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治療後の注意
①治療日の当日にお酒を飲むと鍼治療の効きめが悪くなりますので、1日だけお酒を控えます。次の日からは、飲んでもかまいません。
 ただ、毎日深酒をする人は、腰痛などの治りが遅いようですので、早く治したければ毎日程々の酒量に抑えることです。

②お風呂は入ってもかまいません。鍼治療用の鍼は非常に細く、すぐに鍼穴がふさがりますので、ばい菌が入る心配はありません。

③鍼治療した後は、横になって2~3時間ほど休んでください。帰るのに1時間以上かかるようならば、どこかで横になって、休んでから帰ると効果があります。

④次の治療は三日以上間を開け、一週間以内のうちに来てください。治療後三日間はまだ治療が効いています。そこで三日開けたくらいに二回目の治療をするのが一番効率がよいようです。また、あまり間を開けすぎると治って来ていたのが元の状態に戻り、また最初の状態からの治療となりますので、一週間以内に再来院されることをお勧めします。お酒を飲んだり、激しい運動をしなければ、治療して三日間は、筋肉が緩んで血液がスムーズに流れ、順調に快復します。つまり鍼は、硬く縮んだ筋肉の痙攣を解除して、筋肉痛に変えているのです。筋肉痛は自然に治ります。筋肉痛の怠さが治まったところで、次の治療をします。

⑤運動してはいけません。頚を治療し、三回で治るはずが一向によくならず、変だと思って尋ねたところ、腹筋運動をして頚に負担がかかっていたのです。腹筋運動を止めたら、患者さんが順調に治りました。

⑥寝不足だったり、体調が悪かったりすると、暈鍼と呼ぶ貧血のような状態になります。これは気分が悪くなり、冷や汗が出たり、吐き気がしたりするのですが、鍼を抜いて、しばらく横になっていれば治ります。鍼して血圧が下がったため貧血状態になったものです。

⑦重症の場合は、鍼すると一時的に怠くなることがあります。筋肉が凝り固まって血管を圧迫し、その血液に老廃物が溜まっているのです。鍼で筋肉を弛めると、血液循環が良くなって、その老廃物が全身を回って怠くなります。老廃物が腎臓などから体外へ排出されると、怠い感じが消えます。
 また一時的に痛くなることもあります。それは神経が筋肉で圧迫され、神経が感じなくなっていたものが、筋肉が緩んで圧迫されなくなるため、神経を伝わって痛みの信号が頭に達するためです。こうした場合は、もう一度鍼をして、神経が圧迫されない程度まで筋肉を弛める必要があります。ほっておいても治りますが、時間が掛かります。こうした場合は、重症の人に起こります。できるだけ早めに治療しましょう。


患者さんのための 鍼灸Q&A

 最近はテレビや雑誌などで、つぼや鍼、お灸のことが取り上げられています。では鍼灸とはどういうものでしょうか?

質問:鍼灸は、日本独特の民間療法なのでしょうか?

答え:そう思っている人が多いでしょうが、実は中国が発祥の地です。紀元後に中国から朝鮮や日本、インドへと伝わり、そして大航海時代にヨーロッパへ広まりました。新大陸に伝わったのは第二次世界大戦後で、占領軍が鍼灸治療を残酷な迷信だとして禁止しようとし、鍼灸の無効性を証明するため動物実験した結果、皮肉にも有効性が証明されてアメリカに広まりました。現在ではWHO(国連の世界保健機構)が二百五十の疾患に有効であると認定し、国際教育機関を鍼灸の発祥地である中国に設置し、公用語を中国語、補助言語を英語と定めて、国際免許を発行するようになりました。現在ではアメリカやアフリカを問わず、多くの人々が国際免許を求めて中国にやってきます。

質問:鍼灸は、どこで誰が、どうしたきっかけで、いつごろ始まったものでしょう?
答え:灸は、漢代の古墳から白絹に書かれた灸経が発見されたのが、もっとも古い文献です。日本には唐の時代、大化の改新の頃に入ってきました。鍼灸を発見したのは古代中国人です。古代の洞窟から石といって、患部を温めたり排膿に使われた石器が出土しています。この石で痛む部分を温めたり、充血した所から血を絞り出すと痛みが軽くなることが発見され、それが鍼灸となりました。昔から不治の病を「薬石効無し」と言いましたが、薬とは漢方薬、石とは鍼石のことでした。

質問:鍼灸はどんな病気に効果がありますか?
答え:頭痛、肩こり、腰痛、膝の痛み、五十肩、坐骨神経痛、寝違い、捻挫、ギックリ腰など、痛みの治療には、ほとんど有効です。また中国では中風(日本では脳卒中とか中気と呼ばれています)やテンカン、脳障害、小児麻痺など、脳の疾患に多く利用されていますが、発病して間もなくか幼児のうちに治療します。脳が死んでしまうと回復しにくくなるから早く治療します。灸は喘息や急性黄疸型肝炎、リウマチなどの感染症や全身疾患に使われます。ただ人によって婦人科疾患が得意だとか、皮膚科や眼科が得意だとか得意分野があります。女性の鍼灸師は婦人科や小児科が得意なことが多いようです。

質問:鍼灸は、何回ぐらい治療すれば効果がありますか?
答え:一般に三回ぐらいで効果が現れます。しかし癌の痛みに使う場合は、鍼麻酔をモルヒネ代わりにして痛みを止めるだけですので、痛みが一時的に止まるだけとなります。そうしたことは治療する者も辛いので、あまり希望しませんが、モルヒネを使うと禁断症状が起きたときに癌が進行するので、鍼を使うのもやむを得ないかなと思います。一般の治療では、普通なら三回ぐらいで効果が現れますが、重症の人などは完治するまで十回以上かかることもあります。しかし三回ぐらいで、かなり症状が楽になるはずです。

質問:坐骨神経痛で鍼をしましたが、全く効果がありませんでした。知り合いは六回で治ったと言いますが、私には信じられません。
答え:一つには、人には得意分野があるということがあります。坐骨神経痛が得意な人や婦人科疾患が得意な人とかありますが、現在の法律では得意分野を表示することは、医療関係の法律で禁止されています。ですから鍼灸師に本人に得意な治療を聞いてみるしかありません。もしかすると、おばあさんは骨粗鬆症があるのではありませんか?

質問:何で判りますか?
答え:坐骨神経痛は五十肩と同じく、大ざっぱな名前なのです。坐骨神経痛は、何かの原因で坐骨神経が圧迫されて痛んでいることが多いのです。おばあさんは子供を生んだりして骨が脆くなっていたり高齢のため、背骨が潰れて坐骨神経が圧迫されていることが多いのです。骨には鍼が入りませんから、いくら鍼に通っても治るはずがありません。骨粗鬆症の場合には、老人用の漢方薬を飲んだうえで運動し、骨が作られるようにすれば効果があります。漢方理論によると、六味地黄丸とか八味地黄丸などの漢方薬は、弱った老人の腎を補うとされています。腎は骨を作ると昔から言われていましたが、腎を補う漢方薬に配合されている地黄や沢瀉には、亜鉛やマンガンが含まれています。そして骨を作るにはカルシウムと蛋白質だけでなく、そうした微量元素が必要なことが最近では判ってきたのです。そのため六味地黄丸や八味地黄丸は、昔から老人の薬とされてきたのです。また中国には「流水は腐らず、戸の軸は錆びず」という言葉があって、毎日少しずつ動かしていると身体が衰えないという意味ですが、骨に圧力がかかることで圧電式の水晶のように電気が発生し、そのマイナス側にカルシウムが集まってきて骨が作られることも判ってきました。ですから微量元素の補給と運動がなければ骨粗鬆症は治りません。
 ほかにも骨折したり、生まれつき背骨の関節がなくて背骨がズレたため、坐骨神経を圧迫して痛む場合もあります。それも鍼では治療できませんから、骨盤の骨を移植して関節を作るしかありません。珍しいものでは首の骨が太くなり、脊髄を圧迫して起こったものもあります。また癌が背骨に転移して坐骨神経を圧迫しても鍼では治りません。よく皆さんが耳にするヘルニアは、軟骨が坐骨神経を圧迫したものですが、それも鍼では治りません。しかしヘルニアは誤診が多く、手術の日取りまで決めていても鍼で完治したりしますので、手術する前に二~三回ほど鍼をして、治らなかったら手術するほうが得策です。

