刺鍼事故
刺鍼事故
著者 劉玉書
翻訳 浅野周
発行所 三和書籍
定価 3.400円A5判 約399頁。
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推薦文
『鍼灸大成』は、図がたくさん載っていて、売れ行きが良かったそうです。そこで『刺鍼事故』の本にも、いろいろと楽しい図を勝手に入れました。
北京堂の新入り弟子が、まず最初に読む本です。つまり出版される5年ぐらい前から、もう十人以上の人が内容を読み終わってしまった本。もしかすると30人近くが読み終わっているかも。北京堂で現在は販売していない弟子セットを購入された方は、もれなく着いてきています。裸の姐ちゃんの後にあった部分です。

●幻の前書き(前書きは削られました。くやしいから、ここに載せます)
 まえがき
 本書は北京堂マニュアル書の一冊で、私の弟子希望者が最初に読む本です。コタツでミカンを剥きつつ、本書を読みながら、体幹の人体断面写真を見ると、実に笑えるそうです。
 1995年、私が張仁の『難病の鍼灸治療』と『急病の鍼灸治療』を出版したとき、こんな深刺療法を知識もないまま実行すれば、事故に繋がる危険性があると考え、すぐに緑書房へ刺鍼事故の本を出版してくれないかと打診しました。しかし緑書房は、もう東洋医学関係の書籍は出版しないという返事で、立ち消えになってしまいました。
 しばらくして、刺鍼事故が非常に多発するようになったという話しを聞きました。おそらく私が出版した本のせいでしょう。
 鍼の治療法を出版しましたが、刺鍼方向の事故について出版しようとすると、売れないのではないかという不安から、なかなか出版して貰える会社が見つかりませんでした。
 私の弟子には、必ず本書を渡してきました。鍼灸師である以上は、必要があれば浅くも刺せ、深くも刺せなければなりません。したがって深く刺すと事故を起こすようなことでは、鍼灸師として失格になるからです。
 『霊枢』には五刺、九刺、十二刺が記載され、浅く刺鍼したり、深く刺す方法が載っています。しかし浅刺しかできなければ、捻挫のような表面の痛みしか治せません。なぜ『霊枢』に深刺が記載されているのか、それは治療に必要だからです。浅刺で全てが解決するならば、浅刺しか記載されていないはずです。
 私が刺鍼事故に関心を持つようになった理由は、自分が刺鍼事故を起こしたからです。
 留学から帰った私は、地元で開業すると評判を呼びました。当時の私は刺鍼事故など関心がなく、ブロック注射の図とか、体幹断面写真集などを見ながら治療していました。
 治療するときは、ワゴンに胸部の断面写真を載せて刺鍼するので、いつも本を見ながら治療する変わった先生だという評判が立ちましたが、治癒率が高かったので悪い噂にはなりませんでした。
 その後1996年の『鍼灸意外及其防治』を翻訳し、雑誌『TAO』に連載しましたが、下訳だったので、校正していませんでした。しかし読者から反響が寄せられたそうです。
 自分が事故を起こしてからは、事故の本を買い集め、すでに七冊になってしまいました。 本書は『TAO』に連載していた『鍼灸意外及其防治』ではなく、1998年末に出版された『鍼刺事故・救治与預防』の翻訳本です。現在の北京堂は、これをマニュアル書としていますが、以前の『鍼灸意外及其防治』より優れた本と思います。
 文中では血圧をkPaと記載していますが、これは日本では馴染みのない単位です。読み方はキロパスカルで、気圧がミリバールからヘクトパスカルに変わったようなものです。だいたいkPaに7.5を掛ければ㎜Hgになります。『新編実用医学詞典』を見ると、中国の成人男性は、収縮期圧が13.3~16kPa(100~120㎜Hg)、拡張期圧が8~10.6kPa(60~80㎜Hg)だそうです。これだけは計算が面倒なので、単位を日本式に合わせませんでした。
 刺鍼事故の本は、昔あったそうですが、現在日本にありません。しかし鍼灸師は、どの方向へ刺せば、どうした臓器を損傷し、どのような症状が現れるか知る必要があります。
 刺鍼して気分が悪くなっても、ただ暈鍼が起きているだけで、しばらくすれば落ち着くかも知れません。鍼をすると、どうしても血圧が下がるので、気分が悪くなったり、冷汗の出ることが、しばしばあるからです。だけど事故ならば、どの臓器を損傷したか判断し、すぐに手術しなければ死んでしまうかも知れません。まずは事故を起こさないことが第一ですが、それでも人の身体は様々です。
 こうした理由で、どの方向へ刺入したら何の臓器を刺傷し、どんな症状が起きるのか知っておくことは非常に重要です。自分が事故を起こせば、それは自分だけに留まらず、鍼は危険なものだという認識が、世間に出来上がってしまうからです。そうなれば、鍼が如何に効果があろうが、鍼治療など廃れてしまうからです。病気に対する効果的な治療法が、危険だからということだけで廃れてしまうのは、惜しいことだと思いませんか?
 私は、最初に鍼の素晴らしさを知り、そのあとで鍼の怖さを知りました。しかし私が教えた人たちは、最初に鍼の怖さを知り、そのあとで鍼の素晴らしさを知るのです。それが鍼を学ぶ本当の順序だと、私は信じます。
 『刺鍼事故』の本は、私が事故を起こした時から、ずーっと出版したかった本です。それは、こうした書を日本で見たことがなく、一冊ぐらいあって良いと思っていたからです。そこで『鍼灸意外及其防治』を翻訳してから約十年になりました。やっと出版できました。
 それでは中国の鍼師どもが織りなす、刺鍼事故の恐怖劇を読んで、恐怖におののいてください。これは過去の私でもあり、患者さんから聞いた島根の姿でもあります。

● 本文内容見本  
 本書は、内容的にホームページにアップするなと、後輩のイマムラに言われていますので(本は専門家が金払ってしか読まないが、無料のホームページは素人でも読めるので止めろと言う)、内容を公開できません。どうしても読みたければ買ってください。内容は、中国人の鍼灸師達によって引き起こされるドチョンボの数々。恐いです。私は笑えるかなと思ったけど、その後、続々と恐いメールが寄せられましたので、恐怖の本とタイトルを変えます。私の選んだイラストが花を添えます。このイラストを選ぶセンスにも注目してください。残念なのは表紙。私は水玉模様がよかったんだけど、緑一色になってしまった。

  まず血圧をmmHgでなくkPa(キロパスカル)表示していますが、7.5を掛けるとmmHgになります。訂正。9ページのページの下から6行目、中府→風府。47ページの下から10行目、風府→風池。66ページ7行目、『類経頭翼』→『類経図翼』。68ページ2行目、あり、→あり、左肺は。72ページ、イラスト右端の危険角度と安全角度が逆。111ページ14行目、機能→昨日。153ページ下から6行目、妻を治療するため う1例は、→妻を治療するために左胸部へ刺鍼したが、それは心臓の部位だったので、すぐに死亡した。もう1例は、(たぶん職員が最終校正のキーボード操作で、青部分を消した模様)。156ページ下から6行目、壊死→環死。

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