七とくれば多壮灸なのか!その壮数の根拠は何か?と思ってしまった訳です。この例などは、異種タンパク体免疫療法だけでなく、さらに西洋医学で理解出来ない神経学的な何かが作用している様に感じます。(私は、個人的には発生学的な中胚葉由来性の何らかの経路が有り、それが機能したり人によっては無かったり、関連しているのではと勝手に想像していますが……、それを経脈と呼んでいるのかは分かりませんが)『経脈の通るところに主治が及ぶ』と言われています(出典は分かりません)。肺経のツボを使って、表裏経である大腸経の流注部に作用を及ぼし、胃経の奇穴(裏内庭)により共役経の流注部に作用を及ぼす。実例です。魔訶不思議でかつ、ありがたいものだと実感しています。免疫的な働きも有るのでしょう。しかし、(根拠無しの想像)免疫動態変化より早くに、時系列的に10~15分~、遅くとも30分もしないうちに、痛みが緩んでで来るのですから、どの様な機序なのか、本当に魔訶不思議です。しかし、『経脈の通るところに主治が及ぶ』であれば、別に不思議でも何とも無いのですが、私にはやはり魔訶不思議な現象です。この方程式 『経脈の通るところに主治が及ぶ』が、どこから出てきたのか中国4000年の歴史の治験集積から帰納したものなのか?人体の不思議、宇宙の不思議に思いを馳せざるを得ません。(いきなり、かなりの飛躍がありますが……)お喋りが過ぎたようです。

 私は、あまり施灸をしませんが、恐らく神経的な何かが作用しているのでしょう。例えば脳卒中に、臍へ灸を五百壮すえるなどは、免疫作用では考えられないです。私も直接灸の作用は、免疫が全てだと思っていません。施灸による痛みも作用していると思います。
 ところで「経脈の通るところに主治が及ぶ」ですが、私も現代鍼灸の書では見たことがあるものの詳しい出典は知りません。昔からある言葉と思われるので、私のホームページにある検索用霊枢を調べたところ、『霊枢・小鍼解』に「言経絡各有所主也」というのがヒットしました。「経絡は、それぞれ主治するところがある」という文章です。あとWeb検索で「経脈所過,主治所及」が引っかかりました。
 規律 風池穴 鍼麻酔 孔最 足浴
また「経脉所通,主治所及」も引っかかりました。
 鍼灸的取穴原則 兪穴学総論
 どうやらグーグルで「主治所及」を検索すると、かなり引っかかるようですが、出典はハッキリしません。おそらく霊枢小鍼解の句を解釈したものではないでしょうか?

 
私は去年の10月から、香港の夜間学校で、週2回中国針灸を習い始めたヒヨコです。ひょんなことから北京堂をヒットしてしまい(昨日です)、その膨大な情報量、天安門事件前夜の北京留学状況の凄まじさにびびっています(私は中国語が出来ません)。
 あまりの情報量なので読みきれないでいるのですが、現在習っている段階では、最近の中国針灸では診断学を非常に大切にしています。勿論、脈も診ますし、舌診も習っています。「気」に関しては「エネルギー」という意味合いが強い説明がなされています。うちの上海人の教授曰く、針灸をする人にも針灸師か針灸士の違いあるといっていたと思います。前者は患者の症状から病原を知り、治療法を確立して針灸方針を決める人、後者はそのような知識はなく決められた病気のツボにただ単に針を刺すだけの資格保持者だそうです。
 先生のサイトを読んでいると面白いのですが、時々、現在習っている中国針灸と、先生のおっしゃる中国針灸が違うという印象を受けます(ヒヨコがこんなこと言って済みません)。おそらく、私が全体像を知らずに怖い物知らずの意見を述べているだけだと思いますが。
 でも、私も中国針灸を、というより、中国医学の理念をもっとアジアの人々に理解してもらいたいと切に思っています。特に、青少年だけでなく、中高年にも犯罪が増加している昨今の日本社会で、中国医学が予防医学として種々のエリアに貢献できると信じています。インターネットにはまって精神構造に変調をきたしている奴らには、針を数本打ってやりたいと思っています。ほんと。
 「中国は、もともと社会主義国で、ストレスなんてなかったから、ストレスが原因の病気に対する治療法などは確立されていなかったのですよ。それと食事も質素なので、糖尿病や中風などもない。香港に来て、そんな患者さんばっかりなのでびっくりしましたけどね」と、うちの先生は言っています。
 まだまだひよっこなので、質問したくても何も出来ません。でも、いつか先生に色々質問したり、お会いできるときを楽しみにして勉強を続けていくつもりです。

 当然にして脈診や舌診も、われわれは『中医診断学』で習いました。ですが中国に辨証派だけでなく、中西合作派があることは、日本で知られてません。その理由は、日本人の留学生が、学校の教科書だけを読んで、一般の鍼灸治療マニュアル書を読まないことに問題があります。
 いままでは漢方薬を中心として治療を組み立てていった辨証配穴というのがあります。これは教科書が組み上がってから変化しません。私は「鍼灸治療学」において、辨証法でない鍼灸中心とした鍼治療法を教わりました。そして病院などの実践の場では、辨証法を使った鍼灸治療は少なくなっていると思います。以前には辨証治療一辺倒で、経絡を中心とした治療など、あまり言われませんでしたが、状況が変わってきました。
 我々も、一年生で中医基礎理論を学び、二年で診断学と経絡学を習って、日中友好病院にて実習し、三年で兪穴学と刺法灸法学をやります。この時点では、漢方薬を処方する必要性から、やはり辨証もやります。そして四年生で鍼灸治療学と鍼灸医経選、鍼灸医籍選、鍼灸各家学説を勉強して、五年生には病院へ廻されて臨床実習があります。
 授業といっても留学生クラスは、中国人クラスと教科書も授業内容、授業科目も違います。例えば留学生クラスでは、言葉もスローだから授業内容も浅く、文字を黒板に書いて理解させますので、どうしても同じ時間内に1/5程度の内容しかやれないことになります。それに本科の診断学では毎日日中友好病院へ行き、主任医師によって舌を診させられたり脈を診させられたりしていました。しかし留学生クラスでは、一回しか友好病院へ行った記憶がないのです。
 北京中医学院で使っていた教科書も二種類あり、一つはビニール貼りの青い教科書、一つは緑色の中国人用教科書があって、教科内容が違います。同じ中医基礎理論でも、私の翻訳したのは本科生用五版教材で、別の先生は留学生用の青い教材を翻訳されています。だから同じ学校で使っている教科書でありながら、二冊の教科書が日本にて翻訳できました。上海中医に短期で留学した人には、日本語で書かれた教科書もあったそうです。鍼灸学校の学生だったとき、同級生から見せて貰いました。
 鍼灸師は、一応中医師になり、昔は中医学院、現在の中医葯大学を卒業して、医師試験に受かった人となります。これとは別に高校のような鍼灸学校があり、そこを卒業すると鍼灸士となるようです。教科書も大学では高等教材、専門学校クラスでは中等教材を使うようです。北京にも鍼灸学院というのがあるようですが、中医学院とは関係ありません。

 北京中医を例に取りますと、留学生クラスでは眼診も教えてくれました。それに留学生クラスでは、短期の授業の上、言葉の問題もあって授業がスローテンポで進み、内容が薄ので、やはり本科生と一緒に勉強したほうがよいと思います。
 最初の三年間は、やはり中医基礎理論とか診断学が中心で、経絡学や刺法灸法学をやっても、こんなもの何の役に立つのかな?と思ってしまいます。三年生で、刺法灸法学と兪穴学をやれば、辨証配穴を使った治療が、一応はできます。だから経絡学が関係ないのです。四年生の鍼灸治療学では、経絡を中心にした授業を受けたと思います。そして五年生で中医内科学を病院にて学び、漢方薬の処方が主になります。一応、この五年間が基礎期間になり、このあとで病院実習が始まります。そして各医師について勉強するというシステムでした。
 私の同窓がいる広安門病院でも、鍼治療しに来る患者を一々脈診したり舌診したりしませんでした。病院では、各病気に対してのマニュアルが決まっており、それは教科書の鍼灸治療学とは違っていました。もっとも治療学では、各分野で教える先生が違っており、一人が全部を教えることはありませんでした。
 私は、日本である程度勉強して中国へ渡ったので、舌診や脈診、辨証治療があること、中医基礎などは勉強して留学したので、そうしたことを中医基礎理論や診断学で再確認しても、あまりショックは受けなかったのですが、経絡学の本は日本で出版されておらず、刊々堂の鍼灸学で独学した程度だったのです。その詳しさにショックを受けたのですが、鍼灸治療学で実際に使っている治療を教えたことにもショックを受けました。教科書は何だったの?という感じです。
 学校でやる内容は、いまも1985年に作られた教科書に基づいてやられていると思いますし、鍼灸治療学の内容も辨証施治が最初にあります。そのとき学校でやっていた教科書には辨証治療があり、1980年代は辨証治療の治療書が溢れてたと思いますが、2000年以降に発刊された鍼灸の臨床書籍を見ますと、診察も昔は舌診や脈診などが主で、十の項目、汗とか便とかを尋ねろとあったのですが、現在の鍼灸関係の書籍は、血液検査をしたらどうだとか、結果判定を西洋医学に基づいてしていると思います。
 結局、診断をしなければ、治療して良くなったか悪化したか判定できないので、診断することになりますが、昔は脈とか舌とかでしか判定しなかったのが、いまはMRIとか血液検査なども使って判定するようになり、各病院にある治療マニュアルは、学校で習ったものとは違います。

 恐らく香港は、北京や上海と違い、1980年代のような辨証法治療の本が、書店に並んでいるのでしょうね。それはそれで行ってみたい気はします。今までは言葉が通じにくかったので、香港へは行ったことなかったのですが。
 北京の専門書店は、昔は辨証配穴オンリー、そして1990年代はパソコン関係の書籍ばかりになって、いままで鍼灸関係があった本棚が、片隅に追いやられて鍼灸書も少なくなっていました。しかし現在では鍼灸書が復活しましたが、その内容は辨証配穴の本が少なくなっています。そして科学的鍼灸とか、経絡の科学化、免疫と鍼灸などの本が増えています。

 正直言うと鍼灸は、去年の十月から週二回の勉強では、なかなかマスターすることが難しいと思います。だから広州中医薬大学へ入って勉強された方が、よろしいかと思います。いずれにしても学校にいる間は、学校の勉強に着いてゆくのが忙しく、本屋さんへ物色しに行くことができません。
 私も学校の授業は、正直言って面白くなく、帰ろうかなと思ったこともありました。周囲に、中国語を覚えられただけでも良かったではないかと言われ、鍼灸医籍選で断片的に学んだ古典を翻訳したり、現代鍼灸の本を読んだりできるようになりました。
 実際に子午流注を使って治療する鍼灸師もいるようですので、鍼灸師の先生といっても様々なタイプがあります。
 上海は、私の印象では厳振国などの解剖書がベストセラーになっていますし、刊々堂の鍼灸学を見ても、解剖を中心とした鍼灸がメインだと思えます。どちらかといえば北京のほうが、古い鍼灸を使っているような印象があります。いずれにせよ病院実習になってからが本番でしょうね。
 私としては、北京へ留学し、毎日曜日ごとに本屋へ出向いてましたが、1980年代、90年代、2000年代と、中西合作に移行してゆくのが書籍から感じ取られました。学校では、昔の本を使っており、時代の変化が判りませんので、やはり本屋を覗いてみられたほうがよいと思います。
 私の五大疾患治療ですが、辨証法の痺証治療では、寒湿風熱に分けて治療しますが、痰があるから豊隆を取ったりして、例えば五十肩では肩三針などの局所配穴をしますが、その効果はどうでしょうか? 私は黒龍江中医学院鍼灸科の卒業生と結婚していましたが、私の患者さんは坐骨神経痛が多いので、嫁さんが治療法を覗きに来ました。なんでも鍼灸科の教授は、坐骨神経痛が治せないので、どうやって治すのか興味があったそうです。
 私見では、辨証治療は内科疾患には効果があるものの、痛みの治療など痺証、ならびに痿証には効果が薄いと思います。そして鍼灸院へ来る患者は、ほとんどが痺証患者ですから、効率的な痺証治療を導入しなければなりません。そのときに痺証治療で、驚異的な治癒率を挙げている小針刀の理論を導入して、アレンジした治療を公開したわけです。しかし小針刀は、以前にはなく、伝統的な反射療法を使って治療していました。
 中国でも、みんなが本を読んで勉強するわけではありませんから、最近の技術を知って授業に取り入れる人もあれば、従来のまま授業をしようとする人もあると思います。また最近の特殊鍼のように、新たな鍼を創り出す人もいます。でも簡単な坐骨神経痛すら治せなくても、中医の鍼灸科教授としては成り立つので、学校は学校、治療は治療と割り切った方がよいかと思います。
 確かに脾虚では舌が胖大になって舌縁に歯痕が残るとか、淤血があると舌に淤班ができて紫色になるとか、診断学では我々も一応は習っていますし、日中友好病院でやるのですが、実際の臨床治療の場になると、とにかく患者さんを治さないといけないので、学校の教科書に従っても良好な結果が得られなければ、古典を漁ってみたり、現代の臨床本や雑誌、たとえば『北京針灸』や『中国針灸』などを調べてみる。しかし我々がいた1990年頃から、実際の治療効果に基づいた治療指南書が現れ始めたということです。
 我々の時代は、学校でも鍼灸治療の授業では、教科書以外から治療例を紹介してくれましたが、文革時代のデータは捏造が多く、先生が「こんな治療法で、こんな治癒率はあり得ないから、たぶん捏造だろう」と言ってました。文革当時は、データ捏造が多かったので、我々の時代にも残っており、あまり教科書が信用できなかったのです。
 我々の時代では、鍼灸治療学などデタラメで、治癒率すら記載されていませんでした。留学したほうとしては、単なる辨証施治を知りたいわけではない。治癒率の高い治療法を求めるわけです。だから「これこれの治療」だけでなく、その結果が知りたいのです。
 北京中医は、当時では上海か北京かという感じでした。私も広州中医葯大学の李頌華という女の先生と会ったことあるのですが、顔面麻痺専門で、顔面麻痺と見れば、脈や舌など関係なく、顔に刺鍼して通電していました。
 日本では、学校で習っていることが中国針灸で、教科書が中国鍼灸の実力だと思われている節があります。だけど私が受けた鍼灸治療学の授業は、そうではなかったということです。もっとも証明しようにも、私が治療学を受けたクラスは、外国人が私とカナダ人の二人だけ。ほかに日本人がいなかったので、証明する人はいないのですが。
 私の読んだ本によると、最初は辨証だけ。そのうち治癒率を問題にし、治癒率を記載した本が多くなりました。そして治癒率で治療法を評価していたのが、個人の技術によって治癒率が大きく異なるので、治癒率を問題にするだけではどうか?と変化して来たようです。
 香港では、三頭火鍼とか、小針刀、浮針などの情報は、届かないのでしょうか?
 香港へは行ったことがないので、書店で売られている本を見ることができず、北京や上海とは状況が違うのでしょうね。台湾へ行ったときも、鍼灸大成ばかりが目立ち、この国は、どうなっているのかなと思いましたが、やはり大陸とは違うのでしょう。
 中国は社会主義国家なので、ストレスがないという意見は、同意できません。買い物をするにも店員の応対が悪く、気分次第でしか売ってくれないので、買うほうとしては非常にストレスを感じました。ほんとうに買い物はストレスでしたね。
 台湾へ行ったときに、あまりに占いが盛んで、まるで弁護士に相談するような感じで、占い師に相談していました。 なるほど!魯迅の阿Q正伝は、こんな状況で書かれたのだと理解しました。恐らく香港も同じだと思います。そうした状況で、大陸のように「鍼灸の科学化」を訴えても、相手にされないと思います。麒麟ホテルに泊まりましたが、近くの寺は、病気を治してもらいに集まる人々で大変でした。みんな医療など信用せず、お経を唱えている方が遥かに治癒率が高いと考えているようで、こんな国が大陸と一緒になったら、大変なことになると思いました。もちろん日本とも合併して欲しくありません。書店も、占いの本が相当の比率を占め、八卦の方位盤とか、科学実験器具のように扱われていました。そのような環境では、やはり適応した教え方をしてゆくしかないと思います。
 
×といいます。昼間は情報関係のお仕事をしています。ですが、もともとは脳外科のナースをしていました。わけあって香港に嫁いでいます。年齢は「ええ加減にせいよ」と言われるくらいおばさんです(お、自分で言う人はいませんね)。人生もターニングポイントを目前となってきたので、ライフワークにしようと中国針灸を習いだしました。本当は漢方をしたいのですが、香港には適切なコースがなく、とりあえず中国針灸から始めた次第です(というか私は北京語が出来ないのです)。私が現在通っているコースは香港大学が開設している生涯学習システムみたいなところです。授業は英語でおこなわれ、対象は西洋医師、あるいは西洋医学教育をベースに持っている物理療法士か看護師と限っています。香港でこれらの資格を持っている人であれば、この2年間コースを終了した段階で、自分のクリニックあるいは所属する施設で治療行為できます。勿論、民間保険会社からの保障も受けられます(医療事故の際に)。まだ針灸を習いはじめて数ヶ月。経絡も始まったばかりで、浅野先生の怒涛のようなすごいお話には全くついていけていませんので、お許しください。
 学校に関して言えば、アカデミックコースということで普通の大学コースに中国医学科というのがあります(中国語が完璧でないと難しい)。まだ香港では数年くらいの履歴しかありません。そこでは東西医学がミックスされています。夜間特殊コースの私たちも、最初に教わったのが東西医学の比較、治療のための診断をどのように確立するかの方法です。学生が現役の医者ないしは、医療従事者なので、2時間くらいの内容ですが。
 教授陣は少ないのですが、いずれも東西医学を学んだ先生で、メインの教授は上海で学んだあと、ヨーロッパで数年臨床に携わっていました。ドイツが主だったそうです。あちらでは、既に出産の時に中国針灸を痛みを緩和する方法として選ぶことができるそうです(イギリスでもそうらしいです)。もう1人は漢方系の先生ですが、この方も北方(上海か北京)で修業されているようです。そして、もう1人は香港人のもと外科系の先生ですが、痛みの緩和方法を追求するうちに、自分でオーストラリアへ中国針灸を学びに行き、現在は香港で教鞭をとっている人です。
 香港は勿論、昔から中国医学に対する感心は深く、漢方療法医食同源などの思想は日常生活になっているのですが、私がここに来てびっくりしたのは、香港人はそういった民間治療も利用するけど、皆、中国医学は効くまで時間がかかるので、と、病気になると殆ど西洋医学に行ってしまうのですね。確かに、香港人にとって「時間=金」ですから、わからないこともないのですが。そういった経済的な理由からか、この地では中国医学の理解度はそんなに高くありません。ですが、数年前に政府が中国医の開業を認定性にしてから、少し事情が変わってきているようです。なんせ、もともと民間治療の一角として一般市民は取り扱っていたので、資格もとりやすかったのですが、というか殆ど無認可で、そういったコースを出て自分で適当にやる人も多かったのですね。それが、政府認定制になってからはちゃんと勉強しないといけないようになってきました(じゃあ、今までは何だったの?)。といった背景なので、ある意味では香港における中国医学の内容は、おそらく非常に新しいものだと思います。私たちの授業では英語の教科書を使用していますが、治療方針としては最初から病状から病因を追求し、五行理論に基づいて、どう治療するべきかということから始めています。香港の学校は、どこも商業主義なので、学生の理解度なぞはお構いなし傾向にありますが、こんな深い内容を2時間で終わっていいの?という気はしないでもありません。
 参考書類に関しては、香港には何もありません。香港はすべて中国大陸からの借り物で済ませる土地柄です。ましてや、こんなマイノリティーな学科用の本なんて印刷していません。ということで、私たちの英語の教科書も大陸で印刷されたものです。教授は「この本の英語表現は、ちょっと変だけど、もっとも中国医学理論をオリジナルに近く解釈しているから。」とおっしゃっています。クラスの3分の1くらいは英語が母国語の人なのですが、彼らが何も言わないところを見ると、それほど間違った表現ではないのでしょう。中国語の書籍は香港の本屋で買いますが、私の場合は隣のシンセンの本屋で購入します。中国では書籍が、日本と同様腐るほど(本当に腐っているのも時々あります)に溢れているので、何を買うのかがちょっとした問題になりますけど。一応、クラスの担当教授に適当なのを聞いて求めています。しかし、大陸の本の値段の安さはおそろしいくらいですね。
 さて、クラスの方は先週からポイント1ということでLieaue (LU1) と Taiyuan (LU9) を習いました。でもって、皆まだ針の扱いがおぼつかないというのに、「じゃあ、互いにやってみましょうか?」でした。先生に言われる前から、自分で経絡図を見て体に針を刺しているカナダ人のクラスメート以外は、結局びびって先生に刺してもらう形になりました。この2年間に学ぶポイントは、せいぜい全体の半分くらいだということです。
 私自身、なにしろ全くのド素人なので、浅野先生の書かれていることそのものを理解するのに、まだまだ程遠いです。先週から難経脈訣を(台湾本)を眠り薬代わりに読んでいます。これを現代医学理論で理解しようと頑張っている現代の中国医学というのは、すごいのか?それとも結果よければ適当に当てはめているのか?とふっとそんなええ加減な(西洋科学では、立証できないとか、系統だっていないなどと東洋医学を馬鹿にしたりしていますが、そもそも世の中、人間が解明していることのほうが微少なのですから)ものなの、と不安にも似た印象を持ってしまうのですが、ま、ライフワークなのでいいか、と思っています。子供が三人いるので、数年は香港から動けそうにありませんが、そのうち動けそうになったら大陸で学びたいと思っています。そのためには北京語も、もう少しまともに使えるようになろうと思って、何年も無駄に過ぎています。
 それと中国医学理論は、西洋医学より人間が人間らしく、自然の摂理の中で生きていくことを教えるものだと思います。是非、今の日本や諸外国の子育てに悩めるお父さん、お母さんが少しでも知ってくれると、生活がもっと豊かになるのでは、と思いますね。
 「中国は社会主義国家なので、ストレスがないという意見は、同意できません。買い物をするにも店員の応対が悪く、気分次第でしか売ってくれないので、買うほうとしては非常にストレスを感じました。ほんとうに買い物はストレスでしたね。」
 中国に住んでいる人はストレスを感じないのでしょう。勿論、国外から突然そのシステムに参入するエイリアンの私らは、バイキンマンなるが如く排除されるので、ストレスを感じるのではないでしょうか?中国でも場所により随分と異なるようです。うちの上海人の先生は、香港に来てから、生活上、食生活上でも種々のストレスを感じているし、また上海では見なかった病気、習わなかった症状などが沢山あり、治療法も全然異なる、と言っています。
 人伝えによると香港では、中国で学んだらしい日本人針灸師が店を開いて、日本人相手に儲かっているようです。また中国医学を広州で習った女性の方が、中国医学治療院で働いているそうです。また数人の学生が、香港の大学で勉強されているようです。そうした方々が新しい中国医学の理念を日本に伝える日も、そう遠くはないのかもしれないですね。私の目標低く、残りの生涯で10人くらい病気が治せればいいかと思っています(10人とは老化している私の身内です)。自分で自分の健康管理ができれば尚良しなのですが…。

 北京と上海では違うと思いますし、また鍼灸科が誕生した1984年以前と1985年以降は違います。ですから中医学院で1984年以前に勉強したか、それとも1985年以降に勉強したかで、中医学院の授業内容も相当変わった印象を受けると思います。
 私も香港の本は持っています。日本で売っていましたから。大陸のと同じでも、香港のは製本がよいので重宝しました。
 私も本屋さんで、英語の鍼灸本を何冊か見ましたが、内容のある本はありませんでした。恐らく中国人は、本当のところは外人に教えたくないからでしょう。自分たちは、平気で特許や著作権を侵犯していますのにね。日本人は、幸いにして漢字が読めるので、中文で書かれた本を読んだ方がよろしいかと思います。
 私がホームページで痺証の治療を中心に述べているのは、日本の鍼灸では痺証の患者が最も多い。しかし患者さんの声として、痺証を治せる鍼灸師は少ない。だから小針刀の理論を取り入れた北京堂式治療を教えましょうということです。小針刀理論は、中医学をやったことのない人にも理解しやすい治療法ですから。
 でも、鍼灸には色々あるので、素霊や難、甲乙や大成も重要でしょうし、いまの大陸の教科書を勉強しておくことも大切でしょうし、現代の最先端鍼灸治療の本を学ぶことも大切でしょうし、現代医学の解剖や免疫、脳や心臓などを勉強しておくことも重要と思います。
 私も学生時代は、緑色した上海中医科学技術出版社の高等医葯院校試用教材シリーズを使って勉強したので、それを参考書にして勉強されたらよろしいかと思います。それというのは、本科で留学した学生は、その本を教科書として使用しますし、当然にして中国人学生の教科書でもあるので、互いに話が通じるのです。同じ本を教材にして習っていれば、共通の土俵に上がって話ができますが、英語の本など使っていたら話が噛み合わなくなります。例えば、こちらが教科書に記載された常識として話を進めていても、相手が「そんなことは教科書に載ってない。デタラメだ」ということになってしまいます。そんなことを実際に経験しました。すると「そんなことも知らないようでは、ちょっと話できないなぁ」と引いてしまいます。それで留学した人は、日本で中医学を勉強した人とディスカッションをしなくなるのです。それを避けるためには、みんなが共通に勉強している上海中医科学技術出版社の高等医葯院校試用教材シリーズを推薦します。
 それらの教科書を読み終われば、私の話も十分に理解して貰えると思います。
 一つには、英語の教科書は内容が薄いのです。その理由は、文の長さです。恐らく中文は、世界で最も短い文章と思います。例えばハガキにも、便箋分の内容が書けてしまいます。これを日本語にすれば長くなります。ましてや英語にすれば、3倍ぐらいの長さになってしまいます。そのため日本語に翻訳された鍼灸書も、内容の何割かを削減したものがほとんどです。完訳や全訳などは、私の訳したものぐらいでしょう。そのため教科書の内容が省かれるのです。ようするにプラトーンの映画版とビデオ版のようなものです。映画版では十人以上いたチームが、一人ずつ減ってゆきますが、ビデオ版では2回の戦闘しかしてないのに突然3人になります。だからスジは判るものの、なにか物足りない気がします。喩えれば、省かれた教科書というのは、そうしたものです。映画では、どの戦闘で誰が死んだか判るのに、ビデオでは経過が判らない。
 北京語は、マスターしても意味がありません。本が読める程度で、良いと思います。本が読めないと、卒業してからの臨床が進歩しません。
 私見では、中医学は立証されていなくとも、系統だってはいるように思いますが、欲目でしょうか? また立証の面でも、治験薬と同じ方法を使って、二重盲検により治療し、治療結果を血液検査などによって立証しようとしています。
現代医学でも、その薬が、どうして効くかについても証明されていないと思います。効果のある化学基が含まれた化学物質を作って、その薬が実際に効果があるかどうかは動物実験、そして人体実験で立証されるので、では他の組合せでは、なぜダメなのか、どうしてその組合せでなければならないのか、説明できないと思います。こうじゃないかとは言えますが。
 もともと人の身体はブラックボックスで、人間の作ったものではないから、そうした試行錯誤でしか立証できないと思います。最初から化学構造を決めて、絶対に毒性ないはずだから治験もせずに販売薬になることなど、ありえないでしょう。でも機械なら、最初から設計図を決めて販売しても問題がないと思います。
 私のいた中国でも、一般人は中医など信用していませんでした。ハルピン往きのコンパートメントで、乗り合わせた中国人に「あんたは何を勉強しているのだ」と尋ねられ、鍼灸を勉強していると答えると、「あんなインチキなもの、どうして勉強するんだ。自分は歯が痛くなって、鍼に行ったことがある。鍼して2~3時間は良かったが、また痛み出して、結局歯医者にいった。あんなインチキなものはない」と言われました。それに漢方薬よりも抗生物質というような感じですね。特に鶏のついた生理痛の薬など、全く効かないからバッファリンやイブの方がいいといってました。あらかたは、それぐらいの実力です。しかし効果を上げる鍼灸師もいるわけで、そうした人は新聞に載ったりして、全国から難病患者が来ているようでした。つまり鍼は、人による個人技量が違うので、効果も大きく変わり、それが進歩するネックになっていると思います。
 私なら、ひどい虫歯だったら、歯医者に行けと言って治療しません。『鍼灸大成』にも「治せない病気に手を出すな」と書いてあります。まず、鍼灸の信用が落ちます。次に、患者が死ねば、家族から恨まれます。
 私は、中国医学は「結果よければ適当に当てはめている」と思っています。でも、だから頭鍼とか小針刀とかが誕生したのですから、それでいいのではないでしょうか? 治れば勝ちみたいなとこがありますから。
 それから上海と香港は違うというのは判ります。たとえば、ある患者が、とても奇妙な病気に罹り、どんな医師が診察しても、何の病気かサッパリ判らなかった。ところが、ある老先生は、「これは性病である」と言ったのでした。実は、文化大革命の時代に、性病は撲滅されて、中国にはない病気だと思われていた。そのうち雲南省から麻薬とともに入ってきた。しかし教科書から削除された性病を誰も知らない。ただ高齢の医師一人だけが知っていて、中国にも1980年代に性病が入ってきたことを報告したというのです。
 その先生が上海にいたころは、ポルノ映画などアングラで、オープンな香港と違って、性病などなかったはずです。またマラリアなども、上海では見ないでしょう。私が北京を選んだのは、上海がかなり南にあり、沖縄近くにあったので、島根とは気候が違うので、病気や治療法が違っているのだろうなぁという思いがあったからです。北京は秋田ぐらいですから、日本に近いのではないかと思いました。
 中医には三因制宜があり、人により、季節により、地域によって処方を変えます。例えば暑い地域では寒涼薬を少なめて、寒い地方では麻黄や生姜を増やすとか。だから上海と香港では、病気や治療法が違って当たり前でしょう。北京では、ツボの位置とか呼び名(漢字の読み方)まで、標準と違っていました。だから辨証配穴といっても、北京と上海、広州では、全く同じではありませんでした。
 脳外科のナースであれば、脳梗塞の治療が向いているとは思いますが、香港は暑いから脳梗塞など少ないでしょうね。
 内容が濃すぎるので、虚体質なのに昨日は焼肉を食べ、脾臓強化の漢方薬を煎じて飲んでしまった私は、鼻血が出そうになるのを抑えて読んでしまいました。
 (失礼)当クラスでも教科書は上海中医科学技術出版社の高等医葯院校試用教材シリーズを使っています。おっしゃる通り、あの一冊が英語版になったようなものを主テキストとして使っているのですが、まるで昔の平凡大百科辞典のようなサイズです。中国語で数行で解説が済むのが1ページ以上費やされています。私は唯一、日系学生なので、1人で日本式、韓国式(知りませんが)の針灸代表となっています。先生はいつも中国針灸は日本式、韓国式とは違うのですよ。と強調されてクラスメートからは好奇のまなざしで見られます。中でも良導絡という「おだひろひさ」という方が出されたAutonomic Nervous System Therapy というのは、その機械を使うと、10年経験をもっている針灸師なみに脈を診ることができると先生が言っていました。また、一般にはTUBUNeedleといって日本で発明された筒の中にシリコン針が入っていて、針挿入が誰にでも簡単にできるのが香港では流行っているようです。ですが、うちの先生は「やはり針は自分の指でちゃんと刺せるように練習しないと得気を感じたり、操作が上手になりませんよ。」とトイレットペーパーの塊で練習をしています。実は関心を持っているのは老人医療とストレス治療です。前者は末期的な疼痛に対し、針灸ができることはないのか。あるいは漢方医学でゆるやかな痛みに替えれないか。後者は特に、これから増加してくる若年性のストレス、思春期以前の子供たちが現代社会のひずみをもろに受けて精神的な異常をきたしていますね、それを薬剤で治療するのでなく、心のバランスを戻すきっかけ作りをしたいなと思っています。そのためには中国医学で一番大切な食をもっと学ぶ必要があるとも思っています。