質問:ヘルニアに鍼が効かないと言われるようですが、私はヘルニアで長年苦しんで、ヘルニア手術の覚悟を決めていたのですが、鍼を勧められて六回の鍼治療で治り、手術を取り消しました。これは理屈じゃなく現実です。
答え:さっき挙げたのは鍼の効かない坐骨神経痛です。すべての坐骨神経痛が癌だったり、ヘルニアだったり、背骨に奇形があるわけでなく、大部分は腰の深部にある大腰筋や腰方形筋、梨状筋が萎縮し、その筋肉の中を通っている坐骨神経を圧迫して痛むのです。これが鍼で治る坐骨神経痛ですが、それが大部分を占めているのです。骨による圧迫ではないので、手術しても治らないのは当り前です。

質問:では鍼の効く坐骨神経痛と効かない神経痛は、どうやって見分けるのですか?
答え:筋肉が悪い場合、夜になると血の循りが悪くなるので、寝ているときの夜中とか明け方に痛みます。だけど骨が悪い場合は体重がかかると痛みます。前かがみになると楽になれば筋肉が悪く、反ると楽になれば骨が悪いのです。また骨は坐骨神経の一部だけ圧迫するので痛む範囲が小さいのですが、筋肉は全部の坐骨神経が圧迫されていることが多いので足全体が痛みます。ですから夜間に痛む、エビのように前かがみになると楽、足全体が痛むなどの症状があれば、まず鍼で治ります。そうでなければ治ると断言できかねます。だけど二~三回ほど鍼をすると効果があったりもします。鍼は一生の後遺症が残ることはないので、気楽に試したらよいと思います。ヘルニア手術してからですと、切った筋肉が癒着して痛みが逆にひどくなることもありますので、先に鍼を試してください。
 一般に夜間に痛みがひどくなるときは鍼で治ります。

質問:本を読むと、鍼の作用は麻酔効果なので一時的にしか痛みが抑えられないと書いてありますが、そんなもので本当に治るのでしょうか?
答え:確かに鍼麻酔はニクソン訪中でニュースになり、催眠術か我慢しているだけなのかと話題になりました。のちに麻酔効果が脳生理学で証明されたので、現在では麻酔効果を否定する人はいません。それは鍼の効果の一部です。麻酔効果しかないというのは、全ての坐骨神経痛はヘルニア手術で治るというようなもので乱暴な論議です。例えば中国では脳卒中に鍼をしますが、鍼した翌日にCTやMRIで見れば脳内出血が消えています。これは麻酔効果なのでしょうか?また脊髄が切れた場合、神経がマイナス電気の方向に生長することを利用して、中国では対麻痺を治療し、ある程度回復させていますが、それも麻酔効果とは言えないと思います。またモンゴル自治区では皮膚癌などに鍼して通電し、温度を一定に上げて癌を殺していますが、それも麻酔効果なのでしょうか?鍼灸で血液成分が変化することは、戦後すぐに証明され、進駐軍は鍼灸効果を認めて禁止されずにすんだのです。たしかに鍼灸には、さまざまな作用があり、本家の中国でも効果の全てを解明できていないことは事実ですが、徐々に判ってきています。

質問:血液感染する病気がありますが、鍼で病気が感染しませんか?
答え:確かに鍼を消毒もせず回し打ちすれば、病気が感染する可能性が高いでしょう。皆さんが関心を持たれるのは当然と思います。だからこそ、鍼の管理や消毒のしっかりした治療院を探す必要があります。

質問:では恐くて鍼なんか、できませんね。
答え:昔の話です。現在は、ほとんどの鍼灸院で使い捨ての鍼や鍼皿を使っています。病院の注射針と同じで使い捨てですので、感染することは、まずありません。

質問:北京堂も使い捨て鍼を使っているのですか?
答え:私のところでは、値段の高い鍼を使っているので使い捨てにできません。でも鍼は試験管に入れ、患者さんごとに名札を入れて専用にし、さらにオートクレーブで滅菌します。鍼と接触する器具も消毒済みですし、一人一人で器具を替えて手も洗うため、前の人の血が着いていたとしても洗い流されるので、まず心配いりません。もちろん最初は新品を使って、その人の専用鍼とします。その代わり鍼を捜すため少々時間がかかったりしますが、院内感染を防ぐためにガマンしてください。鍼灸院で感染されると賠償問題になりますから、もし訴訟になったときキチンと管理していますという証拠が必要です。この管理で感染するはずがないと第三者に納得させなくてはなりません。

質問:治療中に身体を動かすと鍼が折れたりしませんか?。
答え:身体を動かすと鍼が曲がってしまい、次には使えなくなりますが、折れることはありません。皆さんは鍼(はり)と言っても実物をご覧になったことがないと思います。縫い針とも注射針とも違います。まず針と鍼では字が違います。身体を動かしたぐらいで鍼が切れていては、危なくて厚生省も許可しないでしょう。
 縫い針は、硬くて折れやすい鉄で作られています。硬くないと布に刺さりにくく、針先もメウチのように尖っています。それは縫い物用の針だからです。注射針は管になっていて、先端が竹槍のようにしてあります。
 身体の線維などを先端の刃で切りながら進むため、針孔が大きくなってお風呂に入れません。一方、鍼灸の鍼は蚊の喙をモデルに作られており、材質は軟らかいステンレス、先端が卵のように丸くて、筋や神経の線維などを推し広げながら進みます。だから鍼を抜いたとき皮膚の弾力で鍼孔が塞がってしまうので、お風呂に入ってもバイ菌が入りません。握りが付いていて、小さなアイスピックのような形をしています。鉄のペンチぐらいでは切れないほど丈夫です。

質問:身体に鍼を刺して、危なくないのでしょうか?
答え:日本では、目が見えない人と見える人のために、それぞれ学校があり、高校を卒業して三年ほど学校に行き、国家試験を受けて通ると免許がもらえます。それで危険な部位が判るので安全に鍼を刺せるようになります。しかし三年ほど学校で勉強しただけでは実戦的な治療技術が習得できませんので、各自が師匠を求めて治療法を勉強します。この時点で各治療家の得意分野ができてきます。
 中国では目が見えなくても按摩はできますが、鍼は許可されません。中国人は高校を卒業して入学し、五年ほど学べば資格が取れました。しかし天安門騒ぎから四年生で国家試験ができ、それに通らないとインターンができなくなりました。私の留学した学校では市内に幾つも病院があって、そこで実習します。やはり五年ほど学んで資格だけ取っても、治療技術は習得できないため、いろいろな病院を回っているインターン時代に師匠を見つけ、資格を取ったら師匠に引いてもらって病院に入り、弟子になって新入医師となり、昇級試験を受けながら上がってゆくのです。
 中国の学校に行くとWHOの国際資格が取得できます。ただ日本や北朝鮮は国際免許を認めていません。アメリカや台湾では、国際免許があると当国の資格試験を受けることができるというのに、日本は学術や文化の面では、北朝鮮なみに遅れているということなのでしょうか・・・・・。

