家庭でできる爪の水虫治療



 爪の水虫も、鍼灸院で目にする病気です。

 私も罹ったことがあります。父親が水虫愛好家で、家族のものは捨てさせようと思っているのですが、本人が頑張るので、どうしようもありません。
 足は暗いので、南京虫のように暗いところが好きな水虫は繁殖します。そして最終的には爪を含めた足全体が、水虫に罹ってしまうのです。
 この爪の水虫は、爪切りによって感染します。ですから、水虫の人が使った爪切りを使ってはいけません。特に深爪をすると感染します。
 爪の水虫にかかると、足の爪ならば白くなって肥厚し、厚さは4〜5mmにもなります。手の爪は一見正常ですが、爪の先から剥がれてくるので、障子を開けたときに引っかかりやすくなります。これも本人は、どうして起きたのか判らず、それどころか、これが何なのか判らず、治療法も知らない。まさに奇病と思いこみます。
 一応、飲み薬があるのですが、白癬菌に対する飲み薬は強烈なので肝臓を悪くします。 しかし爪で保護されていますので、水虫の薬は数々あれど塗っても効果がありません。

 私も爪の水虫になったとき、後輩の中国人が治療法を教えてくれました。
 そのころは水虫一発浄というような名前で、強烈な匂いのする薬がありました。それと姉妹品の伯特膏というのが爪の水虫の薬だったのです。別に、どうということのない薬だったのですが、その治療法に裏があったのです。
 買って説明書を読んでビックリ。まず添付してある爪ヤスリで、爪をきれいに擦り落としなさいと書いてある。なんと恐ろしい。それですぐに、そんな恐ろしいことができるか? と抗議した。すると、大丈夫だ。自分もやったという。「じゃあ、見してみろ」と靴下を脱ぐと、そこには正常な爪があったのです。
 そこであきらめて爪ヤスリで表面から擦り落とす。すると0.1mmも削らないのに、ガサガサとヤスリにひっかかる。なんだ。ツルツルしていたのは、太陽に当たっていたホンの表面ばかりで、少し擦れば中はヒビ割れてガサガサじゃあないかと判りました。そこへ薬を塗って絆創膏を巻いて終わり。肝臓を悪くするでもなく、一回で治りました。治療に要した時間は一日。正確に言えば、爪を削って薬を付けた3分間。

 それからは恐いので、自分のでない爪切りは高圧殺菌してから使っています。
 たぶん足の爪ならば、肥厚しているので相当削らなければならないかも知れないが、手の爪は表面を少し削るだけで、下の爪は菌に侵されてボロボロになっており、簡単に薬が浸透するので治ったようです。中国では現在、伯特膏を売ってないですが、効かないからだということです。いまでは達克寧(霜剤)というのを十元ちょっとで売っており、約200円ぐらいの薬です。見ると、硝酸ミコナゾール20mg/g、15g入りとなっていました。日本のよくある水虫薬の成分と同じです。これは、最近バスのなかで、一週間で水虫が治ると公告が吊り下がっていました。

 以前の脚癬一発浄は、かなり臭い薬だったので、達克寧に敗れたのですが、達克寧は水虫を兵糧攻めにしますとしか書かれていませんでした。しかし癬脚一発浄には、「再発を防ぐために、今まで使っていた靴下、足拭きマット、スリッパ、靴などの類は、すべて消毒してください」と書いてあり、一度治癒した水虫を、いかにして再発させないようにするか書かれていました。

 ちなみに、中国の薬局で日本人観光客が、水虫の薬が欲しいと言って中国人通訳を困らせているのをよく見かけます。漢字で書けば判るだろうと、水虫と書くのですが、それがますます混乱を招いています。中国語の感覚では農薬を探しているように思えるからです。
 中国では、水虫を虫だとは思っていません。足の問題だと考えて、脚癬とか脚気、香港脚とか呼んでいます。これでは水虫の薬が買えないのも道理です。


北京堂鍼灸