 そうですか。教科書の英語版がありましたか。我々の時代にあれば、みんなの授業が楽だったでしょうに。でも医古文や鍼灸医籍選、鍼灸医経選の教科書はどうするのでしょうね?あの授業は、中国の清代以前の鍼灸書を読むために必要なので、どうやって英語で授業をするか不思議ですね。
 日本式の鍼灸といっても、日本には様々な流派があるので、一概には言えませんが、良導絡は中谷義雄が発表したことになっていますので、その改良版じゃないでしょうか。またシリコンを塗った使い捨て針は、シリコンが体内に残るので、問題があるのではないかということになっています。鍼は、痛みなどでは漢方薬より効果があります。だからストレスの治療にも向いていると思います。
 いずれにせよ教科書の授業は、鍼灸を本格的に勉強するためのキッカケにしか過ぎないと思います。教科書で全面的に勉強していれば、教科書に載っていた鍼灸の古典書を読んでみようという気になるし、また理解もできますし、現代鍼灸の本も理解できます。もし教科書をやってなかったら、何が書いてあるか意味不明で、読書する気にもならないでしょう。
 島大の留学生に、ちょっと本を見せましたが、音としては理解できますが、内容は全く理解できなかったようです。みんな留学して教科書を勉強したあと、鍼灸医籍選にあった素問や霊枢、難経、甲乙経、資生経、大成などを読んだり、現代鍼灸の臨床書を読んだりするのです。それには漢字の知識が必要だったり、免疫など生化学や解剖の知識が必要だったりします。そうしたものを中国語で理解しているため、日本語の医学専門書のほうが、むしろ読めなかったりするのですが。
 むかし中国人に「病気を治すのに中医も西医もない」と言われて、現代医学の本も買っていますが、日本の本は高いので、どうしても中国語で現代医学を勉強することになってしまいます。しかし中国もX刀とか、最新の医学も解説されていますよ。
 中西合作というより、病気を相手にするには、鍼灸だとか漢方だとか、現代医学だとかを超えて、総合的な知識を身につけるべきだと思います。でも、それを読みこなすには、教科書で基本的な知識を身につけておかねば困難だと思います。
 実際に中医学院でも、四年生ぐらいなら話し相手になりましたが、一年生や二年生にと話しても、そんなことは習ってないとか、鍼灸問答しても意味がありませんでした。
 中国は日本以上に様々な鍼があるので、やはり基本を勉強しておかないと先に進めないと思います。実際に、いろいろと話ができるようになるのは、学校を出られてからだと思います。たとえば私は、素問や霊枢を読み、難経を読んで、さらに甲乙経を読み、鍼灸大成も読んでいます。北京の老中医は、たいてい「私は素霊や難経、甲乙や大成を暗記している」と自慢しますが、かれらがそうした本を読んでいるから、我々も同じ本を読んでいなければ、彼らの言うことも理解できないわけです。
 中国鍼灸の臨床家なら、暗記しなくても、やはり読んでおくべき本と思います。だから教科書にも記載されているのでしょう。あなたの上海先生にも「素問や霊枢、難経、甲乙、大成」を読んだことがありますか?と尋ねてみてください。恐らく読んでいると思います。そうした書籍を読んでいるのと、知らないのとでは違います。また現代鍼灸の書籍でも、読んでいなければ「あれは走りますねぇ」ということになり、「ありゃ走らんよ君ぃ」となってしまいます。
 学校に行っている間は、言葉を習っているようなもので、準備期間と思ってください。それから上海教授が読んできたような書物を読めばよいと思います。どのみち教科書では、治療の役には立ちませんから。
 
こんにちは。うちの教授陣は中国人なので、勿論、浅野先生のおっしゃる本を読んで勉強されたということです。むしろ、私たちのクラスでは外人が多数なので(漢字がわからない)、経絡の穴も本来の名称でなく、音読みをアルファベット表示し、LU1などと表示しています。先生はオリジナルで覚えているので、時々混乱しそうになるようですが。
 難経脈絡に関しては、私たちには難しすぎるので待ちなさいと言ってましたけど。確かに、教科書に載っていることは最低限で臨床になると大きな飛躍があるでしょうね。それはかって、自分がナース学生だった時代に習ったことが、病院に就職して1日で全てを悟る(というのは1日分くらいの内容しか習得していなかったということ)と感じた若い頃を思い出します。もうすごく随分前なのですけどね。(私の同級生は、今では皆婦長クラスですので)幸い、クラスは実際の西洋臨床医を対象としているので、その辺は進みが速いようです。ほとんどのクラスメートは、この2年間が終了したら、実際に自分のクリニックで導入したりするつもりのようです。私は今は全然違う職種にいるのと、日本のナース資格が、ここでは通用しないので、ボランティアとして受け入れてもらえれば、そこで修業をつむか、その時にもう少し身軽になっていれば更に先のコースに進めるように準備していきたいと思っています。老後の楽しみというやつです。浅野先生の膨大なホームページを読んでいると(膨大すぎてまだ全貌を読みきれていません)日本国内における中国医学の存在は薄いのかなあと。東洋医学といいますが、既に日本に移ってきた以降の東洋思想ベースのものが主流なのかな、と感覚的に思っています。香港にいると、日本人が中国人に持っている理解が非常に間違っていることを感じます。この情報世界でさえです。そして中国大陸なんて、香港人でさえ不可解だと思っています。数千年前に芽吹いた中国思想が、そう簡単に日本で解釈されているとは思えないのですが。ま、私がいえる身分ではないのですけど。去年の夏に北京を旅行したのですが、現地ツアーのオプションで連れていかれたとある東洋医学センターでは、私が日本人(ではないですけど)とわかると、あれもこれもと高い漢方薬を売りつけようとしてきました。日本語が話せる教授が出てきて、まず壇上でスピーチをし、そのあと各臨床の先生が登場して、ツアー客で診てもらいたい人があれば、この機会にどうぞ、というわけです。すごい商魂と思いました。そして、ここでも日本人の漢方薬好きが有名なのにはびっくりしました。という話を、北京語が流暢な日本人に話したら、「ビジネスチャンスやな」ということになりましたけど。日本のリッチな老人をツアーで来て頂いて、漢方医に診てもらうということだそうです。確かにこれからの老人医療はもっとフレキシブルな展開を求められてくるでしょうね。というのも私たち自身が老人になってくるのですから。浅野先生の暖かいお言葉本当にありがとうございます。北京留学日記を読んだときは「針灸やめようかな。」と躊躇しましたが、「患者さんへ」の説明サイトを読んだときはちょっと安心しました。でも同業者へのサイト(弟子用?)に入ったときは偉い混乱しましたが。いずれにしろ、もう少し専門的なお話、あるいは最近の香港から見た中国針灸事情などがお伝えできるようになればと思っています。


はじめまして。あさきともうします、突然ぶしつけな質問でごめんなさい。知り合いが事故で追突され、整形外科にむちうちで入院した際、その整形外科さんは鍼治療もしていらして「頚椎部?」に鍼をしていただきました。しかしその直後、全身に、頭の先から手、背中、足の先まで痺れが走り、その痺れが後になっても消えません。頭痛もひどいのです。なぜこういうことがおこったのでしょうか?
 非常に言いにくいことですが、はっきり言っちゃうわよ。
 一般に、首へ刺鍼すれば、場所にもよりますが、手とか顔、頭や喉などに痺れや怠さが走り、足先に走ることはありません。足先に走るとすれば、腰や尻にも刺鍼して、身体がビクッと動いたために痺れが走る程度です。そうしたこともないのに、もし足先まで衝撃が走ったとすれば、それは脊髄へ鍼を入れたのですね。
 そもそも背骨の中央は、奥に脊髄があり、非常に危険な場所なのです。そのため門などは「左の耳へ向けて刺せ。真っ直ぐ刺すと危険だ」と書かれた古典もあります。文革時代の中国では、よくこうした事故が起きたようです。
 脊髄の刺し方は、ゆっくりと入れてゆき、脊髄硬膜へ鍼尖が当たったときに、足先にまで感電したような衝撃が走ると、書物に記載されています。その衝撃を観察し、それがあれば直ちに鍼を後退させろとあります。もし後退させないで、そのまま鍼を前進させれば、鍼尖は脊髄硬膜を破って、脊髄の動脈を傷つけ、脊髄が出血によって圧迫され、半身不随となり、身体が麻痺すると書かれています。
 そうした脊髄を刺激する方法は、危険なので滅多にすることはなく、現在の中国でも側索硬化症などの難病か、統合失調症(精神分裂症)ぐらいでしか使われません。私も脊髄刺激の刺鍼したことがありますが、それを知っているので、非常に慎重にやります。
 質問の内容は、こうした事故と症状が非常に似通っているので、頚椎に刺鍼したときに、頚髄を刺して出血させたのではないかと思います。ただ、治療の様子がビデオとかに保存されていれば判りますが、状況が確認できないので、そうしたことじゃないかと思います。特に頚椎は、背骨と違って頚髄へ入りやすいので、中央は注意しなければなりません。胸椎ならびに頚椎の下部では、棘突起に守られているので、特殊な刺鍼角度でなければ脊髄を刺激できません。私は怖いので、頚椎の部位で脊髄刺激をしたことはありませんが、中国で王学成という爺さんがやっているのを間近で見たことがあります。ほんの30㎝ぐらいの距離で、何度か見ました。そのあと王爺さんが脳卒中のため半身不随となり、見る機会がなくなりましたが、寸三ぐらいの細い鍼で、非常に慎重に延髄を刺激していました。
 私も慎重にやっているので、その手の事故を起こしたことはありませんが、書籍によると、その出血は時間が経てば消えて、正常になると記載されています。だから自然に治って行くようです。頭痛は、交通事故の衝撃で起きたもので、刺鍼とは関係ないと思います。ただ優秀な鍼師ならば、頭痛も治すでしょうし、脊髄を傷つけたりもしないでしょうけれど。
 もともと背骨の中央は、靱帯だけあって、神経を圧迫するような筋肉もなく、ムチウチ症ごときで危険を犯すような場所ではないのです。頭痛が治らないことからしても、腕の悪い鍼灸師だったんでしょうね。ちょっと、どういったらよいか判りませんが、中国の書物によると、そのうちに脊髄の出血が脳出血のように吸収され、正常な身体になって永久的な後遺症とはならないと記載されているのが慰めです。
 こうしたことを載せると、同業者から「鍼に恐怖感を抱かせるような記載を、一般人が見る場所に書くな!」と批判が来そうですが、私の田舎でも、患者さんの話ですが、某鍼灸院で、七歳ぐらいの子供の背骨に、鍼灸師さんが鍼を刺し、しばらくの期間だけ半身不随になったそうです。大人なら硬膜に守られているので、簡単には入らないでしょうが、子供だから硬膜も柔らかく、簡単に入ったのでしょう。
 本来は、この質問は、患者さんが怖がるため掲載しない方がよいのでしょうが、こうした事実を知らない鍼灸学校の学生も多いと思います。現に背骨上に経穴もありますから。しかし、あれは原則として灸のための経穴であり、刺鍼するときは脊髄を刺激する目的で行うので、硬膜を隔てて事故と紙一重であり、よほどの必要性があったときだけ慎重に、ユックリと刺入し、足に衝撃が走ったら直ちに抜く。こうして事故を起こさないように喚起することのほうが、事故を起こしてから沈黙しているよりマシと思います。問題が起きてからだと、結局は事故を起こした鍼灸師も危険を認識しないし、一般人も、どうしてそうなったかわからないから、「とにかく鍼は怖いものだ」となるでしょう。とりあえずムチウチ症の鍼は、そこでの治療は拒否して、もうちょっとマトモな鍼灸院で治療を受けられた方がよいと思います。

 私は、大阪府在住の25歳で大学を卒業するまで陸上競技の長距離をやっていました。卒業間近(2年前の2月)に右膝を痛め、以後、違和感・不快感に悩まされています。
 いくつかの接骨院、鍼灸院に通いましたが、治らないまま月日だけが過ぎてしまいました。そんな折に北京堂鍼灸のホームページを拝見し、「膝痛」の項目を熟読させて頂きました。そして、自分が抱えている症状と非常に近く、この考え方に則った治療を受けたいと思ってメールさせて頂いた次第です。
 症状を述べさせて頂きます。右膝裏側の内側部分が詰まるような感じがし、長時間座った後に立ち上がろうとする時や早いペースで走ろうとすると痛みます(自分では、縫工筋や半腱様筋の付着部が痛むガ足炎ではないかと思っているのですが、そのような診断がなされたことはありません)。
 膝裏内側の細い腱を触るとゴリゴリして痛む箇所があます。ホームページの表現を借りると「マッチの頭ぐらいのシコリ」があって、ここに鍼を指して欲しいと思っていました(実際、この疼痛部位に鍼を刺し、電気を流す治療を受けていたのですが、大阪への引越しがあってその治療院には通えなくなってしまいました)。そして、膝の痛みを無意識にかばっているのか、右足の大腿部外側の筋肉がすっかり落ちてしまいました。効き足は右であるにもかかわらず、今や左足よりも細いです。走っても、左は腿の前側全体が張るのに、右はそれ程筋肉痛を感じません。全く使えていない感じです。臀部の筋肉も左の方がついています。今は軽いjog程度なら問題なくこなせますが、このように筋肉の付き方が昔と異なります。
 メールだけでは十分にお伝えできていないかもしれませんが、このような症状から考えられる原因は何があるのでしょうか?また、その治療を大阪(あるいは関西圏)で受けられるような治療院を御紹介頂くことは可能でしょうか?リンク集に神戸の治療院がありましたが、そこで私の膝を見ていただく場合、ホームページに記載されているような考え方(根本原因は、筋肉の痙攣であり、そこに鍼をする)で治療して頂けるのでしょうか?

 「右膝裏側の内側部分が詰まるような感じがし、長時間座った後に立ち上がろうとする時や早いペースで走ろうとすると痛みます」という症状からすると、鵞足炎ではなく、腓腹筋の内側頭が縮んでいる可能性が高いです。ただ疼痛部位を一カ所刺鍼しても効果はありません。確かにそこは筋肉が凝り固まっているのですが、その周囲から血管が圧迫されているので、硬い部分だけに刺鍼しても血液が流れません。鵞足部分が問題で、縫工筋や半腱様筋が収縮していた場合、そうした筋肉は座っていると伸ばされますので、むしろ急に立ち上がったときに、収縮する方向への運動ですから、逆に楽になるはずです。
 正直言うと、電気を流す治療は感心しません。なぜかというと電気を流すのは、自分で筋肉を収縮させているのとあまり変わりない行為だからです。神経は自分でパルス電気を出して筋肉を収縮させているので、自分で動かせばパルス治療と同じことになります。でも神経のパルスは、機械のパルスで代用されますが、筋肉の収縮は筋肉自体がエネルギーを使ってやっているので、かえって疲労が嵩みます。
 このように収縮した筋肉では、筋肉内部を通っている血管が圧迫されるので、筋肉が栄養されないため萎縮が進み、筋肉が落ちることになります。
 臀部の筋肉が落ちているということですが、おそらく小臀筋と中臀筋じゃないかと思います。フクラハギだけの筋肉が落ちているとしたら、腓腹筋の内側頭だけの問題でしょうが、臀部の筋肉も落ちているということですから、大腿外側皮神経炎も疑われます。
 こうした神経は、腰の2~3とか3~4あたりから出て、腰方形筋の中を通っていることも多いので、例えば腰がひねりにくいとか、ラジオ体操の横曲げがしにくいなどの症状を伴ったりします。
 この大腿外側皮神経は、腰の2~3とか3~4あたりから出て、腰方形筋の中を通り、中臀筋と小臀筋を通って、大腿外側を通り、膝のチョット下まで通じています。
 治療法としては、腰もやられていれば、右半身を上にして、横から大腰筋の上部、上から下へ腰方形筋、あと中臀筋と小臀筋へ刺鍼して、腓腹筋の内側頭へ刺鍼するという治療になると思います。
 実際に大腰筋が硬くなっているかどうかは、動きを見てみたり、刺鍼しないと判りません。刺鍼してズシンと響けば悪くなっています。神経の出口として、腰では少し上ですね。腎臓があるので、4番の2.5寸か5番の三寸が適当かと思います。
 腰方形筋は、横から脇腹を触れてみれば硬くなっているのが判りますから、触診でも悪いかどうか判ります。
 小臀筋と中臀筋は、萎縮しているのだから、必ず刺鍼しなければなりません。
 治療の方法は、「マッチの頭ぐらいのシコリ」へも刺鍼しますが、そこは痛みの出ている部分であって、筋肉を緩める観点からは、筋肉のもっとも太くなっている部分、筋腹ですね、つまり痛みの出ている部位から10cmぐらい下など、筋肉のかなり太くなっている部分へ刺鍼するのが北京堂流です。
 尻とフクラハギには太い中国鍼の三寸ぐらいを使って40分ぐらい留鍼します。
 当然にして鍼を入れて硬くなった筋肉へ当たったとき、刺鍼しているほうの手にはゴムの固まりに当たったような粘っこい手応えがあり、刺鍼されている患者側には、ズシンと重く締め付けられるような感覚があります。そのような感覚がなければ、刺鍼側には豆腐に刺しているような感覚しかなく、また患者側にも表面のチクッとした痛み以外は何も感じません。それでポイントに当たっているかどうかを判断するわけです。
 右足が疲れないのは、おそらく現在はビッコのような走り方になっていて、右足をほとんど使ってないからでしょう。
 一般的に治療は、ぎっくり腰や捻挫のように一発で治るというわけにゆきません。まず3回、重症ならば6回ぐらい治療しないと完治しないと思います。
 たぶん私の弟子は、鍼をケチるたがるだろうし、重症でも細い鍼を使いたがると思うので、尻から下は三寸の中国鍼を最低六本は使うように要求した方がよいと思います。もしケチるようなら師匠に中国鍼をもらえと言ってもらえばいいです。
 まあ、私の弟子は、私の鍼灸所で、この方法が筋肉萎縮による疾患には驚異的な効果があることを半年も見ていますので、ホームページに記載されているような考え方で治療すると思いますよ。今も師匠を変えた形跡がないので、同じと思います。ただ臆病な男なので、あまり太い鍼を使いたがらない欠点があります。萎縮しているような筋肉では、10番ぐらいの鍼でないと効きませんのにね。
 北京堂の鍼は、数が多いですよ。私なら萎縮した内側頭には六本、尻に六本ほど入れますね。ヘタな鉄砲、数打ちゃ当たるですから。
 でも、うちの鍼はスポーツ関係に強いので、特に引退して休める環境の人なら、たぶん三回ぐらいで治るんじゃあないかな?
 一応、二天堂へゆくときは、このメールを持っていった方がよいと思います。たぶん私が3~6回で治るといったら、じぶんはそれ以上の早さで治そうと思うでしょうから、手抜きしないと思いますよ。
 残念ながら私の鍼灸は、肩や背中、首部分で危険な面がありますので、一度に大勢教えることが出来ず、半年に一人ぐらいしか養成できないのが欠点です。

質問:現在妊娠5ヶ月です。2年前に一人目を出産した後、中国整体で坐骨神経痛といわれました。特に治療をせずに今に至るのですが、こ こ数日で痛くて寝返りもうてなく、歩くのが困難な時もあります。他院では、妊娠中につき坐骨神経痛は禁忌症なのでお受けできませんと言われました。産婦人科の先生は妊婦に使用してはいけないツボもあるので、それ以外なら鍼も灸もして良いとの事でした。やはりこちらでも、妊娠中という事で何もする事は出来ないというお考えでしょうか?本当に痛みが辛いので少しでもラクになりたく、お答え頂ければ幸いです。宜しくお願い致します。

 答え:まず妊娠中の坐骨神経痛は、一般の坐骨神経痛とは異なることを理解してください。一般的に坐骨神経痛は、坐骨神経が筋肉なり骨な り腫瘍なり椎間板なりで圧迫されて発生しますが、妊娠中の坐骨神経痛は、坐骨神経を圧迫している原因が胎児なので、坐骨神経痛をなくすには流産させるしかないことになります。特に腹や腰は、胎児がいる場所なので、そこへ深く刺鍼すれば胎児を傷つけて流産するでしょう。だからまともな鍼灸師ならば、坐骨神経痛の鍼などしません。
 その原因は妊娠して胎児が坐骨神経を圧迫していることによるので、出産するか流産すれば自然に痛みが消えます。
 特に妊娠して3カ月目とかは不安定期なので、手足を強く刺激しただけでも流産する恐れがあります。
 だから使えるのは温灸ていどです。中国温灸とか箱灸とかいいますが、葉巻のようなモグサを使って、お尻の背骨を温めます。2~3cmほど皮膚から離して温めます。するとホカホカ暖かい感じがします。流産させる方法ではないので、根本的に坐骨神経痛を止めることはできませんが、こうして温めれば少しは痛みが和らぎます。
 痛み止めなどを使ってはなりません。赤ちゃんの神経形成に悪影響を及ぼす可能性があります。また下剤なども流産する原因になったりします。また千年灸も危ないでしょう。 ということで北京堂なら、温灸器を買って貰って、自宅で尻中央で肛門と背骨の間あたりを温めて貰うぐらいしか手がありません。出産するまでの辛抱ではありませんか。

質問:北京堂のHP『海外の鍼灸事情』の『鍼灸治療に適した病態』に「抑うつ」がありますが、鍼灸で完全に回復するものなのでしょうか? ま た、どのような治療がされるものなのでしょうか?
答え:困った質問です。というのは英語のページは元嫁が書いたもので、私が書いたものではないから、何が書かれているのか知らないのです。
 北京医科大学と中国協和医科大学が共同で出した『電鍼治療常見精神疾病』(北京医科大学・中国協和医科大学聯合出版社1993年144頁)には抑欝病治療が記載されており、G6805パルス治療器を使い、2Hz、6Vで治療すると書かれています。方法は、百会と印堂を取り、互いに鍼尖を向かい合わせにして刺鍼しています。銀鍼を使っているのが特徴です。
 毎日1回、一回の治療時間が45分、週六で治療して、日曜日が休み。効果はアミトリプチリンと同程度とのことでした。
 133人を治療したところ、治癒と著効を併せて75%程度、治癒の人数が判りません。
 中国では統合失調症(精神分裂病)の臨床報告が多いですね。

 ほかの方法としては、辨証法を使った治療があります。ウツ病は、中医の癲証に相当しますので、痰を壊すために化痰のツボである豊隆や脾経を取って刺鍼する方法です。

 他には精神的な疾患なので、肝欝だから疏肝の行間、精神の病気だから内関や神門を使うといった治療法もあります。

 最初に紹介した治療は、うつ病は脳内物質の不足だから頭皮を刺激しようという治療です。寒痰を消すというのは、昔から漢方薬を併用した治療法です。最後のは、気分が憂鬱な場合に失調する臓腑に基づく鍼灸的な治療法です。
 中国でされるのは、この三つが一般的な治療です。

 こうみると判りますが、鍼灸は実にいい加減な治療といえます。なぜなら治療者によって治療方法が変わるからです。
 ①脳内物質の異常だと見る人は、頭を中心に鍼をする。
 ②痰が心を覆っているのだと考える人は、化痰の治療をする。
 ③肝気が塞がれていると考える人は、疏肝の治療をする。

 こうしたものです。それぞれに言い分があって、それぞれ勝手な治療をします。こうした治療は、それぞれ認められているのです。しいて言えば、一番最初の百会と印堂へ刺鍼して通電する方法は、昔にはなかった方法なので、百人単位の治療テストをして、効果を統計処理しなければなりませんでした。