質問:鍼をしたため、かえって悪化することはないでしょうか?
答え:人は、それを瞑眩反応とか、刺鍼事故と呼びます。どちらも鍼や灸のため症状が悪化することなのです。しかし刺鍼事故と瞑眩反応は違います。刺鍼事故は、例えば解剖をあまり知らない人が、肩凝りの治療で肩へ刺鍼したとします。そのときに解剖を知らないものだから、肺の方へ深く深く刺入したとします。そして痛みは寒邪だから、寒には留めよと置鍼します。呼吸のため肺は横隔膜により上下します。すると鍼は肺に刺さっていますから一緒に上下するのですが、胸郭から突き出た部分は上下できません。ちょうど壁から出た釘に引っかけた如く、肺は切れてしまうのです。これを気胸とか血胸と呼びます。ご丁寧に両肩へ刺鍼し、呼吸ができなくなってしまえば、鍼を抜く頃にはチアノーゼが起きて真っ青になっているでしょう。気胸では後遺症が残りませんが、呼吸困難のため脳へ酸素がゆかなくなると、脳死状態となって植物人間などという可能性もあります。まあ他には、門へ突き上げるように鍼を刺入し、途中で硬膜という硬い膜に鍼が当たって止まったとします。しかし、この御仁「こんな膜など突き破れるぞ」とばかりに、鍼を錐のように回します。オメットウサン、膜は通過しましたというときには、鍼は脳に刺さって脳内出血を起こしています。
 古書にも「内臓へ刺入するなとか、門は耳へ向けて刺入しないと意識を失う」とか書かれており、鍼灸の学校でも「肺に当てないように逆八の字に刺して背骨に当てよとか、門は上に向けて刺入するな」と指導しているので、こうしたことはないでしょう。
 ほとんどは瞑眩反応のほうです。例えば、坐骨神経痛に刺鍼したら痛みが逆にひどくなったとか、耳鳴りに刺鍼したら眩暈がするとかです。これは大腰筋が坐骨神経根部を締め付けて痛みが出ていた場合、あまりにも締め付けすぎると感覚が鈍くなり、知覚も鈍麻しますが痛みも鈍くなります。刺鍼によって、神経を挟んでいた大腰筋を徐々に緩めると、再び神経が痛み信号を伝えるようになるので鋭い痛みに変わります。こうした状態になれば、完治するのももうすぐです。よく考えてみれば、痛みが鈍くなった人は、その前に必ず鋭い痛みがあった時期があるのです。逆の過程を通って治ってゆくためにすぎません。耳鳴りとかも同じですが、それまで虚血状態だった耳周辺の血管に、刺鍼によって急に血液が循環し始めたので、血流変化によって眩暈がしたにすぎません。これは、私が読んだ某刺鍼事故の書物にも記載されていますが、刺鍼したあとで一時的に眩暈がしたり痛みが発生した例があり、その直後に治癒しているので、これを刺鍼事故と呼べるのかどうかとしていました。そうしたものは事故ではないので心配しないようにと。どうやら「瞑眩反応」は、日本では周知の事実ですが、本場の中国では相当する言葉がないようなのです。
 そもそも考えてみてください。耳鳴りの治療で脳へ鍼が刺さっていれば、脳卒中のなかでも相当に危険な部分なので、耳鳴り程度の症状では済みませんよね。刺鍼事故の場合は、刺鍼した部位と傷つけられた内臓の症状が一致しているはずです。例えば腰を刺して胸が痛くなったとしても、それは刺鍼によって肺が傷ついたのではないのですから事故ではありません。こうした好転反応を悪化したと考える患者さんが多いのも事実ですので、刺鍼部位と傷つく可能性のある内臓、そして内臓損傷によって発生するであろう症状を説明し、誤解を解かねばなりません。日本の鍼は細いため、捻鍼さえしなければ硬膜を突き破って脳に達する可能性はほとんどなく、肺に刺さっても肺の上下運動に従って上下するので、安全性の面からは非常にすぐれた鍼だと私は思います。現実の事故報告も、ほとんど気胸のみです。それも中国のように1カ月も吸引するという症状ではなく、せいぜい1日から長くても1週間ていどの入院で済みますから。これも鍼が細いため、万一刺傷しても損傷を与えないか、非常に軽微な損傷であることを示しているのですから。中国の太い鍼は、太いだけに効果はあるのですが、安全性の面でどうも。やはり古書にあるとおり、こじれた病気には太い鍼、軽い病気には細い鍼を実践し、また古書の通り、「内臓の近くでは捻鍼や上下に動かしたり、斥候するな」を守って、脳の付近は硬膜を破らないために細い鍼、肺の近くでは鍼が重力に負けて、とんでもない方向へ進んでゆかないように太い鍼などの原則を守り、解剖を頭に叩き込んで危険な方向は避けるようにすれば、100%刺鍼事故を防げると思います。深く刺入すれば深いほど効果があるとか、いままで事故なんか起こしたことないから今後も大丈夫だとか、誤った考えを捨て、解剖を頭に描きながら安全性を確認することが重要です。

質問:鍼は刺すので痛いと思います。しかし本には、鍼はツボに刺すから痛みは全くないと書いてあります。本当のところは、どうなのでしょうか?
答え:普通の人には神経が通っています。痛みを感じない人はケガをしても気が付きませんから、痛みは必要な感覚なのです。ツボが痛くなければ、そこには痛覚受容器がないことになりますが、今までの報告の多くがツボには神経が集中していると言っています。ですから痛みを感じさせないように周囲を圧迫したり、蚊の喙のように細くて軟らかい鍼を使ったり、瞬間的に刺すなどの工夫をして痛みを感じさせないようにしています。しかし蚊も痛いときがあるように、皮膚の痛覚受容器に当たると「チクッ」とします。気付かれれば蚊は逃げるように、我々も場所を変えます。その痛みを我々は切皮痛と呼びます。そしてズシーンと重くなる筋肉痛のような感覚があります。一般の人は、それを「押さえるような感じ」とか「刺すような感じ」、短ければ「痛み」と表現しますが、その感覚を我々は得気とか鍼感、あるいは響きと呼んでいます。昔から「気が病のところに至る」と言われてきましたが、この重怠い感覚こそが治療にとって大切で、「気が病巣部に至れば治り、至らなければ治らない」ことが判っています。気が病巣部に至るためには、刺鍼して気を得なければなりません。気が得られることを得気と呼び、それが鍼に必要な感覚なので鍼感と呼び、その感覚が病巣部に伝わることを響きと言います。ですから鍼の技術は、最初に刺鍼して得気し、それを病巣部に伝わらせ、その操作により患部を温めたり冷やしたりもできます。だから治療には気を得ることがポイントになります。気が得られれば好転し、得られなければ変わりません。
 中国の文革時代は、得気して気を行かせたり、温度を上げたり下げたりすることは迷信だと否定されてきました。しかし文革が終わると、鍼を刺入して筋肉が収縮する感覚が得気であり、血管が拡張して血流がよくなると温度が上がり、血管が収縮して血液の流入が少なくなると温度が下がることが判明し、迷信ではなかったことが証明されました。