 で、北京堂の治療も、漢方薬や鍼灸の治療とは違い、別の治療をします。
 それは背中や後頚部が凝っていると、どうしても不快な気分になり、うつ状態になるので、まず背中や頚の凝りをほぐそうというものです。
 治療していると、最初は患者さんは誰もが不機嫌なのですが、痛みがなくなってくると朗らかになってゆくからです。そして精神的に問題を抱えた患者さんは、ほとんど脊柱起立筋が凝り固まっています。それをほぐして背中の重みを解消するだけで、患者さんは相当にスッキリした気分になり、身体も軽くなるので心も軽い。行動主義の森田療法のような発想ですが、まず身体を軽くすることで、精神的にも軽くなるのではないかという発想です。
 身体が重いと心も重い、身体が軽いとも心も軽い。これぞ中国医学の神形一体の発想です。それで3回ぐらい治療して、うまく行かなかったら、臨床効果のはっきりしている百会から印堂の通電を試みようと思います。
 このように鍼治療は、漢方薬も同じでしょうが、患者により、治療者により違います。現代中国は辨証治療だから同じじゃないかと思われるでしょうが、同じ治療をしている場合もあれば、人が違えば治療も違ったりしています。
 化痰治療も疏肝理気の治療も廃れないので、刺鍼じたいに精神病を治療する効果があるのかもしれませんね。


質問:耳硬化症になって耳が聞こえなくなりましたが、鍼で治るものでしょうか
答:耳硬化症とは、あまり聞いたことのない病気ですね。鍼治療は、やっても害にならないので、プラスにはなってもマイナスにはなりません。
 聞き慣れない病名なので、医学大辞事典(医歯薬出版株式会社)で調べてみました。「血管に富んだ空胞性海綿状骨増殖が迷路骨包に生じる疾患で、病変部位は主に卵円窓前部であり、進行するとアブミ骨が固着する。白色人種、女性に多く、同一家系に多発する。発症は思春期前後が多い。主に両側性で、難聴、耳鳴りが徐々に進行する。鼓膜所見は正常のことが多いが、Schwartz徴候の現れることがある。初期では伝音難聴を示し、Carhartの陥凹を認めることがある。治療として、アブミ骨摘出術、あるいはアブミ骨底開窓術が行われる」とあります。「鍼では増殖した骨を消すことはできないが、症状を改善することはできる」というのが中国の見解ですが、これは主に頚椎症に対してのことです。しかし増殖した骨に関しては、鍼で消えないと考えられます。自然消滅したのでしょう。
 一般に耳が聞こえなくなった場合、中国医学では実と虚に分けて治療します。現在で言えば、急性と慢性に分けて治療するといったところでしょうか。
 難聴の治療も、耳鳴りと同じように、後頚部で耳の付近へ刺鍼し、その治療も肩凝りの治療と大差ないものです。いずれにしても鍼は、耳の深部へ直接刺鍼できないため、翳風など耳周辺の穴位へ刺鍼して、首の血液循環を改善して、耳深部への血行や脳への血行を改善することで、間接的に状態を改善しようというものです。だからビタミン剤のようなもので、患部に直接刺鍼して何かするのではなく、間接的に治療するものなのですが、それでも速効性があります。効果を得るためには、翳風などへ刺入したとき、耳の中にズシンと響くような感じが発生させなければなりません。これを得気と呼ぶのですが、そうした感覚のないときは、耳と関係のない部分に当たっているので、治療効果がありません。一般に難聴の効果は早く、一回の治療で聞こえるようになることが多いのです。そして3回も治療すれば、完全に元どおりに戻ります。
 1月9日なら急性で、時間も経過しておらず、発病してから3年以内ですから、まず3回ぐらいで治るのではないかと思います。今まで難聴を治療してきましたが、鼓膜がなくなっているとか、5年以上経過しているとか、特殊な事情がなければ、3年以内の人ならば、ほとんど完治しています。なかには好転したけれど、不幸があって精神的なためなのか、それ以上改善しなかったこともありますが。
 「鍼で進行を抑える」と言われますが、その場合は改善していないので、私は「失敗」と呼びます。その理由は、好転は50%とか20%ぐらいずつ改善するので明確ですが、進行を抑えるというのは、少なくとも好転していないわけなので「無効」と呼ばれています。無効は失敗なのではないのでしょうか? 癌のように進行するのが前提の病気ならば「進行を抑える」も意味があるかもしれませんが、一般には「改善して治る」か「好転や悪化の速度が遅くて、進行が止まったように見える」か「悪化する」の3つしかありません。しかし考えてみると、進行や悪化の速度が遅いだけなので、やはり悪化か好転の2つしかないことになります。3回やって効果がなければ、やっても改善しないと思います。ただ害にはならないし、治る可能性のほうが遥かに高いので、やってみたらいかがでしょう。
 ただし鍼灸というのは薬などと違い、完全に個人芸なので、鍼灸師によって技術レベルが異なるため、ある人が治療しても全く効果がなかったが、別の人がやったら治ったなどということがあります。だから薬のように保険を利かせることが難しいのだと思います。

 中国では中医教育をやり、辨証治療するようになって「鍼灸師が一定水準の治療ができること」を目指しました。そして治療効果でも統計処理をして、その有効性を客観的に判断するようにしています。それはそれで意味のあることと思いますが、現在の中国では、そうしたやり方に疑問が提出されるようになりました。というのも治療者によって、同じ病気で、同じ処方をしても、ある治療者は全員を完治させ、もう一人は全く効果がない事態が起こります。すると治癒率は50%なのですが、内訳は100%の治癒率か0%の治癒率かとなってしまいます。だから治癒率の高い治療者と治癒率の低い治療者を一緒にして統計処理したところで、実際の治癒率を反映しないことが問題になっているのです。

 治療者による治癒率の差が、どうして起きるかですが、例えば治療では穴位しか記載されていません。同じ疾患に対しても、3mm刺入して脂肪層へ刺入するのと、もう少し入れて血管に当てるのと、神経に当てるのと、筋肉へ刺入するのでは、同じ体表部位から刺入するにしても、内容が全く違っていると考えられるからです。それに同じ体表部位から刺入しても、刺入方向の違いによって刺さる筋肉や神経、血管も変わってきます。優れた鍼灸師は、体表を触るだけで、体内の問題点を探り当てることができ、そこへ刺入できるから治癒率がよい。しかし未熟ならば体表の穴位は知っているけれど、体内の問題点が判らないので治癒率が低いと考えられるのです。

 では治癒率の高い治療者を、どうやって発見するかですが、それは何千年も昔から語られているように「気が病巣部へ至って効果がある」です。つまり病巣から離れた部位に刺鍼しても、刺鍼した感覚が病巣部に当たっていると患者が感じるならば、その鍼灸師は治癒率が高いのです。また何の感覚もなければ、治癒率が低いのです。つまり耳の病巣は、頭蓋骨に囲まれた深部にあるため、そこへ鍼を到達させることはできませんが、耳の周囲へ刺鍼、指や手でもよいのですが、その刺鍼によって、耳の病巣部に当たっているような感覚があれば、一般的に効果があるのです。耳に感覚があれば、少なくとも耳の病巣部に神経が感じるような何らかの変化が生じていると考えられるからです。しかし無感覚ならば、それが変化を起こしている証明ができません。

 鍼治療とは、そうしたもので、ただ体表のツボの取り方が正確だからとか、辨証が上手だから、理論に詳しいからだけでは、治癒率を向上できないのです。

 昔から鍼治療は「気至病所」が重要とされてきました。しかし目に見えず、感じ取ることしかできないとされていました。さまざまな鍼手法は、すべて気を得るため編み出されたものです。しかしアメリカの科学調査団でも、気の存在は否定されました。私は、彼らが「気の正体」について知らないため、そうした結果になったと思います。そこで「鍼の気とは何か」についてホームページで解説していますが、それは「筋肉が神経を圧迫する感覚を気と呼んでいる」と結論付けました。古文にある様々な得気についての記述を分析すると、そうした結論になるのです。気が得られなければ、スカスカして空虚な感じがある。気が得られれば、魚が釣針を呑み込んだような引っ張られる感覚があり、鍼が渋るとしてあります。それは筋肉がシコリになって固くなった部分へ刺鍼した感覚であり、筋肉がシコリとなった部分は、筋肉が神経を圧迫し、血管も圧迫されていると考えられます。

 神経が圧迫されれば締めつけるような重さが感じられ、ひどく締めつけられれば痛みとなり、さらに圧迫されれば信号が遮断されて感覚がなくなります。血管が圧迫されれば血流が悪くなりますが、血によって体温は伝えられるので冷えますし、さらに圧迫されて血が流れなくなれば栄養されなくて細ります。それには神経や血管を圧迫している筋肉を緩めてやれば、神経の圧迫がなく、血液も流れる状態へと変化しますから、それに伴う症状が消えてゆきます。それで昔から「通じれば痛まず、通じなければ痛む」と言います。それは「血管が塞がって通じなければ痛みが起きる」という意味ですが、筋肉の締めつけがなくなれば血管の圧迫も消え、血液が循環します。通にも痛にも甬の文字が使われていますが、それは貫くという意味で、通じていれば問題ないが、貫きが病になると痛みます。

 でも「筋肉のシコリがないのに痛む」と言われる人があります。それは圧迫しているのが骨だったり、腫瘍だったりするためのこともありますが、多くの場合はシコリを感じられないからです。筋肉は太いのですが、筋肉全体がシコリになっていることは少なく、その筋肉の幾つかの筋線維だけがシコリになっていたり、長さも筋肉の長さより短かったりします。まあ大きければ親指以上、小さければ小豆粒ぐらいのシコリとなっています。シコリが表面にあればよいのですが、深部にあれば触っても発見しにくいし、深部の血管や神経を圧迫するので被害も大きくなります。これは連鎖反応で、神経の圧迫や血流の悪さが拡大してゆきます。そして悪化しなければ患者さんは来院されません。それでシコリのことを病巣部と呼んでいます。筋肉全体ではなく、筋肉の一部が凝り固まっているからです。そこへ刺入して当てますが、それを発見できるのが優れた鍼灸師になります。

 でも「鍼は刺入しないし、得気も起こさない」という鍼師もいます。確かに腕踝鍼などは平刺にて刺入し、得気も起こしません。しかし、そうした手法は最近になって登場したもので、伝統的な鍼灸かと問われると疑問符です。「だけども鍼は表面に入れるもので、奥には入れない」との反論もあるでしょう。では『霊枢・官鍼』の記載は何でしょうか?

 輸刺などは骨にまで至ると記載されています。中国医学で言う表とは、体表の皮膚のことではなく、内腑を除いたものを表と呼んでいます。例えば手足は表で、内腑は裏です。だから経穴は表にしかないのですが、それは内腑を除いたものです。『素問・刺禁論』に刺鍼してならないものが書かれていますが、それは内臓なのです。当然にして脊髄や脳は『素問・五蔵別論』に、奇恒の腑として記載されていますので、これに準じると考えられます。だから経穴は表にあって、鍼は表へ刺入するものですが、それは皮膚表面という意味ではなく内臓のことなのです。内臓には経別が通っており、それには経穴がありません。表を皮膚表面とするならば『霊枢・官鍼』と衝突してしまいます。古文と衝突するようでは、伝統医学とは呼べません。

 まあ少し長い返事になりましたが「鍼は治療者によって、治ったり治らなかったりする」ということ、そして「治す鍼は、病巣部の耳に何らかの感覚が発生する」こと、この2点が治療には重要です。特に耳は、直接刺入できないのですから、この感覚が大切です。

 長々と書いた理由は、鍼治療しても治らない場合、それを鍼が効果のないものと考える患者さんがおられるからです。それぞれ人には得意と不得意があり、例えば私が治療して治らない場合でも、別の治療所で違う鍼をしてもらえば治るケースが多々あるからです。だから鍼治療は、各家からヌカ漬けを買うようなもので、当り外れがあります。品質がバラバラなので、「鍼で治った」と言う人と、「鍼など全く効果がなかった」と言う人があります。そのうち患者さんのネットワークが広がって、「どこの病院は、どの病気に強い」とか、「どの鍼灸院は、何の疾患を治す」などのホームページができるようになるかもしれません。中国では、消費者センターのようなところが、「どこのメーカーの何は故障しやすいので推奨できない」とかテレビ広告をしていましたから。

質問:先生のホームページを参考にさせていただいてます。下記のホームページは、九州の大淵千尋先生のホームページのアドレスですが、坐骨神経痛に効果的な治療方法の1つとして、私も治療の中に組み込んでいます。http://www2.ocn.ne.jp/~tihiro/
 九州で1度だけ先生が勉強会をされたとき、紹介で勉強させていただきました。
 大淵先生は、要望があれば、全国どこへでも、この治療方法を紹介しにいかれるそうです。交通費は、負担願いたいそうですが。
 鍼灸の世界は奥が深く、私などは澤田流を研究し、自分で工夫したもので、やらせていただいてます。 先生のホームページは、いろいろ患者さんのためになることが書かれてあります。
 今回、メールさせていただいたのは、なるほど、いいことが紹介されているし、大腰筋の鍼などは、上記の大淵先生の治療と組み合わせて使うとより効果的で、完成度が高くなり、ありがたく思いまして、御礼を申し上げるためです。

答え:これは意味の取り辛い質問です。大腰筋の鍼を坐骨神経痛の治療に使われているのか、膝の治療に使われているのかも少し判然としませんが……。
 ホームページでダニ退治とかが書いてありますが、これは鍼灸と無縁ではありません。もともと鍼灸の書には『黄帝内経』など、ただ鍼灸のことだけでなく、不老長寿の方法も書いてあります。その一環として、環境を整備して蝿や蚊が湧かないようにし、冬は暖かく、夏は涼しくして身体にストレスをかけず、また大らかな気持ちになって精神的なストレスを避けるように記載しています。ゴキブリやダニ、これは記載がありませんが、蝿や蚊に準じたものと思います。昔の中国にはゴキブリやダニがいなかったので記載されていないのでしょう。鍼灸も、身体に痛みがあればストレスとなるので、それを解消するための手段の一つと考えられます。
 もともと中国医学は、医療としての面もありますが、不老長寿を目的とする面も持っています。だから病気の治療だけでなく、環境整備や精神的ストレス、食事なども含まれています。医学書を昔は方書と呼びましたが、方書は仙人の書でもあるのです。仙人は不老長寿を目的としていますが、その手段として医学、つまり方術を使うわけです。だから、中国医学からすれば、ダニ退治も医学の一端と考えるのです。

 私のホームページは「ここまで自分の治療法を公開していいんかいな!」と、よく言われますが、もっとも多い五大疾患に対する北京堂の治療方法を公開しているだけですから実害にはなりません。この治療法ならば、ほぼ100%の治癒率があると思います。
 五大疾患に対する鍼治療で、100%の治癒率がなければ、鍼は信用を失ってしまいます。そうすれば中国の鍼に完敗してしまいますから、少なくとも同レベルを保てるように、折りあらば逆転できるように実力を養っておかなければなりません。
 その一環として、知識のない新米鍼灸師に対し、北京堂式の治療法、なぜ鍼で痛みが消えるかという理論、また中国の鍼灸師が教養として学んでいる『黄帝内経』、『難経』、『鍼灸甲乙経』、『鍼灸大成』の四書をアップしています。

 本来は鍼灸師の業界団体が、こうした作業をすべきと思いますが、それぞれ思いが違うらしく、業界団体は鍼灸に保険を利かすことに全力を挙げておられるようです。
 私は、鍼灸が中国レベルに認識されるには、保険を利かす事より、鍼灸師のレベルを中国レベルに上げることが大切だと思います。そして鍼灸は、少なくとも五大疾患に対してなら100%の治癒率がある、一回の治療だけで治ってしまうことも多々あることを、日本国民に知らしめることが重要で、保険を利かすことは二の次だと考えています。
 もちろん私は業界団体と対立したいわけではありませんから、保険を利かすための運動には払っています。しかし国連の鍼灸教育組織が中国に依托されている以上、世界は日本の鍼灸を中国以下だと見なしているわけで、そうした現状は日本人として耐え難いものがあります。

 まず私の考えは以下のようなものです。

 鍼灸師の最低水準を上げることが最重要と思います。もちろん私が最も優秀な鍼灸師だとは言いませんが、少なくとも鍼灸学校を卒業したばかりの鍼灸師よりは、勝ると思います。そこで私の治療法を公開し、鍼灸学校の生徒諸君に追試してもらえば、学生の治療レベルは私程度になります。そうすれば「鍼は迷信だ」とか「気休め」だとかなどの批判はなくなり、「鍼ならば一発で治る」との認識が広がるでしょう。もともと鍼は、気休めのものではなく完治させるためのものだったのですから。だから治療法を公開しています。

 次に、私の弟子も疑問を持っているようなのですが、なぜ古典を公開するかです。
 鍼灸は、伝統医学です。それは古代からの経験を積み上げてきたもので、鍼灸の基礎です。もし鍼灸師が古典を読まなければ、その治療は鍼を刺しているかも知れないが、鍼治療ではない。ただの理学療法だと思います。理学療法で何が悪いと居直られればどうしようもないのですが、少なくとも伝統医学としての鍼灸をしたい鍼灸師もあるでしょう。
 それに中国では、そうした古典鍼灸の書物が売られているのに、日本では少なく、しかも値段が高い。かりに『鍼灸大成』を読みたいと思っても、鍼灸業界が提供してくれるわけではないし、ましてや私のような地方に住んでいるものには、目にする機会がない。これでは鍼灸を学ぶ上で、中国に較べて日本は、非常に劣悪な環境にあるわけです。その較差を少しでも埋めるために、鍼灸業界がやらないのであれば、誰かが個人で古典を公開しなければならないと考えています。何個か古典を公開しているサイトがあって、個人的には好きな人達ではないのですが、鍼灸のためには業界団体よりも貢献しているのではないかと思います。
 「それならば、なぜ御前は、ニフティのアットペイなどで『鍼灸大成』の現代語訳などを売っているか?」という批判がありそうですが、私も現代語訳など考えもしなかったのですが、二人ぐらいから『鍼灸大成』の現代語訳が欲しいとのメールが寄せられ、世界初の『鍼灸大成』現代語訳の誕生となりました。原文は遥か昔に死んだ人達だから、著作権が消滅しており、誰がアップしようが自由で、現実に台湾サイトでも原文をアップしているサイトがあります。しかし現代語訳は、著作権が発生しています。また、こうしたことを試みて、少しは儲けに繋がることが判れば、他の鍼灸師も真似るでしょうし、そうすれば自分の勉強にもなって、伝統鍼灸が盛んになるんじゃないかと思います。

 また国のように「鍼灸に保険を利かせたかったら、効果のあることを証明しろ」という理屈は、まさに正論と思います。私は翻訳を手伝っていましたが、薬の臨床試験では客観的な治験方法が確立しています。ブリッジ試験などと、治験しなくても補正できる方法もあります。新薬の場合は、まず毒性が問題なので、動物実験、小人数の試験、大規模な試験の三段階があり、慢性毒性や急性毒性、催奇性(変異源性)などのテストが必要なのですが、鍼灸では毒性がないので、いきなり大規模の二重盲検テストができ、治療費をもらいながら有効性を証明できるので、ある程度の規模の団体ならば、簡単にデータを集められます。その方法は、合谷、足三里、太衝、曲池をプラセボ穴とし、それを空試験として比較対照群にすればよいのです。薬の治験方法を活用すれば、鍼灸の有効性など簡単に証明できるし、また中国では薬の治験方法を使って有効性を証明しています。
つまり合谷、足三里、太衝、曲池など使った患者グループを対照群とし、治療穴を使った患者グループを治療群とするのです。それを検定すれば、簡単に証明できます。五大疾患に対する鍼灸効果は100%近いので、それこそとんでもない数値になるでしょう。有意も有意、メチャクチャ有意になるはずです。

 「私が全国へ出向いて治療方法を紹介したらどうか?」という質問にも取れますが、私の治療法は超深鍼とも言えるほどで、見よう見まねでやると危険が伴います。
 以前に弟子を養成したのですが、そのとき嫁は「二週間やれば覚えるだろう」などと言っていました。私は3ケ月ぐらいかかるのではと思いましたが、結局は半年過ぎて、まあ危険のないようにできるようにはなりましたが、慎重に刺鍼するのでスピードがメチャクチャ遅く、患者さんは鍼を刺されるのにイライラという状態になったのです。今では、そういうこともないとは思いますが。
 そのときの弟子の言葉は「先生の方法は、マンツーマンでないと危険ですね」というものでした。解剖をキチンと頭に入れ、どうしたら内臓や脊髄に刺さらないかを知った人でなければ危険性を伴うのです。例えば、ほとんど斜刺とか少し内向きに刺入するので、角度が見えないと危ないのです。弟子もマンツーマンで指導しながら、途中で危険を感じてストップをかけますので、患者も恐がって減ってしまいました。それに出向かなくとも、私の治療法は、ホームページに公開してあり、誰でも追試できます。疑問があったり、良く判らなければ、Q&Aで質問できます。それに私は、日本の鍼灸師の古典理解度が、まだ十分とは思えないので、そうした鍼灸書を訳す人が少ない以上、交通費を負担してもらって全国どこへでも行くわけにはゆきません。
 私は鍼灸の古典に詳しくなく、現代中国鍼灸の翻訳者でして、本来は鍼灸古典の翻訳にはふさわしくありません。
 『素問』『霊枢』や『難経』は、腐るほど現代語訳が出ています。しかし、それらは鍼灸の専門書とは言い難く、鍼灸と漢方薬をチャンポンにした書物といえます。漢方の専門書である『傷寒論』にも鍼のことが記載されているので、それから後の時代から分化して行ったと考えられます。
 だが『鍼灸甲乙経』、『鍼灸資生経』、『鍼灸大全』、『鍼灸聚英』、『鍼灸大成』など、鍼灸と名のつく古典は、あまり現代語訳されていない。その揚げ句に、私のような古典に弱い鍼灸師のところへ、学生さんから『鍼灸大成』の翻訳をしてくださいと依頼がくる。これは、ゆゆしきことですよ。
 私は、現代中国鍼灸の翻訳者であり、化学物質や生化学、免疫物質などを翻訳する鍼灸師です。ですから、そうした新薬や免疫物質などを日本語に翻訳できる鍼灸師は、いないだろうとの自負を持っています。だが古典については自信がありますとは、一言も書いてない。そして『鍼灸大成』を翻訳していても、実際に判らない部分が何ケ所か出てくる。だけど現代医学ならば、まず翻訳できると思います。そうした分野違いの人間に、『鍼灸大成』を翻訳してくださいと依頼される。じゃあ伝統医学としての鍼灸を研究してこられた先生方は、何をしているんだということになります。
 料理で言えば、中華料理の達人がいながら、料理を勉強している人がフレンチの達人にラーメンの造り方を教えてくれと依頼しているようなものですよ。フレンチの達人がラーメンの造り方を教えていれば、当然にして中華料理の達人が、嘘を教えるなとか、ここが間違っているとか批判されて当り前です。ところが、分野違いの私が『鍼灸大成』や『鍼灸甲乙経』、『鍼灸資生経』を翻訳しているのに、その翻訳文について批判してくる人が一人もいないのです。一年で1万何千人も見ていながら。また、自分は『鍼灸××』を翻訳するというホームページも出てこない。なぜでしょう?

 ①現代中国語の翻訳者に古典を翻訳できるわけがないから、見てもしょうがないと相手にされていない。
 ②伝統医学に興味を示す鍼灸師などいない。すべて理学療法士で満足している。
 ③訳が悪くて、読んでも日本語として意味が取れない。
 ④原文を見て意味が理解できず、訳が合っているのか間違っているのか見当がつかない。
 以上の四つが考えられますが、①と③はありえません。それは私が翻訳した文について苦情がきたことがなく、日本語として確かな証拠になります。①ならば、間違いのわかった人が正しい訳を公開するでしょう。
 こうして考えてゆくと、自分の役割は教えに行くことではなく、伝統医学を学びたい鍼灸師に、そうした書物を提供することじゃないかと思います。それによって中国鍼灸と日本鍼灸のパイプ役になれるのではないかと思います。人それぞれ役割が違うと思います。

私はアトピーなのですが、鍼灸治療で回復するのでしょうか?

答え:回復するようです。
私は、皮膚科と小児科、婦人科が、あまり得意でないのでやらないことにしていますが、ひどいアトピーの女性を治療したことがあり、それはアトピーより身体が硬直している感じで、全体が不調で働けなかったため、アトピーより身体の硬直が問題だと思って治療したところ、アトピーまで治ってしまいました。
 しかしアトピーが治るまでは、五十肩や坐骨神経痛のように6回や8回で治るものではないようです。
 痛みや難聴に対する鍼の効果は素晴らしく、一回で聞こえるようになったり、痛みが半減して眠れるようになるのですが、アトピーでは一回で完治などということはないようです。
 ちなみに中国では、アトピー性皮膚炎という中国語としては存在しているようですが、治療法を記した本を見たことがなく、ほかの皮膚病疾患を参考にして治療するしかないと思います。
 また双葉社から藤本蓮風著の『アレルギーは鍼で治せ』という本が出版されており、表題に、アトピー、花粉症、ぜんそく、リュウマチ……とあります。これはアマチュア向けの本で、値段も857円ですから一読してみられるのもよいでしょう。

 さて「アトピーが鍼灸治療で回復するか?」という質問ですが、私の経験からしても回復するようです。ですが「適応症か?」と言われると、首をひねります。というのは、治療回数がかかるからです。一般に鍼は速効性があり、たちどころに治るのが鍼の効果だからです。
 ですがアトピーは、効果が現れるまでに1カ月とか2カ月とかしないと現れません。もっとも中国にアトピーの鍼灸に対するマニュアル書がないから時間がかかるのかもしれませんが、似たような喘息なら3回の灸で効果があります。
 それと中国には「外の病は内で治し、内の病は外で治す」という言葉があります。つまり体内の病は鍼灸で治療し、体表の病は漢方薬で治療するということです。
 一般に皮膚病では、肺を治療したり、血を養って風を追い出す治療をします。
 そうした、もろもろのことを考えると、アトピーの鍼は効果があるものの適応症かどうかは、人それぞれの考え方の違いによるでしょうし、また得意や不得意がありますから。
 例えば、五十肩を6回以内に治せない鍼灸師であったとしても、アトピーは6回以内で完治させる鍼灸師がいるのかもしれません。しかしアトピーを治すのに時間がかかるから私のほうがダメな鍼灸師だとは断言できないでしょ?
 それぞれ得意分野が違うからです。皮膚病に明るい人に相談するのが一番です。

 私の経験では、アトピーは効果があるけれど回数がかかります。また難聴のように3回で治るものでも、5年も放っておけば何回治療しても治らなくなるかもしれません。鬱病のように初期では効果があっても、重症になると難しくなる場合もあります。

 一般的に、アトピー性皮膚炎ならば、鍼を浅く刺すだけでよく、痛みの治療のように深い鍼をする必要はありません。
 中国で、アトピー性皮膚炎の臨床治療例がないのですから、鍼灸師はヘルペスやジンマシン、乾癬などを参考にして治療していると思います。中国でもアトピー性皮膚炎患者が増え、大量の治療がされるようになれば、アトピーに対するマニュアルもできると思います。

 私もアトピーではないのですが乾燥肌で、以前は皮膚が白くなってポロポロになりました。ところがヨーグルトを一日250mLずつ飲むようになってから、肌がスベスベになりました。自分には、痛みがあるときしか鍼をしませんので、これはヨーグルトの効果のようです。また腸内の異常発酵もヨーグルトは防ぎますので、ウンコが臭くならず、便秘を解消する面からも効果があります。ジャスコのプレーンヨーグルトが安いし効果がありました。

 それとアトピーは痒いから掻きむしりますが、それが悪化させる原因になるようです。それに対してはローラー鍼があります。これは刺さらない小児鍼ですが、凹凸があって刺激するので、それで擦れば痒みが治まり、皮膚は傷付きません。

 それと皮膚の乾燥を防ぐために、保湿クリームを塗るとよいようです。アトピーの人は肌が乾燥しているので、寝るときに保湿クリームを塗って寝ると、痒みが少なくて眠りやすくなります。それでも痒ければ、小児鍼のローラー鍼で擦ると眠れるようです。

 こうしたことを実行した上で、鍼をすると効果があります。私が鍼灸効果のプラセボ穴として使うことを提唱している足三里、曲池、合谷、行間。それに行間や脾兪、膈兪、太白、太衝、中脘などを組み合わせればよいと思います。こうしたことは臨床マニュアルがない以上、風は血を治すという原則に基づいて、風を追い出す曲池、合谷、血を養う足三里、血を貯える行間。そして血や風に関係する経穴を取って治療します。それぞれ選び方は、患者さんによって変わりますが、原則として、そうした取穴をします。

 まあ、あとはアトピーと間違えやすいツメダニを退治するとか、食べ物に注意するなどが+αかな。

 私は、どちらかというとペインクリニックのような鍼灸師なので、治療するのも寝違いとかギックリ腰が多く、アトピーを得意とする鍼灸師に相談したほうがよいと思います。答えは、鍼灸で回復は可能です。

質問:高校1年の息子が中国留学を希望しています。現在は中国語学校に通い、中国語検定3級を取っています。
 
本人は中薬医や中医師になりたいと言っているのですが。
答え:はっきり言って中国語検定3級では、中医薬大学への留学は無理です。
 一応、留学生クラスで勉強することなら可能だと思いますが、一般の中国人学生に混じって聴講することは不可能でしょう。
 それは中医の授業が、一般の授業とはまるで違うからです。
 例えば、私が留学していたとき、一年生に日本人の女の子がいましたが、授業の内容は全く判らず、結局は退学しました。
 一般に検定が2級ぐらいならば、言語文化大学ですか、昔の言語学院の一系中医クラスへ入り、中医言語の専門用語を勉強します。中医学院の教科書は、日本でも売っていますので、一度購入して、読めるかどうか試してみて、読めて意味が判れば、直接入学しても良いかと思います。
 鍼灸は五年間ですから、言語の2年過程を1年で終了できたとして六年かかります。
 ただし中国で六年勉強したからと言っても日本では0で、日本では鍼灸学校に3年間入り直さねば受験資格がありませんから、合計すると、どんなに早くとも9年かかる計算になります。すると18で入っても、目的を達成するまでには27になってしまいます。しかも中国では、アルバイトもできません。
 そうした覚悟をして中国留学されるのも良いかも知れませんが、中国での資格は日本では全く認められておりません。中国で鍼灸を勉強したら、少なくとも日本で学校へ行かなくとも受験資格があるようにすればよいのですが。

 私としては、そのような日本で認められない資格を取るよりも、日本で資格を取ってからのち留学されたら如何でしょうか。というのは解剖学用語など、相当の言葉が日本と同じなので、日本語で解剖などを勉強してから中国で授業を受けた方が楽なのです。
 例えば脳梁などは中国語ではベンチ体などと、日本で昔使われていた解剖用語が盛んに使われています。こうした言葉を直接中国語で授業を受けるのは難しいと思います。
 中国で日本人が働くことができない以上、中国の資格を取りに行ってもしかたありません。
 漢方薬なり鍼灸を勉強したいのであれば、まず日本で資格を取ってから留学すべきと思います。日本で勉強しているうちに、中国語などはうまくなりますから。今頃はCDもあり、雑誌も揃っているので、日常会話やニュースの聞き取りぐらいはできるようになります。それが終わってから中国の医学書を読めば、恐らく言語で専門教育を受ける必要もなく、進修生になって中国人クラスで勉強すれば、恐らく中国留学3年ぐらいでモノになるでしょう。中国では、語学とか政治教育の授業も結構あるので、本科生になって、そんなものまで履修する必要はないと思いますが。
 針灸学釈難で検索すれば、北京中医薬大学の留学生が開いているホームページが見つかりますから、そこで質問してみられたら。

 
質問:私の母は、筋萎縮性側索硬化症です。病名を告げられて途方にくれ、鍼や灸を試してみましてが効果はあまりなく、それどころか治療が終わった後の母は、ひどく疲れた様子でぐったりとしてしまいます。最近では、体に痣のようなものができるようになり、治療を続けるべきかどうか困っています。親戚の紹介で、東京の先生にみせたところ、その先生は絶対に治してみせる言っていましたが、東京までの通院は難しく、本当に治るのかどうかも疑問です。もし、よいアドバイスがありましたらよろしくお願いします。
 答え:女性で筋萎縮性側索硬化症とは珍しいですね。
 「最近では身体に痣のようなものができる」ということですが、恐らく鍼で内出血したのでしょう。血友病などで発生しますが、血管が脆くなっていてもおきやすいのです。あるいは脳梗塞などで血の固まらない薬を飲んでいるとか。こうした内出血は大変そうに思えますが、実は、どうということもないもので、二週間もすれば完全に消えます。
 鍼尖が勾状になっていても起きやすいです。

 鍼灸で、どのような治療をされているのか不明ですが、筋萎縮性側索硬化症は特殊な病気で、主に脊髄に問題があると思われるのですが、はっきりしてはいません。そこで脊髄付近へ刺鍼して刺激するのが、一般的な側索硬化の対する治療となっています。
 治る例もあるようですが、そうした例は一般に稀なので、鍼灸師は治療したがらないのが普通でしょう。
 一般的に鍼灸師は、私なんかもそうですが、治療したら治るのが当り前で、方針通りにやれば、ほぼ100%が完治すると思っています。しかし、幾ら治療しても治らねば、じょじょに自信を失ってゆきます。そして患者さんに死なれでもしたら、長寿で死なれるならいいでしょうが、自分が治療している病気で死なれたらガックリ落ち込みます。当分は、もう鍼灸などする資格がないような気になります。
 ちょうど交通事故を起こしたら、落ち込んで運転する気になれないでしょう。あれと同じです。それが判っていながら治療するのは、辛いことなので、断りたいのが実情でしょう。視神経萎縮なども治りにくい病気なので、なるべく断りたいものです。
 なかには誰でも治せそうな病気で、遠くから来ようとしているために断る場合もありますが。

 側索硬化の鍼治療は、中国でも少なく、一応のマニュアルが出来上がっていますが、完全に100%の患者が完治するものではありません。筋力を回復させることは簡単ですが、病気の進行を止めて、逆進させて完治されることは難しいでしょう。私の翻訳書『難病の鍼灸治療』にも半分が基本的に治癒したと書かれていますが、治癒とは書いてなくて、基本的にと書いてあるのがミソです。しかし文献を調べてゆくと、確かに完治している例もあるようです。
 中国には、こうした治療を得意とする鍼灸師もいるようです。

 私は「自信のある患者だけを治療しろ」という『鍼灸大成』の言葉に従って、治療しませんが、ホームページに記載しているので相談を受けます。
 なかには全国の有名な鍼灸師を尋ねて、治療された患者さんもあります。しかし、その結果は死亡というものでした。
 「絶対に治してみせるという話じゃあなかったのですか?」と尋ねると、
 配偶者の方は
 「そういう話だったのですけれど、うちに来るまでに、あちこちで治療されたので手遅れになっていたから治らなかった」と言われました。
との答えです。
 私が初めて治療したときは、それでも完全とまでは行きませんでしたが、ある程度は筋力が回復し、何年かは生きられていましたが、なかには「絶対に治す」と言われて、治療して3ケ月ぐらいで死亡された患者さんもあります。思わず「なんで、そんなに早く死んじゃったんですか!」と尋ねると、「手遅れだった」と言われるそうです。

 正直申しますと、まともな鍼灸師なら最初の診察で、あるいは最初の診察で判らなくとも2~3回も治療すれば、治せるかどうかの判断がつくものです。それを患者が死んでしまうまで「手遅れ」であることが判らないなんて、かなり腕の悪い鍼灸師ではなかったかと考えられます。もう少し腕の確かな鍼灸師ならば、2~3ケ月ではなく2~3年は生きられたかもしれません。
 私の考えでは「絶対に治してみせる」と言うのは懐疑的です。
 というのは、私は手が水平より挙がらない五十肩ならば、絶対に治してみせる自信はありますが、それでも患者さんに「絶対に治してみせます」とは言いません。というのは、前に骨癌で痛みが出ていた患者さんに当たったことがありました。普通は、五十肩は6回も治療すれば、ほとんど完治するのですが、この患者さんだけは夜間痛は消えたものの、どうしても動かしたときの痛みが消えなかったのです。6回の治療を終えると、約2週間ちょっとになります。それで消えないので、おかしいから病院へ行って精密検査するように勧めたのですが、本人は鍼で治療してくれと言われましたので、治療を拒否しました。ようやく病院で精密検査すると、肩関節に骨癌ができていたのです。後で息子さんが知らせてくれました。正直言って、患者さんは治ると思って代金を払っているのに、鍼だけ打って治さないのは、非常に心苦しいのです。しかし、治らなかったから料金はいらないというと、「あなたは、それだけの労働をしたのだから、料金をもらって当然だ」と言われます。
 しかし我々としては、腐っても鍼灸師という思いが強いのです。鍼灸師は、治してなんぼのもんで、治らなければ患者を虐待しているだけの行為にしか過ぎません。だから労働しているという頭はなく、技術を売っているという意識があります。だから占い師や祈祷師とは違い、自信があるから手を出すのです。車を修理に出して、直ってなくても金を払うことは有り得ないでしょう。それと同じです。

 あなたの言うとおり、本当に治るかどうかは疑問ですが、絶対に治らないとも言い切れません。そこでアドバイスですが
 「東京までの通院は難しい」ということですが、私も通院していては、治るものも治らないと思います。それは距離が遠くなると、治癒率が圧倒的に低くなるからです。少なくとも30分以内で通えるところでなければ、治療効果が薄いでしょう。福島から東京まで通うとなると、疲れて逆に悪化するかもしれません。そこで紹介してくれた親戚に泊まり、そこから通院したらいかがでしょう。
 次に、鍼は延命効果があるようなので、誰が治療しても寿命は延びると思われますが、「絶対に治してみせる」との自信がある人は、まずいません。鍼灸師は、前にも述べたように、治せない患者からは代金を請求したくないものなのです。特に、私が五十肩で治療したつもりが、骨癌で治らなかった場合など。
 そこで治療を受ける前に、診察してもらって手遅れでないかどうか確認してもらい、診察したうえで「絶対に治してみせる」と言われたら、もし治らなかった場合は代金を払わないとか契約されたらいかがですか?
 本当に自信があれば、こうした契約に応じると思います。そうでなければ騙し取られる覚悟で「金を払って治療を受けたのだから、死んでも仕方がない」と、自己満足するより仕方ありません。

 中国の一般的な側索硬化の鍼治療は、背骨への鍼灸を中心としたもので、私の『難病の鍼灸治療』だけでなく、中国には『中国針灸』とか『北京針灸』など、さまざまな病気に対する鍼灸臨床例が記載されていますので、そうした雑誌から側索硬化の鍼治療だけを集めて、良いと思える治療法を組み合わせたのかもしれません。私が側索硬化の鍼治療に関心があったのは十年以上前のことであり、それからも臨床例が増えているはずですから、進歩しているとは思います。しかし側索硬化の治療では「ペテンに引っ掛かったな」と思える相談が多いので、治らなかった場合のことを最初に契約したほうが良いでしょう。



質問:甲状腺機能低下は灸で治りますか?
答え:「甲状腺機能低下は灸で治りますか?」という質問ですが、灸の治療範囲は少なく、肝炎や喘息、リウマチなどには効果があるようですが、甲状腺機能低下に効果があるという文献は見あたりませんでした。
 喘息の灸に関しては、今までの治療経験から100%治癒する自信があるので紹介したのですが。あなたも10日ごとの悪いモグサによる施灸を繰り返していれば、そのうち喘息が治るでしょう。
 甲状腺機能低下ですが、鍼灸の本に記載されているのは甲状腺機能亢進ばかりでした。私の『難病の鍼灸治療』などにも甲状腺機能亢進に対する鍼治療は記載されていますが、甲状腺機能低下については記載されていません。というわけで素人が、灸を使って甲状腺機能低下を治療することは難しいと思います。
 そこで鍼灸師が、甲状腺機能低下を治療する方法として二つ間が得られます。
 一つは、甲状腺機能亢進の治療を甲状腺機能低下に使用してみる方法です。そんなことしたら却って甲状腺機能低下が悪化するんじゃあないの? と思われるでしょうが、それが鍼灸と漢方薬が違うところで、鍼灸の効果は正常に戻すことですから正常な人には効果がありませんが、異常な機能を正常に戻してくれます。漢方薬では、正常な人が使うと効果がないばかりか悪化してしまいます。
 二つめの治療法は、甲状腺に対して治療するのではなく、現れている症状を分析して症状を消してしまうことです。
 一つめの治療法は、やはり喉とか後頚部への刺鍼が中心となるでしょう。
 二つめの治療法は、具体的な症状に基づいて治療しますので、一概に断定できません。

 どこか紹介してほしいとのことですが、私は付き合いの非常に狭い人間ですので、希望に応えられそうにありません。中国に留学していた連中は「留学者連絡会だったかな?」があるので、そこに問い合わせれば近くの留学者を紹介してくれるかもしれませんが、留学したからといって真面目に勉強していたとは限らず、カラオケ行って姐ちゃんと遊び歩いていた留学生もいるわけですから一概には言えません。また留学していなくとも、自分で独学して中国語の本ぐらいは読める人もいるでしょうから難しい判断です。

 私も鍼をして欲しいときは、よく知った人にしか打ってもらいません。相手のレベルを知るのは、非常に難しいのです。まさかペーパーテストするわけにも行きませんから。

 昔の鍼灸書にある鍼灸師の見分け方は、医学知識が豊富かどうかを見ろとあります。
 どんなに仁愛の心を持っていたところで、医学知識がなければ死にゆく赤ん坊も老人も助けられない。それが果たして、仁愛の心を持っているといえるのか? と『鍼灸大成』は問いかけています。

 知識があるなしの見分け方ですが、かなり一般の常識とは外れています。
例えば、私などは何冊も本を出しているので、ちょっと考えると知識の豊富な鍼灸師に思えます。それに関東方面では名前を知っている人が多いので、技術のありそうな鍼灸師に思えます。ところが、そんなこと鍼灸の知識と全く関係ないのです。鍼灸院が盛況だということも、全く関係ありません。

 判断基準は、その鍼灸師が鍼灸書を沢山持っていれば、まず医学知識が豊富な条件となります。
 次に、本を沢山持っているかといっても、飾りとして置いてあるのかもしれません。使い込まれているかどうかを調べます。また本が多すぎて、別の書庫に保管してあるのかもしれませんが、それでも何十冊かは手元においてあるはずです。

 二つめに、自分の症状が起きている原因を尋ねてみることです。医学知識が豊富な鍼灸師は、東洋医学だけでなく、現代医学にも精通していますから、患者が納得できるような説明をしてくれるはずです。必ずしも専門用語を使って解説してくれるとは限りません。それは素人が尋ねていると思っているから。納得できなければ要注意です。

 三つめは実績です。その近所で、その鍼灸師に治してもらった人が沢山いれば、それは医学知識の豊富な鍼灸師です。患者は大勢来ているのに、治った人は一人も居なかったなどということもあります。本によると、知識の豊富な鍼灸師は、他の人より早く治すらしいのです。それに人を殺すこともない。下手は不治の病に手を出して、結果的には患者が死んでしまい、評判を落とすので、手に負えない患者は最初から断れと書いてあります。

 鍼の消毒や解剖知識は、もっとも基本的なことなので、言うまでもないのですが、
 実は、私が鍼灸をしてもらわないのは、昔、頚が痛くて回らなくなったとき、親に紹介された鍼師の所へゆきました。自分の鍼を持っていったのですが、「人の鍼は使わぬ」とか言って、木の箱からグニャグニャに曲がった鍼を取り出して、それを指でしごきながら刺そうとするのです。「せめて消毒ぐらいしてくれ」と言うと、真っ黒になった手ぬぐいのようなものに消毒アルコールをつけて拭かれました。そんなレベルですから当然にして鍼の効果は全くなし。そこで、その鍼灸師は、「まだ治らんのか! よし。これが最終の奥義」とかいって鍼したのですが、まったく痛みが消えず、「もう治りました」と言って帰りました。あとで親に「紹介された鍼灸院へ行ってみたが、まったく効果がなかった」と言いますと、「肩こりぐらいなら効果があるけど、寝違いはだめだったか」との答え。本当に腹が立ちました。結局、自分で頚に鍼をして治したのですが、あとから考えると、あんな使い回しの鍼で、よく感染しなかったなと、自分の幸運にホッとしました。それからは自分の知り合いにしか、刺鍼してもらわなくなりました。保健所も、昔に開業したところは二度と再検査しないようです。

 消毒と解剖知識は重要で、それがなくて鍼すれば殺す可能性だってあります。灸では、そのような知識は必要ありません。
つまり鍼灸院のチェックは、まず事前に治った人がいるかどうかチェックすること。それが何回で治ったか、本当に鍼灸で治ったのかを尋ねます。それから、どんな病気が治ったかも尋ねます。それは全ての病気が鍼灸で治るわけではありませんし、治療師によって得意や不得意があるからです。運動系の痛みや麻痺は得意だが、まるで内科はダメという人もあるので、同じ症状の人が治った鍼灸院へ行きます。
 そして鍼灸院へ行ったら、消毒設備や書籍をチェックします。まあ、この二つをチエックしておけば間違いないと思います。

 特に甲状腺機能低下のような、あまり鍼灸書に記載されていない症例では、いろいろと治療法を文献で調べて説明してくれる鍼灸師でないと信用できません。そうそうルーチンにできる患者ではないですから。


質問:私の父はただいま入院中で糖尿から人工透析、壊死により両足を切断しました片足を切断したころから肩が痛み出し、その翌年に反対の足を切断したのですがその頃には肩が切断した足よりも痛いということです。病院では頚椎が狭くなってるとの事でした。病院では牽引をしていますが気分の良いときしかできません。枕を変えたりしようか、どうすれば良くなるのか考え付かず相談しました。父とは年に1度しか合えず離れて暮らすので何とかしてあげたいのですが・・・・。私の主人が針灸の免許を持っているのですが(一年に一度会うのだからしょうがないのですが)一年程前に円皮鍼を試すようにと送ったのですが、これもあまり効果がありませんでした。病院では壊死のときでも消毒したら良くなる、頚椎の件も最近になって牽引を始め、何だか親身になってもらえてない気がします。よろしくお願いします。
答え:これは非常に難しい問題です。糖尿病から人工透析をしているということは、すでに腎臓の血管がボロボロになって使いものにならないということです。壊死による両足切断も、足の血管がボロボロになって血液が循環しなくなったものです。
このような状態ならば、腎臓や心臓、血管や神経もボロボロなので、このような人には鍼灸治療をするなと言いたいところです。
足の壊死ですが、それは血管が塞がって血液が流れないために発生したものなので、消毒しても効果がありません。身体中に血栓が発生する可能性があり、その血栓が何時に肺や脳に詰まるか判りません。きわめて危険な状態です。
 ところで肩の痛みですが、牽引をするというのであれば、頚椎が狭くなっているのではなく、頚椎間が狭くなっていると考えられます。牽引して効果があればの話ですが。ただ本当に頚椎間が狭くなって痛みが発生するのかも疑問です。というのは、糖尿病の末期では知覚も異常になるからです。
 学生時代に、後輩の父親で、糖尿病で足が痛む人を診たことがあります。刺鍼して治療が終わり、30分ぐらいして帰りのタクシーの中で、徐々に痛みが消えていったらしいのです。
 足を切断するぐらいひどいときでも、鍼をすれば足が健康になって切断しなくてよくなるなどは、中国では盛んに行われています。
 ところで肩の痛みですが、私見では、それほど末期の糖尿病では、円皮針は貼り付けたままにしておくので、感染する恐れがあり、賛成しかねます。そうしたものを治療するには深く刺さねばならず、しかも一年に一度会うだけでは治しようがありません。いくら鍼で足の切断を免れると言えども、一回の治療だけで治るものではありません。その日は調子がよくなる程度です。ギックリ腰ではないのですから、一発で治るなど到底考えられません。
 ぶっちゃけた話、いつ死ぬか判らないつもりで近くの病院へ移し、あなたの主人に治療してもらったらいかがですか?  そのような状態であれば、他の鍼灸師は治療を拒否すると思います。治療方法は、本ホームページの五十肩やムチウチ症の治療を参考にされればよいと思います。

質問:どうしても禁煙したい人がいるのですが、禁煙を今まで2回試みたらしいのですが、禁煙をするとかならず便秘、イライラ、歯槽膿漏、水虫などの体調の変化が起こって、かえって肉体的にも精神的にも悪いような気がしてそのたびに断念してきたそうで、持病に肺気腫、去年軽い脳梗塞を起こしています。何とか鍼灸で禁煙できないだろうかと相談されました。いい治療法がありましたら教えてください、お願いいたします

答え:禁煙には一般的に耳穴を使います。しかし正直いうと、肺気腫があって脳梗塞もあるとなると、ちょっと手遅れという感じです。一般的には耳穴や腕の穴へ刺鍼して、煙草の味をまずくして禁煙させます。禁煙専門の本として、上海中医学院出版社は楊蓁、張洪度の『針刺戒烟』があります。訳せば『禁煙の刺鍼』。そこに記載されている禁煙のための耳穴は、交感、神門、腎点、肝点、胃点、肺点、心点、脾点、気管、皮質下、内分泌。大根の種を炒って、耳の表側と裏側に貼り付ければいいでしょう。耳の裏表から穴を挟むことによって刺激を倍加させます。六神丸や六応丸を貼ってもよいでしょう。そして種を一日5~7回挟んで揉みます。
  ただし、私自身は煙草を吸わないので、試したことはありません。また禁煙させてくれと言ってくる患者さんもいませんし。
  もし禁煙したことによって水虫になれば達克寧を塗ります。これは硝酸ミコナゾール軟膏と書いてあります。歯槽膿漏になれば、風池へ刺鍼して得気があれば治ります。イライラしないために交感、神門、心点を取ってあると思いますが、それでもイライラすれば、内関や神門、背中の両側の華佗夾脊穴へ刺鍼すれば治ります。こうしたことは大した問題ではないのですが、肺気腫は問題です。これはゴムのように弾力性のある肺胞(ブドウの房のようなもの)が広がりっぱなしになり、そこに空気が溜ったままになって肺を圧迫しますから、浅くしか呼吸できません。すぐに息切れしてしまいます。この肺気腫を鍼で治すのは不可能でしょう。また、恐らく動脈硬化を起こしているために軽い脳梗塞が起きたと考えられますが、恐らく心臓にもガタがきているでしょう。心臓が悪ければ、心臓で血栓ができますが、それが流れ出してどこに詰まるか判りません。眼の動脈に詰まれば、突然失明しますし、脳に詰まれば脳梗塞、肺に詰まれば終わりです。
  あなたが、もし鍼灸師ならば、こうした人への治療は、辞退したほうがよいでしょう。




質問:まだ開業して間もない新米鍼灸師です。最近、耳鳴りの患者さん(58歳女性で48歳のとき閉経です。左の耳鳴りが10年前に始まり、最近左も発症されました。常に蝉が鳴いている状態で、声も二重に聞こえるそうです、夜も気になって熟睡できず、不眠気味。それと入れ歯の噛み合わせが悪く、顎関節症もあり。長いこと耳鼻科で治療を受けられていましたが、ビタミン剤の処方のみでほとんど変化が見られず来院されました。)治療は聴宮、翳風、角孫、完骨、後頚部の刺鍼、肩背部の肩井や夾椎穴(C2~C5)その他阿是穴に刺鍼しました。*深刺ではありません。寸3-1番で1センチ程度です。15分ほど置鍼。

治療後、耳鳴りが余計に気になるようになり、一時期、耳鳴りがひどくなることもありますと説明をしましたが、これ以上ひどくなるのが怖いから少し様子を見ますとこれ以上の治療を断られてしまいました。

よく耳鳴りと難聴の治療法は同じとありますが、たとえば今回のように耳鳴りが余計に気になるようになるとは耳なり自体は改善していないけれども、耳の聞こえ方は改善しているということになるのでしょうか?それとも悪化ですか?それと発症してから3年以上たつと改善は難しいとありましたが10年以上経つような耳鳴りでも改善した症例はありますか?

答え:10年以上でも改善することがあります。でも確実に改善するかというと、不確定です。3年以内なら快復すると書いたのは、鍼すれば100%快復すると思っているからです。5年経過しますと、治らない場合も出てきます。
 私の場合では、耳鳴りや難聴の治療をして、治療前より悪化したケースはないので(まったく変化がなかったケースはある)、それは効果がなかったから断る口実として「悪化した」と言われたのではないかと思います。
 このケースでは、顎関節症もあるとのことなので、それが原因と思われ、顎関節症を治すついでに10年来の耳鳴りを治しておけば良かったのではと思います。
 はっきり言って、難聴は治らない場合がありますが、耳鳴りは年数がたっていても、まず治ります。だから、あなたはもしかすると、患者さんの治る機会を奪ったのかも知れません。なぜなら耳鳴りを治す鍼灸師がいても、その患者さんは二度と鍼治療など受けないでしょう。
 耳鳴りの患者さんは少ないのですが、私も最近、突発性難聴の患者さんを治療し、3回で完治しました。それを聞いて、突発性難聴の患者さんが来たのですが、1回しか治療に来ませんでした。痛すぎるという話だったので、治ってないのかと思っていたら、1回で治って喜んでいたという話でした。だから鍼は難聴、とくに耳鳴にとっては確実な治療法でしょう。
 かといって10年来の耳鳴では、ちょっと簡単に治らないと思うので、3回で治りそうな顎関節症の治療のついでに耳鳴治療をすべきだったのでしょう。
 すると顎関節症が治ったのだから、もしかすると本当に耳鳴も治るかも知れないと期待します。それで治してゆきます。そもそも、その耳鳴は噛み合わせの悪さから起きたものと推測されます。
 耳鳴は、鍼で悪化する事はないと思います。なぜなら一般の疼痛、たとえば坐骨神経痛などの場合、大腰筋の中を腰神経叢が通っているので、大腰筋を緩めると痛みが復活してくる可能性がありますが、耳の神経は頚の筋肉中を直接通っているわけではありません。ですから悪化するなど考えられません。
 耳の神経は、かなり奥で分かれており、そこまで鍼を到達させるには骨に穴を開けなければならないので、直接的な治療はできません。なのに耳鳴が治るのは、刺鍼によって頚の血液循環がよくなり、それが間接的に耳内部の血液循環を改善しているため神経が治ると思われます。
 実際は、耳鳴と坐骨神経痛は同じで、聴覚神経の興奮が耳鳴で、坐骨神経の興奮が痛みと考えられます。ただ聴覚神経を圧迫するような筋肉を知らず、また奥に無意味な筋肉があると思えないので、血液循環の改善で治ると思われるのです。だから悪化することはありません。
 私の経験では、あなたの方法で改善させるのは難しいと思います。
 一つには鍼の太さです。1番では細すぎて、私の経験では捻挫や眼窩内刺鍼でしか効果がありませんでした。少なくとも2番以上は必要です。
 次に寸3では奥の筋肉まで届きません。2寸ぐらいでなければ無理でしょう。骨に当たって鍼が止まるまで刺入します。
 そして15分の置鍼では、10年来の耳鳴には対処できないでしょう。40分ぐらい必要です。
 それから耳鳴りの場合、肩背部よりも耳周り、顎関節症があるのなら頭維とか上関、下関、耳門などを加えなければならないでしょう。そうした部位には1cmぐらいの刺鍼で効果があるでしょう。
 こうした部位は危険なので、3番の鍼を徐々に刺入して行きます。錐のように旋捻してはなりません。脳や脊髄は硬膜で覆われいてるため、日本の鍼で単刺しても突き破ることはありません。だから肺ほどの危険はないのです。肺は守られていないので、当たらないような工夫が必要です。
 このホームページの翻訳コーナーに耳鳴治療が書いてありますので、参考になると思います。肩井は直刺すると肺に当たる可能性があるし、あまり耳鳴や顎関節症と関係がないので、特に初心者のあなたなら使わない方がよいでしょう。それよりは経絡を使って外関や中渚などを取って強刺激した方がよいと思います。普通は3回も治療すると、再発しません。私が耳鳴で唯一失敗したのは、13年目の耳鳴で、しかも毎日騒音の中で作業しなければならなかった人だけです。治療したあと騒音の中の作業では、治らなくて当たり前かも。
 耳が聞こえない人は、3割ぐらいの人は失敗していると思います。効果が一時的だったり、まったく効果がなかったり。
 それは聴覚神経が血液不足のため死んでしまっているためだと思います。だから耳鳴は治るけど、難聴は鼓膜が破れていることもあり、治らない場合もあるということです。