質問:鍼治療の方法は、日本と中国では違うのでしょうか?
答え:本来は同じようなものだったと思いますが、かなり現在では違っています。それは文化大革命の洗礼を受けたためです。毛沢東は、秦の始皇帝のように過去の先例や文化を否定しました。そして過去の技術も否定されたのです。だから毛沢東語録の精神に基づいて、新しい方法が開発されました。例えば彭静山は、文化大革命で医学の権威として批判され、若者に殴られて耳が聞こえなくなり、そのハンディを補うために眼を見て診断する方法を開発し、現在では眼鍼療法の創始者となっています。また焦順発は、若くして病院に送られたため脳卒中患者の治療法が判らず、しかたなく脳解剖に基づいて頭皮へ刺鍼しましたが、それが画期的な効果を収めたため焦氏の頭鍼が完成しました。とにかく新しい方法を考えついてサッサと患者を治し、毛思想に基づいて新しい鍼灸療法を開発することが使命となりました。データを偽造して効果があるように見せかけたものもありましたが、以前には考えられなかったほどの効果がある鍼治療技術も誕生しました。また大都市で医者をしていたものは設備のない農村に行かされましたが、そこには鍼や漢方薬しか治療の設備がなかったのです。しかし患者を治して「毛沢東バンザイ」と言わせ、労働に復帰させなければなりません。鍼や薬草ぐらいの医療を使って、早く職場復帰させなければなりませんから、治療法だけでなく芒鍼や蟒鍼、赤医鍼、小寛鍼、鈎鍼、小鍼刀、松解金鍼など、数々の鍼が誕生しました。有名な中国陸上のマー軍団などでは、松解金鍼を開発した鍼灸師が選手のケガ治療を担当しています。
 日本では、進駐軍に鍼は残酷な迷信ではないことを証明するため、痛みの少ない鍼を開発しなければなりませんでした。細い鍼が使われるのも、鍼の痛みを少なくするためです。しかし鍼が迷信でないことを証明したのは、皮肉にも鍼灸を否定して進駐軍から研究費を出してもらうはずだった京大の先生でした。それからは大学で鍼灸の研究が進み、鍼灸界では「いかにして痛くない鍼をするか」がメインテーマとなり、その結果として日本では皮内鍼が完成しました。ですから日中の国交が回復した文革末期に、蓋を開けてみると中国には鍼麻酔があったものの、鍼の生理的作用の研究については日本のほうが遥かに進んでいました。

質問:中国では、痛かろうが何だろうが職場復帰させること。日本では痛みのない鍼が追求されたということですか?
答え:はい。私が日本で鍼灸学校の生徒だった頃は、痛い鍼をするのは技術が悪いからだと言われていました。現在のように中国の辨証鍼灸が有名ではなく、どうして後進国に勉強しに行くんだと言われた時代でした。幸いに私が留学した頃、中国も漢方薬と鍼灸が別れて専科ができ、鍼灸の科学的な出版物も増えました。現在では、公務員で安月給の医者より外資系企業への就職に人気があり、鍼灸の書籍が減って価格も上がり、コンピュータ関係の書籍ばかりになりましたので、ちょうど良い時期に留学したなと思います。
 中国では鍼を刺入したときに「ズシン」とした得気が必要です。同級生が日本の鍼に関心を抱き、ちょっと刺してみろというので刺したところ、何の感覚もないと言いました。女の子を呼んで、こいつにも刺してみろというので刺すと、やはり何の感覚もないと言います。結局こんな感じない鍼では治療効果がなく、日本の鍼は効かないということになりました。わたしは、あんたたちが健康だから感覚がないが、ちゃんとした病人にさせばズシンと響くと抗弁しましたが、彼等は半信半疑でした。後にギックリ腰の患者に使って、病人に刺せばズシンと響き、一発で治ることを実証してやりました。
 実際のところ日本も中国も基本は同じです。日本では「チクッ」とする鍼は下手とされていますが、中国では未熟とされています。そして「ズッシーン」を日本は鍼感と呼び、中国では得気と呼んで、効果のポイントとされているのは同じです。
 ですから中国人の同級生は「チクッ」が無かったので未熟とは思わないものの、「ズシン」がないので治療技術がないと思ったのでした。
 日本は「ズシン」で終わりですが、本家の中国では行気といって、鍼感を病巣部に伝わらせたり、熱感や冷感を発生させたりします。それを昔は焼火山とか透天涼など、たいそうな名が付けられて名人芸とされていましたが、現在はメカニズムが解明されてしまったので、誰でもできる当り前の技術になり下がってしまいました。そうした技術は得気がなくてはできません。それで中国では得気が日本以上に重視されて切皮痛が軽視され、日本では逆に切皮痛が重視されて鍼感が軽視されることになりました。鍼も日本では握りが小さくて操作しにくく、中国鍼は握りが長くて滑りにくいことが、それを物語っています。

質問:日本は古い鍼灸が守られ、中国は新しい鍼灸ばかりになってしまったのですか?
答え:文化大革命による旧文化の破壊で、新しい鍼灸が始まったと言いました。
 しかし現在では毛沢東が死んでから何年も経っているので事情が変わってきています。私は日本と中国の両方で勉強したのですが、日本では古典を勉強することは一度もありませんでした。しかし中国では経絡学や診断学だけでなく各家鍼灸学説、鍼灸医籍選、鍼灸医経選などの授業があって、各家鍼灸学説は各時代の鍼灸家の学説が、鍼灸医籍選は『素問』『霊枢』『難経』、さらに『千金要方』『類証活人書』『鍼灸資生経』『鍼灸問対』『医門法律』『鍼灸大成』が、鍼灸医経選では『内経』と『難経』が原文で学べるようになっていていました。中薬系でも古典は必須でした。だから中医系の卒業生は、中国人と言っても現在の文字だけでなく、古い文字も読めて当り前なのです。必要な古典は、原文で頭に入れてしまうので、彼等は頭をフリさえすれば、だんだんと思い出してくるようです。私は暗記までは無理ですが、授業を受けているうちに医学文献は判るようになったので、本屋さんで古典書籍も買ってきました。日本では古典を手に入れることができません。売っていないのです。ですから日本は、鍼灸は伝統医学だといっていますが、伝統部分を教えもせず、書籍も手に入らないのでは大丈夫かいなと思っています。

質問:では逆に日本の鍼灸は新しい鍼灸ばかりになり、中国は古典に基づいた鍼灸ばかりになったのですか?
答え:古典に基づいた鍼灸とは、たとえば私のホームページに連載している『鍼灸資生経』などです。『内経』には三刺というのがありまして、それぞれ刺入する深さがありました。骨まで達するなどという刺入法も記載されています。患者さんの話によると、昔は相当に深く刺入する鍼灸師もいたそうです。しかし、そうした「ズシーン」と響くような鍼をする人は亡くなってしまい、あまり感じのない鍼をするところしかなくなってしまったそうです。皮肉なことに中国留学して何年か勉強した人だけが、そうした昔風の鍼をすることになってしまいました。
 以前の柳谷素霊や木下春都など、昔に鍼灸の名人と呼ばれた人は、かなりの深鍼でした。柳谷素霊などは、何人か内弟子を持っていたようです。ところが先生がいない間に内弟子が未熟な腕で患者さんに深鍼し、両肺の気胸や脳内出血を起こし、何人かを殺しているようなのです。すると弟子達は、怖いから深鍼をしなくなってしまいます。それが現在の2cmぐらいしかない寸三鍼を使うようになった原因ではないかと思います。2.5寸以上の鍼を業者に注文すると、「そんな鍼は今時、使う人が少なくなって」と言われて、品物がなかなか来ません。また3寸の5番を注文すると、「3寸の長さで5番では、クネクネして刺入できませんよ」との答えが返ってきます。こっちは「3寸の5番で十分に刺入できるから注文しているのに……。
 深く刺入するには解剖をきちんと勉強し、マンツーマンで習わなければ人を殺してしまうかも知れません。おそらく柳谷素霊は、弟子に「鍼は深く刺入しすぎると危険だ」ということを教えていなかったんではないかと思います。また「心臓に鍼を刺すと死ぬか死なないか」ということで口論になり、酔っぱらった勢いで、友達の心臓に鍼を刺して見せたといいます。そして「ほらみろ!心臓に鍼が刺さっているのに死なないじゃないか」と言ったそうです。
 中国では、心臓に鍼を刺すと死にます。そして解剖してみると、心臓と心臓を包む袋(心嚢)の間に血が溜まり、心嚢に溜まった血の圧力で心臓が縮んだままになっているそうです。太い中国の鍼だから心臓から出血して死んだのだろうが、細い日本の鍼だったから厚い心臓壁に細い穴が開いても出血せず、何事もなかったのではないかと考えられますが、ちょっと検証する気にはなれません。あり得ることだと思います。
それに柳谷素霊の本を読んでも、そこに書かれているのは深鍼なので、模倣したら危険じゃないかと思われます。しかるべき人に見守ってもらわねば、模倣できるような方法ではないのです。何十人も教えなければならない鍼灸学校では、絶対に教えられないでしょう。深く刺入する方法を習わないのだから、できるはずもないのです。
 もう一つの原因は、電気鍼が増えたことです。電気鍼はピクピク動きますが、それによって金属疲労を起こしてしまうのです。また交流とはいえ電気をかけるため、どうしても電蝕してしまいます。ですから折れてもすぐに取り出せるようにするには、鍼を浅く刺入するしかないのです。また深く刺入すれば筋肉の跳動で鍼が曲がってしまいます。
 最後の理由は、柳谷素霊などは古典をかなり読んでいたようですが、現在の日本では古典を読む人が少ないので、深く刺入して骨まで到達させるような刺入法があるとは知りません。
 そうすると知らないながらも『鍼灸甲乙経』や『鍼灸資生経』に書かれた0.3寸や0.5寸しか刺入しない方法になってしまいます。
 対して中国では、いろいろと勉強しますから、深く刺したり浅く刺したりできるのです。その結果、中国ではツボが筋肉内の様々な深さにあるとするのに比べ、日本では「体表にツボがあるわけで、決して深部にあるわけではない」と、『霊枢』の五刺や十二刺と外れた考えが支持されたりしています。
 まあ日本式の鍼も響きがないので、患者入門として向いているかも知れません。でも「何回で治るか」を追求して中国留学までした連中にとっては、得気があろうがなかろうが、鍼が痛かろうが痛くなかろうが、とにかく早く治すことを使命としています。