質問:家内の膝痛の事で教えて下さい。家内56才、身長150㎝、体重65~68㎏(推定)かなり肥満体です。
 膝痛の他は何処も悪く無いそうです。悪くなり5年程ですが、ここ3年程前からは正座等は、一瞬たりとも出来ません。病院や整体治療所へは通いましたが、どちらも、痩せろと言うだけ、時たま麻酔注射をしたり、膝から水を抜く治療を施して貰うだけとの事、 夫婦で悩み、HPを検索していて、ここ先生のHPにたどり付きました。
 まず鍼と指圧、どちらが膝に効果が有るのでしょうか? 先生の質問覧では鍼は効果有りとの事。次にそんな遠い処より、もっと近くを探したほうが良いのか? 最後に、家内は痩せることも出来ず、運動もあまりしたがりません、そんな気ままでも、治療を受ければ、全快とはいえなくても、多少和らぐものなのでしょうか?
答え:まず、膝が痛いのに痩せるのは難しいと思います。その理由は、うちにも膝の痛みで来る患者さんは多いのですが、膝が痛いと歩きたくないらしいので、ますます運動不足になって太り、体重が増加して膝に負担がかかります。そうした悪循環で悪化してゆくようです。
  鍼で治療した人は、膝の痛みならば、ほとんどよくなっています。うちでは1/3ぐらいが膝が痛む患者さんで、坐骨神経痛が半分以上を占め、寝違いや五十肩などが続きます。  鍼をすると膝に水が溜らなくなるので「ここに来ると水を抜いてもらえるそうですが」などと勘違いをして来る人もあります。  膝の痛む患者さんのほとんどは女性で、男性は坐骨神経痛や腰痛が多いです。その原因を考えてみますと、筋肉の発達度が違うからといえます。  女性は大腰筋が細いので、その中を坐骨神経が通っていることは少なく、大腰筋が痙攣しても腰が曲がってくるだけで、足には痛みが出ません。ところが男性は太いので、大腰筋の中を坐骨神経が走っている人が多く、大腰筋の収縮しっぱなしになると足に痛みが起きてきます。
  膝の場合では、女性は筋肉がないので、ちょっとしたことで大腿の筋肉が痙攣し、収縮しっぱなしになります。だから膝が痛くなります。男性は筋肉が太いので、なかなか筋肉が痙攣することがなく、使わないときは弛緩しています。だから膝の痛くなる人が少ないのです。男性で膝の痛む人は、筋肉に問題があるというより、打撲とか捻ったりして痛む人がほとんどです。  もし坐骨神経がないのならば、鍼でも、指圧でも、ホットパックでも治るのではないかと思います。ようは大腿の筋肉や膝窩の筋肉、フクラハギの筋肉などを緩めれば、それらの筋肉が付着している膝の痛みが消えますから。  指圧での治療は判りませんが、鍼ならば3回で痛みが消え、完治するのが普通です。しかし坐骨神経痛があった場合、うちでは13回もかかった人があります。完治しましたが、完治するまでかかりました。一般には8回ぐらいで治ると思います。指圧で、坐骨神経痛絡みの膝痛が治るとは、にわかには信じられませんが、治ると言われるのであれば、そうでしょう。  近くで捜すといっても、坐骨神経痛や大腿、下腿の筋肉を治療してくれる鍼屋さんは滅多になく、膝に鍼を刺して通電する治療がほとんどですから、一時的に痛みが消えても、徐々に歩けなくなり、期待外れに終わると思います。遠い鍼屋さんでは、通うのも大変だし、また期間を詰めて通うこともできず、往復するだけで疲れてしまえば、治療効果も上がりません。ですから遠くだったら、一ケ月ぐらい長期に滞在できるようにしてから行ったほうがよいと思います。長期滞在の予約をしてしまえば、相手も仕方ないと諦めて治療してくれるでしょう。  そもそも遠方からの患者は、治療師は嫌うと思います。それは遠方から来てるので、必ず治さなければならないとの責任を感じますし、治したところで近所から患者を連れてきてくれるわけでもないので、割に合わないからです。だから部屋を取ってしまうのです。そこまでの熱意があれば、治療師は断れません。
  というわけで、治療してもらうにはどうするかを回答したわけですが、次の質問の「鍼と指圧、どちらが膝に効果があるか」との質問は、指圧をしないので判りません。
  「近くを捜したほうがよいか」との質問は、腰とか大腿とか、フクラハギを調べて治療してくれる鍼屋さんでないと、膝が痛いから膝に鍼する方式しかなければ、遠くでも捜したほうがよいでしょう。  最後に「痩せることもできず、運動もしませんが」とのことですが、膝の痛む人は、すべてそうです。それだから筋肉が衰えて膝痛になったわけで、それを治して歩いたり正坐できるようにするから治療なのです。そんな状態でも、正常人のようになります。  ただ、すべての膝痛が鍼や指圧で治るかというと、そうではなく、膝内部の軟骨に障害がある場合は、内視鏡を使った手術が必要です。膝の中に潤滑剤を入れたりもします。
  まず重要なポイントは、膝痛で、夜間に痛みがあるかどうかです。夜間の痛みがあれば筋肉の問題なので、たいてい治ります。それからズボンを下げて腿を見ますと、膝の皿の内上方が凹んでいたりします。一般の腿ならば、皿が凹んでいて、その上部の大腿は隆起していなければなりませんが、隆起していなければ筋肉が弱り、引きつっています。大腿の内側を見てみると、やはり筋肉がなくなって、すぐ下は骨じゃあないかと思うほどになっています。膝の裏からフクラハギを押さえて痛がるようならば、そこの筋肉が痙攣しています。  そのように押さえて痛む筋肉に刺鍼して緩めるのですが、そこをマッサージして筋肉を解しても効果があります。もちろん鍼のほうが早く解れるので、効果も高いのですが。
  こうして筋肉が解れてきたら、それにしたがって膝の痛みが和らいできます。そうしたら筋肉に血が循環するようにしてやります。  最初に引きつって、骨皮のようになっていた腿は、触ってみると冷たかったはずです。それは血が流れていなかったため、体温が伝わらないから冷たかったのでした。  マッサージして筋肉が解れてくると、以前ほど大腿が冷たくなくなっているはずです。そうなったら血液が足を循環しはじめたことを意味しますから、少しずつリハビリをして筋肉をつけてゆきます。筋肉が解れていないのにリハビリすると、血液が流れていないので、運動しても酸素や栄養分が運ばれてこず、逆に筋収縮がひどくなって悪化します。だから筋肉が解れてから運動します。
  そのリハビリは、仰向けに寝て膝を伸ばし、足先を上に持ち上げます。病院では「途中で停めろ」とか「重りを足首に付けてやれ」と言うようですが、そんな無理な運動をして悪化し、「もう運動はしません」という患者さんが多いです。だから無理はいけません。ただ10回ぐらい、足を挙げたり下げたりします。そして1日に1回ずつ、回数を増やしてゆくのです。夜寝る前だけします。これを朝昼晩とやったり、勝手に回数を増やせば、大腿に負担がかかって、かえって悪化した患者さんがいます。痛みが消えないというので、詳しく事情を聞くと、本人が「多く運動すれば、多いほど早く良くなるかと思って」と言っていましたが、普通の方法に戻すと、順調に治ってゆきました。  こうして1年ほど続けていると、一日375回上げることができます。  次に膝の内側が痛む場合ですが、膝の内側や縫工筋をマッサージして緩めたら、膝と膝の間に枕を挟んで締めつけます。これを一日10回、一日ごとに1回ふやしてゆきます。  もし旅行などで運動できなかった場合、例えば当日まで50回の上下運動をしていたら、1週間ぐらいできなければ、50-7=43回から始めます。年齢を重ねると筋肉が衰えやすくなるので、中止した時点の回数から始めると、足に過剰な負担がかかるからです。

  こうした運動をすれば、筋肉が着いて痙攣しなくなくなり、膝の痛みが消えます。私のところで、以前に膝痛の治療をしていた人達は「あれから何年も膝痛が起きません。不思議です」と言いますが、運動を続け、筋肉が衰えないので、当然のことです。しかし、やはり100歳ぐらいになれば、筋肉が太るより衰えが勝り、やはり痩せ細ってゆくようになるとは思います。でも、80ぐらいまでは問題ないようです。

  大阪では、私の弟子の二天堂が、私と同じような治療をして治してくれると思います。ただ、この男、教えるには教えたのですが、どれだけ忠実にやるか判りませんので、坐骨神経痛がないのか質問し、運動の仕方を教わり、テーピングもしてもらうようにしてください。だいたい、この三つが北京堂の補助治療です。神戸ならば、大阪から通えるでしょう。

  以上で膝痛に対する答えは終わりです。たぶん全快するでしょう。
  ここからは関係のないことですが、さっき「運動すれば筋肉が付く」と言いましたが、本当は筋肉など付かないのです。患者さんも「そんなこと初耳だ」と言います。  筋肉細胞というのは、最初は心臓のように核がたくさんありますが、それが消えて一つだけ残り、細長い筋肉細胞に核が一つだけあるので、最初から細長い細胞のように思えます。その数は、生まれたときに決まっているのです。  じゃあ運動すると、なぜ筋肉が太るのか?  それは筋肉細胞の間に、細い血管ができてきて、その血液のために太くなるのです。だから細い筋肉は白く、太い筋肉は赤く見えます。つまり太い筋肉には、血液が大量に循環しているので赤っぽく見え、エネルギーや酸素も大量に運び込まれ、老廃物が運び出されて、使っても柔軟性を保っています。  ところが使わない筋肉は、徐々に血管がなくなってゆき、白っぽい筋肉となって血液が通わないものですから、そこにあるエネルギーとか酸素を使って運動します。ところが血の流れが少ないものですから老廃物は運び出されず、酸素も不足して、筋肉は死後硬直のように縮みっぱなしになってしまいます。それで筋肉が骨に付着している部分が引っ張られて痛み、そのために膝の一側だけが引っ張られ、圧力で軟骨が死んで、膝が曲がってしまいます。膝が曲がったのは軟骨が原因なので、鍼では治りませんが、痛みは消えます。  このように血管が豊富に通っている筋肉を作ることが、膝の痛みを消すには重要なのです。それを作るためには、最初に筋肉の引きつりを鍼で緩め、筋肉が緩んで血管を圧迫しなくなったら、少しずつ動かして、さらに血流を促します。このように血液を流す必要があれば、徐々に血管が作られてゆきます。  まあ患者さんの常識では、筋肉は増えて、血管はできないというものですが、我々の常識では、筋肉は増えずに血管が増えてゆくというものです。


質問:同僚の子が肩こりを感じない子で、マッサージをしてあげるとものすごく痛がります。ストレスを人より溜める子で、母親が早くに心筋梗塞か脳卒中でなくなっていて、ストレスを溜めすぎたり、自分を責めたりすると狭心症の様に胸をおさえて苦しみます。この先が心配でなりません、いかがなものでしょうか?
答え:これはやっかいです。というのは、一般的にマッサージをすると、すごく痛がるということは、かなり重症だと考えられますが、それなのに「肩こりを感じない」とのことです。これは肩が凝り過ぎて、感覚が麻痺し、痛みを感じなくなっているのです。そうなると急に首が回らなくなったり、五十肩になったりします。
 今の段階なら鍼でも治るでしょうが、痛みを感じないということは、筋肉が神経を圧迫し過ぎていて、痛みの信号が脳に伝わらず、痛みが判らない状態と考えられますので、鍼治療をすると、筋肉が解れて神経の感じている痛みが脳に伝わり、痛みを感じるようになる可能性があります。それは治るプロセスでの前段階、好転反応なのですが、本人は逆に悪化したと感じるでしょう。ですから、そういう人を治療するには、よっぽど治療経験を積んだ人が必要で、まず本人を信用させてからでないと、痛みが発生した時点で、本人が治療を止めてしまう恐れがあります。
 中国の頚椎症の本を読んでみると「首が原因となって起きる心臓病」というのが記載されていました。それまでは、心臓は動脈硬化などで血管が塞がったり、抗体反応などで心臓病になるものと思っていましたが、首が悪くなっても心臓病になるのかと、初めて知りました。
 実は、私も似たような経験があり、夜中になると心臓を握られたように痛くなって、目が覚めたことがありました。そのうちに五十肩になったのですが、五十肩を治すために頚の本を色々調べたところ、そうしたことが判ったのです。
 まず頚からは迷走神経が出ており、それが心臓の裏を通って胃まで走っています。
 最初は狭心症になったのだと焦りました。しかし、調べるうちに原因が頚にあることが判り、自分で鍼をして治ってからは、心臓の痛みが出なくなりました。当時は胸を押さえて動けなかったほどです。恐らく中国人の嫁さんと結婚していて、習慣の違いからストレスが起き、そのために起こった心臓痛じゃないかと思います。何せ中国の嫁さんは罵りますから。それが愛情の表現とは、外国人である私には、まったく判りませんでした。

 結論としては、早目に治療しないと、本当の心臓病になってしまうかもしれないということです。今の状態では、後頚部ばかりではなく、背中全体が堅くなって痛んでいるかもしれません。
 仕事が自動車屋さんのようですが、前かがみで物を運んだりしても、背中が凝ってきます。
 精神科のほうで、行動療法の理論があります。それは「悲しいから泣くのではなく、泣くから悲しいんだ」という理論です。それと鍼灸は似ていて、身体と精神は表裏一体と考えています。
 恐らく治療のなかから生まれた考えなのでしょう。初めて治療しにくる患者さんは、みんな暗い顔していて不機嫌です。しかし、治って痛みが消えてゆくにしたがって、朗らかになり、話好きになってゆきます。そして来なくなります。
 考えてみれば、身体が常に痛ければ、気の休まる暇がなく、何を考えても否定的にしか考えられないのも当然です。
 ある患者さんなんか坐骨神経痛で動けなくて来たとき、「治らなくても、いいのです。私なんか、そうして姑さんの世話をして来たんです。だから嫁にも同じ思いをさせてやります」というので、「そんなことを繰り返していて、どうするのですか?」と説得しました。幸いにも6回ほどで良くなり、元気に働けるようになって、何年か後に再発したときは、すぐに治療にやってきました。そのときは、さっさと治して仕事を続け、嫁の世話などなりたくないという積極的な考えに変わっていました。
 このように痛みがあるときは、誰しも楽しくなく、ストレスが溜って発散できず、周りが自分を邪険に扱っていると考え、「生きていても仕方がない」と考えるものなのです。
 特に今の世の中は、就職がなかったり、消費税を10%にするとか、暗い話ばかりですので、そうした話は身を固くさせ、筋肉を緊張させて血行が悪くなり、背筋が緊張しっぱなしで解れることのない状態になります。すると身体の痛みで精神状態も悪くなり、悪いほうにばかり考えて、希望の持てない状態になります。こうして身体の緊張状態が、精神を鬱状態にしてしまうのです。
 程度が軽ければ、温泉に入って血行を良くしたり、マッサージや按摩することで身体の緊張が解れ、精神状態も回復すると考えられます。しかし狭心症様の症状が起きている現状では、やはり鍼ぐらい使わないと、筋緊張が解れないのではないかと思います。
頚や背中の筋肉が緊張していると、背骨の裏には自律神経があって、影響を受けて体調が悪くなったりするので、早目の治療を勧めます。
身体の不調がなくなれば、自分にも自信が持て、私のように何もしていなくても「自分は自分なりに意味のあることをしているのだ」と、勘違いできるようになります。
 また中国医学には祝由という分野があり、それは「精神を使って精神を治療する」というものですが、「五臓には、それぞれ五臓に基づく感情があり、相尅の感情を使って弱める」という理論に基づいています。例えば、ストレスを溜めたり、自分を責めるというのは、憂欝な感情で土に属しており、木に属す怒りの感情で破るなどというように、別の感情を使って治療するというのがあります。これは特殊な分野なので、鍼灸師ができるものではありませんが。
 しかし怒らせるのはともかくとして、木は肝で「将軍の官」なので、策略を考えるとされています。だからストレスや責めている原因を分析し、それの対処法を考えることも、策略を使うことになるので、土を木で尅すことの応用になると思います。

 まあ、いくら「鍼ならば解決が早い」といっても、鍼と聞くと恐がる人も多いので、やはりマッサージぐらいで身体を解してゆくのが妥当と思います。それに鍼と違ってマッサージは力加減が難しく、本人が痛がるようでは逆効果です。痛みの感情は、身を固くさせますから、もっと力を抜いて、柔らかくて気持ちのよいマッサージをせねばなりません。まあ、マッサージのことは専門家に任せ、そのような鬱状態の人は口を聞きたがらないので、話を聞いてあげたほうが、本人が喋っているうちに整理され、解決方法を考えるのではと思います。

 今度の質問を中国医学で考えますと、本人が積極的に対策を考えようとしないので、ますます問題が起こり、うまくゆかないことによる精神状態の悪化が身体の不調を招き、次々と病気が襲いかかり、早死にしてしまう可能性が高いのです。だから悪循環を断ち切るためにも、身体の緊張だけでも取り除けば、血がスムーズに流れ、気も順調に流れて鬱積しなくなり、気分も身体も快調になれば、少しぐらいの問題が起きても、キチンと対処を考えられるようになるはずです。
 私も身体が不調だったときは、生きていても仕方がないような感じがし、精神ともに落ち込んでいって、問題にぶつかったら悪いほうにしか考えられなくなって、「坐して死を待つ」ような状態になりました。だから同僚が特別なわけではないと思います。
 若い人が希望を持てなくなったのは、国の政策も大いに関係していますが、一鍼灸師では何ともしがたいことです。
 若いときはストレスに弱いのですが、何回も痛い目にあっていれば、そのうち打たれ強くなります。



 
質問:私は、この6ヶ月以上五十肩(左肩)に悩まされています。
 3月に整形外科に通いましたが、痛み止めの薬を投与するだけで一向によくならないため、リハビリを行う整形外科に5月から通院しました。
 こちらも痛み止めの投与、そしてリハビリで、6月には頑張りすぎて左肘がのびた感じになり、今も新聞を左手で長く持ち続けると痛みがでます。
 また、一番の悩みはこの2ヶ月痛くて寝返りのたびに目が覚め、熟睡できず常に寝不足状態なことです。一晩に平均5回くらいも途中でおきてしまいます。
 先生のHPでは五十肩なら3~6回の治療で治るとありましたが、島根まで通えません。先生の弟子さんが二人いらっしゃるとのことですので、もし、関東近辺にいらっしゃれば場所と連絡先をお知らせ願えないでしょうか? また、もしいらっしゃらなければ、どなたか推薦していただけないでしょうか?
 現在、仕事の方も比較的コンスタントに帰宅できる状況なので、今のうちになおして秋になって忙しくなった時の通院を避けたいと思っています。

 答え:私も三十五歳ぐらいのときに、五十肩になって、一晩に一回は目が覚めました。目が覚めると、呼吸が止まる痛みが肩にあり、石を踏んづけても肩が痛くて息が止まりました。 痛む肩へ鍼をしましたが、一向に良くならず、だんだんと痛みが増すだけ。
 それで、もしかすると肩が悪いから痛いのではなく、別の所に原因があるのではと考えて、いろいろと本を読みあさりましたが、そのなかに鍼灸臨床24000例とかいう本がありました。翻訳書が出ていますが。
 そこに五十肩は、痛む部分に刺鍼しても治らないと書いてあり、『小寛鍼』とかの本を読んでも、どうやら頚の凝りが原因らしいことが判りました。
 つまり五十肩の初期は、頚椎症だったのです。それで第7頚椎を中心に、神経根部まで鍼を刺入したところ、その夜から眠れるようになりました。母親とかにも試して成功し、患者さんに試しても1回の治療で夜中の痛みが消え、眠れるようになるようです。
 もっとも、うちに来る患者さんのほとんどは坐骨神経痛の治療で来るのですが、膝の痛みとか五十肩、難聴の患者さんもあります。
 残念ながら関東近辺には、この五十肩の治療法を教えた人はいませんが、このホームページの五十肩治療を持って行き、同じ治療をしてもらえば、やはり1回の治療で夜間の痛みはなくなります。しかし少々太い鍼を使わねばなりません。こんな治療は、誰でもできます。
 私も同じ思いをしたものですから、お気持ちは判ります。
 一番近いのは神戸の二天堂ですが、それは私の五十肩治療を何度も見ているので、たぶん1回で眠れぬ痛みを解消するとは思います。
 関東方面の要請が多く、昔の中国なら土地代がいらないので、さっそく移り住んで治療したいところですが、東京は土地代が高いので、そうもゆきません。また島根でも結構有名になったので、後継者なしで別の地域に移ることもできません。
 とりあえず第7頚椎の傍らに、日本の鍼なら10番の2寸、中国の鍼なら28号の2.5寸を腕が痺れる深さに刺入し、30~40分ほど置鍼してもらえるようなところを探したらどうでしょう。片側を第7頚椎を中心に3本ずつ背骨と平行に刺入します。
 それから、どんなに簡単な治療であれ、自分がその治療に自信を持っているからホームページに載せられるのであり、その治療をできるかどうか判らない相手を推薦する、知り合いなだけで推薦するのは、ちょっとできないことです。
 一番近いのは二天堂で、それならば第7頚椎を中心に3本ずつ背骨と平行に刺入すると思います。
 たぶんあなたの症状なら3~6回で完治するでしょうから、秋に通院することはないでしょう。3~6回といっても、正味は3回ぐらいで痛みはかなり消えますから。残った痛みなど、ほとんど気にならないでしょう。
 というわけで、あなたの悩みに答えられないのですが、治療所を大きくしたら、弟子もおけるようになりますので対応できると思います。
 これは頚が問題ですので、うちで家庭用頚牽引器が4000円でありますので、それをとりあえず使ってみられたら如何でしょうか。
 (この方は出張で大阪へ行き、二天堂で治療を受け、満足されたようです)

 
質問:至陰穴は、どう使ったら逆児を矯正できるのですか?
 答え:これは源草社『鍼灸学釈難』180に、そのままの題で掲載されているので、引用します。
 「至陰穴は、足太陽膀胱経の井穴で、逆児を矯正して胎盤を排出する作用がある。
 『太平聖恵方』には唐代の鍼灸家、張文仲が本穴に灸をして逆児を矯正した経験を「婦人を横たえて産道の先に手を出し……婦人の右足で小指の先に三壮、小麦大のもぐさを於て灸をすえる。火が降りれば、すぐに生まれる」と記している。
 『類経図翼』巻十一に至陰の主治を「嘔吐するが何も出ない、鼠径ヘルニア、腹の中で胎児が死ぬ、胎盤が降りない」と書いている。また「胎児が丸くなって降りてこない時、至陰に三稜鍼を使って出血させると、横の胎児がすぐに真っ直になる」とも書いている。現代の研究では、至陰穴に鍼灸をおこなうと子宮と膀胱の運動が活発になり、胃は拡張して血圧がしばらく低下することが判っている。逆児矯正の臨床治療では、棒灸を使うことが多い。毎日1回、15分間ずつおこなう。棒灸をした後は子宮が活発に動くほか、胎児の運動も活発となり、胎児の心率も速くなり、それが逆児矯正に有利となる。子宮および胎児の運動の振幅と周期は、灸をした1時間後か、その夜にピークとなるが、必ずピーク時に胎児が自然に逆立ちする。その効果は腹壁の緊張度が中程度の妊婦が良好で、腹壁が緊張した妊婦では悪く、腹壁の緩い妊婦は逆児が矯正されても、すぐに元の位置に戻ってしまう。一般的に1回目と2回目の灸で効果があり、3回目以降はあまり効果がない。江西省の灸による逆児矯正の研究グループが、1回20分として毎日1回ずつ至陰へ灸をすえ、9日を1クールとして治療した報告がある。100例の逆児を至陰の灸で治療したところ、1クールの治療で成功したものは71%、そのなかで妊娠34週目を過ぎていた妊婦は41例で、その成功率は61%であった。これは至陰の灸が、逆児の矯正に一定の効果があることを証明している」
 以上のように、棒灸なら小指の先が熱さを感じるまで暖めます。一般には直接灸が使われますが、冒頭の部分に「火が降りれば、すぐに生まれる」とあるので、陣痛を催す灸のようでもあり、すぐ生まれると困るのであれば、棒灸で暖めるほうが安全と思います。
 この記載によると、腹筋が発達している人は、胎児が引っ繰り返ろうとしても押さえ付けられているので矯正できない。腹筋が正常だったり緩ければ引っ繰り返るとのことですが、緩いと逆児矯正しても元に戻る可能性が指摘されています。
 三稜鍼でも逆児矯正できると書かれているので、爪楊枝でも縫針でも、きつい刺激を与えれば逆児矯正できる理屈になり、逆児矯正は灸に限らないことになります。
 これは一般の鍼灸と違い、神経を刺激する鍼灸効果を使っています。
 この文によると、腹筋が弱ければ、胎児が施灸した1時間後か当晩に矯正されるので、矯正されたときに犬印の腹帯を巻いて、弱い腹筋をサポートしてやれば胎児が矯正されることになります。妊婦の腹筋に、横スジが入っていて緩まなければ、灸をしても効果がないので諦めるしかないことになります。

 
質問:姫路で”鍼灸院”を開業した新米鍼灸師です。
 当ホームページの”腰痛の鍼治療”に、「腰背の実体は、脊柱起立筋の痙攣なので、それを緩めるためには少なくとも第7胸椎の両側2cmぐらいから第5腰椎の両側まで、各背骨の間へ刺入してゆきます。もちろん痛む側だけで結構ですが。そうして20~40分ぐらい留鍼しておけばほぐれます」と書かれています。
 私自身も、置鍼(留鍼)は必ず用いますが、どうして”筋の弛緩”につながっていくのか、メカニズムを知らずにおこなっています。
 「筋肉が弛緩するメカニズム」を教えてください。

 答え:視力障害で置鍼は、抜くときに数を数えてないと大変ですね。
 正直いって、この質問には困りました。刺鍼して筋肉がほぐれることを確認した書籍を読んだことはあるのですが、メカニズムを書いた鍼灸書を読んだ事がありません。
 しかし、日本でも中国でも、動物の筋肉へ刺鍼すると、筋肉が回復することが確かめられています。なぜ筋肉が緩むかというメカニズムは、生理学か生化学の問題かと思います。 そういう質問をする患者さんには、「鍼は金属だから電気を通す。筋肉は神経の電気パルスを受けて収縮している。だから異常収縮した筋肉の筋電図には、こまかなパルスが多く発生している。だが弛緩した筋肉では、筋電図にパルスがほとんどない。つまり異常収縮した筋肉では振動数の多いパルスが発生しているが、そのパルスがなければ筋肉が弛緩するということだ。鍼は金属なので、電気を通す。振動数の細かいパルスが流れている筋肉に、電気良導体である金属を差し込めば、パルスは金属を通って漏電する。つまり鍼によって高周波のパルスが逃がされるわけだ。そりゃあ刺してすぐは、鍼で漏電させても、まだ筋肉が収縮しているので、そこで鍼を抜いても収縮している筋肉によって神経は締めつけられ、神経は痛みを感じて興奮し、細かく振動するパルスを出す。だから筋肉の収縮が収まって、神経を圧迫しなくなるまで、鍼で筋肉収縮命令パルスを漏電させ続けなければならない。そして筋肉が収縮したのを確認してから鍼を抜く」と解説しています。
 これは、私が「こうじゃないかな」と、現実の治療結果からなんとなく感じ取った仮説なので、これは淺野仮説であって、何の裏づけもありません。でも、とりあえず、こういう説明すると、患者さんは「なるほど」と納得してくれます。
 実際には、どうかというと、細い鍼より太い鍼が、筋肉が緩むまでの時間が短く、銀鍼がステン鍼より緩みやすいようで、金鍼は緩みにくく効果も悪いという感触です。それと鍼の太さも関係があるようで、2番以上の鍼では筋肉が緩むようですが、1番以下の鍼では筋肉が緩まないようです。もしかすると、それなりの漏電時間が必要なのかもしれませんが。とりわけ、太い鍼は筋肉を短時間で緩めるという事実が、鍼の表面積が広いために電気の伝導面積が広く、電気が短時間で逃げるために、筋収縮が緩むまでの時間が短いのではないかと考えさせます。多く刺鍼すると、太い鍼と同じように効果があります。これも表面積が広くなるからと考えています。だが同級生に「それは太い鍼が体積が大きいので、筋肉を押しのけた体積が大きいからということもありえるで」と言われました。まあ、私は電気が関係していると考えているので、押しのけた物理刺激とは考えていませんから、彼の考えには賛同できませんが。もし押しのけたことが原因ならば、圧力を加えても筋肉が緩むはずです。それに押しのけることが、どのようなメカニズムで筋肉を緩めるのか、仮説すらありません。
 こうした事実をうまく説明するために、淺野仮説を考え出したのですが、「ステンレスは電気が流れにくいのでは?」と言われると困ります。
 不導体のガラスかなんかの鍼を使っても、筋肉が緩むのかどうかを確かめれば、この仮説が証明できるかもしれません。
 もっと細かなイオンの出入りとか、筋肉の滑り込みについては、鍼師の及ぶところではありません。
 まあ、いい加減な回答ですが、「なぜ置鍼すると筋肉が弛緩するのか?」ということについて、一つも回答した書物もない現状では、とりあえず、この淺野仮説を使って納得してもらうしか方法がないのではと思います。
 置鍼すると筋肉が緩むというのは、誰でも経験する事実であり、それによって血液が循環し、神経の圧迫が緩むというのが、大昔から続いた「鍼の治療理論」。つまり「通じれば痛まず、通じねば痛む」です。ですから事実を利用して治療しているので、その仮説が正しいかどうかは、あまり検証されないで、ただ説明できればよしとされ、鍼灸は科学と違った発達をしてきたのですが、そろそろ鍼灸も裏づけや根拠、証明が必要な時代になってきたとは思います。しかし二流鍼灸師の私は、それを証明する能力がありません。あわれなものです。
 もし、もっと納得できる仮説があれば、ぜひ教えてください。

 
質問:ではマッサージや灸も同じ原理なのですか?
 答え:マッサージや灸は、鍼とメカニズムが違います。灸も瘢痕灸と温灸があって、作用が異なります。
 筋肉収縮パルスを漏電させて消すのは、鍼には当て填まるかもしれませんが、他の治療法とは全く異なります。

 マッサージは簡単で、筋肉を揺り動かすことによって、筋肉内部で圧迫された血管から血液を少しずつ追い出すと説明されています。硬直した筋肉は、神経だけでなく血管も締めつけますので、血液循環が悪くなってエネルギー物質が不完全燃焼し、ブラジキニンなどの発痛物質が局部の血管で濃厚に留まっていると考えられます。そうすると発痛物質が神経を刺激するので、ますます筋肉が収縮し、悪循環を繰り返すと考えられます。それをマッサージという機械刺激によって、滞った血を無理やり動かして追い出すため、血液循環がよくなって発痛物質が筋肉外へ運び出され、筋緊張が緩むと考えられます。ですからマッサージや按摩では、血液が循環する程度の力で揉めばよいわけで、必要以上の力で揉むと筋肉を痛め、緩すぎると血液が追い出せないわけです。新しい血液は内臓で暖められていますので、筋肉が緩んで血液が流入すると赤外線像で色が変化します。血が滞っていれば、体温をもらえないので、局部の温度が低下します。電気鍼で、筋肉を振動させる方法は、こうした理論により「筋肉を動かし、発痛物質を運び去る」としていますが、パルスでは筋肉自体が仕事するので、エネルギーを使っているわけだから、同じとは思えません。これも力が届くのは表面なので、マッサージも軽い表面の病気しか治せないことになります。

  次に灸ですが、これは温灸と瘢痕灸があります。温灸は赤外線照射と同じで、皮膚表面が強く暖められるため、そのままにすると肉が焼けてしまうので、身体は皮膚表面の毛細血管を拡張させ、血液循環を促進して熱を運び去り、局部が焼けないように防衛します。それが温灸の作用で、浅いですがマッサージと似ています。

  瘢痕灸は、中国では余り使われず、穴位埋線や組織埋植に変わっています。
  その原理は、直接灸をすると、奥の肉は血液で熱を運び出されるため焼けませんが、皮膚表面は焼けて、焼けて変性した蛋白質が残ります。その蛋白質は、皮下の細胞と接しています。すると身体としては、今まで隣にいた細胞が、何やら違う蛋白質に変わっている。「これは大変だ、ばい菌に食われた」となるのです。そこで身体に危険な異物が侵入したことを報告し、身体は臨戦体制に入ります。そこで変性した蛋白質に攻撃を始めますが、それによって身体の免疫力が目覚めさせられ、ついでに他の病気も治っちゃうのです。しかし瘢痕灸によってできた異物蛋白質は、ばい菌と違って増殖せず、無抵抗に食われるままとなっているので、「灸の蛋白質が増殖して身体中に広がった」などということはありません。まあ丸山ワクチンみたいな免疫療法です。中国では、瘢痕灸をすると、中国の灸はデカイので、みにくい痕が残り、訴訟になることもあるので、瘢痕灸の代わりに穴位埋線が使われます。これは消毒した絹糸や羊の腸で作った糸を筋肉内に埋め込む方法なので、穴位埋線療法と呼ばれています。しかし基本的には、増殖しない異種蛋白を入れて、免疫力を覚醒させる方法なので、瘢痕灸と方法が違っても同じ治療法といえます。
  こうした瘢痕灸は、リウマチや喘息、慢性肝炎など免疫疾患や、結核などの慢性疾患などで使われます。こうした病気は、ばい菌と身体が仲良くしており、身体のほうとしても気にしないのですが、いったん瘢痕灸などで異種蛋白が入り込むと、免疫力が目覚めて攻撃に転じますので、病気が治ったりもしますし、また「瘢痕灸を攻撃したけど別に害になるものではなかった」と身体が判断しますと、過剰なアレルギー反応を抑えたりします。
現代中国では瘢痕灸が使われないので、免疫アップの順序が「鍼<灸<電気鍼」とされていますが、日本のように小さな瘢痕灸であれば、その順序も「鍼<電気鍼<灸」に変わることでしょう。

  以上をまとめると、全部を統一する理論はなく、それぞれの理論があって作用も異なるということです。鍼、マッサージ、温灸、電気治療は、だいたい似たようなものとして一括できますが、瘢痕灸と穴位埋植療法は別のグループと見なければなりません。
  ですから昔は「鍼と灸は車の両輪である。どちらを欠くこともできない」と言われていました。「作業現場で使うネコ車や一輪車には、両輪がない」との理屈もあるでしょう。中国には一輪車がなかったため、車の両輪に喩えられていました。
  つまり鍼と灸は治療作用が異なって適応症も違い、統一する理論などないというのが現実です。経穴も、禁鍼穴と禁灸穴は違います。例えば臍は、鍼がしませんが施灸します。
  なお、これは鍼の治療作用の一部を解説したもので、鍼麻酔とか脳卒中の鍼などは、別の理論でなければ説明できません。

 
質問:81になる父、76の母の両親に孝行と、知人から教えて頂いたテルミーを両親にしております。
 鍼灸の書籍を購入し、両親の調子が良くなったり、体調を見ていて興味を持ち、先生のホームページを拝見しております。
 そこに「治療には順番があり、経絡の走行を止めてしまうと、中に病気が逃げ場を失ってしまう」というような内容が書かれていましたが、さてどんなことやらと悩んでおります。
 先般、父が頭が痛く具合が一日悪い日に呼ばれ、百会に2-3回ですが温熱をしたところ、パチンとしたといって、その後具合が良くなってくれました。また手足にしておりますが、爪が伸びる感じだと喜んでます。
 いま、読んでいる書籍は、沢田先生の鍼灸真髄です。

答え:「治療には順番があり」とは、うちのQ&Aに書いていることだと思います。「経絡の走行を止めてしまうと、中に病気が逃げ場を失ってしまう」というのは、「経絡が流れなくなると病気が発生する」と書かれていることだと思います。
 沢田流の本は読んだことがありませんので、よく知りませんが、弟子の二天堂が読んでいますので、二天堂のQ&Aに尋ねたほうが早いと思います。

 治療の順番とは、病気が表面から奥へ進行してゆくので、その程度にあった治療法をするということです。テルミーは「中国の温灸を考案者の医学博士が持ち帰った」というものですが、当時に使われていた温灸が、テルミーのような感じでした。
 ただしテルミーは直接灸と違うので、熨法、つまりホットパックの一種と考えられ、病気も初期の軽い段階でないと効果がないと考えられます。本当の病人を治療するというより、半病人を治療する方法というところでしょうか。
 テルミーは素人にも簡単にできて、あちこちに広まっているので、温灸を一般に広めた功労者でしょう。現在は、中国でも電気で暖める温灸があって手軽ですが、コードが邪魔になるので、テルミーと優劣つけがたいでしょう。
 まあ私見では、テルミーは値段が高すぎるのが欠点でしょう。

 私は中国の本が千冊ぐらいあり、日本語で書かれた本を読む余裕がありません。それに鍼灸師の素養として、沢田流の本を必ずしも読んでいなくてよいと考えています。
 中国でも沢田流のツボが紹介されていますが、鍼灸の本は『素問・霊枢』や『難経』を自分流に解釈したものなので、ツボの部位表現が曖昧なため、沢田流とか様々なツボ位置解釈が生まれてきます。中国でも北京式のツボの取り方や、北京式の呼び名があるので、当然にして日本と中国ではツボの位置が違うものも、環跳や養老を初めとしてあります。

 昔は漢文を読める人が鍼灸師に少なかったため、読める人が自己流に解釈して、見解の相違ができたと思います。沢田流の経穴を読みますと、『内経』の内容から「なるほど、そうとも解釈できるなぁ」と思えるので、そのツボの取り方が間違っているとは云えません。昔の表現は曖昧ですから。恥骨も鎖骨も横骨と呼んでいましたから、解剖用語などエエ加減なものです。当然にして解釈によって誤差がでます。
 私の『鍼灸大成』にしろ、原文では脱落があったり、止が正になっていたり、其が具になっていたりと、似たような文字を書いているので、それをママに打ち込めば、なんだか意味の通じない文章になってしまうため、大成が引用している部分を捜し出し、引用が脱落してないか?
誤字がないか? と訂正します。原文と比較して脱落していても、それが意味の通じる文章ならば、著者が省いたと考えます。だから漢文が読めるだけでは、鍼灸の古典を解釈することはできず、最初から誤字や脱落のある文章を、そのままアップして意味の通じない文章を公開しても、益のないことと思います。だから主観が入るわけですし、何冊かの古典や解釈本を参考にしながらでないと読めません。

 ただ、沢田流に書かれたツボを、そのまま沢田流として覚えるより、『内経』に書かれた原文と比較して、「なるほど、沢田は、このように解釈したのだな」と、理解するほうが、深みが違います。だから江戸時代は、そうした解釈できる人に門弟が集まってきました。本も高かったのですから。

 現在では、印刷技術の発達と、製紙技術の発達で、先生に解釈してもらわなくとも、だれでも本を買って自分流の解釈ができる時代になりました。

 西洋でいえば、聖書を神父さんに解説してもらわなければならなかったものが、自分で聖書を手にして読める時代になったようなものです。まさに鍼灸のピューリタン革命です。
 そして鍼灸の聖書は、沢田流でなくて『内経』と『難経』なので、極端な話、それ以外は読まなくても通ります。そこで沢田流は、中国語で書かれた解説書で読むといった妙なことになりました。でも、そういうことは、よくありますよ。例えば、私などは『おしん』の台本を中国語で読み、日本語に翻訳して、非常に感動しました。そこで原書が読みたくなって古本屋を回り、手に入れたのですが、山形弁で書かれた非常に読みにくい代物だったので、少し読んで飽きてしまいました。

 本題に帰りますと、テルミーは表面の病に効果があり、病が奥まで進行すると鍼や薬を使わねばなりません。
 うちにきた某永島さんという人は、息子が脳卒中になったのでテルミーをしたが好転せず、結局は鍼で職場復帰できました。
これが順序の例です。

 「経絡の走行を止めてしまうと、中に病気が逃げ場を失ってしまう」という文ですが、私ならば「循環障害が起きれば、そこから様々な病気が発生する」と解説するでしょう。
 それぞれの人が『内経』を自分流に解釈したから、そうした文になるのです。

 温灸とか導引(太極拳などの体操)は、経絡の気血を滞らせないようにする方法なので、テルミーがプラスにはなっても、マイナスにはならないと思います。しかし、そうした健康法をしていても、病気が進んでしまうこともあります。そのときは鍼などで早期治療すると良いのです。
 足の裏マッサージとか、エステのような軽いマッサージも効果があるでしょう。

 しかし現在、不快に思っていることがあります。それは整体で、患者さんで「整体へ行って、頚をボキッとやられたら、それから胸が痛むようになった」とか、「顔がチクチクするようになった」とか、長期の場合は鬱病のようになる患者さんがあります。頚椎には障害がないので、鍼で治りますが、ワザワザ病気を作るというのは、いくら私の患者が増えても歓迎できません。

 私の中医学院は、鍼推系だったので整体もありました。ですが、その先生は「頚はキケンな場所だから、ゆっくりと引っ張る程度で、腰のように力を入れて、反動をつけて引っ張ってはならない」と、固く注意していました。

 鍼が肺に刺さっても時間が経てば治りますが、頚をポキッとやられて悪くなったものは鍼をしないと治癒しません。しかもムチウチ症のように、最初の一発では鍼の効果がなかったりします。そこで病院でレントゲンやMRIを撮影して異常のないことを確認し、「異常がありませんでした」と患者さんが報告して、3回ぐらいの鍼から効果が現れたりします。そして「そこに文句を云ったらどうですか?」と勧めると、「文句を言ったが、肺が悪いから胸がチカチカするのだろう」という答え。
 胸が悪ければ、咳ぐらい出ます。

 こうした整体による「医源病?」が、最近とみに多くなっているので、特にクビポキは危険なので止めたほうがよいと思います。何で厚生労働省で禁止しないのか不思議です。私も鍼灸学校時代に、同級生に背中ポキをやられて、今も疲労すると、そこが痛む後遺症が残ってしまいました。背中のため自分では治療できないので、治療させるために弟子を養成したのですが、うちにいるときは目の届かないところで治療されるのは不安があり、安心できるようになると遠くへ離れるので治療してもらえず、まったく困りものです。

 それはさておき、素人でも鍼灸のことが知りたければ、『内経』を読むとよろしいかと思います。そこには「気血は冷えを嫌い、冷やされると流れにくくなる。気血は暖かいのを好み、暖まると気血が流れる」というような内容が書かれているので、テルミーは軽い病気を治すのに効果があると裏づけられます。何せ、鍼灸師は、『内経』に書かれていることは否定しませんから。

 質問:内経も難読と思っていましたが、早速書店にいってみます。先生の『全訳中医基礎理論』等も、判りやすく読み始めております。
 
テルミーは、温熱として利用するには手軽で暖かみがあり、部分的に刺激するには、どこでも使えるので重宝です。
 沢田先生の書物も、よくツボが出て来るので興味を持ちました。十四経発揮・和漢三才絵図が書かれておりました。お弟子さんがいる間は残るのでしょうが、オリジナルとは少しずつ施術方法も変わってしまうのでしょうね。
 整体の先生のお話も、知合いが「頚椎を治すと全体が良くなる」と言われ、治療を受けた結果、具合が悪くなって数日休んでしまった人もおります。アメリカでは医師と同レベルの資格と認められているのに、不思議ですね。

 答え:『内経』は難読なので、素人の読むものではありません。書店に行かないほうがいいでしょう。でもプロ並みの知識を身につけたいとおっしゃるのなら、止めませんが。ホームページで検索すれば、アップしているところがあります。
 アメリカでは、カイロプラティクが医師と同レベルと見られているというのは、どうやら間違いのようです。テレビ番組でも、救急医療センターのドラマなどあるようですが、カイロや鍼灸師のドラマは聞いたことがありません。
 それにアメリカでは1990年代に調査チームを作り、さまざまな民間療法を調査したそうです。その結果、カイロプラティックなどは有効性が認められず、アロマテラピーや漢方薬、鍼灸には効果があると認められたものの、鍼灸が如きは「効果はあるものの、その治療理論の根本となる気の存在は、全く認められなかった」との調査結果だったと、新聞に載っていました。
 つまりカイロも鍼灸も、医者と同レベルでは見られていないということです。
 もっとも私に言わせれば、アメリカの鍼技術は局所治療が多く、レベル的にかなり低いと思いますが。
 中国の鍼灸は現代医学と異なり、解剖に基づいた医学ではなく、現実の治療効果を想像で解釈していったようなところがあります。子午流注や霊亀八法などは、その最たるもので、実際的な効果がなかったので廃れてしまったのです。
 気の存在というのも、実際は感覚的な筋肉の堅さや痙攣、患者の筋肉が締めつける感覚などのことで、そうした実際に見えないものを感じ取る触覚のことですが、文字通りにしか解釈できないアメリカ人には、2000年以上前の文章を翻訳せずに理解したのでしょう。
  ただ現代医学は、やはり王者だと思います。テルミーや鍼灸、カイロなどでも、それに取って代わることはできないでしょう。だから清朝になると鍼灸が廃れて、西洋医学が認められた。日本でも同じ状況になったのは、やはり治癒効果が優れていたからでしょう。 ただ西洋医学は、癌とか骨の変形を見て治すことができても、筋肉の引きつりや血液循環の悪化などによる治療ができないので、それを補完するものとして鍼灸が必要だと思います。そして西洋医学や手術で治る病気は病院に回し、治る病気だけ鍼灸で治せばよいでしょう。だから北京堂の治癒率は、ほとんど100%に近いです。治すのが難しいのを、例えば奥にある脳出血とか、動脈がボロボロになった脳梗塞の治療を断りきれなくて、治癒率が下がっているだけです。我々は患者を選べるので楽です。
 それを考えれば、病院は大変です。どんな患者も、断れないのですから。
 でも、鍼などは即効性が勝負ですから、治しますと言った患者は、100%ぐらいの確率で治さないと、信用されなくなるのではないでしょうか?
 鍼では、後遺症が一生残ったり、死んだりすることは、よっぽどメチャクチャしないかぎり起こらないので、みんな恐怖は持つものの信用しているわけで、それでも患者さんには、「実は、鍼した直後に相次いで友達が二人ほど死んだので、実は鍼するのが恐かった」とか打ち明けられると、「鍼灸師に、鍼の恐ろしさを啓蒙する書物を公開せねばならないな」と思います。危険を知って鍼治療すれば、絶対に事故なんか発生しようがないのですから。
 それに較べて医者は大変です。死の危険がある患者を扱わねばならないのですから。
 我々が日中友好へ実習に行ったとき、「典型的な患者がいるから連れて行く」と言われ、病室へ行ったら家族と看護婦が泣いていたので、今日は死んじゃったからダメダと言われたことがあります。また指を切断して、手を押さえながら飛び込んできた患者もありました。同級生のインターンは、若いから夜勤にされ、夜間は自殺者が多くて、睡眠薬を飲んでいるため胃洗浄をやったとか。そんな話ばかりでした。
 日本では考えられないくらい医者の給料が安いので、それも考えれば我々は幸せです。
 知り合いの話ですが、頚椎を治しても、頚椎症とかでないかぎり全体が良くなるとは言えず、ああした商売は「水子の霊」と同じく、サギのようなものと思います。医者もいろいろで、めちゃくちゃな診断をする病院が、我々の地方にもあります。だから複数の治療家の意見を聞いて、参考にすることが重要と思います。「十カ所の病院を回って、全部違う診断をされた」という患者さんもあります。私の母親も、複数の病院を回って、最後に癌を発見してもらったわけで、その途中で精神科に回されそうになったこともあったようです。患者さんの中にも、どう考えても整形の病気なのに精神科へ回され、精神科と整形をたらい回しにされた挙げ句、私が治した人もあります。
 患者さんは素人ですから、だまされやすいのは理解できますが、複数の人に相談してみれば、多数意見として、ほぼ正確な答えが出てくるのではないかと思います。
 その知り合いも、「頚椎を治すと全体が良くなる」と言われて、すぐに飛びつくようなことをせずに、病院へ行って「『頚椎を治すと全体が良くなる』と言われたが、本当にそうなのか?」と、意見を尋ねてみられればよかったのです。
 頚ポキによるムチウチ症は、頚椎が損傷されていれば訴訟もできましょうが、斜角筋が痙攣したり斜頸になったものは、透視写真でも判らないので、証明が難しいと思います。 恐らく治療している人も、頚ポキが危険なものだと知らないのだと思います。それで気安くやったことが、後で問題を起こしたと言われても、責任の取りようもないし、本人も困っていると思います。まさか島根まで治療に来るわけにも行かないしね。ところで中医基礎理論には、誤字があります。気にはしていたのですが、すぐに訂正版が出ると思っていたので。ですから中医基礎理論のホームページに掲載しようと思います。決定的な誤りだけ。

 
質問:医療とは何か、治療とは、仁術は何か、問題が山積ですね。仁術だけでは食えないのかも知れません。
 父は光線治療器を愛用しており、先日も母が治ったといって夫婦で仲良くやっています。小生はテルミーで親孝行のまねをしております。
 加齢による体の老化は止められないまでも、「だいじょうぶだよ、お母さん」と言いつつ、正確なツボは判らないので、テルミーは素人に、ちょうど良い物と考えています。
カイロの件は、友人も良いと言われ、紹介されて行ったので、なかなか難しいです。1秒治療というパンフを見せて頂き、凄い製本までされているのですが、鍼灸師でも、DCでもない・・難しい所です。人の体も十人十色、絶対に良いとは言い切れない恐さがありますね。あのポキポキが好きな方もおりますから、選択の自由かなと思っております。患者さんは、あちこち廻って良く知っているから、良い評判と悪い評判を聞き、詳しくなってくるのでしょうね。
 西洋医学の素晴らしさと、東洋医学がうまく融合すればよいですが、今の時代はなかなか難しいです。ただ、医者も患者さんに触らない先生が増えているみたいで、コストと患者さん消化のため、手間を掛けている時間が無いのかもしれません。5~10分で診断治療は神業と思います。夜勤も歳いってもあるし、大変な職業だと思います。
 
 答え:カイロは、うちの患者さんでも、被害者が多いので支持する気になれません。
 中国でも、整体名人のようなおばあさんのビデオを見せられたことがあるのですが、奇形で背骨がズレやすい患者の背骨がズレたとき、身体が固まって動かなくなったのですが、それを指でポコポコと入れてゆくと動くようになりました。しかし背骨の関節が不完全なため、入れても一時的な効果に過ぎず、結局は何かの折にズレてしまいます。関節を作るとかしなければ完全な解決にならないと思います。
 私も20年以上前に、カイロプラティクの本を読んでみたことがあるのですが、その理論が、私の頭では理解できませんでした。
 まず神経は脊髄から出ているので、背骨がおかしければ身体に異常が起きてくる。
 そこまでは理解できます。
 それをポキポキ動かして真っ直ぐにする。これが理解できません。
 背骨の関節も、上下で関節されていて、簡単には動かないようになっています。頚の関節は別ですが。
 関節というのは、歯の上下が噛み合うのと同じく、出っ張ったところと窪んだ部分がピッタリ一致するようにできています。ちょうど歯車やジグゾーパズルのようなものです。 その上の関節が、下の関節とズレているということは、脱臼しているということなので、すぐにキチンと填め込ませねば、関節の高い部分と高い部分がぶつかり、あまりの圧力で骨が死んでしまいます。と、このようなことが朱漢章の『小針刀』に書かれていました。それが簡単にズレるということは、関節の凸部分が死んで両方とも平らになり、いつでもズレることを意味します。脊椎スベリ症ですね。それを填め込んでみたところで、また重みが加わればズレます。イタチゴッコのようなもので、解決がつかず、それを一時的に真っ直ぐにしたからといって、治癒したとは言えません。だから家伝のおばあさんのビデオを見せられても、あまり感心しませんでした。それは、どこからか骨を取ってきて、関節を作り直すしか完治させる治療法がないと思うからです。
 スベリ症でなくとも、背骨が歪む場合があります。それは、背骨にも筋肉が付着しています。そして上の骨は、下の骨と筋肉によって繋がれています。そこで右側の筋肉だけが収縮しっぱなしになって上下の骨を引っ張ったとすると、背骨の右側が引っ張られて短くなるので、身体は右に歪むことになります。こうしたケースは、主に腰の痛みで腰が歪む症状となって現れますが、頚でも寝違いや斜頚のような症状、背中でも起こります。そうした場合に、鍼で筋緊張を弛めてやることが肝要で、無理に背骨を引っ張って真っ直ぐにしても、筋痙攣は解消してないので、家へ帰れば元の木阿弥になってしまいます。
 「背骨の関節がない」という場合は、確かに一時的に有効でしょうが、根本的な解決にならず、それに関節がないのは、事故で骨折したり、先天的な奇形の場合で、一般的にきわめて少ないと考えられます。少数だから無視するというわけではありませんが、カイロの理論は、私にとって非常に理解しがたいのです。
 1秒治療には驚きましたが、5~10分の診断治療も不安です。やっぱり初診は20分ぐらい必要です。
 ただ要領を得ない患者さんもありまして、鍼でも漢方薬でも、まず処方して治療してみて、その結果を尋ねて治療法を修正して行く部分もあります。
 まあ、私も納得できる治療なら否定もしませんが、カイロを理解できないのですから、それで悪くなったと聞くと、そんな根拠のないもの治療じゃあない。と思ってしまうワケです。
 患者さんに触らないのは、恐らく保険制度の問題と思います。
 手で触ったって、一文にもならない。検査すれば、検査費用が取れる。薬を使えば、薬代が取れる。だから手で触らないのでしょう。
 建築で言えば、建物の値段より、使ったセメントや材料の量で価格が決まるといったものです。
 本当は、その病気を治していくら、と治療費がもらえると良いのですが。患者を診て、いろいろな治療師が、治療の見積もりをして、入札するわけです。そして最低価格の人が患者を治す権利を得る。治れば報酬がもらえるが、治らねばもらえない。死ねば罰金を払う。こういう風にすれば、簡単でよいと思いますが、ここの辺りの患者さんは、仮に治らなかったとしても、「こんなに色々と治療してもらって、払わないわけにゆかない」というので、話がややこしくなります。車の修理に出して、故障部分が治っていなかったら、誰しも代金を支払わないと思うのに、治療では、そうした常識が通じないようです。
 中国では、健康新聞などに患者側から「私の病気を治してくれたら幾ら払います」との広告が掲載され、治療者を募集しています。もっとも無免許診療も結構ありますが。
 これは個人的にかなり偏っていると思われる考えなので、「じゃあ治らなかった場合、治療にかかったコストは誰が払うのだ?」といわれると、「自分が治せると思ったのだから、自分で責任を負うしかない」と、厳しい答えしかできなくなります。
 まあ、こうしたコストの問題だけでなく、安楽死の問題とか、「じゃあ誰も治療に立候補しなかったらどうなるのだ?」とか、「治療で死んだ場合に、過失致死傷が問えるのか?」など、難しい問題が多々あります。ちなみに中国では、鍼で死んだ場合に過失致死傷が問われたりしました。また『医門法律』では、患者を殺した医師が殺人罪に問われたりしていました。ただ、これは当時には医療行為に名を借りた殺人が横行し、中国で本当の治療が行われたのか、それとも殺人目的だったのかを判断する必要があったからです。
 昔は、殺人を頼まれて毒を盛る医者が、中国では多かったようです。
 現在もエイズの血液製剤とか、ミドリ十字のウイルス肝炎止血剤とか、規模の大きなものがあるので、今も昔も変わらないようですが、現在では殺人罪に問われることはないようですね。でも、中国の本には「患者に責任を負え」と書いてあったような気がするなぁ。
 一応、続けて3回なので、これにて質問をうち切らせていただきます。