質問:どうして鍼で痛みが消えるのですか?やはり鍼麻酔効果なのでしょうか?
答え:麻酔効果は末期癌に使います。しかし日本で末期癌の痛みを抑えるために鍼麻酔を使うなどということは、まず無いと思います。
 鍼は神経痛に使われているほうが多いと思いますが、その治療には一時的な鍼麻酔は使いません。もっとも鍼麻酔は、鍼に電気を通じさせたり、鍼を動かし続けていれば、自然に麻酔がかかります。簡単ですから特殊な技術ではありません。
 では痛みが消えるメカニズムが、麻酔でないとすると何でしょうか?神経は侵害刺激を受けると痛みますが、神経痛では圧迫が痛みの原因となっていることが多いのです。筋肉がコムラガエリなどで痙攣しますと、神経が異常に圧迫されて痛むのです。また筋肉が痙攣しますと、筋肉は骨に付着していますので、背骨などでは上下の骨が筋肉に引っ張られるので間隔が狭くなり、脊椎から出る神経が圧迫されて痛みます。また動脈は深部を通るため、筋肉が痙攣すると血管が締めつけられて循環できなくなり、酸素が十分に供給されないので発痛物質ができて痛みます。こうした二重、三重の痛みが襲ってくるのが神経痛です。鍼には筋肉を弛緩させる作用と、血を循環させる作用があるので、筋肉の痙攣や萎縮を解きほぐして、神経に対する椎間孔や筋肉の圧迫を無くし、血管の圧迫も緩めて血を循環させるます。発痛物質が運び去られたり酸素が供給され、神経は圧迫と発痛物質から解放されるので痛まなくなります。鍼灸の専門用語では、筋肉の弛緩作用を舒筋、血液循環の回復を活血と呼びます。ですから本に活血舒筋とあれば、我々には判りますが一般の方には漢字が羅列してあるとしか思えないでしょう。

質問:治療したあと一杯やって風呂に入りたいのですが。
答え:それはいけません。鍼をすると血行がよくなって治るのですが、アルコールを飲むと血管が開いて熱を放散し過ぎてしまい、反動で血管が収縮して血行が悪くなるので効果がありません。風呂はかまいません。

質問:鍼をしたあと、注意することがありますか?

答え:やはり横になって休んでください。鍼をすると筋肉が緩んで血の循環が活発になり、発痛物質を運び去ります。筋肉が収縮することにより身体は動きますが、筋肉を収縮させると血管が圧迫されるので発痛物質が滞り、発痛物質があると筋肉が収縮するため、悪循環の筋緊張が繰り返される恐れがあります。鍼をしたあと二~三時間ほど横になると効果が倍増します。 また、治療後にお酒を飲むと効果が悪くなるので、治療日当日には飲酒をしないようにしてください。

質問:寒さに遭うと喘息になるのだが、いい方法がありますか?
答え:背中にある身柱(チリケ)、至陽、肺兪、膏肓の六穴に、米粒大の灸をすえると治ります。十日に一度の割合ですえ、喘息発作が起きたら、その都度すえます。こじれた風邪にも効果があります。

質問:お灸のしかたを教えてください。
答え:最初にワセリンに墨を溶かした灸墨を綿棒などにつけ、点をつけます。こうするとワセリンでモグサが落ちません。そして小指の先ほどのモグサを取って手の平に乗せ、手を軽くすり合わせて両端を尖らせます。その細長くなったモグサを、左手親指の腹と人差指の横でこすって尖らせ、先端の5ミリぐらいを取って使います。つまり円錐形のモグサを作ります。これが火を着けるモグサとなります。

質問:線香は、どうやって持つのですか?
答え:お灸には、直径2~3ミリの太い線香を使います。細い線香は火が着きにくく、モグサが線香にくっついてしまいます。そして線香を人差指と中指の間に挟みます。ちょうど煙草を持つ要領です。火を手のひら側にすると手のひらが火傷するので、手の外側に持って行きます。そして親指と小指を皮膚に着けて、人差指と中指を上下させ、火と線香の境目で点火します。

質問:おばあちゃんは、まん丸いモグサを使いますが間違いですか?
答え:間違いです。丸いモグサは底が球なのでコロコロ転がり、火が着いたまま転げ落ちます。だから先の尖った円錐形にして底を平らにします。また点火する部分を尖らせるため火が着きやすく、また線香との接触面が小さいので、モグサが線香にくっつかないのです。さらに円錐形にすることで点火部分が皮膚から遠くなり、線香の火で皮膚を焼くことなく安全にお灸ができます。

質問:鉛筆のように線香を持っては、いけませんか?
答え:線香を鉛筆持ちにすると狙いが定まらないので、火を着ける前に線香の火が皮膚に二~三回ぐらい当たって熱いのです。私と学生時代に組んでいた人は、鉛筆持ちだったのでモグサに火を着ける前に、必ず皮膚に二~三回ほど当たりました。そこで私はダブルグリコと呼んでいました。グリコは一粒で二度おいしいが、あんたのお灸は一壮で二~三回も熱いという意味を込めています。煙草持ちにすると、小指、親指、薬指の三本で皮膚を支えるので、安定して確実に目標へ当たります。線香の先端で火を着けないこともポイントの一つです。線香の先端は燃え尽きるところで灰が着きやすいため、燃え始めたばかりで灰のない火と線香の境目の火を使いましょう。
 ちなみに一壮とは、一つのモグサに火が着いて燃え尽きるまでを一壮といいます。二つすえれば二壮です。

質問:お灸は熱くて嫌ですが。
答え:お灸が熱ければ、火の着いたモグサの周囲を指で押さえたり、周りの皮膚をつまんだりすれば熱くありません。つまりお灸を中心に、その上下か左右の皮膚を親指と人差指でツネルように挟みます。神経は強く圧迫されると感覚が伝わらなくなるからです。同じ場所に三壮すえると、もう熱くありません。

質問:でも効果が同じなら、せんねん灸のほうがいいです。
答え:せんねん灸は温灸だから効果が違います。直接灸は皮膚の蛋白質が熱によって変質するので、身体は自分でない蛋白質が侵入してきたと勘違いして攻撃します。そのため免疫力や身体の抵抗力が強くなります。
 温灸では蛋白質が変性しないので、こうした効果が現れません。ゆで卵と温かい卵の違いのようなものです。とはいえ皮膚の表面全体の毛細血管を拡張させる効果はあります。中国では直接灸が廃れたため、麻酔した皮膚に羊腸線や絹糸を皮下に埋め込んで同じような効果を得ています。これを穴位埋線と呼びますが、痕を残さないための方法です。

質問:大きな灸痕が残っている人がありますが・・・・・。
答え:あれは子供に直接灸したからです。子供は皮膚が薄いうえに、身体が大きくなるにしたがって灸痕も大きくなるので、ああなるのです。大人にお灸しても、直径1ミリぐらいの白い小さな点がホクロのように残るだけです。
 子供ならば、温灸でも直接灸と同じような効果があります。温灸には棒灸と隔物灸があります。棒灸はモグサをくるんだ大きな煙草のようなもので、モグサに薬物を混ぜたりして使います。隔物灸はショウガやニンニクを3~5ミリにスライスし、つま楊枝でレンコンのように穴を開けて皮膚におき、そのショウガの上に小指の尖ぐらいのモグサを乗せます。モグサと皮膚の間に、物が挾まっているので隔物灸と呼びます。このとき使うモグサは、皮膚に直接すえるモグサではなく、質の悪い黒っぽいモグサを使います。上質モグサでは、すぐに火が消えてしまい、ショウガなどが温まらないからです。冷えならばショウガ、元気がなければニンニク、痛みには附子、ヒザの痛みなどには桃の枝を輪切りにしたものなど、症状によって挟むものを選びます。小児喘息では冷えから起きると考えて、一般にショウガを使います。

質問:私は鍼が恐いので、灸で坐骨神経痛を治して欲しいのですが。
答え:治ることは治るでしょうが、時間もかかるし痕も大きくなります。
そもそも坐骨神経痛は、大腰筋が萎縮して起こったものが多いのですが、この筋肉は深部にあります。腰に鍼を刺せば大腰筋に直接当てられるのですが、灸は皮膚を焼くので深部に達せず、その筋肉を通る神経が表面に出る足やお尻に施灸をせねばなりません。それでは刺激療法なので効率が悪いのです。やはりお灸は免疫力を高めることから、全身の疾患に使ったほうが正当です。

質問:では鍼と灸では、使い方が違うのですね。
答え:鍼はポイントを絞りますので、局部の痛み、捻挫や神経痛、脳卒中などに速効性があります。その代わりポイントに当てなければならなかったり、内臓に当たると危険なので、シロウトには手足ぐらいしかできません。
対して灸は全身に効くので、ポイントが多少ズレても大丈夫です。主治も喘息、リウマチ、高血圧と、感染症や全身の免疫疾患に効果があります。しかし糖尿病は全身疾患ですが、鍼の効果があっても感染しやすいので直接灸はいけません。温灸ていどです。

質問:なぜ糖尿病に鍼が効くのですか?
答え:背中に膵兪というツボがありまして、そこに鍼をするとインシュリンを作るβ細胞が増殖することが判っています。しかしインシュリン注射している人は、β細胞そのものがなくなっているので増殖のしようがありません。一般的には鍼と漢方薬を併用して治療します。初期の糖尿病ならば、ほとんどの人が治ります。

質問:灸のツボは、どうやって見つけるといいのでしょう。
答え:経穴人形や経穴図、書物などで、おおよその見当をつけて指先で押すと、鍼の得気のようにズシーンと響くところがあります。そこがツボになるのです。

質問:でも本には、指三本とか、きちんとツボの位置が書いてありますが?

答え:人の顔が、それぞれ違うように、ツボの位置も少しずつ違います。人間は鋳型で作られたものではないのです。中国医学では、刻々と変化する状況に合わせて治療法を変えますが、特に個人差を重視しています。ツボは身体の反応点ですから、ツボの周囲を押さえて反応した所がツボになります。
 中国医学では三因制宜といって、人に合わせ、地域に合わせ、季節に合わせて治療法を変えます。例えば、ある人が喘息で、処方された薬が効いたとします。その人が自分で同じ処方をしても効果あります。しかし北方から南方に転勤したとしますと、同じ処方では効きません。寒さが違うからです。恐らく北でもらった薬は、姜とか附子など温まる薬材が入っていると思います。しかし南は暖かいので、温まる薬材を入れると逆に喘息がひどくなります。同じように湿気の多い地域から乾燥した場所に移動したときも、処方を変えます。それを加減と言いますが、本来の漢方薬は、その加減があるので、人により、季節により、地域によって処方が変わってゆくものです。加減には経験が必要です。症状から処方済みの漢方薬を選ぶことは、中国医学を学んだ素人の我々でもできますが、加減ができません。この病気は、この漢方薬を使うとかのマニュアルがありません。ですから全く異なる病気なのに薬が一緒だったり、全く同じ病気なのに薬が違っていたりします。それを異病同治、そして同病異治と呼びます。この原則を無視すれば、小柴胡湯で肺炎になって死ぬなど、新聞を賑わせているような事故につながります。まず飲んでも効果がありません。

質問:漢方薬は、病気に合わせて選ばれるものと思っていました。違う病気でも同じ処方したり、同じ病気に違う処方をすることなど思いがけないことでした。
答え:中国でも瓶入りの漢方薬を売っていますが、素人が自分で買うものです。中国では 医師が診察したあと処方箋を書き、それを患者が薬局に持っていって、薬材を量り売りしてもらいます。ニセ物の薬材もあって、医師は本物かどうか見分けられないからです。ですから医師は処方し、薬局は薬剤の鑑定士のようなものです。漢方薬は、煎じ薬がもっとも速効性があります。中国の煎じ方は、最初に入れる薬材と、後に入れる薬剤が決まっています。どうして一度に入れてしまわないかと思われるでしょうが、最初から煎じるのは溶け出しにくい成分を含む薬剤、後で入れるのは揮発性の高い成分を含む薬剤です。一緒に入れると、溶けにくい成分は出ず、揮発性の高い成分は飛んでしまっているので、同じ処方でも全く効果がありません。ですから最初はザッと煎じて濾します。これが一番煎じです。次に残りカスに水を入れて長時間コトコトと煎じたら濾します。これが二番煎じです。日本では二番煎じを悪く言いますが、二番煎じに溶け出しにくい成分が含まれています。そして一番煎じと二番煎じを混ぜて、瓶に入れて冷蔵庫に保管します。飲むときは体温まで暖めてから食前に飲みます。

質問:漢方薬は一年ぐらい続けないと効果ありませんか?毒性はありませんね?
答え:漢方薬の薬材は、昔の本では上品、中品、下品に分かれています。上品は毒性がないもの、中品は毒性の弱いもの、下品は毒性の強いものです。『素問』に「大毒で治療するときは、六割り治ったら止める。常毒の治療は、七割治ったら止める。小毒の治療では八割治ったら止める。無毒の治療では九割治ったら止める」とあります。中国には「毒をもって毒を制す」という言葉があって、漢方薬は原則として毒なのです。毒薬を使って病毒や疫毒という毒を抑えるのです。ですから漢方薬に毒性がないというのは、適当ではありません。漢方薬の中には、毒性のないものもあると言ったほうが正確です。でも毒性のないものはレンコンとかサツマイモのような食品ですから、薬材としては売っていません。朝鮮人参すら使う人によっては毒性があります。ですから漢方薬は、原則として毒性があり、完治するほどに薬を使うなと『素問』は諌めています。
漢方薬は続けないと効果がないというのも適当ではありません。昔は漢方薬しかなかったのですから、すぐに死にそうな病人へ一年後になってから効き始める薬を与えても、効き始める頃には鬼籍へ入ってしまい、一周忌を迎えていることでしょう。
 中国では三日、長くても一週間で、効果がなければ処方を変えます。そして、ある程度治ったら薬を止めて食事療法に切り替えるのが良い医者とされています。その漢方薬が合っているかどうか正確なところは処方してみないと判らないので、まず二~三回ほど飲んでみて、症状が変われば処方を変えたりして合わせていきます。つまり状態を見ながら処方を変えていきます。ですから症状が激しければ強い漢方薬を、症状が緩ければ作用の穏やかな漢方薬を使います。
 毒性のない六味地黄湯や八味地黄湯、十全大補湯などは、日本では漢方薬として売られていますが、中国では補助食品として食料品店などのスーパーで売っています。老人になると骨や頭が衰えてくるため、ある程度の年齢を越えたら補うために飲み続けるもので、それは一年ぐらい飲み続けなければ効果が現れません。つまり日本で漢方薬として売られていても、中国で食品として扱われているものは毒性がなく、一年ぐらい飲み続けないと効果が現れません。