 
質問:私の夫は、労災や職業病の相談を受ける仕事をしていて、関連の医療機関があります。腰痛や頸肩腕症候群の患者は、鍼治療が必須なので、鍼灸もやっています。そこの鍼灸師の方は、とてもとても真面目で、あまり真面目すぎて、根がいい加減な私は、一度も治療を受けたことがありません。ただ、贅沢を言っていられないので、HPの胃下垂を印刷して夫に見せ相談したところ、「原書があるのなら、原書を読んでもらったほうがいい」とのこと。とても熱心な鍼灸師は、原書(といってもよくわかりませんが)を読んで常に勉強をしているのだそうです。ですから、素人の私などが偶然見つけたHPの一部を見せたところで、納得するわけがない、こんな本に出ていて、それを実践した人の経験を見せ、やる気にさせるしかない、ということになりました。
 HPを見て直ぐに、「難病の鍼灸治療」と「急病の鍼灸治療」の本を注文していました。その鍼灸師に読んでもらおう、と勝手に決めています。
 
成功するかどうかはわかりませんが、もし、なにかアドバイスがいただけるのでしたら、厚かましいですがお願いします。
 私は最初の鍼が、太くて長い中国鍼でおもいっきり響かせる、というやり方から入ったため、細くて短い鍼を鍼管で入れる鍼灸院に、なんだか物足りなさを感じてしまいます。響かないと効かないような気がしてなりません。「響かせればいいってもんじゃない」と言われれば、そうかなとも思うのですが、最近の鍼灸院の宣伝文句で「全く痛くありません。」というところには、やはり行く気がしないのです。変な趣味は全くありませんが、響くということと効き目は関係があるのでしょうか。
 肺炎になりそこなって微熱が続いているので、なんとか鍼で治せないかなと思いつつ、メールを打っています。今かかっている鍼灸師から、微熱があるときに灸をするようにいわれ、照海、手三里、大椎、それに「天に、印をつけてくれたのですが、最後の「天」というのが疑問です。背中なので、夫に印を触ってもらっても、「肺兪」あたりのような気がするのですが、印までつけて貰って、そこは何と聞く勇気がなく、気の小さい私としては、ただ疑問をもつだけです。もし、微熱を治すつぼがあるのでしたら、教えていただけないでしょうか。
 いろいろと書いてしまったので、もし、少しでもお返事がいただけるようでしたら幸いです。

 答え:『難病の鍼灸治療』と『急病の鍼灸治療』を、お買い上げいただき、まことにありがとうございます。ついでに素人向けの『中医基礎理論』も、たにぐち書店から出ていますので、よろしく。ただ『中医基礎理論』には、P56の21行「陰勝則熱」→「陰勝則寒」とかP57の2行、「陽虚則寒熱」→「陽虚則寒」のように多少誤字があります。読みやすく翻訳していますので、鍼灸がどのようなものかを知るために一助となります。

 一般に、原書というのは外国語で書かれたものですから、『難病の鍼灸治療』の原書は人民衛生出版社の『難病針灸』という本です。しかし10年以上前の本なので、手に入らないでしょう。そこで文匯出版社の『165種病症・最新針灸治療』を勧めます。これなら新しい本なので簡単に手に入ります。
 鍼灸の原書は、中国語で書かれていますので、中国語が読めなければ理解できません。また中国語ができても中医の基礎がなければ、やはり理解できませんので、中国人なら誰もが理解できる代物ではありません。まあ本気で鍼灸を勉強する気ならば、古典から現代鍼灸の本まで読まねばなりませんが。
 原書は、東京ならば亜東書店とか(神田にあります)へ行けば売っています。

 響くことと効き目は関係あるかとの質問ですが、関係あります。鍼灸の聖書である『黄帝内経』には「気至病所」と書いてあり、鍼感が病巣部に達することを「気が至る」と呼び、治療が成功するかどうかのポイントだとしています。そして『素問・五常政大論』は「病在上、取之下。病在下、取之上」といい、『霊枢・終始』には「病在上者、下取之。病在下者、高取之」と書かれています。
 これは痛みのある病巣部を治療しても効果がない場合、そこに痛みがあっても、上を取ることもあるし、下を取ることもあるという意味です。上とは体幹部、下とは四肢を指していると考えていいでしょう。
 具体的な例を挙げれば、坐骨神経痛でフクラハギが痛むとき、その原因は腰や尻にあることが多いので、大腰筋や梨状筋に鍼を入れて、その筋肉の痙攣を緩めます。その原因の縮んで固くなった筋肉へ刺鍼しますと、刺鍼された筋肉が収縮しますので、筋肉内を通っている坐骨神経を圧迫し、フクラハギに締めつけられるような怠さが発生します。
 また五十肩で、腕が上がらないとき、喘息など、大椎まわりの頚夾脊穴や棘上筋へ刺鍼すると、腕神経叢を挟む筋肉が収縮するので、腕を締めつけるような怠さがあります。
 以上の二つが「病在下、取之上」とか「病在下者、高取之」の意味です。
 また心臓の痛みに内関を取ったり、腰の痛みに委中や承扶、承山を取るのは「病在上、取之下」や「病在上者、下取之」の例です。
 その治療の効果があったかどうかを判断する基準が「気至病所」なのです。つまり坐骨神経痛や五十肩で、腰や頚に刺鍼したとき、きちんとフクラハギや肩関節に重怠い痛みが発生したかどうか、心臓や腰が苦しくて手や足に刺鍼したとき、きちんと心臓の痛みが解除されたり、腰に鍼が響いているかどうかが、得気した鍼感が病巣部へ伝導したことの目安になります。これは『内経』における鍼の要点とされています。
 『難経』が鍼の本だと言えば異論もあるでしょうが、『内経』が鍼の基本書だと言えば異議を唱える人はいないでしょう。だから『内経』の内容は正しいとします。
 古代の人々は肉体労働者が多く、身体の使い過ぎによる障害が多かったため、得気があって鍼感の伝導がなければならなかったのでしょうが、現代のように精神的な病気が多くなれば、響きのない鍼も一理あるかもしれません。
 『内経』には、身体の健康を保つため、まず心を平穏に、次に食事、次に適度な運動、あとは健康的な環境整備(溝をさらったり、住居の断熱や風通し)が大切だと書かれています。そして病気にも程度があります。
 最初の不健康な段階では、前述したことを改善して、生活態度を改めます。
 次に、少し病気になったときは、按摩や熨法をします。現在で言えば、マッサージやホットパックですが、エステやアロマテラピー、足の裏マッサージも含まれるでしょう。
 そして本格的な病気になったら、以上のようなことではおぼつかないので、鍼灸や薬を使います。
 現代人は精神的な疲労が多いので、第二段階の治療で十分と考えられ、エステやアロマで治ると思いますが、それにはローラー鍼とか響きのない鍼のような、軽い刺激の鍼も含まれるでしょう。
 ちなみに『内経』の『霊枢・官鍼』には「病浅鍼深、内傷良肉、皮膚為癰。病深鍼浅、病気不瀉、反為大膿。病小鍼大、気瀉太甚、疾必為害。病大鍼小、気不泄瀉、亦復為敗」とあります。
 つまり浅い病気に深い鍼をすると、皮膚が化膿する。深い病に浅い鍼をすると、病気が刺されずに化膿する。軽い病気に大きな鍼をすれば害になる。重症なのに小さな鍼では、病気が刺されずに進行するという意味です。だから軽い程度ならば、得気がなく、心地好い鍼が良い。ひどければ響く鍼をする。また病位を見極めて、浅くしたり深くしたりすると言っています。つまり「深く刺せば、深く刺すほど効果がある」というものではありません。
 例えば、ぎっくり腰ならば、急性で軽いため、5番の三寸を刺せば速効性があります。ですが70度ぐらいまで腰の曲がっている坐骨神経痛には、5番では筋肉が固くて入らないし、また効果も悪いので10番を使います。それが「病小鍼大、気瀉太甚、疾必為害。病大鍼小、気不泄瀉、亦復為敗」の意味です。また同じ腰痛でも、表層の脊柱起立筋が悪い場合と、深層の大腰筋が悪いケースでは、病巣部が違います。脊柱起立筋に三寸鍼をしても効果が悪く、大腰筋に寸六を使っても効き目がありません。それが「病浅鍼深、内傷良肉、皮膚為癰。病深鍼浅、病気不瀉、反為大膿」の意味です。
 私は、本当の病気の時にだけ鍼治療をして、軽い病気には体操とか食事、生活改善。少し進行すればホットパックやアロマ、マッサージなどで治療すればよいと思います。これは『内経』に忠実なのですが、「小さな病気には、小さな鍼で」の言葉を実行して、得気のない鍼をする人があっても、それも一つのやり方なので良いのではと思います。
 ただ私のように、普段は肩こりを感じないのに、突然ドーンと口内炎になったり、五十肩になったり、寝違いしたりという人間は前駆症状がないので、前駆症状のうちにマッサージへ行ったり、軽い鍼をすることができません。鈍い人間には、軽い鍼が合わないのでしょう。

 最後の質問は、肺炎が治りかけて熱の治療に、照海、手三里、大椎、「天牖」を処方されたとありますが、私も「天牖」というのは疑問です。
 それから照海も疑問で、確かに照海は微熱のツボですが、照海は腎経で、陰虚発熱に使います。つまり内熱なら理解できますが、外邪が侵入した肺炎で使うのでは疑問です。
 手三里は理解できます。手陽明の経穴ですが、外邪は太陽から入り、陽明で発熱しますので、風邪には手陽明の経穴が使われることが多いのです。ただ一般的には合谷と曲池が使われ、手三里は鍼感が悪いというのに、なぜわざわざそれを取ったのかが解せません。
 大椎は、理解できます。
 その処方理由は、症状に合わせて処方してあるので、処方意義を尋ねてみられたら如何でしょう。
 私ならば、風邪が入って肺炎になって発熱しているのなら、風池、大椎、風門、曲池、合谷を取ります。風池は少陽胆経ですが、陽維脈との交会穴でもあるので、風邪の熱を除くのに適しています。大椎は督脈ですが、足太陽との関係が深く、風邪は太陽から入り、大椎は、すべての陽経が交会する部分ですから、陽熱を瀉しやすいのです。風門は、熱府とも呼ばれ、感冒による熱を下げる経験穴です。曲池と合谷は、前に述べたとおり手陽明で、風邪の軽く舞い上がる性質に合わせたものです。熱を下へ引く意味で、足陽明から足三里を加えてもいいでしょう。このなかから2~3穴を選んで、日替りで刺鍼します。
 私は風池が好きなので、風池は必ず取ります。

 まあ、普通の鍼灸師ならば、このような処方理由を説明してくれます。
 中国鍼灸では、運動器系疾患についての治療は、着痺、痛痺、行痺、熱痺などと分類するだけで、いい加減ですが、こうした病気については、私のような外れ者でも伝統医学に則します。

 あなたは素人ですので、鍼灸師にツボの名前を尋ね、それを取る理由を尋ねても、忙しくなければ教えてくれるでしょう。忙しければ、暇なとき紙に書いてくれるでしょう。
 現在はインフォームドコンセントとか、これは言いにくいので違っているかもしれませんが、最近の言葉でいえば納得治療。患者は説明を受けるのが当然で、治療者は説明するのが当然です。だって素人の客ですから。プロならば、その治療に対し、これがおかしいとか批判できますが、知識がないのだから説明を受けて当然です。なかには「ここに鍼をしろ」と要求してくる患者さんもあります。知識があれば、自分でツボを決め、刺入深度や方向、鍼の太さや長さを決め、刺鍼だけしてもらえば良いでしょう。
 この質問が鍼灸師からの質問ならば、私だって怒るかもしれません。ですが鍼灸師どうしで、そうした話をするのも、同じ土俵の人ならば楽しいものです。
 なかにはオカルトじみた、わけの判らぬことを言う人がいて、腹を立てることがありますが。

 正常な鍼灸師ならば『黄帝内経』に基づいて考え、それに反することはしません。なぜなら鍼灸は伝統医学だからです。『黄帝内経』をなくしたら、鍼灸は伝統医学でなく、ただの理学療法になってしまいます。その『黄帝内経』に「医学ではオカルトを信じるな。信じる奴は助けようがない」と書かれているのです。
 かりに鍼灸師がルーレットを回してツボを決め、刺入深度を決め、刺入方向、鍼の太さや長さを決めて治療したら、大丈夫かいな、この人と思うでしょう? 
そのようなことをしてはならないとされています。だから竇漢卿の時間取穴法などは、腕のよい鍼灸師達によってケチョンケチョンにけなされています。しかし、そうした治療をする人もある。そのルーレットまであります(私持ってます)。

 どうやら古代には、さまざまな鍼灸があったようなのですが、『黄帝内経』を主とする黄帝派だけが残ったようです。あと白氏とか扁鵲とかあったようですが。
 現在の日本では、オカルト派と『難経』派が圧倒的多数を占め、『黄帝内経』は少ないと思います。
 その理由は、オカルト派は、ほとんど勉強する必要がなく、自分の直感だけで治療すればよいから楽です。
 『難経』派は、『難経』が薄っぺらな本のため、少し勉強すればよいからです。『難経』は、『黄帝内経』の解説書とされていますので、恐らく『難経』を読めば、手軽に『黄帝内経』のポイントが押さえられると思うのでしょう。薄い『難経』でも全部読めばいいのですが、なかには一部だけしか読んでない人もいます。それに『黄帝内経』と『難経』の食い違う部分も相当あるので、『難経』は『黄帝内経』の解説書ともいえません。
 『難経』は秦越人の作とされ、扁鵲が書いたとされていますが、実は『黄帝内経』を黄帝が書いたのではないように、周時代の医者が『黄帝内経』の判りにくい部分を解説し、代々の家伝とされたものが世に出たということで、かなり見当違いの回答があるうえ、内容も『黄帝内経』の7%ぐらいです。
 『黄帝内経』を読んでいる人は、当然にして『難経』も読んでいて、それに書かれている『黄帝内経』との矛盾点も判っています。あなたの知り合いの鍼灸師が勉強家ならば、当然にして『黄帝内経』を読んでいます。さらに、さまざまな古典にも、手を伸ばしていることでしょう。
 そうした人ならば、鍼灸処方にも自分の勘ではなく、きちんとした根拠があるはずなので、説明してもらえるでしょう。
 ちなみに私が挙げたのは刺鍼部位なので、灸ならば大椎と風門、足三里だけで十分と思います。

 
質問:鍼灸では、いろいろな所に行ってみましたが、「なかなかピッタリくる鍼灸師に出会えてない」といっては贅沢でしょうか? 皆さん、とても自分の腕に自信を持っている方が多く(自分の腕に疑問をもちながら打たれても困りますが)、悪口とまでは言いませんが、他の人のやり方を批判するようなこともおっしゃられます。ましてや素人の一患者が、自分の体のことではありますが、治療方法に口を挟むなど恐れ多くてできません。 遠まわしな言い方ですみません。何を言いたいかというと、私も胃下垂で、治したいと思っているのですが、なにせ鳥取県は何処にあるのか直ぐに思い浮かばないほど遠いところなので、なかなか行くことは困難です。5歳の子供もいます。
 HPを印刷して、どこか近くの鍼灸師にやってもらえればいいのですが、なかなか勇気がありません。
 実は、私は10年位前までは、自分で自分の体に中国鍼を打ってました。もちろん資格などありません。道具は揃っているものの、6~7寸の鍼はあるにはありますが、10年前のものなので、ちょっと使う気になれません。新品は2寸と3寸しかありません。もし、自分で打てるのだとしたら、やってみたいのですが、ちょっと無理のような気がします。 もし、関東で、できれば横浜近辺で、お知り合いの鍼灸師の方がいらしたら、ご紹介ください。

 答え:関東地方に知り合いの鍼灸師はいますが、中国留学会で知り合っただけです。それに私の弟子も、弟子のいるときは、胃下垂の患者さんなど来たことがなかったので、実際には見せたことがありません。ちょっと胃下垂治療には3寸鍼では苦しいと思います。それに腰や頚と違い、自分で治療するのは無理でしょう。
 この胃下垂治療の方法は、苦しいけど確かに治るので、ホームページにアップすれば、他の鍼灸師も真似てみて、もっと治る人が増えるのではないかと思いアップしてみたのですが、案に反して試みてみる人はおらず、こちらに質問で来るのは胃下垂のメールが最近多くなっています。遠くから来られるのは心苦しいので、それに怠け者の私は、近所の患者さんだけで充分忙しいので、あまり島根県以外の人は治療したくはないのが正直な気持ちです。それでも来ると言われれば、仕方のないことですが。
 一応、今まで治療した人のうち、一回しか治療していない人は関東圏で一名あり、それは効果がなかったそうです。そして2月頃三回治療した人は、この間スイカが送られてきて、そのあと電話がかかり、すべてが順調ですが、母が坐骨神経痛なので治療してもらえないかとのことでした。その方は胃下垂治療のあと、胃の蠕動運動がしなかったのですが、最近は順調なようです。
 他人のやり方を批判するのは、仕方のないことだと思います。というのは、鍼灸の世界では競技会がないからです。
 料理でも、最近は料理の鉄人という番組があり、人と料理の腕を競って勝ち負けを決める番組があります。鍼灸の世界ならば、同じ症状の患者を集めて来て、ヨーイドンで、誰が最初に治せるか競争させてみればよく、審判の評価も何もいらないので簡単だと思いますが、誰もやろうとはしません。
 例えば、手が水平までしか上がらない五十肩患者を用意し、ヨーイドンで一時間内に何度まで上がるようになるかなど競争すればよいのです。
 ですが、中国のような競争のない社会に行きますと、料理の技術も悲惨なものです。昔の中国の料理は、食べられるものが少なかった。
 競争がないので、自分のレベルが客観的に、どこに位置しているのか判らない。まあ私を含めてですが、自分が特Aなのか、一流なのか、二流なのか、三流なのか見当が付きません。そこで二流と言っていますが、その評価が正しいのかどうかも判りません。
 それと患者さんは、仮に治療を受けて悪くなっても、「良くなりました」と言って来ませんから、治療師としては本当に好くなったと思ってしまうのです。しかし、あにはからんや、よそへ行っては「あそこの鍼灸院へ行ったら、肺に穴あけられましてな」と言っています。だから、うちも他所では何を言われているか判ったものではありません。
 中国などでは健康新聞に、「もし自分の病気を治してくれれば、何千元払う」とか広告が掲載されていました。
 まあ、患者さんから、「あそこの鍼灸院へ行ったら、こんなことされて、ちっとも良くならんかったわ」という話を聞かされ続ければ、「あそこはとんでもない治療するな」と患者さんに同情するわけです。鍼灸院というのは、よその治療院の患者だったものを自分の治療所に来させるわけですから、その患者さんが前の治療所を気に入っていれば、悪口を言うこともなく、自分の所へ移ってくるはずもないですから、必然的に他所の治療所で治らなかった患者さんしか来ないわけです。
 とにかく競争がないのが一番の問題です。自分のレベルが判らない。だから自分のでよいのだろうと思ってしまう。そして他所の欠点ばかり聞かされている。
 本当は、このような状態を続けていけば、競争相手は国内だけではないので、世界レベルから取り残されて、ゆゆしき問題になるのは目に見えています。そんな状態になったら、日本の鍼灸は個人の我流レベルから抜けられなくなり、病気を治したい日本人は、中国や台湾へ行ってしまうでしょう。
 そんなことになったら日本の鍼灸など誰も信用しなくなり、日本の鍼灸の先輩達が鍼灸の科学化に奔走した努力が報われなくなってしまいます。それに日本にいながら中国まで治療に出かけるなんて、鍼灸師側にも患者側にも不幸なことです。
 私の治療所は、現在は二ベッドしかない狭い所なので弟子が養成できませんが、私の神戸の弟子もボンボン治して貢献しているようですし、そのうち養成しようと思っています。 本当は治療競争が一番良いのです。それで最善の方法が判るのですから。
 私には、競争を主催するような力がありませんので、自分の治療法を公開し、まだ治療法を知らない学生諸君や新米鍼灸師に一定のレベルを身につけてもらおうとの主旨でホームページを開いたもので、うちに胃下垂の患者が来るなどは思いも寄らぬことでした。
 しかし、最近は関東圏から胃下垂の引き合いが多く、関東に行かねばならないのかなとも思っています。
 マグドナルドのように、そのうちチェーン店化して、どこでも北京堂の治療が受けられるようにすれば、競争が激化して鍼灸レベルも進むのではと思います。

 
質問:10年以上前でしょうか、ぎっくり腰を患ったときに、鍼治療を受けたことがあります。さほどつらい治療ではなく、2回程で治り、腰は今も元気です。
 
今年の2月、着地に失敗し、右足の親指の付け根を捻挫してしまいました。
 整形外科でレントゲンを撮り、シップ薬を貼りましたが、痛みはとれず、整体治療院に通いましたが駄目でした。
 鍼治療がいいのではないかと思っていたのですが、引越しにより以前のところが遠くなってしまい、知り合いの紹介で、別のところに行きました。
 「すごく痛いかも」とは聞いていましたが、足の痛みなんてどうでも良くなるくらいの激痛の治療に、途中で逃げて帰ろうかと思いました。
 捻挫の痛みは減りましたが、後遺症(?)のようなズキズキする鋭い痛みが時々ありました。あまりに恐ろしくて、二度とその治療院には行けません。
 人に話すと、「そんなのはおかしい、鍼って痛くないはずだよ。」と言う人が多いのですが、身体の場所によって違うのでしょうか?
 鍼治療の際に、麻酔をしてくれる、なんてサービスは無いのでしょうか?

 答え:まず、どのような治療をされたのかが問題です。それが書かれていないので、その治療が正しいとか、おかしいとか、コメントのしようがありません。
 ぎっくり腰の鍼治療というのは、初めてのぎっくり腰ならば、治療でほとんど痛みが無く、気持ちがいいと言われる人がほとんどです。ですが坐骨神経痛になると、かなりの苦痛が伴います。
 一般に、すぐなら捻挫は一回で治ります。私のところへはバレーの人がよく来ます。といってもバレーボールをしている小学校の女の子です。監督が、明日試合だ、とか、あさって試合なので、それまでに跳べるようにしてくださいと要求してきます。その治療は、かなり痛いのですが、小学生は涙目になって我慢しています。おかげで私の診ている小学校は、かなり強いのです。高校などは、いつも県大会で優勝します。
 ただ捻挫の後遺症のような痛みがズキズキするというのは、ちょっと納得できません。 一般に治療すると、捻挫をする前の状態に戻っているのが普通で、痛みは全くないはずです。
 鍼が痛いか痛くないかですが、それは治療法によって違います。中国式は一般に痛いのが普通ですが、日本式の鍼は痛みのないのが普通です。
 ただ痛みといっても、中国式では、刺す瞬間に「チクッ」とするのを痛みと呼び、その切皮痛があるのは練習不足とされています。そのあと筋肉や靱帯内に刺入しますので、ジワーとした痛み、あるいは筋肉痛のようなだるさが発生します。一般に酸麻腫重(だるい、しびれる、腫れぼったい、重怠い)と呼び、そうした感覚を得気と呼んでいます。中国でも一般民衆は、得気のことを痛みと呼んでいます。
 中国では鍼が一般民衆を治療する物だったのに対し、日本の鍼では鍼が殿様を治療する物だったようです。そのため細くなっていったらしいのです。そして極めつけは鍼管です。
 鍼を刺すときに、そのままポンと刺すと曲がりやすいのですが、鍼管が鍼全体を押さえて入れているため、どんなに刺しても曲がることがありません。そうして日本の鍼は細くなって行きました。しかし私の経験では、筋肉に2番以下の鍼をしても得気がなく、効果もありませんでした。だから細いにも限度があります。ただ捻挫は、筋肉でなく靱帯に刺すため、1番でも0番でも効果があります。
 私は、日本鍼の1番から5番を使うことが多いのですが、1番は捻挫専用です。一般の治療では、2寸までなら3番、2寸半は4番、3寸は5番を使っています。そして筋肉がコチコチで、日本鍼が入らないときは10番や中国鍼を使います。
 鍼の聖書である『内経』には、骨の近くまで刺入する方法が書かれていますが、日本の鍼灸では深く刺入する事は稀です。 
 中国でも深く刺入するには、よっぽど技術のある達人でなければならないとされ、自称「鍼名人」と称する人が、鍼を入れて折れてしまい、当代の達人と呼ばれる人に頼んで抜いてもらうといったような記載が古い本にあります。
 昔は、日本では解剖の機会があまりなく、体内の状態を知らないままに深く刺入し、内臓に刺さって死ぬようなことが、ままあったのではないかと思います。それに対し、儒教の国、中国では、なぜか犯罪者の頭目を捉えたとき、医者と絵師を連れて解剖させたり、また戦争の機会に死体を切り開いてみたりしていたようです。だから女性の解剖図は、古代ではあまり見られません。したがって日本の鍼は、細いうえに深く刺さないので、蚊が刺したほどの程度しか感じません。
 最近は中国の鍼も、かなり細くなって、日本鍼と大差ないようになりました。
 つまり鍼には日本式と中国式があり、日本式は細くて浅くしか刺さないので何も感じない。中国式は、細くなってきたとはいえ深く刺入し、得気を求めるので、ズシーンとした筋肉痛のような痛みがあるのです。
 だから「すごく痛いかも」というのも事実、「鍼って痛くないはずだよ」というのも事実です。
 中国では中国式鍼しかないので、民衆は痛いと感じる。日本では日本式と、新たに入った中国式鍼が混在するので、痛いという人と、痛くないという人に分かれる。
 ただ中国式でも腕踝鍼のように「何も感じないように皮下へ入れる」鍼もありますが、それは例外。
 鍼治療の時に、麻酔することはあり得ません。中国でもしません。
 まず鍼灸師が麻酔しては、医師法違反になります。
 それから日本式鍼は、ほとんど痛みがないのですから、麻酔しても意味がありません。麻酔の方が痛いでしょう。
 中国式は、痛みを緩和するため、浸潤麻酔ぐらいしてもよさそうですが、実際に痛みを感じるのは皮膚でなく、身体の奥深くなので、浸潤麻酔をしても意味がありません。全身麻酔では、死ぬ危険性があります。そこに注射すれば良いかも知れませんが、そうすると得気がなくなると思われるので、鍼の意味がありません。小針刀は浸潤麻酔するようですが、創始者は麻酔すると神経を切る恐れがあるので、してはならないと書いています。それと麻酔薬によっては、鍼の効果を失わせる物もあるようです。
 まあ、どのような治療をされたのか判らないので、申し上げにくいのですが、私の経験では、捻挫の治療は確かに痛いのですが、抜いたとたんに跳びはねることが出来るぐらい霊験あらたかなのです。痛みが全くなくなっているので、連れてきた親がびっくりしています。だから捻挫の治療で、後遺症のような痛みが残るのは、少し変です。その治療所に電話かけて、説明を求めるべきでしょう。
 ただし、中国の『刺鍼事故』の本を読んでみると、捻挫以外ですが、一般の治療で、刺鍼したあと悪くなったが、しばらくすると治った。だから刺鍼の後しばらく痛むのは、刺鍼事故とはいえないのではないかというコメントがありました。
 うちでも、そうした患者さんは、しょっちゅう来ます。この間も、慢性腰痛で鍼したら息子が帰ってから動けなくなってしまい、「お母さん、あんなインチキな所、行っちゃあダメだよ」と言ってましたが、それから3回ぐらい通って、完全に治りました。とか言っていました。だから鍼をした翌日、あるいは2~3日は、却って痛くなることがあるのです。ひどい場合は5日ぐらい痛みます。
 これは、相当に重症の人だけで、軽い人は気持ちいいぐらいで、鍼して悪化することなどありません。特に坐骨神経痛の人が、悪化しやすいのです。
 そうした人は、最初は腰の大腰筋が痙攣して坐骨神経を圧迫しているだけなので、足のだるさを感じます。この時点では、鍼をすると痙攣が解れて、何の問題もなく治ります。 次には、激しい痛みが出て、夜も眠れなくなります。この時点では、まだ何の問題もなく治ります。ただし、治療中は相当の苦痛を伴います。
 最後に、激しい痛みがあったが、現在は、それほど痛くはない。これは鍼をすると悪化します。というのは大腰筋が痙攣を通り越して、萎縮しているのです。その萎縮した大腰筋に坐骨神経が挟まれて、普通なら痛みを感じるところが、強く挟まれ過ぎているため痛みを伝えられなくなっているのです。まあ早く言えば、麻痺して感じなくなっているのです。そこで大腰筋を緩め始めると、そんな萎縮した筋肉ですので、なかなか簡単には緩まないのですが、神経が復活して痛みを伝え始めます。すると痛くてやれなくなります。もっとも、麻痺した段階ならば、鍼治療の痛みはありません。感覚がなくなっているのですから、10番のような太い鍼を刺しても、何かしてんの? という感じです。
 こうした坐骨神経痛や重症の腰痛では、鍼したあと却って痛いことがあります。しかし、そこで治さないと、神経が命令を伝えないので、足の筋肉が萎縮して細くなってしまいます。だから痛みが出ても治すしかないのです。
 身体の場所によって痛みが違うかという話ですが、違います。例えば、手のひらとかは触覚が非常に発達していますので痛みも強く、背中や腰では痛みが少ないです。
 また同じ腰でも、腰の悪い人は鍼しても痛く、悪くない人は鍼しても痛みがありません。肩こりの人は、肩をつかむと痛がるのに、肩こりのない人は、肩をつかんでも痛みを感じないのと同じ理屈です。その感覚や手の感覚を頼りに、大腰筋の痙攣による坐骨神経痛か、またはヘルニアなどによる坐骨神経痛か鑑別できます。
 誰でも得手と不得手はあり、不得手でも来られたら、治療しなければなりません。
 某所で治療しても、足の痛みがちっとも治らなかったのに、うちで治療したら一回で治ったということもあります。恐らく、その逆もあるでしょう。鍼灸院は、どんな疾患が得意か宣伝してはいけないので、その疾患が治った人がある治療所にて、治療してもらうのが一番です。ほかの病気はボンボン治すのに、それだけは苦手という治療所もあります。
 例えばうち、嫁の生理痛が、いろいろやっても治りません。あまりひどいときは、尻に鍼して、パルス流して痛みを止めますが、また何ヶ月めかの生理では痛みがやってきます。一時的にしか止められず、永久に治すことが出来ません。
 一応、身体の場所によって痛みが違うか? という質問と、麻酔サービスはないか? との質問に答えました。