質問:毒性がない漢方薬なら四ケ月分をまとめて飲んだらいいじゃないですか?
答え:漢方薬には攻めの漢方薬と、補う漢方薬の二種類があります。耳にしたことがあると思いますが、漢方では病気を虚実に分けます。邪が入った実の症状には攻めの漢方薬を使いますが、これは量を増やすと作用が強力になり、副作用も強くなります。身体が弱っている虚の症状に対しては助ける漢方薬を使いますが、これは原則として食品なので、多く摂取しても効果は変わらず、逆に興奮して眠れないなどの副作用が現れます。ちょうど毎日食事するのが面倒だから、四ケ月分の食事を一度にしても身体を壊すようなものです。補品は毎日少しずつ飲むのが原則です。

質問:漢方薬や鍼灸は、続けないと速効性がないと聞きましたが本当ですか?
答え:病気によります。漢方薬と鍼灸は、同じ中国医学なので似ているところもありますが違いもあります。まず漢方薬は、寒には熱、熱には寒の薬と、反対作用の薬物を使って崩れたバランスを回復させますが、鍼灸には最初から双方向性があるので、考えなくとも崩れたバランスが回復します。逆にいうと薬より副作用がない利点があります。
 漢方薬では特に診断が大事で、間違った薬を処方すると悪くなりますし、治りかけているのに薬を飲み続けていると、行き過ぎて反対方向にバランスが崩れます。それで最初に目星をつけて処方し、観察しながら薬を変えたり止めたりします。鍼灸も同じで、まず目星をつけますが、治療してみて効果がないと治療法をすぐに変えます。
 つまり中国医学では二~三回ほど治療して効果がなければ、治療法が間違っていたのではないかと考え直し、すぐに治療法を変えます。治療法は、病気に対して治療するわけではなく、病気が起きた原因は何かを推理し、その原因をなくすような治療をします。ですから治療して効果がなければ、原因の特定が間違っている可能性が強いので、もう一度、診察して推理し直します。その治療で大部分の人が治ったから、その治療を続けていれば治るという発想はしません。治らなければ自分の推理が間違っていたので、推理し直して治療法を変えるという発想になります。ですから十把一からげでなく、一人一人の治療法が違うわけです。補品の漢方薬は食品ですから速効性がありませんが、治療用の漢方薬や鍼灸は速効性がないと、変化を見ながら対処することができません。

質問:漢方薬や鍼灸は、続けていると健康になりますか?
答え:中国医学では、薬を飲んだり鍼をしたりは、できるだけしないようにと考えています。健康維持のために漢方薬を飲み続けたり、鍼に通ったりすることは、正直言って中国医学からすれば気違い沙汰です。それでは何のために薬や鍼があるのか?病気になったときのためです。
 中国医学では、名医は未病を治すといいます。つまり病気になってから薬を飲んだり鍼灸したりではなく、病気にならないように養生することが大切と考えています。特に重要と考えているのが起居と食事、体操と心の健康です。太陽が昇って明るくなると同時に起きて日没とともに眠る。ですから夏と冬では起床時間が違っています。それで昔は黄昏になると寝にかかり、午前0時は真夜中、朝の四~五時に起床していました。現在は0時は宵の口ですから変わったものです。食事は、空腹と満腹にならないように規則的に摂る。空腹では満腹になるまで食べるから、空腹になる前に食べろと教えています。体操は毎日からだを動かして体操すること。テレビでやっている楊式の太極拳などは、老人用の動きの遅い健康体操です。楽をしすぎても悪いし、働き過ぎても悪い。心の健康とは極端な感情変化を避けること。悲しみ、憂い、怒り、思い、恐れ、驚きが過ぎると悪いとしていますが、喜び過ぎてもいけないと教えてます。のんびりして暮らせと言っています。ちょっと現代人には無理なようですが。
 病気になったときは、それが初期で皮膚にあれば温湿布や温灸で治療し、少し進んで皮下脂肪にあれば按摩し、さらに進んで筋肉にあれば鍼し、内臓まで進んだら薬を使って治療するが、内臓まで進むと身体にもダメージがくるので、早目に治療するとしています。
 つまりホットパックや按摩、そして鍼や漢方薬は治療する方法で、保健のためのものではないと判ります。やはり当り前ですが起居と食事、体操と心が保健のためのものです。
 そして早期治療するためにも、治らないのに同じ治療を続けないようにしてください。例えば咳の止まらない患者さんが、医者に行って何年も薬を飲んでいましたが悪くなる一方なので、お灸しに来られましたが、肺癌ぽいので大学病院で検査を勧めたところ、やはり肺癌でした。手遅れでした。何年も咳の止まらぬ薬を飲み続けないで、医者を変えていれば助かったと思います。診断が間違っているから治らないのです。逆に私の母などは、乳癌なのに何処へ行っても発見してもらえず、最後に島根医大で発見されましたが、何で病院に行かなかったかとエラク怒られました。それまでに十軒ぐらいを回っていましたが、どこへ行っても気のせいだと言われました。いまだにピンピンしています。島根医大がよいと言うわけではありませんが、西洋医学は一度思い込むと、自分の判断が間違っているのじゃないかというフィードバックが欠けていると思います。

質問:鍼のことに関心がありますが、どんな病気に効果があるのか?どのような治療をするのか?何割ぐらいの人が治るのか知りたいのですが。
答え:それについては、私が翻訳した『難病の鍼灸治療』と『急病の鍼灸治療』を読んでください。一般的な目安として、坐骨神経痛ですと九割ぐらい、耳鳴りは七割ぐらい、五十肩や頚の病気はほとんどの人が治ります。ただ骨粗鬆症などの骨の病気や、三回治療しても効果が現れない耳鳴りや坐骨神経痛などには、続けて治療しても効果がありません。仏の顔も三度までといいますが、三回ぐらいで効果が現れなければ、何故よくならないのか聞いて結論を出してください。よくならない場合は、癌が進行していることも稀にあります。私のところでも治らない患者さんに精密検査を勧めると、癌が発見されることが時にあります。よくならないのに検査しないで治療を続けていると命まで失いかねません。

質問:どれぐらい間隔を開けて、治療すればよいのですか?
答え:中国では毎日治療します。しかし同じ部位には刺鍼せず、三日目に同じ部位へ戻ってきます。しかし毎日刺鍼することができない人のため、うちでは三日分を一度に打ったりもします。その場合は二日ほど開けて三日目に来てもらうようにしています。少しずつ毎日したければ、治療する部位を三つに分けた中国式の治療をします。