小生、千葉県浦安市で治療院を開院しております○○×と申します。△△△のHPを頻繁に拝見させていただいております。中医鍼灸と日本鍼灸の違いなど非常に興味深く拝読させていただいてます。
日本で中医鍼灸と言われている人の弁証などは、現代中国ではもともと実利を優先する国民気質から、西洋医学的診断方法があるのに、なんで今更概念的な方法をとらんとするのかと重きを置かれなくなっているのでは。つまり弁証を重視するのが中医学といっているのは、日本で中医鍼灸を実践しているといっている先生だけのように感じます。その意味で日本でいう中医鍼灸という言い方は、むしろ現代日本鍼灸の一部と言ったほうがよいのではないでしょうか。先生がご指摘されるように太いはりを使用しているから、鍼管を利用するからが双方の区別ではないことに賛同します。日本の鍼灸師と中国の鍼灸師(中医師)の身分・権限の違いがそうさせている大きな要因でしょうか。即ち現代医療機器を扱えない日本の鍼灸師には、診断方法として脈診・舌診などの方法しか取れないから弁証が必要。一方現代中国では診断は西医、治療は西医か中医ということでしょうか。もっとも経済成長で生活レベルが上がった中国人は設備の整った西医で治療を受けることに安心するだろうし、ステータスも感じるのために中医での治療を望む人は稀になっただろうと想像するのですが。小生は中医学鍼灸、弁証(証立て)をベースに治療を組み立てようとしている一人ですが、先生の現代解剖学をべースにされていると思われる治療方法やら、(実はこれが現代中国で行われている鍼治療か?)米国のHelms理論を実践する鍼灸やら、西條一止先生が提唱する鍼の効用は自律神経に作用することなど、さまざまなものを取り入れ試しているところですが、それらのどれにもまずは弁証ありきとは謳われていないように感じます。ここで先生は臨床の場で弁証をどの程度重きを置いていらっしゃるのかお伺いするものです。たんてきには弁証=本治との認識です。小生は弁証において脈診・舌診を中心にしているのですが、治療においてどの程度の比重を置くべきか最近自問自答しているところです。自分は脈診・舌診に妙に囚われて過ぎていないだろうか? 多くは腰痛・膝痛などの所謂整形外科的あるいは経筋関連の主訴をもつ患者さんに対し、そもそも本治といわれるものが本当に必要もしくは有効なのか? 胃の痛みなど内臓疾患を訴える患者さんには弁証が必要にもかんじますが、その場合でも脈診・舌診が主体になるとお考えでしょうか? 本治・標治の双方を施術するので、その分治療時間はかかるのですが、逆に体全体の調子を整えるという本治治療が、いかにも東洋医学的に響き患者さんに治療において新たな付加価値を見出していただいている(プラシーボ効果も含め)ともいえなくもない。本治はその程度のことともいえるのでしょうか。またはその程度のことが治療には大事なのでしょうか。少々的が絞りこめない質問ですが、ご意見・ご見識をご教示いただければ幸いです。

これは私の個人的な意見なのでしょうか?
『鍼灸甲乙経』や『鍼灸大成』を見るに、鍼灸治療は頭痛とか肩凝とか、症状に対して治療しています。ただ、当時は鍼灸と漢方薬を同じ医者が処方していました。
昔から鍼灸は外治法、漢方は内治法に分類されていました。現代の分類で言えば、外科と内科でしょうか?
私見では、外科の医者は手術とかだけ心配していればよいし、内科の医者は生理や薬理だけ心配すればよいと思います。それが分業と思います。
私は正直言って、辨証派世代です。しかし鍼灸臨床をしていると、私のところへ来る患者は腰痛とか坐骨神経痛、五十肩や頚椎症の患者ばかりです。そうすると必然的に整形外科と同じ分野になってしまいます。すると必然的に、ある程度は解剖知識も必要だし、深刺するには解剖的危険個所も知らなくてはならないという結論に達しました。
実際、腰痛とか坐骨神経痛、五十肩や頚椎症の患者に舌診や脈診してみても、中医で言えば「病が経絡にあって内腑にはない」ので、脈や舌に異常が見られません。つまり切経や問診しか判断基準がないわけです。
脈にも、舌にも異常が現れておらず、まだ淤血もない疼痛患者に対して、辨証法は意味がありません。そこで経筋治療というか、辨証法を捨てて、傷めた筋肉を治療するという方法に変化していったのです。
私見では、辨証というのは分証という意味なので、ただ証を分けること、つまり分類治療を意味していて、どんな病気にでも効く万金丹のような治療ではないことと解釈しています。そして証とは、症状と疾患名を含めた物と捉えています。あなたは、どう捉えているのですか?
だから昔、CTもMRIも、培養検査もなかった時代は、脈や舌、声や臭い、動きなどで判断するしかなかった。それは現在も同じでしょうが、さらなる検査器具が加わったので、それを取り込んで中医が発展するというのが中国の考え方でしょう。
つまり操作にたとえれば、昔は聞き込み捜査だけだったのが、指紋や血液、遺伝子や防犯カメラなども使って犯人を捜査するようになったということでしょうか?
まあ、捜査の中心は聞き込みだろうし、辨証の中心は四診でしょうが、それを裏付けたり照合する道具ができてきたと言うところでしょうか。
私の考えでは、辨証でも何でも良いのではないかと思っています。そのなかから最善の物を、比較臨床試験してスクリーニングすべきだと思っています。どの方法も、おそらく残っている以上は効果があると思いますので、各疾患別に各流派の方法を試してみて、一番効果のあった方法を、その疾患の標準治療にすればよいと思います。だから各流派を集めて、それぞれの患者を集めて比較試験をすべきでしょうね。それから結果を出さなければ。現在のように比較もしてない状況では、辨証治療がよいのか、太極治療がよいのか、判断できませんので。
まあ、それぞれの腕自慢が、競争もしてみないのに、自分が一番強いと言い張っているようなものです。
私の場合、中国留学もしていましたので、バリバリの辨証派です。しかし痺証や痿証しかこない鍼灸院にとって、そうした分野の辨証は、あまりにお粗末な物でした。そこで、その不足を補おうと、筋肉、経筋と言ってもいいでしょうが、筋肉分類による刺鍼法を提唱しました。
これは患者さんの「いままで五十肩や坐骨神経痛になったけど、治してくれるところがなかった」という声を受けて、それならば誰にも簡単に治療できるような分類治療法を鍼灸師に提供したらよいではないか? ということでホームページを作り上げただけで、あれは治療法を知らない新米鍼灸師のためのものです。最低は、これぐらいの治療をしてくれというものです。
というのは、これまでトリガーや脈診など、さまざまな治療法勉強会はあったのですが、すべて有料なので貧乏人は参加できず、しかも都会で開催されるため、田舎の鍼灸師が学ぶためには不可能なので、インターネットで無料ならば、田舎の鍼灸師でも、金のない人でも、ある程度は学べるだろうと作っただけの物です。
たぶん有料の勉強会で教えて貰える物ならば、もっと治癒率がよいと思います。あれは最低限の物で、無料の内容は、無料だけのものと考えてください。
突然の何処かの馬の骨からのメール質問にも拘わらずご丁寧にお応え頂き真にありがとうございました。先生の明快なご指摘に賛同いたしております。
整形外科の補助あるいは代替え治療の如く認識されている日本の鍼灸ですが、施術料は決して安いものではないにも拘わらず、運動機能の障害、痛みなど日常生活に支障をきたすために、人々には多少高くついても整形外科的症状では病院でなんともならんことが多く、鍼治療を受けようと思うのでしょう。
一方はり師の手前味噌かもしれませんが、鍼治療をもっと世間に受け入れてもらうには、内科的分野にも治療範囲を広げることが鍵と思いますが、人々が内科症状で鍼に行ってみようと思うとしても、慢性的な症状をお持ちの方が大方でしょう。とりあえず一度は鍼でも受けてみようかと考えてもらうには、なんといっても施術料が安くなければならんと考えますがいかがでしょうか。さらにある程度満足頂ける治療効果は必須でしょうが。ただ、鍼師で家賃払って食ってくためには自ずと料金低額化の限界もあります。つまり施術料を多少安くしても慢性疾患などに対する鍼治療の場合は定期的に回数を通ってもらって徐々に改善することが多く、そうすると総額では結構な額になってしまいます。こんな状況下、内科に鍼師のマーケットを求めてもなかなか患者さんに振り向いてくれないのでしょうか。端的にいえば内科的症状(五臓六腑)に対する治療が出てきて初めて、本治・標治が意味をもつし、脈診・舌診を含めた弁証が鍼師の武器になるとお考えでしょうか。話が取りとめのない方向に向かいましたが、小生の鍼師として今後の軸足の置きどころを決めるに、先生のお考え方を大いに参考にさせて頂いております。

病院の医療費は、一月に十万円を超えると返ってくることから考え、一月に十万円の医療費は、それだけの効果があれば受けるのではないでしょうか?
内科分野に治療範囲を広げても、なかなか患者さんは集まりません。というのは、肝臓病とか腎臓病など、内科疾患は入院して治療するものというイメージがあるから、入院設備のない鍼灸院で内科疾患を治療しようという患者は少ないでしょう。
そもそも内臓疾患は、急性膵炎や胆石症、腸重積、胃穿孔など、激しい痛みがあればともかく、それほど強く痛まないのが多いので、来ないのではないでしょうか?
取りあえず関東では、まず病院へ行く。それで効果がなければ別の治療をする。まず鍼治療など、思いつかないと患者さんが言っています。
そうなった原因を聞いてみると、(日本の鍼灸では)一回や二回で症状が劇的に改善しないということです。
例えば車が故障したとします。修理屋さんに持って行きます。返ってきました。やはり直っていません。近くに別の修理屋さんもなく、また新たに修理屋さんを探すよりも、初めの修理屋さんに持っていって、苦情を言ったほうがよいと思います。そして「全然直ってなかった」と言って、修理して貰います。でも、また直ってません。
こうしたことが関東にはあるらしいのです。そのため患者さんは鍼師を信用しなくなり、最初の治療で選ばず、まず病院へ行きます。
うちの場合、十回以上の治療がかかりそうな場合は、そういいます。だいたい五十肩や坐骨神経痛は、十回以内で完治します。すると関東の患者さんは、「十回も治療しないのに、鍼で完治するなんて聞いたことがない」と言います。だいたい半年とか一年治療して、やっと少し効果が現れてきたかなぁという話ばかり聞くということです。
それを聞いたときに「ああ、関東は治さんなぁ」と思いました。
まず鍼灸院に来る患者は、うちの場合は8割が腰痛や坐骨神経痛患者です。あとの2割が五十肩や膝痛です。そうした患者を十回以内で治さなければ、「不妊だけどどうしよう」とか、「インポだけど、どうにかならんか?」という相談を受けます。
どうやら人々は、肩凝りも治せないような鍼師に、内臓疾患など治せるはずがないと思っているようです。だから関東では、病気になったときに鍼が第一選択にならないようです。
私は、施術料を下げることより、こうした効果の無い鍼灸を改善することが先だと思っています。
施術料が安くても、治療に2年も3年もかかるようなところでは、交通費もかかるし、休業しているときの稼ぎもないので、結局は稼ぎのない老人だけが患者になってしまいます。
仕事する人は、3年よりは1年、1年よりは半年、半年よりは3カ月、3カ月よりは1カ月、1カ月よりは2週間で完治させてくれたほうが、少々の治療費を払っても、交通費や給料を考えると、そのほうがよいと考えているようです。
だから保険治療は老人、現金治療は現役世代と分かれるのは、そのためです。
私の場合、まず十回程度の治療で、だいたい治してしまうことを目標としています。だから老人より、若い人が多いです。
患者さんが、昔から腰痛やギックリ腰が多かったので、そうした患者ばかり扱っているので、ほかの分野は苦手になります。
私は、昔は辨証派だったのですが、それではギックリ腰が一発で改善するということはなく、整形外科と同じ程度の治癒率しかありませんでした。整形と同じ治癒率ならば、みんなが整形に行くので、鍼灸院へ来る患者はいなくなります。
そこで他の治療法を模索した結果、木下晴都式の傍神経刺が一番効果があるということになり、鍼を抜けば腰痛が消えているという状態になったので、ぎっくり腰や腰痛で整形に行く人がいなくなり、今ではみんながやって来ます。
昔から「仏の顔も三度まで」という諺や、「3度目の正直」という言葉もあります。
つまり、仏のような人でも、三度までしか過ちを許さないという意味でしょう。また3度目の正直というぐらいですから、2度までが失敗すれば、3度目はラストチャンスということでしょう。
うちに来た患者さんも、横浜の鍼灸院へ3度行ったけど、腰痛が全然変わらなかったので、このままじゃあ会社に行けなくなると思って、4度目は私のところへ来ました。そのときは整形の痛み止めも、効かなくなっていたそうです。当然にして、一発で会社に行けるようにしてやり、8回で完治させてやりました。もう横浜の鍼灸院へは行かないと言ってました。一回8000円で、2万4千円損したと言ってました。うちは3500円なので、だいたい8回で完治しましたから、横浜と同じぐらいの金額がかかったわけです。
だから一回目に効かなくて、それで患者さんが来なくても私のせいじゃない。2回目に効かなくて、患者さんが来なければ、もしかすると私に責任があるかも知れない。3回目に効かなければ、確実に私が悪い。それが鍼灸院の心得です。
患者さんに3回目以降は、確実に効果があったと感じさせる。それが手です。
それができさえすれば、本治法だろうが標治法だろうが、脈診だろうが舌診だろうが、どんな方法でも構わないんじゃないでしょうか? なにせ、どれほど優れた治療法を持っていても、3回治療して患者が効果を感じられなければ、それ以上の治療を受けにやってこないので、3回でもそれなりに効かす治療法の方が意味があります。
なぜなら優れた方法でも、三回で来なくなっちゃったら、「五回来れば治ったはずなのに」と言ってみても、犬の遠吠えですから。
だから私は、現在の保険制度にも反対です。通った回数でなく、病気が治ったときに、その病気の定価分を支払うべきです。そうすれば回数を引き延ばす悪徳業者がいなくなりますから。お役所仕事は、どうしても不正防止機構が作動していませんから。
修行しないと駄目ですね。とても学校でやった時間では身についてません。しかし留学までは考えていませんが(中国鍼は中医の先生に教えてもらえばいいと思ってるので)、将来開業を考えてる私としては、もちろん鍼灸中心でやっていくつもりですが、その前に、保険が扱える柔整師の資格もあればいいな、と思っているところです。
ここ2、3ヶ月ずっと悩んでて…。学費の事を考えるとクラクラしますが、勉強するには貧乏は付き物だと思い、もう覚悟しようかなと…考えてます…

なので、朝・昼はどこかの治療院でバイトして、また夜学校、みたいな…(笑)

お仕事は順調ですか?



治療についてぜひお尋ねしたいことがあり、
お忙しいところ恐縮ですが、ご一読よろしくお願いします。

私は5年前から「慢性疲労症候群」になり、現在は6割ぐらい回復している(自分の感じですが)状態です。特に治療はしておらず、今は漢方薬を飲もうかどうか検討中です。そして「顎関節症」でもあります。
症状はいろいろあるのですが、中でも辛いのが筋肉のこわばりです。

先生の書かれたホームページの鍼灸適応症の項目には「慢性疲労症候群」の記述は見当たらなかったように思いました。
ですが、適応症として「筋肉が委縮し、石のように固まって動かないもの」という記述はありまして、 これがもしかしたら私の場合にも当てはまるのではないかと思ったのです。

顎関節症については、「顎関節症がある場合は肩こりの治療の効果がない」とも書かれています。
私の場合、普通の肩コリではなく、筋肉があるところはほとんどコリがあり、肩や背中は特にひどくて固まっている状態なのです。(おそらく顎のせいというよりも慢性疲労症候群の症状の一つだと思うのです…)

いろいろ考えてみたのですが、顎関節症が全快してからでなければ「筋肉が委縮し、石のように固まって動かないもの」という症状も、もしかしたら鍼治療の効果がないのでしょうか。

お尋ねしたい件は、「私の場合は適応症になるのでしょうか?」ということですが、分かりにくい説明で申し訳ありません。
私は鳥取県に在住で、島根の病院に通院中ですので、そちらの治療院にも通えます。
ご返答をいただければ幸いです。

顎関節症は鍼の適応症で、普通で三回、特に重症の場合でも10回程度で完治します。
全身が凝りというのは、慢性疲労症候群というより、筋線維痛症というものに近いでしょう。
もしそうであれば、普通の鍼は刺さらないので、刃鍼を使って治療するしかありません。
鳥取県でも、米子ぐらいならば通えるのですが……


はじめまして、私は大阪市に住む40歳 男性です。

当方は鍼灸師でありながら、潰瘍性大腸炎の持病を持ち、また合併症で眼のぶどう膜炎を併発して約
年がたちます。

現在ステロイド治療をしていて、ステロイドを長い間、使っているため、眼圧も30くらいまで上がっ
てきています。

ステロイドを減らすとまた、眼の炎症が増えます。

鍼灸治療でこの病気は効果があるのでしょうか?

効果が期待できそうなら、治療法を教えて頂けると幸いです。

また大阪で眼科鍼灸の得意な治療院を知っていれば教えて頂きたく思います。

大阪で眼科鍼灸の得意な治療院は知りません。

張仁の最新刊で、次のような文章があります。
第九節 虹彩毛様体炎
【概論】
虹彩毛様体炎は前部ブドウ膜炎とも呼び、ブドウ膜炎の一種である。視力減退、痛み、眼瞼痙攣、羞明、流涙、毛様体充血、眼房水混濁などが主な症状である。普通は急性発作だが、慢性症状もあったりする。急性が手遅れになれば、緑内障が続発し、白内障や眼球萎縮を併発して、ついには失明する。本疾患は、よくみられる重症の眼疾患で、やはり盲人となる主な原因の一つである。
本疾患に対する現代鍼灸の最も初期の報告は、1982年である。現在までの関係する臨床データは少なく、方法も刺鍼を主としているが、鍼薬併用も主張されている。また刺鍼と穴位注射や鍼灸を併用して、瞳孔を広げる臨床報告もある。だが早期の鍼灸治療が効果を高めるため重要であるとするのは、共通した認識である。
【効果的処方】
主穴:頭臨泣、承泣、絲竹空、太陽、耳尖。
配穴:翳明、風池。
操作:最初の治療では全部の主穴を取り、症状が好転してくれば毎回3~4穴取る。配穴は毎回1穴取り、2穴を交替で使う。頭臨泣は28号毫鍼を使い、鍼尖を前頭部へ向けて0.8~1寸刺入し、瀉法して局部に重くて腫れぼったい感覚を発生させる。承泣は30~32 号1.5インチの毫鍼を、少し上へ向けて1~1.2寸斜刺し、怠くて腫れぼったい感覚を眼球に発生させる。 太陽と絲竹空へ刺鍼するときは、一般に垂直で0.8~1寸刺入し、提插捻転の強刺激瀉法を繰り返して、局部に怠くて腫れぼったい感じが発生したら留鍼する。太陽は、抜鍼すると同時に血を絞り出す。耳尖は刺血法する。消毒した後、指先で耳尖を揉んで充血させ、耳を前に折って、三稜鍼か太い鍼を耳尖へ1~2mmの深さに素早く刺し、留鍼せずに速抜して、抜鍼したあと指先で血を数滴ほど絞り出す。翳明と風池の操作は、前に述べたとおりである。耳尖を除いて20~30分留鍼する。最初は毎週3~4回治療し、症状が好転したら週2回に改める。
【解説】
この処方は、虹彩毛様体炎の急性発作期に用いる。本疾患は、熱毒傷陰である。取穴では清熱解毒、滋陰降火、涼血化{病於}を主にし、胆経の臨泣と風池を取って、肝胆の風火邪毒を追い出す。絲竹空を取って、三焦の熱毒を清める。承泣は陽明の毒邪を解く。耳尖と太陽は経外穴だが、これは昔から活血清毒の要穴であり、それを取って出血させ、血分の熱毒を追い出す。翳明は、多くの眼疾患を治す経験穴である。
操作では、刺鍼瀉法と刺血を併用する。私の経験によると、特に耳尖は初期なら両耳取ったほうがよく、各耳から血を十数滴ずつ絞り出すと、はっきりした鎮痛消炎効果がある。
緑内障と同じく、本疾患は早期の鍼灸治療がよく、鍼薬併用したり、他の中西医の治療法を併用する。臨床治癒したあと、鍼灸で再発防止の治療を一定期間ほどおこなうとよい。
【カルテ】
金××、男性、35歳、会社管理員。2003年5月19日初診。
主訴:左眼が赤くなって痛み、視野がぼやけるようになって3カ月。
現病歴:仕事で疲れ、近頃では、しょっちゅう頭痛がして目が腫れぼったく、眩暈する。最近、起床したとき左目が充血し、眼痛がひどく、羞明や流涙、視野がぼやける、視力低下となっていることが分かった。眼科で診断したところ、左目の虹彩毛様体炎と確定診断された。ステロイドや抗感染の対症治療したが効果がはっきりせず、現在も左目は、やはり充血してシクシク痛み、視力も回復してない。私のところへ鍼灸法を求めてきた。
検査:健康状態良好、疲れた容貌で、左眼球結膜と毛様体が少し充血している。左側瞳孔が明らかに縮小し、対光反射が少し鈍い。左矯正視力0.2(元0.8)、右矯正視力1.0(変化なし)。舌質は赤く、わずかに黄苔、弦数脈。
治療:前述した処方で、週2回治療する。初回の治療で、眼のシクシクした痛みは顕著に軽くなった。7回の治療で、左目の充血とシクシクした痛みが消え、視力も徐々に回復してきた。耳尖を止める。治療して2カ月後の左矯正視力は0.5になった。もう左目が赤くなって痛む症状は起こらず、左目瞳孔も徐々に正常へと回復している。そののち仕事が忙しくなり、毎週1回の治療しか続けられなくなった。鍼治療を初めて3カ月で、左目の視力は完全に回復した。虹彩毛様体炎は再発しやすく、患者は日頃から目が疲れやすいうえ、いつも疲れると、左目がシクシクと腫れぼったく痛むので、1~2週間ごとに1回の治療を続け、現在も目が赤くなったり、痛みも起きず、視力が保たれている。
考察:この例は来診時、すでに急性発作期を過ぎていた。だが鍼灸の治療効果は顕著で、主な症状も消えたが、仕事で疲れると左目も疲労し、腫れぼったく痛む。刺鍼により症状は消えたが、根は残っている。私は1例の急性期患者を治療したことがあり、薬物治療したうえで、同じ処方で10回治療した。そして治癒し、ずーっと症状が起きなかった。これは治療する時期が重要なことを十分に示している。



はじめまして。
半月板損傷で整形外科医に中程度であり、手術しても直るかどうかわからないといわれロキソニンを服用してごまかして半年くらいになります。痛いときは非常に痛いです。先日貴院によくにた名前の東京の某鍼灸院のホームページをみつけました。半月板損傷は9割ぐらい治癒実績があるようにかかれており、癌ですら半数は5年以上延命するというすごい内容でした。実際いってみるとものすごくこみあってはやっていました。中国医師で紳士的な感じでこの程度の半月板損傷であれば治る。ただし毎日かよって10回くらい、あなたは週一でしかこれないから検討がつかないということでした。とりあえず2回目の予約をいれていますが1回目の治療後が芳しくなく何もかわりません。左膝の下2つと上にひとつツボをとった電気鍼でした。そののち貴院のホームページに出会いましてやっていることは普通の電気鍼でツボも特にかわったものではないと思いました。正直10回毎日というのは一回5000円もかかり、5万円かかります。3回か゛判断基準といわれていたので2回目で継続を判断しようと思うのですか、正直他の患者との会話がきこえたりするとホームページとはちがって慎重なことをいっています。ホームページがやけに商業的なのが気にかかります。正直ただの電気鍼で治癒率9割なとどいうことがあるのでしょうか。大事なお金を無駄にしたくありません。匿名でよろしいでしょうか。

まあ、常識的にはあり得ませんね。それに癌が五年以上も延命するのならば、もっと医療機関が注目するでしょうね。
中医師というのは、中国が作った外国人のための資格であり、日本では何の価値もありません。そのような無価値な資格を大げさに言うのも怪しいですね。
一般に半月板は軟骨なので、修復できない物とされています。ただ体外培養で、30歳台ならば増やすことが出来るようです。
一般的には関節鏡手術をして滑らかにするか、ヒアルロン注射するかですね。
意外と2ちゃんねるなどに、本当の姿が書かれているようですよ。


はじめまして、私、神奈川県在住の鍼灸師で遠藤と申します。
ここしばらく、個人的な調べものをするにあたり、中国鍼灸穴位通鑒(青島出版社)を使用したく思い、様々な購入方法を試みておりましたが、著書自体が古いためか見つけ出すことすら非常に難航しております。
先ほど、ネット上記事にて北京堂鍼灸さんが中国の書籍を貸出をしているというページを発見したのですが、上記書籍をお借りする事は可能なのでしょうか?
もしも可能なようでしたら、押金や貸出料の事など、具体的な事を教えて頂けないでしょうか?
また、どのくらいの期間お借りする事が出来るのでしょう?
唐突な質問、失礼をどうかお許し下さい。
お手すきの際にでも、お返事いただけましたら幸いに存じます。
どうか、よろしくお願いいたします。

どれぐらいの期間だけ必要なのでしょうか?

あの本は、少々高くなります。それというのも厚すぎてメール便が使えないからです。
あれは書虫で、20860円で買えるようです。だから、それプラス送料が押金ということになります。

期間は、一週間350円でいかがでしょう。つたやの旧作と同じで。
前に、どうしても欲しいと言われる本を売ったことがありますが、後で必要になりました。ですから売ることはしません。
現在、引っ越しするので、早めに御願いします。



(すべての質問にお答えできませんが、鍼灸に関する質問がありましたらお送り下さい。)№1へ №2へ №3へ
北京堂鍼灸ホーム