質問:なんで北京堂という名前なのですか?
答え:北京に留学していた頃、後ろの席の女の子の家に誘われました。その子の家は代々が遼寧省の医者で、古典の医学書が多くありました。聞いてみると彼女以外は医者を志す若者がおらず、彼女と結婚すれば本は私のものと思いました。そこで日本に来てもらえるように北京堂としたのですが、北京の両親が外国にやるため医者にしたのではないと反対し、結局、北京堂という名前だけが残ってしまったのです。我々の学校に付属した国医堂という診療所があり、北京鍼灸という雑誌もあったので、組み合わせて北京堂鍼灸としました。
 ところがある日、遠方からお婆さんが、北京堂を探してやって来たのです。北京堂が見つからないお婆さんは、郵便局へ行って訊ねました。「この辺に、ペンギン堂というのは、ないかのう?」
 「ペンギン堂? しらないなぁ。ペキン堂ならあるけどなぁ」
 「それっ! それっ! 北京堂じゃあ~」
  こうしたお婆さんは、北京堂へたどり着いたのです。
 それを聞いた、心優しき院長は、ペンギンを北京堂のマークとし、看板に貼り付けたのであった。それからはホッキョー堂と呼ばれることもなくなりました。

質問:治療中に、カチャカチャと音がしているのは何ですか?
答え:ワープロを打っている音です。鍼灸の世界は中国が中心ですが、中国の鍼灸は進歩が早いので、どんどん新しい本が送られてきます。それを読むのですが、所詮は外国語なので頭に残りません。それを頭に残すためワープロを使って日本語にしているのです。
 また中国の鍼灸大学と同じ授業をしようとする人が大阪にありますが、お金と暇を使って中国留学し、苦労して手にいれた成果を公開するのは嫌だと言う鍼灸師が多く、誰も協力しませんでした。そこで私が中国の大学教科書を翻訳することにしました。留学中に中国人と一緒に勉強した教科書を日本語に移し替えるのも、昔の授業を思い出すので懐かしいことです。
皆さんに、より進んだ鍼灸治療を提供するため、カチャカチャと勉強しているのです。

質問:北京堂の治療代は幾らですか?
答え:治療費が三千五百円、そして鍼代を実費で一本当たり五十円プラスさせていただいております。初めて来られた患者さんには、新品の鍼をおろして使い、治療後に名札を付けて高圧滅菌消毒した後保存します。次に来院されたときにはこの名札の着いた鍼を使い、他の人にはこの鍼は使用しません。

質問:北京堂の治療技術は、どの程度のレベルなのですか?
答え:私は、1988年の天安門騒ぎの前に中国へ渡って勉強しましたが、帰国してから開業して十六年近くになります。中国での留学期間は合計して二年半、旅行などを合わせると三年から三年半ぐらいになります。腕に関してはともかく、現在でも最先端の鍼灸書籍を中国の同級生に送ってもらって勉強しています。そして『難病の鍼灸治療』『急病の鍼灸治療』などを翻訳出版していますので、それを見れば程度が知れます。また鍼灸の専門雑誌にも『鍼灸事故の防止処置』を連載し、常に危険なことはすまいと心に命じています。私の弟子にも、「治らなくてもいい。解剖をよく勉強して、危険なことだけはやるな。治らなかったら、君がヘボな鍼灸師と言われるだけで済むが、事故が起きれば鍼は危険なものだと思われ、鍼灸師みんなが迷惑する」と言っています。当然にして彼が開業した治療室には水道設備や消毒設備を設置し、体内へ刺入する鍼は共用にせず、個人別にする筈です。 鍼灸師の程度や考え方は、その人が出した本を読めば確実に判ります。それを読んで我々も、ここが間違っているから大したことないなとか、これは凄い人だとか、この人の考え方に共感するとか判断します。本を出していなければ、治った人の評判を聞けば判ります。しょうもない本を出し、治った患者もおらず、いつも同じ患者の顔ぶれが通っていれば、あまり治さない鍼灸師です。
 私の弟子には人体輪切り写真集を2冊くれてやったのですが、なかなか熱心な弟子で、私の後輩に頼んで、私が持っている輪切り写真集のなかで最もよいと思われるものを買ってきてもらい、筋肉の動きが書かれている現在は手に入らない北京体育大学の解剖書を、うちのカラリオでカラーコピーして製本しました。このボーッとした弟子も、鍼灸を勉強し始める気になったと安心しています。
 私のレベルはまだまだですが、毎日毎日勉強をしているので、毎年毎年、知識や技術が向上していると思います。しかし一番重要なことは、患者が治っているかどうかです。技術の善し悪しに関しては、三回の鍼灸治療により、皆さんが結論を出してください。


 鍼灸師(鍼灸の治療をする人):淺野周(あさの しゅう)
 電話番号: 予約制です。
 住 所
 治療時間:約1時間。(事前にトイレへ行っておかなくちゃ)
 営業時間:朝9:00~夜8:00(夜7時まで受付)
 営業日:当面、毎日営業。来る前に予約の電話をください。
 料 金:針治療3,500円 学生3,000円 
     胃下垂治療6,000円(治療に3時間程度かかります)
 消毒設備:オートクレーブ、水道あり、噴射式消毒液
 :使い捨てではないので、個人別に試験管に名前を入れてキープ
 鍼の長さ:主に寸3から3寸
 鍼の太さ:主に1番から10番
 使用する鍼:主に日本鍼
  
北京堂に来るには:
 ◎西武新宿線沼袋駅からのルート
   沼袋駅から大通りを練馬(みずほ銀行が横にある方)へ向かって歩き、パチンコ百億のある角で左に曲がり、大きな通りをまっすぐ進み、踏み切りを過ぎて120mほど進めば、左手に北京堂があります。

 治療方法
 主に20~40分ほど置鍼し、そののちに抜鍼する方法です。くわしくはここを押して!
 ああ~っ、肝心なゼニですが、料金は1回3.500円、最初はキープしておく鍼がないので、鍼代が1000円かかります。

 平均通院回数:だいたい3~6回。そのため5回綴りの回数券があります。1回で治らない場合、だいたい6回かかりますので、次の時に回数券(15.000円)を買っていただくシステムになっております。といっても回数券のことは、私らあまり口にしません。公然の秘密にしていますので(紙代や印刷代がかかりますんで)、申し出てください。回数券は、有効期限なし、誰が使っても関係なしという代物です。回数券が必要な方は、坐骨神経痛と五十肩です。まあ、なかには1回や3回で治っちゃう人もおられるのですが、普通は6回以上の通院が必要ですから。

 当店の鍼は、割と応えます。坐骨神経痛の人だと腰へ打っただけで足先まで響き、頚へ打てば指先まで響きます。ですから日頃のウップンを晴らすために、ダンナさんをさし向けるとか、いろいろと応用できます。まれには、気持ちがいい人もあります。
 いままでに家庭の誤解を解いたこともありました。あるとき、お婆さんが来ました。腰が悪かったようです。一度治療をしました。次にお婆さんが来たとき、
 「実は、息子が私に、ここへ行けと熱心に勧める。ここで殺させようという腹だと思っとった。だけど、息子は腰を治してくれた。ほんとうにエエ息子じゃ」という。
 「お婆さんは、なんで、ここで殺されると思っていたのですか?」
 「実は、息子といっても養子なので、てっきり私が邪魔になって、殺そうとしているのだと思っていた」
  それからは、親子関係が改善したようです。

  また夫婦仲を悪くしたこともあります。お爺さんとお婆さんがやってきて、爺さんを治療してくれという。
  こっちは爺さんの耳が遠いので、何か喋っても返事せず、治療に支障を来すので、黙って難聴の鍼をしてしまった。大声で喋ると、こっちも疲れるし、隣のベッドの患者さんが返事をするので始末が悪い。
  こうして耳が聞こえるようになった爺さんは、お婆さんの悪口が全部聞こえるようになり、お婆さんを怒るようになってしまったのです。罪なことをしました。普通の人は、耳が聞こえるようになって喜ぶんですけど。

 以上。北京堂のコマーシャルでした。  

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